Fate/in時雨&リニス   作:鎌鼬

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聖杯戦争開幕

 

 

「はぁ…………すっかり寒くなったな」

 

 

身を切るような寒さで吐いた息は白くなり、寒さから身を守る為に重ね着をすることを強いられる冬の今。

 

 

そして、聖杯戦争が行われる時期でもある。

 

 

俺が事前に調べていたマスター候補者はすでに冬木の町に入っており、各々の拠点にいる。それらの監視は爺さんに任せている。流石にアサシンは無理だが、それ以外のサーヴァントとマスターであるなら爺さんの蟲の眼から逃れられる事はできない。

 

 

「シグレ、カリヤが呼んでたぞ。アサシンが脱落したとかで話があるんだってさ」

「アサシンが…………?分かった、今行く」

 

 

ファーの付いたジャンバーを来たモードがやって来たので火の付いたタバコを踏み潰して鎮火する。

 

 

隠密に特化したアサシンが脱落するとは聖杯戦争の序盤ではほとんどあり得ない事だ。アサシンはその名の通りに暗殺者、正面からではなく背後からマスターを殺すことを得意としている。それなのに最初の脱落がアサシンであると言うことは…………マスターがアサシンのことを理解していないか、芝居であると言うことが考えられる。

 

 

モードに案内されて着いた部屋には真剣な顔をした雁夜と爺さん、それといつもと変わらぬ様子のリニスの姿がある。

 

 

「カリヤ、シグレを連れてきたぞ」

「ありがとう…………それで、呼び出した事についてだが…………さっき遠坂邸を見張っていた蟲がアサシンと思われるサーヴァントの脱落を確認したんだ。その時の光景を見せるから兄貴やサーヴァントから見てどう思うのかを聞かせて欲しい」

 

 

部屋が暗くなり、空いた壁に映像が投影される。

 

 

映っている場所は遠坂・優雅・アゴヒゲ・時臣の住居である通称遠坂邸。洋装の屋敷の庭を駆ける髑髏の仮面を着けた男がアサシンだろう。アサシンは庭を駆け、侵入者用に用意されていた魔術を潜り抜けて屋敷に迫っていた。そして…………庭に置かれている魔術の要となっている宝石に手を伸ばそうとしたときに、それは起きた。

 

 

アサシンの手を宝石ごと、剣が串刺しにした。痛みに悶えるアサシンを見下すように、屋敷の屋根の上に『黄金』が姿を現した。黄金と言ったのにはそれの背後に輝く光が黄金だったことと、隠匿の魔術を使っているのかサーヴァントの姿が霞んでいるからである。

 

 

手を剣に貫かれ、地面に貼り付けられたアサシンに『黄金』は無慈悲な最低を下す。『黄金』の背後から様々な武器が現れてアサシンに降り注いだ。逃げることができないアサシンにこれから逃れる手段はなく、アサシンは顔につけていた髑髏の仮面を残して消滅した。

 

 

「…………ここまでだ、どう思う?」

「ヤラセだな」

「演技だろ」

「八百長ですね」

 

 

雁夜の問いに俺たちは違う言葉ではあるが同じ意味を持って答えた。この一戦はまともな物ではないと。

 

 

「アサシンは気配遮断のスキルを持ってる。それなのに見つかるのが早すぎる」

「あのサーヴァントが前もって警戒していたか…………それともアサシンの襲撃があることを教えられていたか」

「それにモードの言っていた通りに前者だったとしても迎撃が遅すぎます。アサシンは霊体化ではなく実体化してやって来ました。警戒していたのであるなら発見できるはずです。それなのに、わざわざ庭にまでやって来てから攻撃した…………まるで見ている人たちに見せびらかすように」

「俺もそれは思ってたよ…………でも仮にヤラセだとしても、わざわざアサシンを犠牲にしてまでこれをした理由はなんだ?」

「考えられるのはアサシンが予想以上に使えなくて早めに処分したかったか…………アサシンが死んだように見せたかったか?」

「じゃあアサシンは生きているのかよ?間違いなく消滅してたぜ?」

「身代わりとか分身とか、そういう宝具を持っている可能性がありますね。それならアサシンを死んだように見せることでアサシンは脱落した、もうアサシンを警戒する必要は無くなると油断させることが出来ますから」

 

 

あの『黄金』は時臣のサーヴァントなのだろう…………でもどうしてだろうか、あのサーヴァントを懐かしいと感じたのは…………やめだ、答えが出ないことを悩んでても仕方がない。

 

 

「爺さん、アサシンのマスターは?」

「たった今言峰教会に保護されたぞ。あれがヤラセだと言うなら時臣の小僧と教会は繋がっておるな」

「教会の監視を頼む」

「すでにやっておるわい。じゃが教会から見つからぬように離れたところからになるがのぅ」

「十分。これからはアサシンは死んでいないと仮定して行動してくれ」

 

 

俺の判断に全員が頷いて肯定してくれた。正直、俺が聖杯戦争で一番厄介だと思っているのはアサシンだと思っている。アサシンのサーヴァントはステータスは優れているとは言えず、他のサーヴァントと一騎討ちすれば間違いなくアサシンは敗ける。だが、アサシンはそれを知っている。暗殺者であるアサシンに必要なことは直接的な戦闘の強さではなく殺すことである。例え最優とされているセイバーのサーヴァントを喚んだとしてもマスターを暗殺されればセイバーは脱落する。マスター殺しのアサシンこそ、警戒しなければならないのだ。

 

 

「しかし…………他の陣営はアサシンが脱落したと思うて動くやもしれぬのぅ」

「だとしたらそれはそれで僥倖だ。他の陣営が戦っているのを見る事ができるからな」

「その分偵察に使う労力が減るな」

「ついでに戦った後を尾行すれば拠点が分かるかもしれないですね」

「…………リニスはともかくモードレッドはそれで良いのか?騎士なのに」

「効率の良い手段を取ることは普通だろ?これは戦争、結果的にどうであれ最後まで生きていりゃあ勝ちなんだ。王道邪道なんて選んで要られないさ」

「おい騎士、それで良いのか」

「勝てば良かろうなのだ!!」

 

 

モードったらすっかり逞しくなっちゃって…………出会った頃は騎士道騎士道煩かったのにしばらくしたらゲリラ戦の方が得意になっちゃったのよね。誰のせいだろう…………俺のせいか。

 

 

「んじゃ、これからは決めていた通りに俺が動く。雁夜はサポート頼むぞ」

「まったく、兄貴は性格が悪いよな。モードレッドのマスターのふりをして動くだなんて」

 

 

雁夜と決めたいたこと、それは俺がモードのマスターとして表立って動くことである。俺のサーヴァントはリニスで、モードのマスターは雁夜なのはここにいる全員が知っている事だが他の陣営は知らない。ちょっとした撹乱だな。

 

 

「知ってるか?勝負事に勝つ鉄則は相手の嫌がることをやり続けることだ…………勝つためなら汚れ役だって進んでやるさ」

「兄貴の場合は嫌がらせが好きなだけだろ…………」

「否定はしないっ!!!」

「否定しろよぉ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…………」

 

 

教会に保護されたアサシンの言峰綺礼は一仕事を終えた自分へのご褒美として麻婆を食べ終えて溜め息を着いた。今回の作戦を考えたのは綺礼の師である遠坂時臣であるが…………代行者という異端討伐の第一線で活躍していた綺礼からすれば杜撰も良いところだった。思慮深い者であればすぐに八百長だと気づくであろう。なのに何も言わなかったのはいつも優雅優雅言っている時臣のあわてふためく姿を見たかったからだ。

 

 

「良い顔をしているな、綺礼よ」

「…………ギルガメッシュか」

 

 

そんな綺礼の前に現れた女性は時臣の喚び出したサーヴァントのギルガメッシュ。神々がいる時代に初めて人としての王となった世界最古の王。整った顔付きと見るものを魅了する身体は男に色を覚えさせる物があるが綺礼は一切動じなかった。召喚されたギルガメッシュが女であることには多少驚きはしたものだが。

 

 

「何、遠坂師の計画が崩れることを想像していただけだ」

「ククッ…………聖職者がそんなことを考えても良いのか?」

「確かにこの身は神に仕える身ではある。だからといって己の本心まで隠そうとは考えぬよ」

「あぁ…………良いぞ、綺礼よ。お前は見ていて愉しい。己の本心を悪徳と知りながらもそれを偽ることなく生きるその姿は奴を思い出させる」

「奴?」

「そうか、話していなかったな。奴は我が惚れた男のことだ」

 

 

ギルガメッシュのその言葉を聞いて、綺礼は動きが止まった。傍若無人を行くギルガメッシュが惚れた男がいる…………それはとてつもない衝撃だった。

 

 

「…………お前も女だったのだな」

「当然だ、確かに我は王である。しかしそれと同時に女でもあるのだ。男に惚れることの何が悪い?」

「確かにそうではあるが…………その男とはどんな人物だったのだ?」

「初めて出会ったときは…………我が朋友との出会いと同じだったな。エルと戦っているときに面白そうだから混ぜろと言ってやって来た。今思い出してもあれ以上の戦いは無いだろうな。何せ本気になった我とエルとでようやく互角だったのだからな」

「…………人間か?そいつは」

「人間だったとも。しかし…………今一度戦ったとしても勝てるとは思えんがな」

 

 

そう言ってギルガメッシュは綺礼の酒倉から年代物のワインを取り出して、勝手にグラスに注いだ。ギルガメッシュが喚び出されてから毎夜のように酒倉の酒を飲まれている綺礼は文句を言っても無駄だろうと判断してそれを見逃す。

 

 

「懐かしい…………奴は我のことを王ではなく個人として見ていた。神の血を引く王としてではなく、ただのギルガメッシュとしてな。不敬者ではあったがそれが心地よくもあった…………」

 

 

グラスに注がれたワインを飲んだギルガメッシュの顔は王としての物ではなく、惚れた男のことを想う乙女の顔になっていた。

 

 

「それで、その男とは添い遂げたのか?」

「いいや…………奴は我に言い寄ってきた神を虐殺したことで神の怒りを買い呪われた」

「神殺し…………何度も聞くが、それは本当に人間か?」

「何度でも答えてやるとも、奴は人間だった。人として産まれ、人として生き、人として死んだ。その身を呪いで蝕まれながらも奴は笑いながら逝った…………泣いて産まれたのだから笑って死ぬのが当然だと言ってな」

 

 

空になったグラスにワインを注ぐギルガメッシュを見ながら、綺礼は考えていた。ギルガメッシュの言っていた人物に、どうしてだか綺礼の知り合いが当てはまるのだ。

 

 

「…………ギルガメッシュよ、よければその男の名を教えてくれぬか?」

「何…………?そう言えば言ってなかったか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「名はシグレ、我とエルの想い人であり、我が認めた人間だ」

 

 

 

 






アサシン
アッサシーン。

アサシンVS黄金のサーヴァント
初戦。優雅さんの作戦であるが間桐陣営には即座に看破された。時雨は黄金のサーヴァントの正体には気づいていない。

勝てば良かろうなのだ!!
敗ければすべてを失う、なら勝てば良いというモードレッドのモットー。だいたい時雨のせい。

ギルガメッシュ
優雅の喚び出したサーヴァント。TSギル様。時雨がいる影響でわりかしマイルドなギル様になっている。一人称は(われ)。聖杯戦争には自分の財宝を狙う者を下すために参加しているが、時雨とエルにもう一度会いたいという願いもある。

言峰綺礼
愉悦と麻婆を愛するド腐れ外道神父。時雨のせいで外道に覚醒済み。様々な願いを持って参加している聖杯戦争で愉悦を見つけることを楽しみにしている。そしてギル様のお相手に心当たりがあるものの、面白そうだから黙っている。

ウルクの頃の時雨
ギル様とエルが戦っているときに面白そうだからという理由で参戦し、最後の方ではギル様&エルVS時雨の構図になっていながらも互角に戦っていた。民からの評価は意外と高かった模様。ギル様に言い寄ってきた名も無き神を虐殺して、神々から怒りを買って呪い殺された。


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