前話から15年後に飛びます。
そして雁夜おじさん性格改変。
ついでに出落ち注意。
「あぁぁぁぁぁんめいぞぁぁぁぁぁぁぁぐるぅぉぉぉぉぉぉぉぉりあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「…………いきなりどうしたんだ兄貴、そんな吐き気を催すような声で叫んで。校庭にいた声の聞こえた連中が倒れてるぞ」
「気分だな。アラヤが俺にやれと囁いたんだ」
「アラヤがそんなこと囁くわけないだろ」
臓硯浄化計画の成功から15年、つまり俺と雁夜は18歳になった訳だな。季節は冬、学校の屋上の寒空の下で俺と雁夜は弁当広げて飯食ってる。
臓硯浄化計画が成功して一番変わったのは家のことだろう。まるで廃屋みたいな家だったが爺さんが知り合いの伝を当たって改装したのだ。家自体の造形が変わった訳じゃないが少なくとも廃屋から立派な屋敷にジョブチェンジしたことは喜べる。てか一番乗り気だったのは爺さんだったな。『こんなうす暗い家で住めるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』とか言って家の屋根壊して日の光に当たって物理的に成仏しそうになってた時は雁夜と鶴夜と一緒に指差して笑ったな。
後は蟲蔵が無くなった。といっても間桐の代名詞とも言える蟲はまだ健在で、蟲蔵だった地下空間も残っている。悪趣味に使う蟲の数を減らしたって言うのが正しいか。
そして爺さん。『磨耗した魂回復させてくる』とか言って日焼け止めクリーム塗りたくって日傘さして出掛けようとしている爺さんはめちゃくちゃシュールだった。で、爺さんが出掛けてから半年後、爺さんが若返って帰ってきた。訳が分からなかった。爺さんから説明されたが、肉体と言う器を無くしている爺さんは魂の姿がそのまま投影されるらしく、魂が戻ったことで体も戻ったんじゃないかとか言っていた。究極のアンチエイジングですわ、これは売れる(迫真)
他には…………あぁ、間桐の家だが、雁夜が当主になることが決まった。これに関してはほとんど消去法としか言えない。鶴夜は魔術回路が無いから、俺は火属性で間桐の魔術が合わなかったから、そして雁夜は中級程度だが魔術師としての素質はあり、尚且つ間桐の魔術と相性のいい水属性。雁夜は俺がなれば良いとか言っていたがそうなると爺さんの残してくれた間桐の魔術が無駄になる。それを防ぐために雁夜を間桐の当主に立てた。
「ーーーーーーーーーーおい、兄貴。話聞いてたか?」
「ん?あぁ悪い悪い。優雅にどんな悪戯するかだろ?」
「それは話したいがそうじゃない」
優雅=遠坂時臣と読めば良し。俺と雁夜と鶴夜に時々爺さんでいかに優雅の優雅を崩すかという遊びをしていたのだ。例えば優雅の紅茶にタバスコ入れたりとか、優雅の宝石全部ビー玉に変えるとか、優雅の上履きを高級なモコモコしたスリッパに変えるとか。あいつ良いリアクションしてくれるから弄りがいがあるんだよな~
「んじゃああれか?禅城のところの嬢ちゃんに告白するのか?」
「…………して、振られた。もう時臣から告白されてたって」
「…………今夜は飲もう。爺さんに言って秘伝の酒開けさせるから」
「…………うん」
禅城の嬢ちゃん…………確か葵だっけ?雁夜と優雅の幼馴染みで雁夜の初恋の人。初恋が実らないって本当だったんだな~(すっとぼけ)
「…………そうじゃなくて、兄貴はこれからどうするつもりなんだ?」
「これからってのは進路の事か?だったら俺はロンドン行くよ?時計塔行って魔術学ぶついでに優雅弄ってくる」
「何それ楽しそう…………本当に良いのか?」
「良いんだよ。俺には間桐の魔術は合わない、だったら他の方法を探すしかない。幸いな事に家の爺さん親バカで他の魔術師の家系みたいに俺たちを売るようなことはしなかったからな。だから俺は俺の魔術を探す。その為には魔術が学べて魔術を調べられる時計塔が一番都合が良いんだよ。ま、合わなかったら適当に引っ掻き回して逃げるけど」
「質の悪い…………決めた、俺もロンドン行くよ」
「おいおい、そんなに簡単に決めて良いのか?失恋のショックで自暴自棄になっただけじゃないのか?」
「自然に人の傷を抉るなよ…………確かに葵さんに振られたのも理由だけどそれは切っ掛けだ。元々時計塔に行こうか迷ってたからな。魔術の最先端を学べるあそこなら間桐の魔術を進化させられるかもしれないって思ったから」
「クハハッ!!雁夜、お前今間桐の当主らしい顔をしてたぜ?」
「茶化さないでくれ…………それに、俺の目的を兄貴は忘れた訳じゃないだろ?」
「……………………………………………………あぁ、そうだな」
「おい待て、今の長い間はなんだ」
「寒くなってきたなーそろそろ戻るかー」
「おい棒読みだぞ!!兄貴もしかして忘れてたのか!?」
「サムイナー」
「抑揚の無い声で言わないでくれ!!怖いから!!」
空になった弁当を片付けて屋上から繋がる扉を開ける……………………忘れた訳じゃないさ、ただ少し恥ずかしくなっただけだ。
間桐の次期当主である雁夜の目的、
それは俺、間桐時雨を上回る事なんだからさ。
間桐雁夜にとって、兄である間桐時雨は大きな存在である。子供の頃から大人びた精神であり、すべての事を何でもソツなくこなし、性格は少し加虐的ではあるが身内に対しては優しさを見せるなど、内外から見ても良い兄であると雁夜は思っていた。
そして同時に、兄のことを疎ましくも思っていた。近くに何でも出来る天才が居れば兄弟である雁夜は比較の対象にされることは多い。
間桐の次期当主を決めるときも時雨が当主になるだろうと思って諦め半分で聞いていたが時雨ど臓硯が推したのは意外なことに雁夜だった。理由は時雨に比べれば劣るものの魔術師としての素質はあり、間桐の魔術と相性の良い水属性だからと言うもの。
当然、雁夜はそれに、反発した。そしてその際に自分の本心をぶちまけた。
『兄貴は何でも出来るんだろ!?だったら兄貴が当主になれば良いじゃないか!!兄貴と比べて劣っている俺なんかよりも兄貴の方が当主に相応しいだろ!!鶴夜はあれだけど!!』
『…………あれ?なんで俺自然な流れで罵倒されてるの?』
それを聞いて時雨は軽く微笑んで告げた。
『俺には間桐の魔術は使えないからな。だって俺の属性は火で間桐の魔術と相性悪いし。確かに、俺と雁夜は客観的に比べて見れば俺の方が優秀だろうよ。でも、正直言って俺はお前が羨ましい。だってお前は水属性で間桐の魔術が使えるからな。考えてみろよ、爺さんが必死こいて便所にへばりつく糞のように残した魔術が、俺には一切使えないんだぞ?それは間桐と繋がりが無いのと同じだ。あぁ正直に言ってやるよ、俺はお前が羨ましい。俺と比べて劣っているお前が羨ましい。鶴夜は論外だけど』
『あれ?時雨まで…………どうしよう、目から汗が』
『鶴夜や泣くでない。儂なんぞ、糞扱いされたのだぞ?あれ?目から蟲が…………』
部屋の隅で体育座りをしている臓硯と鶴夜は雁夜の目には入らなかった。ここに来て、時雨という大きな兄の本心を知ることが出来たから。
時雨は典型的な魔術師と同じ思考…………身内に優しい。それなのに臓硯が作り上げた魔術が使えないというのは身内大好きな時雨からしたら相当な苦痛なのだろう。身内との繋がりの一つである間桐の魔術が一切使えないから。
時雨の本心を聞いて雁夜の中にあったのは………優秀な兄が出来なかった事を自分が出来るという優越感。一応言っておくが雁夜は時雨のことは嫌いではない。ただ、優秀な時雨と比べられて、劣等感を感じているだけだ。だから、時雨が出来ないことを自分が出来るという事実を理解した雁夜の中から、時雨に対する劣等感は消えた。
『…………分かった、間桐の当主には俺がなるよ。でも兄貴、これだけは覚えていて欲しい。俺はいつか兄貴を越えてみせる!!だから、その日まで待っていろよ!!』
『…………あぁ、分かったよ。その日が来るまで楽しみにさせてもらうさ』
こうして、雁夜にとって時雨は兄であり越えるべき存在となった。
「雁夜、何か持ってない?優雅の下駄箱の中に入れようぜ」
「待ってくれ…………あ、シュールストレミングスならあるぞ」
「…………なんで世界一臭い缶詰を持ち歩いてるの?まぁ良いや、優雅がここを開けたときに蓋が開くようにしてっと」
「ついでにバイブに見せかけた淫蟲入れとこうぜ」
「good!!」
心に決めた目標は変わらない。いつか時雨を越えてみせる。
いつか越えるべき存在であるが大好きな兄である時雨と、今日も優雅こと遠坂時臣で遊ぶべく、悪戯を仕掛けるのであった。
そして学校は悪臭騒ぎで休校、時臣は下駄箱に入っていた大人の玩具らしきものが見つかって教員から呼び出される。
そんな様子を使い魔の蟲を通して映像として保管して、雁夜の失恋パーティーの時の肴としてみんなで酒を飲むのであった。
時雨と雁夜、時計塔留学決定
魔術を学ぶ為が三割、優雅をいじめるのが七割。
臓硯浄化計画成功
時雨の企みが成功して臓硯は身内に激甘な外道系爽やかお爺ちゃんになりました。なお、少しどじっ子属性が入ってる模様。現在の臓硯の姿は花札の時よりも少し老けた臓硯です。
雁夜失恋
この話の前日に葵さんに告白して振られた模様。優雅に先を越されました。まぁ、優雅よりも早く告白したとしても葵さんの雁夜の評価が『仲の良い男友達』なので結局振られる。
雁夜のコンプレックス
時雨は優秀、そんな身内が居れば比較されるのは当然のこと。そんな身内が劣っている自分のことを羨ましいと言って優越感を感じてもおかしくない。そして雁夜の目標は『時雨を越えること』 。難易度ルナティックどころの話じゃねぇぞ……………………なお、会話の中で二人がナチュラルに臓硯と鶴夜をディスっていたのは無意識のことだったりする。
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