『王様狩りじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
『『『『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』』』』
アインツベルンの森の中で雄叫びをあげているのは時雨、モード、ギル、エル、ジル。端から見れば不審極まりない行動をアインツベルンの城の一室に集まった切嗣たちは遠見の魔術を使った水晶を介して見ていた。
「何をしているのかしら?」
「団結…………でしょうか?」
時雨たちの行動が理解できない銀髪の女性アイリスフィール・フォン・アインツベルンと黒髪の女性久宇舞弥。
「外道め…………!!」
水晶に映る時雨の顔を見て敵意を隠そうとしない現代のダークスーツを纏ったセイバー。
「(間桐時雨にサーヴァントが三騎…………それにあの男、ステータスが見えるということはサーヴァント。恐らく姿を現していなかったキャスターか…………)」
必死に冷静になることに努め、自分たちと時雨たちの戦力差を把握しようとする衛宮切嗣。
三者三様の反応ではあったが確かなことは時雨たちがセイバーに明確な敵意を持ってこちらに向かっている事だった。
「(アーチャーとランサーとバーサーカーだけでも過剰だというのにそこにキャスターまで来るとは…………ここまで勝ち目の無い戦いとなると一周回って笑えてくるな)舞弥、アイリを連れて逃げるんだ。ここは僕とセイバーで食い止める」
「それなら私が」
「駄目だ、君があいつと戦ったとしても一秒どころか一瞬持つかどうかすら怪しい。ここは僕とセイバーの方が確実だ」
「…………分かりました。マダム、こちらへ」
役に立てないことを悔やみながら舞弥は切嗣の指示に従いアイリスフィールを連れて部屋から出ていった。その時にアイリスフィールが切嗣の身を案じた目線を送ってくるものの、切嗣はそれには応えずに水晶に映る時雨たちの映像を見ていた。
「セイバー」
「っ!?は、はい!!」
二人きりになった室内で、切嗣がセイバーを呼んだ。それにセイバーは少し上ずった声で応えてしまったが無理はない。何故なら切嗣はセイバーを喚び出してからこれまで一度たりともセイバーに話しかけたことなど無かったからだ。
それは切嗣が英雄という存在を嫌っているからだ。大多数を救うために少数を見殺しにして切り捨てる切嗣だがその根幹にあるのは『より多くの人を救いたい』という純粋な物。例え人殺しと蔑まれようとも、殺そうとする相手が惨めに懇願してきたとしても、死んでいる親に泣きすがる子供の姿を見ようとも、切嗣は一人でも多くの命を救うという思いを胸に人を見棄て、救ってきた。そんな切嗣からすれば英雄というのは人々を死地へと誘う存在でしかなかった。故に切嗣はセイバーと話そうとはせず、何かあったとしてもアイリスフィールを通していた。
そんな切嗣が直接話しかけているとなればセイバーがかのアーサー王だとしても驚いてしまうだろう。
「…………はっきりと言って今から戦う相手は万に一つも勝ち目の無い相手だ。それでもアイリと舞弥を逃がすための時間を稼がないといけない」
「承知してます。例えこの身朽ち果てようとも奴らを通さないことを我が聖剣にかけて誓いましょう」
切嗣が話しかけてきたことが余程嬉しかったのかセイバーはダークスーツ姿から青いドレスと銀の鎧の格好へと代わり、自身の宝具によって不可視になっている剣を掲げて誓った。
しかし、セイバーは気づかなかった。これはセイバーが積極的に衛宮切嗣という人間を知ろうとしなかったツケなのかもしれない。衛宮切嗣という人間を知っている人間が切嗣の目を見ていればすぐに気づくことができただろうことにセイバーは気づけなかった。
衛宮切嗣のセイバーを見る目が、嫌悪する英雄を見る目から道具を見る目に変わっていることに。
日が暮れて暗くなった森の中を駆ける青い閃光。それの正体はセイバー。彼女は初めて切嗣に頼られたという高揚感と共に魔力を放出してこちらに向かってくる敵目掛けて進んでいた。
そして森の中腹にて敵影を確認する。
「やはりだな、ここは我の財でグサッとだな」
「いやいや、僕の腕力でグシャッと」
「オレの宝具でドカンととか」
「私の宝具で『見せられないよ!!』状態にも出来ますが?」
「「「お前天才か!!」」」
「(どうしよう、震えが止まらない)」
ギル、エル、モードが擬音付きでセイバーをどうするか話し合い、ジルの一言にてセイバーの運命が半ば決まってしまった。あそこにいけば死ぬよりも辛いめにあうぞとセイバーのスキルの『直感』が最大限の警鐘を鳴らしている。その警告に従って逃げてしまいたかったが切嗣に誓った手前で逃げることは出来ず、警戒を最大にして四騎の前に現れる。
「アーチャー、ランサー、バーサーカー…………それにその者はキャスターか。何故この場に現れた?」
「来たぞ!!来たぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「野郎ぶっ殺してやらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「グヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
会話が通じなかった。セイバーの姿を確認した途端にギルは背後に黄金の渦を出し、エルは両手を槍と剣に変え、モードは剣を構えて全身から赤黒い雷を放ち、ジルはヨダレを撒き散らしながら狂ってるようにしか思えない笑いを浮かべている。
バーサーカーが四騎に増えた。
セイバーがバーサーカー化した四騎と対峙している頃、切嗣は森の中を駆けていた。狙いは狙撃による間桐時雨の殺害、サーヴァントたちを指揮しているのは間違いなく時雨だ。それならば時雨が居なくなれば僅かながら勝機が見出だせるかもしれないと切嗣はセイバーを囮に時雨の心臓に鉛弾を撃つつもりだった。
そして遠くから爆ぜる音が聞こえる。セイバーが戦闘を開始したのだろう。これでセイバーにめが向けられて狙撃がしやすくなったと切嗣は表情を変えることなく考える。
そして森の開けた場所に出た瞬間、目の前に紅い極細の糸のような物が漂っているのが目に入った。
「これっ、は!!」
それに見覚えのあった切嗣は即座に停止、そして後退する。その判断は正しかった。切嗣が糸から距離を取った瞬間、突然糸が激しく燃焼を始めたのだ。
「やはり
糸から燃え盛る炎の勢いは止まらない。そこにも見えていないだけで糸があったのか、切嗣の目の前で燃える炎を火種として次々に燃えていく。気がつけば炎の囲いが出来ていて切嗣の行く手を完全に塞いでいた。
「やぁこんばんわ、今日は良い夜だなぁ。そう思わないか?衛宮切嗣」
男の声が聞こえ、切嗣は迷うことなくその方向目掛けてキャレコの銃口を向けて引き金を引いた。その先にあるのは炎の壁、弾丸が炎の壁を突き破りーーーーーーーーーー金属音が響いた。
「声かけただけで発砲とか怖いわーマジ怖いわー」
気が抜けたような声と共に炎の壁が開き、そこから黒いコートを羽織った男性が現れる。
「やっほ、切嗣。十…………いや九年ぶりくらいだな」
「間桐、時雨…………!!」
時雨は切嗣に人を小馬鹿にしたような笑みを向け、切嗣は苦虫を噛み潰したような表情になる。それは時雨こそ、切嗣がこの聖杯戦争でもっとも強く、そして戦いたくないと思ってるからである。
「アインツベルンと手ぇ組んで、性格の合わないアーサー王まで喚び出して…………本気で聖杯狙いに来たな」
「…………アインツベルンと組んだことは否定しない。だがあれを喚び出すように言ったのはアハト翁だ、僕の考えじゃない」
「あの爺まだ生きてるのかよ。いや、うちの爺さんも似たようなものだけどさ…………なんだ?年食った魔術師ってのは長寿なのか?」
「叶うことの無い妄執に囚われているから長生きじゃないのかな。アハト翁は第三法の成就に固執している様子だったし」
「クハハッ!!どうやら生きすぎて目的と手段が入れ替わったようだな!!第三法に至ってでも叶えたい願いがあったというのに第三法を成功させることだけに執着するとは!!」
煌々ともえさかる炎に囲まれながら時雨と切嗣は話していた。切嗣はキャレコを時雨に向け、空いている左手はコートの下にある切嗣の切り札である魔術礼装がいつでも取り出せるようにしている。対する時雨はキャレコを向けられているのに自然体、無手のままで切嗣と向かい合っている。
「昔話に花を咲かせたいところだが諦めて一つ聞こうか…………衛宮切嗣、お前の理想は変わり無いか?」
「あぁ、変わることはない。僕は例え悪と呼ばれようともこの世界から争いを無くす。その為にこの聖杯戦争に参加したのだから」
「あぁ、うん、良いぞ、俺好みの答えをくれてありがとう。やっぱり理想や信念ってのは誰かから教えられた与えられたような物ではなく自分で見出だした物が実に良いなぁ…………だからこそ、俺はお前の前に現れるんだろうな」
時雨は切嗣の理想である『恒久的な世界平和』というのを認めていた。一部を除いて誰もが争いなど好まない、争いの無い世界があってほしいと願うのは自然なことだ。それを聞いた時雨は切嗣の理想を間違っていないと肯定したのだ。例え万を越える人を殺そうとも折れることなく曲げることなく貫かれた信念が美しいと感じていたから。
だからこそ、切嗣の理想の前に時雨が立ちふさがる。切嗣は争いの火種となるような存在を悉く切り捨て、それによって失われるはずだった命の多くを救ってきた。少数を切り捨て、大多数を救う。それが間違っているとは時雨は思ってはいない。
だがその切り捨てられる命の中に時雨の大切だと思っている存在がいたとしたら?
時雨は大切だと思う少数を救うためならば億を越える人を殺すことになろうとも躊躇うことはない。少数を救う為に大多数を切り捨てるという切嗣とは真逆の考えにあった。
切嗣はこの冬木での流血を最後の流血にすると誓っている。それはこの冬木を犠牲にしようとしていることに他ならない。故に、この冬木に住まう大切な存在を守るために時雨は切嗣と対峙する。
「どうあがいてもこうなるのか…………」
「いやね、俺個人としてはお前のこと好きよ?その理想も頑張って叶えてねと応援したいほどにはな。でもその為にあいつらが犠牲になるなら話は別だ。お前の理想を完膚なきまでに叩き潰させてもらうぞ」
それ以上の会話は無意味だと判断したのか切嗣がキャレコの引き金を引いた。甲高い発砲音と共に弾丸が時雨に向かって放たれる。
「
引き金が引かれるよりも一瞬早く、時雨が手を握り爪で手のひらを傷つける。一見すれば意味の無い自傷行為にしか見えないそれだが無意味なはずがない。
「ーーーーーーーーーー
自傷行為によって流れ出した血液が巨大な太刀となる。時雨は自分の血で作られた赤黒い刀身で迫り来るキャレコの弾丸をすべて防いだ。
「よし、ならお前の理想と俺の信念…………どっちが強いのか証明しようじゃないか!!!!!!!掲げる理想が正しいと!!間違っていないと信じているのなら!!形振り構わずかかってこいや!!!!!!!正義の味方ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
自らが放った炎に照らされながら、鮮血の太刀を握った鬼が吠えた。
王様狩り
時雨が主催で行われるセイバー討伐のこと。参加者はモード、ギル様、エルちゃん、ギョロ目、あとはリニスが遠く離れたところからサポートに回っている。
切嗣の英雄嫌い
原作のまま。消えていく命を救おうと理想に燃えていた切嗣だからこそ、死地へと向かって命を消耗させる英雄を嫌っている。
切嗣のセイバーへの対応
まともになったかと思えば切嗣はセイバーのことを嫌う存在から道具扱いにランクアップ?させました。人の気持ちが分からないと言われたセイバーは切嗣のことに気付いていない模様。むしろ頼られたと思ってテンションが上がっている。
「やはりだな、ここは我の財でグサッとだな」
「いやいや、僕の腕力でグシャッと」
「オレの宝具でドカンととか」
「私の宝具で『見せられないよ!!』状態にも出来ますが?」
「「「お前天才か!!」」」
セイバーの処刑法を考えていて気づいたら擬音だらけになっていた。最終的にはギョロ目の宝具でセイバーのことを『閲覧削除』状態にすることに決まった。薄い本が厚くなるな…………
バーサーカーが四騎に増えた
モード、ギル様、エルちゃんは察しの通りに、ギョロ目がバーサークした理由は次回に説明します。
時雨オリジナルの魔術。自分の血液を使い様々な形状にして扱うことができる。また、時雨のぞくせいである火と組み合わせることで血液を燃料として燃やすこともできる。モデルは『血界戦線』のSS先輩。
血液を固めて太刀として扱う。刀身が薄いために切れ味は良く、見た目とは裏腹にかなりの密度で凝縮されているので頑丈である。
時雨と切嗣
『大多数を救うために少数を切り捨てる』切嗣と『少数のために大多数を切り捨てる』時雨。正反対のように思えるが『救いたい』という本質は同じ。時雨は切嗣のことは気に入っていて、切嗣の切り捨てる少数の中に時雨が大切だと思っている存在が入っていなければ切嗣の理想の手助けをしても良いと思っている。だが、今回は不特定多数の冬木の住人を犠牲に切嗣は聖杯を獲ようとしているので大切な存在が巻き込まれる可能性があると時雨が立ちふさがることになった。
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