プロローグ~再生~
ここはどこだ?私は誰だ?目を覚ませば自分は森の中をただひた歩いていた。
記憶が無い、何も思い出せない。
自分は一体何者?天に問うてみるか?と自嘲し見上げた彼の顔に水の一滴が落ちてくる。
雨だ。
(雨、雨だ、分かるぞ、雨は分かる。雨は天から降る水で、俺の足の下のは土で大地、今雨を避けようと駆け込んだのは木だ。)
彼は木に駆け込むともう一度天を仰ぎ見る。
雨雲は水を乾いた大地に授け、潤す。しかし、ゴロゴロと不機嫌そうな音もたてていた。
(何故だろう。不安になる、ここに居るのは不味い気がする。)
「あっちです!!あっちの洞窟に移ってください!!」
(!?何者だ!?何者かが私の背中の上にいる!!)
「いいから早く!!」
彼の直感もそれが正しいと告げる。
彼は再び雨の中に飛び出し、洞窟の中へと駆け移ったその直後の事であった。
閃光と爆音、咄嗟にしかめてしまった目に映るのは炎上しながら倒れ込む先程まで雨宿りしていた木だ。
(あれは落雷、雷だ。そして火、炎だ。あそこにいたら只ではすまなかったろう。)
「ギニャー………あんなん食らったら洒落になりませんなぁ。特に僕がですね。」
(さて、さっきから私の上でしゃべってるこいつはなんなんだ。振り落としてくれようか。)
彼が体をぶるんぶるん降ると背中のそれは上下左右へと振り回される。
「ギニャー!!止してくださいにゃ!!今姿をみせます!!」
そう言って彼の背中からストンと降り立ち、それは姿を見せるのであった。
(これは………ぬいぐるみ?いや、猫なのか?)
そこにいたのはまるでぬいぐるみのような質感の大きさ50センチあるかないかの小さな存在であった。ぬいぐるみのようなとは四肢と胴体の比率に対して頭の妙な大きさがそう思わせる。そして決定的に彼の知る猫と違う所は二本の後ろ足となるべきもので直立歩行している点である。
(お前は私の知識にある猫とは幾分か違うな。)
「その通りですにゃ!僕の名前はニャー!魂の籠もったぬいぐるみなのにゃぁ!」
そのニャーと名乗るぬいぐるみは、腰に手を当て小さな体の小さな胸をぐいっと張る。
「僕はあなたを、ダンナの事をサポートする為に生まれた存在なんです!」
(サポート?)
「ええ、ダンナは自分が誰なのか思い出せないでしょう?」
(む、その通りだ。自分が何者なのか?一体何故私はこんな状態で森の中にいるのか?知っているのか?お前は。)
「ええ、知っていますにゃ。知ってますとも。しかし、そのあたりの説明は雨が止んでからにしましょう。ダンナ、お疲れなんじゃないかにゃ?」
(………言われてみれば妙な疲労感が。)
先程までは混乱していて気づかなかったが、落ち着いてくると見る見るうちに凄まじい疲労感が彼を包み込んでいく。
(ぬう、なんだこの疲労感は。確かに命の危機ではあったが、こんなになる程は………)
彼が立てなくなりゆっくりとその場で座り込み寝そべってしまうと、ニャーも自分よりとても大きな彼の体に寄りそって目を閉じた。
「実は僕もなんですにゃ。幸いこの洞窟、獣の匂いはしません。雨が止むまで………休みましょう。」
(………分かった…話は後だ………)
ニャーの言葉に従い、彼もまた目を閉じて休息を取ることにするのだった。
~それから二日後の洞窟~
「これは………おい!ちょっと来てくれ!」
先日の雷が森に落ちたことにより、その火種がまだ残ってくすぶっていないか気にかけたその土地の領主は2人のメイジを雇い、雷が落ちた場所を調査をさせていた。
「なんだなんだ?こっちは水魔法ガンガンに使って働いてるのに、お前は…………おい、こいつぁ……」
雷が落ちた場所の付近には大きな足跡が残されていた。
「ああ、この足跡。三つの鋭い爪を持っている。熊なりなんなりの生物ではないな。」
「もしや、ドラゴンか!?」
相方に呼ばれてきた方は持っていた杖を先程より強く握り、周りを見渡し警戒する。
野生のドラゴン、ワイバーンや風竜ならともかく偶然飛来した火竜などであった場合は先述の二種より荒い気性を持ち合わせており尚且つ彼は火のブレスを吐く、下手に刺激すればとんでもない大火事になりかねない。そして、それ以上に命を落としかねない。
「いや、普通のドラゴンではない。」
「なにぃ?普通ではない?」
「この足跡は通常のドラゴンにしては妙だ。」
警戒していたメイジは相方と同様にドラゴンの物と思しき足跡を観察する。じっと観察しながら話していたメイジはその足跡に触れて話を続ける。
「通常、ドラゴンは四足歩行だ。だがコイツの向こうまで続く足跡をみてくれ。」
「む、四足にしては跡が少ない。それに………」
「うむ、ドラゴンにしては横幅が狭すぎる。一般的な体型のドラゴンではないな。そして極めつけはこれだな。」
そう言って足跡の窪みに手を合わせる。
「斜め向いているな。」
「そうだ、足跡が斜めを向いている。それも深く。普通のドラゴンも二足で立てるものはいるが、こんな風に強い脚力を持って地を駆けたりはしない。」
「二足歩行、通常のドラゴンよりかは細身、そして地を駆ける為の強靭な脚力…………ん?あれは?」
「どうした?」
辺りを見回していた方のメイジが何かに気づいた様だ。何かが足跡のそばに落ちている。
人間のそれより遥かに広い歩幅を持つ足跡にそって歩き、それを念の為レビテーションで浮遊させ取り上げる。
「これは……鱗か?」
「いよいよドラゴンと見て間違いなさそうだな。」
「ああ、可愛らしい野ウサギなんかじゃないな。しかし、そんな種類のドラゴンはいたか?」
その問いに対して一息ついた後、彼は答えた。
「いや、こんなドラゴンは聞いた事が無い。」
「俺達の想像通りのドラゴンなら、こいつは新種だ。」
まずプロローグを。
最初なので文字数少なめです。
次から少し増えます。