「ただいま~」
「お、帰ってきたな」
御門とジルと話しているとそれなりに時間が経ったらしく、買い物に出ていた面子が帰ってきた。
「悪い、ちょっと待っててくれ」
「構いませんよ」
「私もです」
一応一言の断りを入れてから帰ってきたみんなの出迎えに向かう。すると玄関には雁夜、鶴夜、馴染ちゃん、桜ちゃん、慎二、リニス、モード、ケイネスという何度も濃い顔ぶれが買い物袋をぶら下げていた。
「お帰り、ウェイバー君とライダーは?」
「あの二人なら帰ったぞ。なんでもこれ以上お世話になる訳にはいかないとか言ってな」
「ん?見慣れない靴が二つ…………客か?」
「俺の客だよ」
「兄貴の客か…………今度はどんな変人なんだ?」
「なぁ雁夜、一つ試してみたいことがあるんだが?」
「オーケーオーケー、クールになろうぜ。だからその意味ありげに持った傘を置いてくれ」
「…………ッチ」
雁夜に言われて手にした傘を傘立てにぶっ差す。折角人のケツに傘を差し込んだらどうなるかを調べてみたかったのに。
「ウェイバー君は帰ったのにケイネスはいるんだな?」
「ランサーがここにいるから当たり前だろう。ランサーは起きたか?」
「いいや、まだだけど」
「ふぁ~おはよ~」
「ぬぅ…………気だるいな」
噂をすればなんとやら、やっと起きてきたギルとエルがやって来た。夜にはしゃぎすぎたせいか二人の顔には未だに疲労の色が残っているが…………なんで二人とも当たり前のように俺の服を着ているのですかねぇ…………
「おい、なんで俺の服を着てやがる」
「え?だって他に着るものが無かったから」
「サイズが合わぬのはあれだが…………シグレが着ていたと思えば我が宝物庫に納める価値があるのもよ」
「はぁ…………そのサイズを考えてくれよ…………そのせいで雁夜が前屈みになってるじゃねぇか!!童貞雁夜には厳しい光景だぞ!!」
「なってねぇよ!!つうか童貞ちゃうわ!!」
「おっとそうだった。雁夜の童貞はブルーシスターズに美味しくいただかれたからなぁ!!」
「…………ッ!!」
「時雨と言い合えばこうなることは予期できていただろうに…………なぜ口にしたのだ雁夜よ…………」
雁夜の経験談を口にしてやると雁夜が顔を青くして震えだした…………まぁ初体験が逆レだったら普通にトラウマものだよな。それをやってのけるブルーシスターズもそうだけど。
「そ、そうだ!!兄貴の客が来てるんだろ!?だったら挨拶に行かないと!!」
「お?雁夜、何話をそらしてるんだ?ん?ん?んん?」
「追い討ちかけるのは止めたげてよぉ!!」
雁夜がレイプ目になって危なくなっているところを鶴夜が泣きながら割り込んだ。流石にこれ以上やると精神崩壊しかねないから止めておくか。
「ほ、ほら?雁夜?時雨のお客さんに挨拶いこうな?」
「…………うん」
「おっと幼児化雁夜か、ブルーシスターズに売るために撮影しとくか」
「こいつホントどこまでいっても外道だよなぁ!!」
「それが時雨クオリティーですから」
「なんでリニスさんが胸張ってるのさ!!」
「なぁシグレ、客ってどんな奴なんだ?」
リニスと鶴夜のコントを見ていたらモードが小声で尋ねてきた。
「ん?…………あぁ、言ってなかったっけか?そんな珍しい奴でもねぇよ…………ただのマスターとサーヴァントだから」
数秒後、客間から雁夜と鶴夜の悲鳴が聞こえてきた。
「…………お見苦しいところをお見せしました」
「いえいえ、こちら急にやって来ましたから驚かれるのは無理ないですよ」
雁夜と鶴夜の驚きから十分ほど時間が経ち、客間にいるのは俺、雁夜、ケイネス、御門、リニス、モード、ギル、エル、ジルという聖杯戦争に関わる面子だけになっている。流石に鶴夜たちにこの話し合いに参加させるのは筋違いだと思う。鶴夜は少々ごねたが最悪俺が動くことでなんとか下げさせた。
「それで、わざわざマスターがサーヴァントを連れてここに来た理由は?」
「同盟の申し出です。俺とキャスターは聖杯を求めません。故に、戦力の提供する代わりに俺たちの保護を頼みたいのです」
御門の言葉にマスターたちは顔をしかめ、サーヴァントたちは興味深そうな顔になる。それはそうだろう。どんな願いでも叶えるとされている聖杯をサーヴァントを召喚しておきながら求めないというのはあからさまにおかしいからな。
「…………なぜだか教えてもらっても?」
「…………俺がキャスターを召喚したのは事故なんです。そしてその喚び出されたキャスターも聖杯を求めていない。だから俺たちには聖杯戦争に参加する理由がないんですよ。俺とキャスターの現在の目的は生き残ること、長い物には巻かれろって奴です」
「信用できないな。キャスターは確かに戦闘能力は低い、しかし現代の魔術を凌駕する程の神秘が扱える。背中を預けていたら洗脳されていました~なんて話も有り得ない訳じゃない」
「その警戒はごもっともです。だから、誠意を見せます」
「誠意?」
御門の言葉が理解出来ない雁夜は訝しげな顔で御門を見るがそんな雁夜を無視して御門は立ち上がり、ジルと向き合って右手に刻まれた令呪を晒した。
「令呪をもってキャスターに命ずるーーーーーーーーーーーーーーーーーーこの場にいる全員に危害を加えることを許さず、危害を加えた場合には俺を殺し自決しろ」
「ーーーーーーーーーなっ!?」
驚いたのは誰だったか、それほどまでに御門の命令は信じられないものだった。同盟も結んでいない状態での危害を加えることの禁止…………もしここで誰かが御門とジルを攻撃したとしても御門とジルは反撃することは出来ずに逃げるしかない。そして危害を加えた場合にはジルに自分を殺させ、そしてジルに自害を命じている。ここまで複雑な命令になると令呪の効果は十二分には発揮されないかもしれない。しかし御門とジルが無害であると証明するのには十分だった。
「正気かよ…………」
「正気ですよ?さて…………こちらは誠意を見せました。それなら次はそちらが誠意を見せる番じゃないですか?」
「…………」
雁夜が手を組んでゲンドウスタイルになっているが…………どこからどう見ても雁夜が押されていることは明らかだ。御門は令呪を使ってまで敵意がないことを示した、それなのに条件を出した雁夜がそれを渋っていては負けを認めてるも同然だ。雁夜もそれを分かってはいるだろうが渋ってるのは…………成人してない御門に負けたくないからか?
だとしたらしゃーない、手を貸してやろう。
「俺は良いと思うぞ、雁夜」
「兄貴」
「同盟を結ぼうとした俺たちだけじゃなくてたまたま居合わせたケイネスたちにも危害を加えないことを示したんだ。同盟するのに値すると思うぜ?」
「もしかして兄貴が何か口添えしたのか?」
「何もしてねぇよ、この方法を考えて実行したのは間違いなくこいつだ。さて、ガキがここまでやってくれたんだ。雁夜はどうする?」
「…………分かった、同盟を結ぼう」
俺の言葉でようやく踏ん切りが着いたのか、雁夜は負けを認めて御門とジルと同盟を結ぶことを決めた。
「ありがとうございます」
「いや、こちらも良い経験を積ませてもらったよ。口約束だけでは不足だろうから
「
「…………ちょっと待った、君は魔術師じゃないのか?」
「えぇ、そうですけど」
「話を聞く限りだが祖先から受け継がれた魔術回路が閉じて、サーヴァントの召喚と同時に開いたんだろうよ。つまりは魔術師としてはド素人も良いとこだ」
「マジかよ…………」
魔術師にもなっていない御門に負けたことで落ち込んでいる雁夜を無視して手を叩き、全員の視線を集める。
「さて、キャスターがうちの陣営に加わったことでケイネスとギルとエルに一つ提案だが
セイバーを狩りに行かないか?」
「(不味いな…………)」
セイバーとランサーの戦闘の次の夜、冬木郊外の森の奥にあるアインツベルンの建てた城の中でセイバーのマスターである
切嗣のサーヴァントは全サーヴァント中でも最優のクラスと言われるセイバー、その真名はブリテンの国王アーサー王。最優の名に恥じないステータスの高さと対城という破格の威力を秘めた宝具を有するセイバーだったが…………相手が悪いとしか言えない。
昨日戦ったケイネス・エルメロイ・アーチボルトのサーヴァントであるランサーは遠坂時臣のサーヴァントであるアーチャーとの会話からエルキドゥ、そして時臣のアーチャーはギルガメッシュであると分かった。ライダーのサーヴァントは世界の半分を征服したマケドニアの征服王イスカンダル、バーサーカーと思わしきサーヴァントはセイバーがモードレッドと口にしていた。キャスターは未だに表立った行動をしていないので不明、アサシンは歴代のハサンから召喚されるのでその内の誰かだと思って間違いない。
ライダー、キャスター、アサシンについては真っ向から一対三で戦ったとしても問題ないだろう。ライダーは宝具こそ不明だがマスターが未熟なためかステータスの低さが目立つ。キャスターはセイバーを始めとする三大騎士クラスには対魔力のスキルがあるために優位に立てる。アサシンに至っては暗殺に特化した性能のためかセイバーの宝具を使わずとも勝てるだろう。
問題は残りだ。神々の現存する時代に初めて人としての王となり、世界すべての財宝を集めた逸話を持つギルガメッシュ。ギルガメッシュの朋友にして互角の実力を持つとされているエルキドゥ。アーサー王に反逆し、カムランの戦いにて槍で貫かれながらもアーサー王に致命傷を与えたモードレッド。一対一で戦えたとしても勝率は良くて三対七と言ったところだろう。
そしてバーサーカーのマスターとして、あの間桐時雨が参加している。過去に数度時雨と共闘した経歴のある切嗣だが…………勝てるイメージが、正確に言うなら時雨が死ぬというイメージが持つことが出来ない。強すぎるのだ。時雨はどの人類よりも強く、恐らくはサーヴァント並の戦闘能力を持っている。本当に人間か疑いたくなるような存在が切嗣が時雨に抱いた感想だった。
そして更に凶報、バーサーカーはその歴史から当然のごとくアーサー王であるセイバーに敵意を持っており、なぜか知らないがランサーとアーチャーまでもがセイバーに怨みを持っているような素振りを見せた。最悪…………いや、時雨の交遊関係を見る限りではほぼ間違いなくバーサーカー、ランサー、アーチャーによる同盟が組まれるだろう。そうなれば一対一でも勝つことが怪しいというのに一対三となればオーバーキルだ。
切嗣自身によるマスターの暗殺も考えているがランサーのマスターであるケイネスはランサーから離れないようにしているし、アーチャーのマスターである時臣は遠坂邸にて穴蔵を決め込んでいるために難しく、バーサーカーのマスターである時雨に至っては頭を撃ったとしても死ぬという確証が持てないレベルである。
「(…………詰んだか?)」
これまでの経験から切嗣は自分達の陣営がほぼ詰んでいることに気がついた。四面楚歌、とまではいかないが七騎中三騎が敵に回り、しかもその三騎はセイバーを倒せるほどの性能の持っている。余程の愚者でもない限り自身が劣勢であることは悟れるだろう。
「(どうしよう…………アイリと舞弥を連れて逃げるか?セイバーのいる今ならアハト翁からイリヤを奪還することも難しくないし…………)」
絶望の淵に立たされた切嗣が頭の中で思い付いたのは最愛の妻であるアイリスフィール、かつて戦場で拾った部下の
「ーーーーーーーーー駄目だ、そんな弱気でどうするんだ」
弱腰になっていた自分を叱咤して気を取り直す。劣勢であるからといってここで負けを認めるわけにはいかない。切嗣は誓ったのだ。この世界に存在する争いを根絶するために、この冬木の地で流す流血を最後にすると。恒久的な世界平和の為に聖杯を手に入れると。
その為に、切嗣はこの聖杯戦争に参加した。見知らぬ大多数を生かすために愛する少数を切り捨てる覚悟を持って。
血の気が引き、冷静になった頭で問題となるだろうバーサーカー、ランサー、アーチャーをどう始末するかを模索し始めたところでーーーーーーーーー
「切嗣!!大変よ!!アーチャーとランサーとバーサーカーがやって来たわ!!」
アイリスフィールからの報告を聞いて、心が折れそうになった。
ウェイバーとライダー
流石にこれ以上お世話にはなれないとウェイバーが断り、ライダーがごねたがシャイニングウィザードを決めて黙らせた。
ギルとエルの格好
時雨から拝借したシャツのみ着用。サイズが大きいから股下までは隠れているが結構危ない格好。ウルクに下着があったか分からないが今作でのギルとエルは作者の趣味により『履いてない』を実現しております。
雁夜とブルーシスターズ
時計塔時代の知り合い。雁夜は時雨命名のブルーシスターズに好意を持たれて、襲われた模様。トラウマ程ではないが雁夜はブルーシスターズに苦手意識を持っている。ブルーシスターズ…………いったい何処の姉妹なんだ…………
御門と雁夜の交渉対決
御門の勝利。そもそも二十数年生きた雁夜と前世を含めれば百近い年を生きた御門とでは経験値が違いすぎる。一対一での交渉だったが御門がキャスターに令呪を使ったことで一気に流れを持っていかれた。
御門は魔術師ではない
COOL龍之介同様に完全に途絶えた魔術師の家系だった御門は魔術回路が開いたものの魔術師としての教育を受けたわけではないので魔術師とは名乗れない。キャスターから遠見と隠蔽の魔術を習っただけである。
セイバーハンティング
一狩り行こうぜ!!
衛宮切嗣
セイバーのマスター。大多数を救うために少数を切り捨てるという信念の元に多くの戦場を渡り歩いてきた切嗣の戦闘能力はマスターの中でも上位クラス。その戦場の中で数度時雨と共闘した経験があるが勝てる気がしないという考えを持った。恒久的な世界平和の為に聖杯戦争を勝ち残ろうとしているがモード、ギル様、エルちゃんがセイバー絶対殺すマンになっていることと三人による襲撃をかけられたことで心が折れそうになっている。多分一番の苦労人。
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