魔法科高校の優等生〜鳴上悠編〜(仮)   作:枯葉183

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長くなった(汗)
一日一回はちょっと大変な今日此の頃。
でも楽しいからまた次も書いてしまおう(笑)

2015.5.14


入学編
第一話


「可笑しくは無い…か?」

 

鏡の前で変な所が無いかもう一度チェックし直す。

前の高校が学ランだったせいか、白やちょっと薄めの緑色といった制服は俺には物珍しく苦戦していた。

…まあ、この制服も着続けていれば違和感も無くなるだろうし。

まぁ良いか。と結論に至った時、ポーンとPCが立ち上がった様な機械音の後、リビングのテレビ画面に男性が映る。

 

「おや、着替えの途中だったのかな?失礼した」

 

「いいえ、丁度終わった所なんで問題は無いです」

 

「そうか。なら、改めて…おはよう悠くん。入学おめでとう」

 

「ありがとうございます。風間さんも、今日もお勤めご苦労様です」

 

この画面に映っている人、風間さんは、この世界の陸軍少佐で俺が此方の世界に来た際にとてもお世話になった人だ。

実を言うと身寄りの無い俺の保証人になってくれたり、マンションを手配してくれたのは風間さんで、俺とっては三人目の父親の様な存在な人だ。

 

「君を配慮して兄妹(かれら)の隣のマンションにしてみたんだが、問題は無いかい?」

 

「ええ、全く。たまに妹の方が料理を習いに来る位ですよ」

 

「そうか、楽しそうで何よりだ。しかし、目的は忘れ無い様にな」

 

「大丈夫です。その為に此方側に来た事は忘れていませんから」

 

なら、大丈夫だな。と風間さんは微笑んだ。

俺も笑みを返せば、風間さんからそろそろ時間だな。と声が上がった。

 

「じゃあ悠くん。あの兄妹の事、頼んだぞ」

 

「はい」

 

バチンっ、とテレビ画面が消える様な音と共に俺はマーガレットから貰った黒の腕輪型CADと軍から支給された警棒を足へ付け、タロットカードケースを胸ポケットに、ついでに黒縁眼鏡もポケットに差し込む。

一通り済んだ事でマンションから出ると、心地いい風が通り抜けた。

マンションはオートロック式だから、鍵の心配はしなくても平気だ。

 

通りに出て、腕輪型のCADを発動させる。

この動作も最初は覚束ない位だったけれど、流石に慣れた。

CADにペルソナの能力を付け足し、手をかざす事で内部でアルカナカードを四散させ、飛び散ったアルカナカードの破片をあたかも想子(サイオン)が構築されている様に見せかける。

この方法を思い付いたのは、実はイゴールだったりする。

現に俺はこの世界でCADが無くてもペルソナ能力を発動させる事が出来るが、問題は人の目だ。

イザナギが出て来た時点でパニックになるのは目に見えている…いや、実を言うと既にあった事(・・・・・・)なのだが、これは別の機会にでも話そう。

 

CADからペルソナ能力、"スクカジャ"を発動させ身体に纏う。

一歩走り出せば、面白い位にスピードが上がる。

初めてこの能力を発動させ、車と並走した時は驚いてコケそうになった事もあったっけ?

 

「…と、あいつ(・・・)待たせたら無言の圧力が多くなるな」

 

仏頂面の少し幼い顔を思い出しながら、俺は速度を速めて行った。

 

 

*****

 

 

「ーーーっ、これは…」

 

正に圧巻。

その言葉が合う場所だった。

俺が通っていた八十神高校も田舎にしては広い方だと思ったが、この場所は規格外だ。

 

暫く校舎にボーっと見惚れていたが、ふと校門近くに植えられている桜並木道に誘われ、ペルソナ能力を解除しゆっくりと歩き始める。

桜の花弁にまかれながら、行きたい場所へと足を運ぶ。

途中何回かプリントを持った生徒とすれ違ったが、恐らく入学式の役員か何かだろう。

しかし、生徒達とは何回かすれ違うのにも関わらず大人…つまり先生の姿が見えない。

やはり、ここが特別な高校だからだろうか…と、俯いた時だった。

 

急に肩を掴まれたと思ったら、自然に百八十度方向転換をさせられ、目の前に見知った鉄仮面が少々表情を崩した顔を見て、思わずクスリと小さな笑みが溢れた。

 

「おはよう達也。まだ入学式まで時間あるぞ?」

 

「おはよう、悠。…入学総代が深雪だから早く来たんだ。それより気を付けた方が良い、もうちょっとで桜の木にぶつかる所だ」

 

達也に言われ、背後を振り返って見ると桜の木までおよそ1メートルといった所で達也に止められたらしい。

随分と考え混んでいたものだ。

 

「あぁ…悪い、全く気がつかなかった」

 

「お前、オレより歳上だろう?」

 

「うん、ぶつかりそうになっても達也が止めてくれるから大丈夫だよ」

 

「…オレが居ない時はどうする気なんだ」

 

「その時は、その時だ」

 

俺の言葉に、達也は仕方がないな。と言わんばかりに小さく溜息をついて小さく苦笑いした。

名は司波達也。本名は四葉達也。

俺がこの世界に渡って少し過ぎた頃に出会った青年。

初めて会った時はまだ少年だったけれど、彼此三年も付き合っていて、実は俺のマンションのお隣さんだ。

まぁ、隣と言っても達也の家は一軒家なのだが。

 

「それより悠、CADを学内で常時携帯して良いのは生徒会役員と、特定の委員会メンバーだけだが…」

 

「あぁ、実は別件でね。使用許可の書類を既に発送済みだから問題ないよ」

 

「…別件?」

 

「そう、…達也の上司の指示」

 

俺が小声で話せば、達也は成る程、と納得した様に頷いた。

結構トップシークレットの会話だが、周りに人の気配も無いし、大丈夫だろう。

 

その後は近くのベンチで時間が来るまでゆったりと達也との話に夢中になった。

話している間に何時も思うのは、達也は頭が良く俺が抜けている部分を上手く補ってくれているから。

 

ーー…ねぇ、今の子ウィード(・・・・)じゃない?

ーー…なんでブルーム(・・・・)の子と一緒に居るんだろう?

 

聞こえて来た声に思わずピクリと反応した。

俺たちを横切ったであろう二人の女子生徒が身を寄せ合いながら、クスクスと小声で笑い声を奏でつつ通り過ぎて行く。

 

ーー…こんなに早く登校してる

ーー…補欠(・・・)が、張り切っちゃって…

ーー…唯のスペアなのにね〜…

ーー…ねぇ、あのブルーム(・・・・)の子絡まれたんじゃない?

ーー…えっ、じゃあ助けた方が良いのかな?

 

…どの世界でもああいう人間は居るんだなと、溜息を吐けば先程の女子生徒達に聞こえる様に声を張り上げた。

 

「結構です。俺は好きでこの子といるので」

 

俺の声が聞こえたのだろう。

女子生徒達は驚いた様に此方を振り向き、まるで信じられないという様な表情の後、黙って歩き去ってしまった。

と、何か固いもので頭を軽く叩かれたが、誰がやったのかは分かっていたから俺は小さく笑いかける。

 

「達也、携帯端末をそうやって使っていいのか?」

 

「これはちょっとや、そっとで壊れないから心配ない。それより今の発言が噂になったら…」

 

「俺は好きでお前と居るんだ、それじゃダメか?」

 

「駄目…ではないが、……ーー…」

 

そう言い、黙ってしまった達也にちょっと言い方がズルかったかなと思いつつも、丁度良い場所にあった彼の頭をゆっくりと撫でる。

 

「俺は正直な人間だから、したい様にしただけだ。…気にしなくて良いぞ」

 

「ーー…貴方はズルい人だ…」

 

彼の言葉に俺はクスリと笑みをこぼした後、堂々と笑って答える。

 

ーーああ、知ってるよ。と…

 

その後ベンチに座り直し、また携帯端末を開いた彼を横目に俺は視線を彼の肩へ、そして自分の左胸へと視線を落とした。

俺の世界にも差別というものは存在するが、この世界では根本的な事から差別と言うものがある。

 

その一つとして、魔法教育に平等という言葉は存在しない。

 

左胸に八枚花弁のエンブレムを持つ一科生ーー《花冠(ブルーム)

エンブレムを持たない二科生ーー《雑草(ウィード)

 

俺にはあって、彼にはないそのエンブレムは入学試験の成績で定員二百名が真っ二つに振り分けられる。

魔法実技の個別指導を受けられるのは一科生のみ。

一科生が全員ノルマ通りに進学できるなら、二科生は不要。

でもそこはただでさえ危険な魔法教育、事故も当然起きるものだ。

事故のトラウマで魔法が使えず、退学する生徒も存在する。

二科生はその穴埋め要員でしかない。

 

世知辛い世の中…いや、人の考え方が固いのか…。

 

《ーー後、三十分です》

 

思考を停止するかの様に、彼の携帯端末がピピッと小さな音を立て時間を教える。

そろそろ会場へ向かった方が良いだろうと、彼と共にベンチから立ち上がると、桜の花弁と共にフワリと目の前に清楚なスカートとストールが舞い上がった。

何時からいたのだろう?

そこにはエンブレム付きの制服を着た髪の長いふんわりとした雰囲気を持つ女子生徒が佇んでいた。

…一科生の先輩だろうか?

彼女は俺達を交互に見つめ、微笑む。

 

「新入生ですね?そろそろ会場に向かった方が良いですよ」

 

「すいません、すぐに行きまーー!?」

 

突然人には分からないくらいの反応で息を呑む彼に、俺は首をかしげると、彼が視線を向けた女子生徒へと視線を移せば、その女子生徒の腕に光る銀色のCADを見つけた。

 

常時CADを携帯できるのは、生徒会役員か特定の委員会メンバー…成る程、達也が息を呑んだのはこれが原因か。

 

黙ったままの俺と達也に彼女は首を傾げた後、何か思いついたかの様にまた微笑んだ。

 

「あっ、まだ名乗っていませんでしたね。ごめんなさい…私は第一高校生徒会長、七草真由美です。七草(ななくさ)と書いて、七草(さえぐさ)と読みます」

 

宜しくね?と茶目っ気たっぷりにウィンクまでした彼女に思わず微笑み返したが、達也の表情は未だに真顔のままで、思わず苦笑いが溢れそうになった。

 

数字付き(ナンバーズ)

魔法能力と言うものは遺伝子的素質に左右されると、前達也に教わったっけ?

つまり魔法の素質は家系が大きな意味を持つ…と。

この世界…まぁ、この国でも良いのだが、魔法に優れた血を持つ家は数字を含んだ苗字を持っていて、通称"数字付き(ナンバーズ)"と呼ばれる。

その中でも七草家は最有力と見なされている家の一つだ。

 

「お…いえ、自分は司波達也です。で、こっちが…」

 

「鳴上悠です、初めまして」

 

彼に続いて俺も自己紹介をすると、右手を差し出す。

彼女は微笑みながら、俺の手を握り返し、軽く上下に振った後ゆっくりと離した。

 

「司波達也くんに、鳴上悠くんね?…ん?司波達也…え!?あなたがあの司波くん!?」

 

彼の名前を聞いた途端彼女は瞳をキラキラと輝かせながら、達也にズイッと近付いた。

ちょ、達也の奴あせってるな。

少し笑えると思ったのは俺だけの秘密だ。

 

「入試七強化平均96点!!特に受験者平均が60点台だった魔法理論と魔法工学で満点を取った、あの司波達也くん!!」

 

「…流石達也だな、俺の先生引き受ける位だからかなり頭良いとは思ってたけど、まさかそんなに凄いとは」

 

「…ペーパーテストの成績だ、悠。それにここは魔法科高校。どんなに点数が良くても…」

 

実技がからきしで、この通り。と、エンブレムの無い肩を指差すと彼女はううん。と首を振り微笑んだ。

 

「少なくとも、私にはこんな高得点は取れない。すごいわ!」

 

彼女の言葉に一瞬達也の動きが止まった。

そしてそのまま俯くと、時間ですので失礼します。と驚いた七草先輩をそのままに会場へ行ってしまった。

 

おーい、俺を忘れてるぞ〜!

 

あ、そういえば俺も何回か彼の地雷に触れて、避けられた時期があったっけか?

俺達はもう毎日接点があったから、達也もそれなりに慣れていたんだと思うけれど、いきなり初対面の人からあんな正面切って褒められるのは久しぶりだったろうから、びっくりしたのと、苦手意識が、また再発したんだろうな…多分。

 

まだ驚いて固まっている彼女の隣に立つ。

 

「気にしないで下さいね、七草先輩。達也は褒められ慣れて無いんであんな態度を取ってしまった訳です。…まぁ、つまりは照れ屋ですね」

 

「私、彼になんかしたんじゃ無いかって一瞬思っちゃったわ」

 

「鉄仮面が彼の標準装備みたいなものなんで。…じゃ、俺も行きますね」

 

「あ、待って鳴上くん。入学おめでとう、私は貴方方を歓迎します」

 

楽しい学園生活を。と彼女は微笑んだ。

俺もつられる様に微笑み、礼を言うと会場に入って行った彼を追いかけながら、俺もその場を後にした。

 

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