バトルシップイレブン ~艦娘とサッカー少年達の出会い~ 作:ヒビキ7991
大和「単なる見間違いかも知れませんが、あなた
もしかして”山城”さんではないですか?」
戦艦棲姫「・・・えっ?」
神童「天馬、山城って何だ?」
天馬「山城は、扶桑型超弩級戦艦の2番艦です。
1917年就航、1944年戦没。
国家の威信をかけて建造された艦でしたが、
機関や主砲の配置に問題があり、幾度となく
改装を繰り返した結果、艦隊にいるより
ドックにいるほうが長くなり、欠陥戦艦と
呼ばれるようになってしまった戦艦です。
戦争においてはほとんど戦闘に参加せず
内地で練習艦として使われ、 しごきが凄い
ことでも有名だったため、当時の言葉に
”鬼の山城、地獄の金剛、音に聞こえた
蛇の長門、日向行こうか伊勢行こか、
いっそ海兵団で首つろか”なんてのや、
”地獄榛名に鬼金剛、羅刹霧島、夜叉比叡、
乗るな山城鬼より怖い”などの言葉があり、
そういった言葉ができるほど当時の海軍では
特に戦艦、重巡などの大型艦で教育が熱心に
行われていて、 特に山城と金剛は
”横須賀の山城、佐世保の金剛”と戦慄され、
日本帝国海軍における”しごきの東西両横綱”
として知られる苛烈さだったそうです。 」
剣城「ある意味凄い戦艦だったんだな。」
戦艦棲姫「・・・確かに、私はこの姿になる前は
戦艦山城として生きていたわ。
久しぶりね、大和。」
一同「えっ?」
吹雪「大和さん、知り合いだったんですか?」
大和「以前少しお話しした程度ですが・・・。
ですが、何故山城さんが戦艦棲姫になって
しまったのですか?
数ヶ月程前に提督とご結婚されたと伺って
おりますが。」
天馬「えっ?
提督と結婚?」
長門「我々の提督ではない。
別の鎮守府の提督だ。」
戦艦棲姫「いえ、提督と結婚したという山城は
私ではないわ・・・。」
一同「えっ?」
霧島「どういう事ですか?
ここにいる戦艦棲姫・・・じゃなくて山城さんが
大和さんが言う提督とご結婚された
山城さんではないって。」
戦艦棲姫「話してあげるわ。
あのとき私が目にした光景を・・・。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~某日 某海域~
山城「主砲、よく狙って……ってー!」
ズドーン!
ーー私がまだ山城だった頃、私はある鎮守府で
扶桑姉様率いる艦隊と永喜に渡り、
その鎮守府で最強艦隊と言われ活躍していたわ。
ドカーン!
山城「やったわ!
扶桑姉さま、見ててくれた!?」
扶桑「ええ、よくやったわ。」
ーーある日、私は扶桑姉様と共に深海棲艦と
戦っていた
けれど・・・。
扶桑「山城、魚雷よ!」
山城「えっ?」
ドカーン!
ーー私は砲撃に夢中になって、敵の魚雷が接近
していることに気付かなかったの。
私は魚雷をモロにくらって海に沈んだ・・・。
でも、運良く生き延びることが出来て、
気が付けば私は大破した状態で無人島の
浜辺にいたの。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~某鎮守府 提督室前~
ーー私は扶桑姉様と提督に会うため大急ぎで
鎮守府へ向かった。
でも提督室の前まで来たとき、私は聞いて
しまったの・・・。
『すまん山城、そこの書類取ってくれ。』
『はーい、ただいまー。』
ーー私を呼ぶ提督と、返事をする私の声を・・・。
山城「私の声?
どういうこと・・・?」
ーー私は恐る恐るドアの隙間から部屋の中を見て、
そして見てしまったの・・・。
提督の隣にいるもう一人の私と、まるで
何事も無かったように楽しそうにしている
提督と扶桑姉様の姿を・・・。
山城「そんな、嘘でしょ・・・。」
ーーそして、さらに見てしまったの。
もう一人の私と提督の左手の薬指に、同じ
指輪があったのを・・・。
扶桑『そういえば、明日は山城と提督の
結婚式でしたね?』
山城『ええ!
扶桑姉様、明日は絶対見に来てくださいね!
私の花嫁姿!』
提督『おいおい、はしゃぎすぎて体を壊すなよ?
お前は壊れやすい艦なんだから。』
山城『ちょっと、まさか提督まで私のことを
また欠陥戦艦なんて言うつもりじゃ
ないでしょうね!』
提督『そんなこと一言も言ってないだろ!?』
扶桑『フフフ。』
山城「うそ・・・うそよ、こんなの・・・。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
神童「ちょっと待った!
提督室にもう一人の山城さんが居たというのは
どういう事だ?」
霧島「・・・それに関しては、艦隊の頭脳と言われた
私でも判断しがたいのですが、恐らく
提督か他の誰かが何らかの方法で山城さんの
複製を作り出し、それに本来の山城さんの
記憶を植え付けたというのが、最も正当な
解答だと思われます。」
長門「そんなことが可能なのか?」
霧島「現に天馬君の世界では、皮膚細胞に特定の
4つの遺伝子を導入することで、さまざまな
細胞への分化が可能になった万能細胞、
人工多能性幹細胞、通称”iPS細胞”という
ものが存在します。
今はまだ実用化はされていませんが、
iPS細胞を利用して患者と同じ遺伝子を持つ
臓器を再生し、移植するということも
可能です。
その他にも、分子・DNA・細胞・生体などの
コピーを作るクローン技術など、人間の
複製を作ろうと思えば出来ないことも
ありません。」
神童「なるほど、コピーを作ろうと思えば
いくらでも出来るか・・・。」
天馬「山城さん、続けてください。」
戦艦棲姫「はい・・・。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~某日 無人島(棲地MI)~
ーー私は絶望した・・・。
提督は私のことなど綺麗に忘れ、もう一人の私と
結婚の約束までしていたことに・・・。
そしてその日の夜、私の中で、提督と扶桑姉様に
捨てられた悲しみと、私を捨てた提督と扶桑姉様に
対する恨みと憎しみの感情が蠢き始めた・・・。
山城「提督、扶桑姉様・・・。」
ーーそしたら、私の目の前にあの猛獣が現れた・・・。
猛獣『ソウダ・・・。
モット恨メ、モット憎メ!』
山城「っ!?
誰なの!?」
猛獣『オ前ヲ捨テタ者達ニ対シ、モットダ!!
己ノ身ヲ焼キ付クスホド、絶望ノ炎ヲ
タギラセルノダ!!』
山城「・・・扶桑姉様も提督も、私を捨てた・・・。
信じてたのに・・・。
うわああああああああああ!!」
ーー私の恨みと憎しみが頂点に達したとき、私の
体は黒いオーラに包まれた。
そしてオーラが消えたとき、私は姿を変え
戦艦棲姫になったの。
戦艦棲姫「こ、この姿は!?」
ーーそしたら、今度はあの猛獣とコードみたいな
物で繋がれた。
そして、私は本当の深海棲艦になったの。
猛獣『今コソ我トヒトツトナリ、オ前ヲ捨テタ
コノ世界ヲ滅ボスノダ。』
戦艦棲姫「消シテヤル・・・。
コノ世ニ生キル者達ヲ全テ!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
戦艦棲姫「そしてあなた達が棲地MIに来た
あの日まで、私は火山の中に封印されたの。」
天馬「そんなことが・・・。」
戦艦棲姫「今じゃ私、本当の孤独になっちゃった。
私にはもう、守るものなんてない・・・。
誰かのために命を掛けて戦っても、
私が居なくなれば、後々みんな私の
事なんか忘れてしまう・・・。
扶桑姉様も、私が一番愛していた提督も
代わりの私に満足していた・・・。
だから私には、守る人も、私が死んで
悲しんでくれる人も居ない・・・。
今の私は、本当の孤独なのよ・・・。」
戦艦棲姫は泣き出した。
天馬「戦艦棲姫・・・。」
すると、天馬が戦艦棲姫に手を差し伸べる。
戦艦棲姫「・・・何?」
天馬「よかったら、俺達の鎮守府に来ませんか?」
一同「ええっ!?」
その場にいた全員が驚きの声をあげた。
戦艦棲姫「でも、今の私は深海棲艦よ?」
天馬「そんなの関係ないです。
見た目や種族は違うけど、心があれば
たとえ人間でも深海棲艦でも、こうやって
話し合い、分かり合うことだって出来ます。
現に、あなたもこうやって自分の過去を俺達に
話してくれたじゃないですか。」
戦艦棲姫「・・・。」
天馬「俺、いつか人間と深海棲艦が互いに共存出来る
世界を作りたいと思ってるんです。
だから山城さん、あなたに手伝って
ほしいんです。
艦娘でもあり、深海棲艦でもあるあなたに。」
戦艦棲姫「天馬・・・。」
吹雪「私も、天馬君の理想の世界を作る
お手伝いしたいな。」
雪菜「私も。」
大和「私もです。」
長門「私も同じ意見だ。
もし、ここにいる戦艦棲姫と同じ経験をした
深海棲艦が他にも居るのなら、私はその者達と
共に生きる道を歩みたい。」
戦艦棲姫(見た目や種族は違うけど、心があれば
人間でも深海棲艦でも話し合い、
分かり合うことだって出来る・・・。
・・・もう一度だけ、信じてみようかしら
彼を・・・。
松風天馬の目指す理想の世界を・・・!)
このとき、戦艦棲姫は今まで忘れていた
笑顔を浮かべた。
戦艦棲姫「・・・わかったわ、これからはあなた達と
行動を共にするわ。
松風天馬、あなたの理想の世界を
実現するために。」
天馬「ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします、山城さん。」
戦艦棲姫「・・・マーズ。」
天馬「マーズ?」
マーズ「《マーズ・アレース》。
それが、戦艦棲姫なった私の名前よ・・・。
それと天馬、今後はタメ口でお願い。」
天馬「わかった・・・。
じゃあ、これからもよろしくね、マーズ!」
マーズ「ええっ!」
天馬とマーズは、固く握手を交わした。
いつの間にか空を被っていた雲は晴れ、青い空が
広がっていた。
天馬「さあみんな、帰ろう。
俺達の鎮守府に!」