大地を駆ける~疾走する地竜~   作:アンゴラチャーハン

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火竜召喚~再会~

「すごいじゃないタバサ!」

 

ダンナとの契約を終えたタバサにキュルケが駆け寄る。

 

「竜を二頭も召喚するなんて!しかも片方は見たこともない種類よ!」

 

タバサとキュルケはもう一度召喚された竜達を見てみた。

 

青く美しく大きい体に立派な翼を持つ風竜、緑の頑強な鱗で身を包み背に鞍とその上に白目を向いてる不気味なぬいぐるみを乗せた竜。

 

「……鞍?」

 

キュルケが小首をかしげる。

 

「……ぬいぐるみ?」

 

タバサがぬいぐるみを手に取り観察する。

不思議なことに契約した彼と同じルーンがこのぬいぐるみにも刻まれている。

彼とワンセットなのだろうか?

 

「……う…うう…はっ!」

 

「…!!」

 

急にしゃべったぬいぐるみにタバサが驚き、ぬいぐるみを手から落とす。

 

「ぐえぇ……い、一体何がどうやら。」

 

(ニャーよ、大丈夫か?)

 

「あ、ダンナ。にゃにゃ!ダンナそのルーン!」

 

ニャーが気遣ってよせてくれたダンナの頭をよじ登ってルーンを確認する。

 

「にゃにゃ、契約したんですね!新しいご主人様と!にゃにゃ!僕のお腹にもダンナとお揃いのがあるにゃ!」

 

(うむ、そこの青い髪の子だ。)

 

「にゃにゃ、あなたが僕達の。」

 

キュルケとタバサはこの奇怪なぬいぐるみに困惑している。

 

「ミス・タバサ!怪我はありませんか!?」

 

そこへ生徒とその使い魔達を落ち着かせたコルベールがやってきた。

 

「……大丈夫。」

 

「そ、それはよかったです…すごい衝撃でしたから。」

 

コルベールは一息つくと顔を強ばらせる。

 

「しかしです、使い魔が二体出てくるというのは非常に特殊な事例です。確かにあなたの召喚に応じたぶんには契約しても構いませんが、ご覧なさい鞍をつけているではありませんか!もしどこかの貴族の所有しているものならば……」

 

「その辺は大丈夫ですにゃ!」

 

「え?」

 

まくしたてるコルベールにニャーがストップをかける。

 

「こ、これは?マジックアイテムですか?また奇っ怪な…」

 

「マジックアイテム……まあそれでいいにゃ。ともかくそのあたりは心配御無用ですにゃ。僕とダンナは他の貴族や平民の所有してるものでは無いんですにゃ。」

 

「…ダンナ…それは彼の名前?」

 

タバサの問いにダンナは頷く。

やはりダンナは人語をかなり理解できるようだ。

この後の彼の事を更に調べねば、タバサの心の中で彼への関心が高まる。

 

「……では、あなた方の事は後ほど誰かの竜とマジックアイテムでは無いか調べさせて頂いてもよろしいですか?」

 

「もちろんですにゃ。でも誰も……誰も僕達の事は知らないと思うにゃ。」

 

ニャーが少し悲しげなのに気づいたのはタバサとダンナだけだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「さて、それでは一段落つきましたので、次は……ミス・ツェルプストー、貴女ですよ。」

 

「はぁい、それじゃ行ってくるわ。」

 

タバサはそれに無言で頷き、キュルケを見送る。

 

「ふぅ……我が名はキュルケ。五つの力を司る…」

 

皆がキュルケの召喚を見守る中、タバサの召喚した風竜がダンナの側に近寄ってきた。

 

「きゅい…。」

 

なんだか少し恨めしそうにダンナを見ている気がする。

 

(……よろしく、お嬢さん。)

 

「きゅいぃぃ……。」

 

困った事に風竜はダンナに何か気にくわない所があったらしい。

 

「……どうしましょう、ダンナ。」

 

(…ニャーよ、あれを渡してきておくれ。)

 

そういうダンナはニャーが余分に採っておいてくれたカララギマンゴーを持たせ、風竜に渡した。

 

「お近づきのしるしにどうぞにゃ。」

 

「きゅ。」

 

風竜は匂いを嗅いだ後、口に入れる。

 

「きゅい…!」

 

どうやら気に入ってくれたようだ、とても美味しそうに食べている。

 

「きゅいきゅい。(なかなかおいしかったのね。)」

 

(気に入ってくれてよかったよ。改めてよろしく、お嬢さん。)

 

「きゅい。(子分ぐらいにしてやっていいのね。)」

 

(え。)

 

二頭と一体がそんな事をしているとなにやら辺りの生徒がざわつきはじめた。

 

 

「おい、あれを見ろ!召喚のゲートが!」

 

ダンナが目を向けるとそこには火花を散らしながら大きく広がっていくキュルケのつくったゲートがあった。

そしてその中から赤い甲殻に包まれた腕が出てきた。

 

「ぬぅぅぅ……はぁぁぁ……!!」

 

長くのびた首、長い尻尾、大きな翼、赤い甲殻で包まれた全身をゲートから外にさらしたそれは正に火竜であった。

そしてその脇にはサラマンダーが抱えられているが、このサラマンダーも尻尾の炎が美しく赤々と燃え、並みの個体で無い事を表している。

 

「す、すごい。またドラゴンだ…。」

 

感嘆する者。

 

「きゅいー♪(きゃー♪かっこいいおじさまなのねー♪)」

 

黄色い声をあげる者

 

「」

 

言葉の出ない者。

 

「ま、また二体……。」

 

対応の苦労を予想して抜け毛する者。

 

様々な反応をするものがいたが、召喚した本人以上に感動している者はいなかった。

 

「…美しい…。」

 

ただの火竜ではない、これはもっと別な何かだ。

より強い力を秘め、より多くの死線をくぐり抜けた猛者だ。

甲殻にはよく見ると無数の傷があるが、これは自らを練り上げてきた証拠。

そして傷をつけてきた物を毎回はるかに上回る力でねじ伏せたに違い無い……まさしくそれは……

 

「燃え盛る…何者にも抑えられない炎よ……!」

 

キュルケは先ず火竜の脇からするりと降りてきたサラマンダーと契約した。

 

「よろしくね。」

 

さあ、契約しようと火竜を見上げると火竜は自分では無い何かを凝視している。

視線を追うとそこにはタバサが先ほど召喚した竜がいた。

 

「ダ……ン…ナ…!」

 

「え?あ、あなた今喋って…?」

 

 

 

「ダ、ダンナ。あ、あいつ、まさか……!マ、マ、マ…!」

 

(マッカム……!そうだ奴はマッカム!)

 

ダンナはゆっくりと立ち上がり火竜の方へと歩く。

 

火竜もその様子を見てダンナの方へと歩く。

 

「会いたかったぜ……ダンナ…!」

 

(約束を今果たそう…!)

 

 

~~~~~~~

 

 

「いやあ、ダンナは強いモンスターですね。流石はあなたのモンスターです。」

 

「いや、マッカムも流石です。チャレンジ杯、それこれ挑んでみる価値がありました。」

 

ダンナのご主人がマッカムのブリーダーと互いに健闘を称えあっている。

 

「…。」

 

(…。)

 

だが闘った二頭は闘いの熱が未だに冷めてはいなかった。

 

「…おい、お前。明らかにてめえの実力はBランクなんかじゃねぇ。全力、出し切ってねえだろ。」

 

(…そちらこそBランクのチャレンジ杯に出張ってくるにはいささか過ぎた強さに思えたが?)

 

「ふん、ようやく加減せずに闘える相手だったからな。もう少し本気でやりたかったぐらいだ。」

 

二頭はにらみ合う。

 

(次の…)

 

「チャレンジ杯では…」

 

(お互い最初から全力だ…!)

「お互い最初から全力だ!」

 

「それまでに今より強くなっておけよ。それよりも遥かにおれは強くなる…!」

 

(お前の想像を超えてやろう。私の勝利という形でな。)

 

二頭はにやりと笑い、固く約束した。

 

~~~~~~~

 

 

「結局あの後からは闘えなかったなぁ。会えて嬉しいぜ。」

 

(タオルは用意しなくていいのか?早めに投げ込んでくれる人がいないとひどい目みるぞ?)

 

「抜かせ……。」

 

二人が近づく速度がどんどん遅くなってゆく。

 

「…!!こ、これは…」

 

様子を見守っていたコルベールの顔つきが変わり、同時に杖を抜く。

 

「…ダンナ!…ダメ……!止め……ッ!」

 

ダンナを止めようとしたタバサが言葉に詰まる。

 

超えた者にしか分からない、触れないと分からない、ぞっとしてからではもう遅い、二人を包む幾重もの『死線』

 

その中にいる二人の心は燃えながらも、冷えた頭で死線の中を分析しあう。

 

手札、切り方、かわし方、かわされ方、熱情

 

「ん?」

(ん?)

 

熱情……二人がそれを感じた方をみると、そこには魔法を使って飛び込んでくるキュルケがいた。

 

「我が名はキュルケ!五つの力を司るペンタゴンよ!」

 

そのままキュルケを見ているマッカムの顔へと抱きつき

 

「むご~!?」

 

呪文をいいあげて契約する。

 

「いきなりでごめんなさい。私はキュルケ、今日からあなたのご主人様よ。」

 

「むご~!!(契約は別にいいからどけ!!)」

 

「離さないわ!私あなた達のおかげで火がついちゃったんだもの!」

 

サラマンダーはご主人の発言にうんうんと嬉しそうに頷いている。

 

「むーむー!(あっこら!キスしまくるんじゃない!!あ、あぁ~!!)」

 

じたばたするうちにマッカムは先ほどのダンナの登場でできた溝に足をひっかけズシンと転んでしまった。

 

()

 

呆気にとられ無言でいるダンナ

 

「……。」

 

そこに無言で鞍の上にタバサが乗ってきた。

 

(…む?)

 

「お仕置き。」

 

彼女の持つ大きな杖で頭をゴツンと叩かれる。

 

(いて、いて、痛い、すまない、すまないタバサ。)

 

何度も叩かれるが、落ち着いてきて自分に非があるのも分かっているダンナは彼女を振り落とせずその場をくるくる回るだけだ。

 

「何やってんだかにゃ~……。」

 

「きゅい。(私も火竜のおじさまとお近づきになりたいのね。)」

 

呆れる使い魔と、のんきな使い魔。

 

「……私の順番まだ?」

 

待ち続ける少女。

 

「ああ、また厄介事の雰囲気が…。」

 

悩みの種が増え続ける教師。

 

こうして二頭の真剣勝負はしまらない形で延期となった。




「次の…」

(チャレンジ杯では…)

(お互い最初から全力だ…!)
「お互い最初から全力だ!」

二人は固く約束を…

「あ、ダンナ。次のチャレンジ杯までにはAランクになってるから、このチャレンジ杯には出れないよ。」

(え。)

「あ、マッカム。君をチャレンジ杯以外に出すつもりはないよ。」

「え。」

そもそも最初からしまらない感じで交わされた約束だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき

なんか今回はネタに走りたくなってしまった。
やっぱり印象深いモンスターは出したくなっちゃう。
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