リニスと再会し、特にこれと言って涙ぐましいシーンがあるわけでもなく普通に挨拶して終える。冷たいと思われるかもしれないがこれが俺たちの普通なのだから仕方がない。
「はい、紹介よろ」
「はじめまして、リニスと申します。生前は時雨の妻でした」
「美人で猫耳…………兄貴、そういう趣味は控えた方がいいと思うぞ」
「よぅし雁夜、久し振りに実戦訓練してやろう。なぁに、『変成』した俺から24時間逃げればいい。捕まった場合は時間が終わるまでひたすら殴る」
「心の底からごめんなさい」
ったく…………これは俺の趣味じゃなくてリニスの生まれに関係するんだよ。まぁ興奮しなかったかと言えば嘘になるけど。
「リニスは動物を素体として作られた使い魔でな、人の姿にはなれるがそうしても体に元になった動物の特徴が出るんだよ。リニスは猫を素体にしてるから猫の耳と尻尾だな」
「作り物じゃないんでちゃんと動きますよ?」
耳と尻尾が本物であることを証明するように耳をひょこひょこと、尻尾をくねくねと動かしている。それを見てリニスに猫の耳と尻尾があることを二人は理解してくれたようだ。
「成る程、時雨は獣趣味じゃった訳じゃな」
「そんなアブノーマルな趣味はありません~全力で滅相するぞ妖怪爺」
「土下座するんで勘弁してください…………!!」
「頭を下げるだけなら誰だって出来ることだ…………」
「本当にすまないという気持ちがあるなら、人間どこでだって土下座が出来るはず…………例えそれが熱された鉄板の上だとしても…………!!」
リニスがどこからか巨大な鉄板を持ってくる。鉄板は真っ赤になるほどに加熱されていて、とてもじゃないが人間が座れる物ではないことは明らかだった。
「こ…………この悪ふざけに全力で取り組む姿勢…………!!間違いなくこの人は兄貴の嫁だ!!」
「…………認められたのは嬉しいんですけど判断基準が酷すぎて素直に喜べられません」
「おら爺さん!!早く鉄板の上で土下座しろよ!!」
「勘弁してください…………本当に…………!!」
「うわ…………兄貴本気で爺さんに焼き土下座させようとしてるよ…………」
「あらあら…………あれは時雨の照れ隠しですね」
「照れ隠しで焼き土下座とかヤバすぎるだろ…………そう言えば、兄貴!!彼女のステータスとかクラスはどうなんだ!!」
「ん…………あぁ、そう言えば見てなかったな」
「助かった…………!!」
逃げようともがく爺さんを離してリニスに向き合う。
聖杯戦争に参加するマスターにはサーヴァントのステータスを目視する事が出来る。しかもそれはすべてのサーヴァントに有効。正直言って自分のサーヴァントだけで良かったと思える機能だ。まぁだからと言ってそれは絶対と言うわけではなく、マスターやサーヴァントの宝具とスキルによる隠蔽が可能だという点はあるのだが。
「…………筋力C、耐久D、敏捷B+、魔力A+、幸運B、宝具A…………後衛向き、キャスタータイプだな。そいでクラスは…………
「ビースト?そんなクラスは無いだろ?見間違いじゃないのか?」
「いいや、しっかりとビーストってある。イレギュラークラスか?」
「ビーストのぅ…………そう言えば、アインツベルンが前回の聖杯戦争でアヴェンジャーとかいうクラスのサーヴァントを喚び出しておったのぅ」
「真名は?ステータスはどうだった?」
「真名は分からん。ステータスも低かったはずじゃ、確か一番始めに脱落しおったからの。じゃがアインツベルンはバーサーカーのクラスを潰してアヴェンジャーを喚び出しておった…………今回も残ったセイバーかアーチャーが潰されたと思うて間違いないじゃろ」
「…………だと良いんだがな~」
何でだろうか…………アヴェンジャーというクラスを聞いたとたん嫌な予感がする。メルクリウスに記憶盗られたのが今になって響くとはな。
俺はこの世界がどういう世界なのか知っている、この世界が物語であったことも覚えている。だが覚えているのはそこまでだ。メルクリウスが俺をこの世界に送った時に重要な記憶全部抜いたらしい。本で言うなら、この本のタイトルが『fate』だとは知っている、しかし内容が分からないっていった感じだ。
まぁ、内容を覚えていたとしても好き勝手動いていただろうという自覚はあるが…………嫌な予感がしている中で、それが分からないというのは恐ろしいとしか言えない。
「…………雁夜、爺さん、今回の聖杯戦争は気を付けた方がいい。嫌な予感がすっごいする」
俺のその一言だけで、雁夜も爺さんもそれまでの空気をがらりと変えて真剣な顔付きになった。
「それは兄貴の勘か?」
「そうだ、まったく根拠の無い俺の勘。その勘が今回の聖杯戦争は何かあるって訴えてる」
「時雨の勘はよく当たるからのぅ…………子供の頃には起こる前に地震を察知しておったし」
「そう言えば、兄貴が放浪している間の資金は全部宝くじだっけ?番号指定で買った奴。ここまで来るともう未来予知じみてくるよな」
「勘っていうのは所詮過去の経験の積み重ねなんだよ。これに似た場面を経験した事がある、だから次はこう来るのだろうってな感じでな」
「ふむ…………儂は聖杯戦争の大元である大聖杯を調べてみよう。とは言っても大聖杯が稼動しきっとらんこの時期では大したことは分からんじゃろうがの」
「俺も手伝うよ。まぁ大したことは出来ないだろうけど」
「んじゃ、雁夜と爺さんは大聖杯の調査だな。俺は戦争の方に集中させてもらうよ…………危ないと思ったら直ぐに引いてくれよな」
「呵呵っ!!儂を誰だと思うておる、五百年を生きる妖怪じゃぞ!!生き汚さだけならば誰にも負けておらん自信はあるわい!!」
「俺は兄貴や爺さんほど人間は辞めてないけどそれでも体裁考えなければ逃げれるだけの自信はある…………こんな自信は欲しくなかったけどな」
「クハハッ!!そうかそうか、なら死んでくれるなよ?二人が死ぬと俺が寂しいからな。だから死んでくれるな」
「分かっているさ、寂しがり屋の兄貴」
「第三法を成し遂げるまでは死ぬつもりなど無いわい、寂しがり屋の息子よ」
こうして、嫌な予感が漂う聖杯戦争を前にして俺たちは動き出した。
「ふぅ…………」
深夜に酒瓶片手に佇む怪しい奴がいた…………てか俺だった。今日の酒は鶴夜から奪った奴ではなく自分で買った物、冬木の地酒らしく味も悪くない。
「あぁ…………今日も酒が美味い」
「また一人で飲んでるんですか?」
「リニスか」
一人で飲んでると俺の側にリニスが実体化をした。サーヴァントであるリニスは現代の情報を聖杯から教えられているが知っているのと実際に見たのとでは大きく違うと言って霊体化して冬木を歩き回っていた。
「コップ出してください、私も飲みますから」
「そこの棚の中にあるから出してくれ…………どうだった?この世界は」
「都市部まで行ってきましたがあっちと比べると少し遅れてる感じがありますね。まぁこっちはあっちよりも過去なので比べたら劣っているのは当然ですけど…………はい」
「ん」
差し出されたグラスに酒を注ぐ。清酒特有の透明感のある液体がグラスを満たし、一気にリニスの口の中に消えていった。
「一気かよ…………まだあるから良いけど」
「久し振りに時雨と飲めるからですよ…………時雨は何か聖杯に望む願いがあるのですか?」
リニスの疑問は分からないでも無い。聖杯戦争で得られる聖杯は、『表向きでは』どんな願いも叶える万能の願望器として知られている。ほとんどの魔術師はその聖杯に願いを叶えてもらおうとし、サーヴァントも願いを叶えてもらおうと戦う。でないとサーヴァントにメリットは無いからな。
「俺には聖杯で叶えてもらうような願いは無いよ…………まぁ、もし手に入るのなら今の俺になる前にこの世界で出会った奴らと会いたいってくらいだな。そういうリニスはどうだ?何かあるんじゃないか?」
「私の願いはもう叶えられましたよ。貴方といれることが、私の願いでしたから」
「…………恥ずかしいことをさらりと言いやがる」
「おや~時雨~?顔が赤いですよ~?」
「これは…………あれだよあれ、酒に酔ったからだ」
「ふふっ…………そういうところ、全然変わってないですね」
「当たり前だ、俺は俺だから俺なんだ。どれだけ生きたとしても俺という存在は変わらねぇよ」
「えぇ、安心しました。どこにいても時雨は時雨だと分かることが出来て」
リニスが空になったグラスを差し出して来たので酒を注ぐ。空になった酒瓶を部屋の隅に置き、タバコに火を着ける。
「あれ?タバコの銘柄変えましたか?」
「あっちで吸ってたのと同じのが無かったから同じ様な味のを吸ってるんだよ。ここ天国だわ、タバコが安い」
「色んな税がかかる前ですからね…………ところで、時雨?」
リニスが空になったグラスをテーブルの上に置き、俺の前から抱き着いてくる。必然的に顔が近くなったことでアルコールの臭いとリニスの匂いが鼻につく。
「再会出来たことですし、しませんか?」
「ドストレート過ぎるだろ。もう少し包み隠して言ったらどうだ?」
「今さら恥じらうような関係じゃないでしょうに。まぁ、時雨がそれが良いと言うのなら喜んでさせてもらいますけど」
「サーヴァントになっても相変わらずみたいだな、そういうところ。だけど、まぁ安心した。サーヴァントになっても俺の好きなリニスはリニスだって分かったからな」
「…………いきなりそんなこと言わないでください。恥ずかしいじゃないですか」
俺の言葉に何か来るものがあったのかリニスは俺の胸に顔を埋めて隠そうとする…………けど耳が赤いから照れてるのは分かるんだよな。顔を隠して耳隠さず、ってか?
「クハハッ、さっきやられた事の御返しだよっと」
「キャッ」
ソファーから立ち上がり、リニスを横抱きで持ち上げる。向かう先は言わずもがなベットである。
「ふふっ…………時雨、久し振りに貴方を感じさせてください。私の身体に、貴方を刻み込んでください」
「はいはい、分かってます…………」
ベットに着いた俺だが思わず言葉を無くしてしまった。誰もいないはずの俺のベットなのだが…………
「ん…………」
モードさんが、寝てらっしゃった。
「モードぇ…………」
馴染ちゃんがモードの為に空いてた部屋を用意してたよね?なんで俺のベットで寝てるの?
「…………この娘は時雨の愛人ですか?」
「真っ先にそう言うことを言えるリニスを心から尊敬するよ。てかなんで愛人?」
「ふっ、そんなの決まってるじゃないですか…………時雨の正妻は私だからです」
「正妻だからって愛人認められるリニスさんマジ寛容…………てかどうするよ。ベットは使えないし、ソファーでしたとしてもモードが起きるぞ」
「…………そうだ、三人でしましょう」
「正気かよ」
「狂気の沙汰ほど面白い…………!!と、言うわけで」
「ふぁ、何?」
そう言うとリニスは俺の腕から飛び出して寝ているモードの上に覆い被さった。そうすればモードは起きるのだが頭までは完全には起きていないらしい。
「ふふっ、どうぞ?」
「あぁ~…………モード、先に謝っとく。ゴメン」
「え?え?え?」
未だに何が起きたのか理解できていないモードとすでに準備満々のリニスが待つベットに俺は飛び込んだ。
どこかにて
『メルクリウスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!!!!!』
『血涙するほどの事かね…………』
『ロォォォォォォォッズ!!フロォォォォォォォム!!ゴッドォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!』
『やれやれ…………
…………なんかどこかでしょうもない理由で宇宙規模の戦いが起こった気がする。
「んふ…………」
「時雨…………」
二度目の朝チュン、ただし違う事は眠っているのはモードだけじゃなくリニスもだっていう事。久し振りだってことだからかリニスの乱れっぷりはやばかったな…………モードもモードで最初は困惑していたのに最後の方じゃノリノリだったし。
「聖杯に望む願いか…………」
昨夜リニスに聞かれた質問を思い出す。あの時は特には無いと答えた。出来れば過去に出会った奴らと再会したいと言ったが所詮は出来れば、必ず叶えたいという程ではない。もし、必ず叶えたいという願いがあるとするなら…………
「二人の、受肉かな」
再会できた、俺みたいなろくでなしを愛していると言ってくれる二人。しかし二人はサーヴァント、聖杯戦争が終われば消えてしまう存在。
だから、この世に残ってほしい。
俺の近くにいてほしい。
俺の前で、満ちた生を終えてほしい。
「クハハッ、ガキみたいな我が儘だが上等だ。絶対に叶えてやるよ」
俺の隣で寝ている二人を見て、俺はこの聖杯戦争に勝つことを決めた。
リニス
クラスビーストで喚び出された時雨の妻。ステータスは筋力C、耐久D、敏捷B+、魔力A+、幸運B、宝具Aという動けるキャスタータイプ。近接戦も出来なくはないが他のクラスのサーヴァントには劣る。喚び出された理由は言わなくても分かると思うがメルクリウスの仕業。クラスはビースト固定で喚び出されるが今回のようなキャスタータイプと、第五次聖杯戦争のライダーのステータスそのままのライダータイプのどちらかのステータスで喚び出される。
時雨獣趣味疑惑
『俺はそういう趣味じゃない。ただ惚れたやつがそうだっただけだ』との事です。
焼き土下座
最上級の謝罪の方法。三十秒以上は頭を鉄板に着けていなければならない。
ビースト
アヴェンジャー
リニスのクラスと前回の聖杯戦争でアインツベルンが喚び出したクラス。どちらも正規のクラスではなくイレギュラークラスである。
時雨のfateに関する記憶
物語を面白くするためという理由でメルクリウスに盗られた。大体の世界背景は分かっているが物語の大筋に関わる程の人物に関する情報については抜かれている。ただ、臓硯の場合は流石に死亡フラグ過ぎたので覚えさせていた模様。
第四次聖杯戦争
時雨のセンサーに引っ掛かりました。間桐陣営は聖杯戦争に平行しながら、異変は無いかを調べる事になります。
リニスの感性
時雨が愛してくれていると分かっているので愛人については許容している。というよりも前世では愛人を勧めている節もあったとか無かったとか。リニスは『強い雄なら沢山の雌を抱えてもおかしくないですから』という動物的な考えをしている。
甘粕VSメルクリウス
また起こった魔王系勇者VS宇宙規模変質者によるガチバトル。
リニスとモードレッドとの3
ヤっちゃいました♪
時雨の願い
時間を越えて再会できた者たちの受肉。現段階だとリニスとモードの二人。増える予定有り。
感想、評価をお待ちしています。