魔法少女リリカルなのは 天使とスケベの輪舞   作:ロシアよ永遠に

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ドーモ、ドクシャ・ノ・ミナ=さん、ロシアよ永遠に、です。
シリアス路線が直進中の本編。
それが横道に逸れてコラボを書いてみました。
基本、ギャグになれば良いな、と思っていたりもします。
時系列はSts地点。本編のキャラも出しているので、繋がるように制作予定です。
あまり長くは連載しないかもですが、良かったら読んでください。


Mission1『それはきっとアブノーマル』

もう慣れたようで、そうでないような…。そんな基地から昔を懐かしむように見上げた空は、とても澄み切った青だった。

風を切って、それを肌で感じ、散歩を楽しむにはもってこい。

以前こういった日は、侍女達に弁当を作らせ、馬に跨がり、近くの山へとピクニックによく行ったものだった。足の不自由な妹と、ちょっとアレだけど、一応兄に当たる人と、そして最愛の両親と自然の空気を満喫していた。

 

 

だけど、それも今は遠い昔のように思える。

 

臨めば手に入った生活から一変。

囚人のような暮らしに落ち、奉仕と言わんばかりに死と隣り合わせの戦いに赴く日々。

最初は嫌だった。

地獄だった。

帰りたいとも思った。

でも、以前自分の周囲にいた連中が、話の通じないブタ共と解ってからは吹っ切れた。

だから、彼女は戦った。

 

殺して、生きるために。

 

壊して、生きるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラスト・リベルタス

 

調律者と呼ばれる男を討ち、時空融合という目論見を阻止する反攻作戦。

その決着は、数多の次元世界の狭間で行われるという、壮絶な物となる。

相手は調律者と呼ばれるだけあり、様々な超常現象を引き起こす。

機体の制御を奪われ、同士討ちを狙われ、生身で戦えば瞬間転移で虚を突く。

しかし、その力も遂には人の力、そして意思の前に瓦解する。

 

『私を抱こうなど…一千万年早いわぁぁぁぁぁっ!!!!!!』

 

ディスコードフェイザーにより大破した黒い機体の胴体に穿たれる剣戟は、赤い軌跡を残し、調律者の断末魔と共に爆散。

かくして時空融合は阻止され、彼女の戦いは終わったかのように思えた…。

 

しかし…

 

99%を超える融合率にまで達した二つの次元、二つの地球。そんな超常現象が、再び元の鞘に戻るのに何も起きないはずはなかった。

時空レベルで引き寄せられた地球が引き離される。その間に出来る空間。平行世界を隔てる時空の切れ目。開いた扉のように、龍が顎を開いて獲物を飲み込まんとするように大きく開く。漆黒のそれは、まるで引力の塊。ブラックホールとも言えるようなおぞましさすらあった。

 

「制御が…効かない…!?」

 

アクセルペダルを踏もうも、コントロールスティックを動かそうにも、うんともすんとも言わない。機体の稼働力が引力に負けているのか?ギチギチと関節が嫌な音を立てながらも、暴力的なまでに吸い込む次元の切れ目に引き寄せられていく。

 

「いけません!このままではあの穴に吸い込まれて…!」

 

「これが奴の最後の悪あがきか…!お……!おわぁぁぁっ!!」

 

狭間に浮かぶ大地で、調律者の半身と戦っていた青年は、真っ先に切れ目に引き寄せられていく。

 

「チキショウ…!勝ったってのに!!」

 

「くっ!ヒルダ!」

 

真紅の機は狭間の大地にしがみつき、青の機体は近くにいた赤の機体と共に転移で引力から何とか逃れる。この狭間の大地は、このような超空間に存在するからか、機体を以てしてしがみつけば何とか逃れられるようにある。

だが白銀の機が男の機体を屠る為に突出していたのがマズかった。

転移用の形態になろうにも、計器がフリーズしたかのように反応しない。

 

「最後まで…!あんな変態趣味な奴に振り回されて…たまるかぁ!!」

 

飲み込まれる瞬間、指輪が光ったのを最後に、意識も機体も、そして自身の身体も。闇へと飲み込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっとした散歩のついでに拾い物をしてしまった。

そんな通信がヒカリから、機動六課の隊長メンバーに入れられた。

時は10月。

JS事件から約1か月。はやては立て直された隊舎を感慨深げに見上ている時だった。

 

「拾い物?」

 

内容に際しては、医務室に来られたし、と付け加えられていたので、何とはなしに気になるはやては、そのままエントランスを抜けて医務室を目指す。

 

「主はやて。」

 

凛々しく呼び止める声が聞こえた。十字路ところで

右側からよく知る人物2人。

 

「シグナムにヴィータ、そっちも向かうところか?」

 

「あぁ、アイゼン達のメンテをしてたらアレが来たからさ、連れ立っていくとこだよ。」

 

「如月が、またなにやら拾ってきたようで。…今度は何なのでしょうか?」

 

また、という言葉に、はやては苦笑を禁じ得ない。以前は確か怪我をした絶滅寸前の鳥を偶々拾ってきて、周囲をいたく驚かせたのは記憶に新しい。その前は、白い雷を放つ鹿のような動物の治療をするために連れて戻ってきていた。後から調べたら、幻獣と呼ばれる太古より生きる幻の生き物だったとか。

…運が良いのか何なのか。

そんな彼女の拾い癖にはある意味危機感すら覚えるものだが。

 

はた、と医務室前のドアの前で、残りの隊長2人と合流した。

 

「はやてちゃん、ヒカリちゃんがまた…!」

 

「皆まで言わんでもえぇ…うん。」

 

嗚呼…どうしてこうなるのか?半ばヤケクソになりながらも、なのはの言葉に応える。

それはまぁ、動物保護はえぇ事やし?反対はせぇへんよ?せやけどここは動物を確保する部隊やなくて、ロストロギアを確保する部隊や。本末転倒や。

保護してからしばらく、清掃のオバちゃんに、羽とか、体毛とか、う○こが廊下に点々と落ちていたことに対する苦情には頭を抱えた。

 

「とりあえず…中に入らない?今回こそは…まともと思おうよ。」

 

「そやな…腹括ろか。」

 

フェイトの発案に、意を決して一歩踏み出す。機械による自動オープンのドアは、はやての生体反応に呼応して、それを解放した。薬品さながらの独特の匂いが鼻腔を刺激する。清潔感溢れる白を基調とした、床や壁、天井。その奥にはカーテンで仕切られたいくつかのベッドスペース。一つを除いてカーテンが閉まっていたので、容易に場所が特定できた。

恐る恐る、まるで、中に物の怪が入っているのが解っている葛籠を開くようにして、カーテンを開いた。

ベッドに横たわっていたのは、まるで姫とも思しき風貌を持った少女。

肩口で切りそろえられた金髪は美しく、見るだけでもきめの細かさが解る。

規則的な呼吸をしながら目を閉じているところを見るに、寝ているだけのようだ。

 

「あ、皆、来てくれたんだ?」

 

「…ヒカリちゃん、動物ばっかりやったらまだ解るけど…とうとう人間拾てきたか…」

 

「あぁ、偶々近くをジョギングで通りかかった私も、運ぶというとばっちりを受けたがな。」

 

ベッドの両脇にいたヒカリとハル。少々不機嫌さが感じられるハルは、面会用の丸椅子に座り、腕と足を組んで座っていた。

 

「森林地帯に倒れていたのを2人で運んできたんだ。軽い擦り傷とかもあったけど、たぶん倒れたときに付いたんじゃないかな。」

 

「この人の身元とかは?」

 

「その辺の身分証明の類いは全然…。ただ、左脇腹にこんな物があったんだ。」

 

神妙な面持ちで、ヒカリはサイドテーブルの上にあった黒い、大雑把に形を言えばL字型の、ゴツゴツしたそれを手に取る。ここにいる皆が、その物体が何なのか見ただけで理解できた。

 

「…拳銃…、質量兵器、だね。」

 

「うん、念のためにマガジンを見てみたけど、やっぱり19㎜パラベラムだったよ。…銃自体もベレッタM92Fなんだけど、…細部が違うようにも見えるんだ。まず、銃身が持ち運びしやすいようにか、コスト軽減か分からないけど、限界まで切り詰めてる。あと、グリップとトリガーの材質が…」

 

「ちょっ!待て待て!アタシらにも分かるように説明しろよ!お前の趣味の世界にトリップできねーって!」

 

「むぅ…仕方ないなぁ…。つまり、あくまでも想像だけど、この銃は取り回しとかそう言うのを突き詰めて、威力とか耐久性は二の次になってるって事なの。」

 

「つ、つまり…?」

 

「サブアーム、つまり緊急時用ってこと。」

 

話の内容から、メインウェポンの存在があると言うことだ。軍隊とか、それ用のゲームとかを見ていると、大抵メインウェポンにはアサルトライフルやマシンガンなどが挙げられる。しかし、それが見当たらないと言うことは、もしかしたらこの世界にそう言った類いの物が転がり込んでいるかもしれない危険性を孕んでいた。

 

「…で、この人の着ている物がまた…」

 

「何よ…五月蠅いわね…!…また発情してんの、タスク…」

 

目をこすりながら、体を起こす件の女性。

 

メロンが二つ。

 

それがありありと分かる物を着ていた。

裸、ではないが、胸の谷間を強調するかのような、ライダースーツにも似た物を着用していたのだ。

 

「しかもヘソ出し…。」

 

いろんな意味合いでスゴいインパクトだった。目の前にこんな逸材がいては、部隊長も目を光らせる。

 

「はやて…少し自重しようよ。」

 

「登山家は言うんや。何故山に登るか?それは目の前に山があるからや。ほなら何故揉むか?そこにパイオツがあるからや。」

 

色々とアウトなこの二等陸佐は放っておくとしよう。

 

「…は?何なのよこの状況…」

 

「ご、ごめんね。いきなり目の前にこんな状況じゃ、ビックリするよね。」

 

目を丸くする女性に、謝り通すフェイト。そんな彼女はともかくとして、未だに狙いを外さないはやてには白い目を向けている。

 

「話を戻そう。…貴官の名は?」

 

「…人の名を聞くときは、まず自分から名乗るものじゃないの?」

 

変わらずも未だに目つきから鋭さが抜けきらない。

彼女にとっては、意図してかどうかは知らないが場を和やかにするために目の前で繰り広げられているコレが、茶番以外何物でもないかのように感じているのだろう、警戒心は高い。

 

「コレは失礼した。私はハル・エルトリア二等陸尉。特別捜査官でもある。」

 

「ボクはヒカリ・如月。階級は同じくだけど、空尉になるんだ。で、そこで虎視眈々と狙ってるのが、八神はやて二等陸佐。一応、ここの部隊長…なんだよね。」

 

順を追って、フェイト、なのは、シグナム、ヴィータが名乗り出る。

 

「…さ、名乗ったのだから、そろそろそちらも名を明かしてはどうだ?」

 

「そうね、ここで言わないと、フェアじゃないわ。そう言うの、好きじゃないし…。」

 

ここで初めて、女性が僅かながら…少し皮肉ったような笑みを浮かべた。警戒が少しは緩んだ、と思って良いのだろうか。

 

「私は…アンジュ。…アンジュよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…異世界?」

 

「そうや、アンジュの話を聞いとったら、どうもそうとしか考えられへんのよ。」

 

一通りアンジュと名乗った女性から真新しい記憶を話して貰うことが出来た。

1,DRAGONと呼ばれる敵対生物と戦っていたこと

2,その敵対する理由となる大本のシステムを作った男との決戦

3,次元の切れ目に巻き込まれたこと

4,出身世界…もとい、出身惑星は地球であること

簡潔に纏めるとこうなる。

そして至った結論が、先のはやての発言だ。

 

「ただ言うなれば、異世界…というよりはパラレルワールド、他には時間逆行、とも取れる…かな?」

 

「は?」

 

「何を隠そう、私となのはちゃん、ヒカリちゃんが地球出身や。せやけど、DRAGONなんて聞いたことないし。」

 

「じゃ、じゃあ、ノーマは?マナは?パラメイルは?」

 

当てが外れた。地球出身と言う言葉を聞いて、ようやく戻れると思った。しかし、待っていたのはそれを否定する言葉。さらにはアンジュが出した言語に首を傾げられる。

 

「なんだ?その…マナやノーマとか…パラメイルって。」

 

トドメになった。あの地球で、パラメイルはともかく、ノーマやマナに対しては一般教育課程の知識として根底を成すような物。知らないとなると、いよいよを以て希望が失われていく。

 

「な、何でもないわ…。ハァ……本当に知らない地球なのね。…認めたくは、ないけど…。」

 

大きなため息をして、先程の希望が失われたことを実感する。

異世界

そんな言葉が脳裏に焼き付いて真新しい。

少なくとも、アンジュはこれで3つの地球の存在を認知するに至った。

アルゼナルがある地球。

サラマンディーネがいる地球。

ここの人間が言う地球。

最後の1つに関しては、実際に見てはいないので眉唾に近いが、時間逆行とも取れれば、時を経てどちらかの地球になり得るかもしれない。

しかし、あれだけの生活の変化を成そうと思えば、数十年、数百年掛かるかもしれない。

片やマナを基盤とした、ノーマを隔離する社会。

片や荒廃した地球に適応するために、本来の人間の姿を変える世界。

どちらもおいそれと変わるような物ではない。

 

「まぁそう絶望することないで。時空管理局…、つまりは次元世界の平和維持を目的とした組織やからね。せやから次元渡航技術も確立してあるんよ?」

 

「そ、それって…!」

 

「そう。帰ることが出来る可能性はあるって事だよ。」

 

一変して、アンジュの胸に希望がこみ上げてくる。

帰れるかもしれない。

あの儚くも美しい、絶望の世界に…。

会えるかもしれない。

アルゼナルの皆。サラ子…それに…

 

(って私のバカ!なんでこんな時にあの万年発情期な奴を思い浮かべてんのよ!)

 

あの青年。タスクを思い浮かべる。

ヴィルキスの、アンジュの騎士だ。

そう言って側にいて支えてくれた男。

 

「あれ?アンジュ、なんだか顔が赤くなってない?」

 

「は!?ん、んなわけないでしょ!?」

 

「帰れるかもと分かったとたんコレだからな…、もしや想い人でも故郷n…」

 

「いいいいいいるわけ無いじゃない!」

 

顔を真っ赤にし、全力否定。ただそのリアクションだけで、確信に至るには十分すぎる。

 

「嘘かどうか、試してみよか?」

 

「はぁっ!?」

 

はやては妖艶な笑みを浮かべる。

そして、その場にいる誰もが思った。よからぬ事を考えている、と。

アンジュの側にそっと寄りそうと、彼女の真っ赤な双眼をじっと見つめる。

 

「な、なによ…!?」

 

じ~~…。

 

心なしかすこしずつ顔が近付いてきてないか?

 

気のせいではない!

 

「ちょっ!何するつもりなのよ…!?」

 

じぃ~…。

 

ひっ!?

 

思わず悲鳴を挙げ、頬に、背中に嫌な汗が伝う。

ぎゅっと目を閉じ、顔を背ける。

このままでは唇がぁぁぁぁっ!!

 

ペロリ…

 

「ひゃぁぁぁぁぁっ!?!?」

 

ぞわぞわっと鳥肌が立ったかのような感触に包まれた。

素っ頓狂な悲鳴。

実際にやられたことは、頬を、ひいてはそこを伝う汗を舐められたことである。

 

「こいつは!………………ウソをついてる『味』やで…アンジュ!」

 

「ヒィィィィィッ!?」

 

元の世界にいたときのアンジュを知る人物がここにいたなら、今の彼女をどう思うだろう?あの傍若無人さとイタさがウリのアンジュが、再三、いじられて悲鳴を挙げさせられている。こんな現状、明日は世界が滅びるのではないかと錯覚してしまいそうだ。

 

「はやてちゃん…、五部のネタはいいから。」

 

「いや~、一辺やってみたかったんやコレ!」

 

ケラケラ笑うはやてに、アンジュは恐怖を、他は呆れを隠せない。

飛ばされて救助して貰ったまではいいが、一縷の不安を拭いきれずにいるアンジュだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一応、ハンドガンは帰るときまで没収。質量兵器の禁止の法令を説明し、渋々ながらも納得したアンジュは、流石にあのスーツが余りにも刺激的すぎるので、なのはの私服を借りることになった。

女性だらけのアルゼナルにいたとはいえ、やはり普段着として使用するにも抵抗はある。だからと言って、超が付くくらいミニのアルゼナル支給制服も、街中を歩く分には問題がある。

 

「デザインは…気に入るかどうか分からないけど。」

 

ついでを言えば、下着も借りることとなっている。パイロットスーツ下は、下着の着用は基本的にしないので、アウローラに置いてきたままなのだ。

少し仏頂面ながらも、パイロットスーツを脱いで、下着の着用に取りかかる。

 

「…ちょっといい?」

 

「ん?なぁに?もしかして、他の色の方が良かったかな?」

 

花柄の付いた上下おそろいの下着。所有者のなのはもそこそこ気に入っているデザインの物。それを気に入るかと思って出したし、もし何ならあげても構わない腹積もりだった。下着くらいなら買えば良いし。

でも、デザイン好みは人それぞれだ。それが嫌なら別の物を…と、下着入れの引き出しを開けるために振り返ったときだった。

 

「もう少し、大きいカップのはないの?」

 

ピシッ…と、なのはの中で何かがひび割れる。

 

「デザインは悪くないんだけど、ホックが止まらないのよ。…どうした物かしら…。」

 

手を背に回し、ぎゅうぎゅうとブラを押しつけながら、何とかホックを止めようと奮戦するアンジュ。豊満な胸に、なのはのブラが締め付け、何ともいやらしく感じる。

そんな自分の、しかもお気に入りのブラが、まるでコルセットのように締め上げを目的としているような扱いをされているのに、なのははショックを受ける。つまり、プロポーションで、聞けば16の少女に負けていること。そしてそれが紛れもない事実に。

 

「あは…あははは…。」

 

遠い目になり、乾いた笑いを浮かべる。

 

「ジャ、ジャアふぇいとチャンノヲカリヨッカ…。タブン、ふぇいとチャンノナラさいずガアウトオモウナ…」

 

壊れたブリキ人形のように、まるでギギギ…と間接が軋む音が聞こえてきそうな、そんな空耳がありそうな動きで、部屋の外に待つ友人を呼びに行く。

ハイライトを失った目をした彼女に、一瞬ギョッとしたものだが、優しく抱き締めて頭を撫でる。

ひとしきり撫でた後、苦笑してフェイトがなのはと入れ替わりで入室してくる。

 

「ごめんね、アンジュ。」

 

「いや、なんであんな風になったかはわかんないけど。とにかく下着を貸して。このままじゃ落ち着かないわ。」

 

なのはのブラのストラップを肩にかけたまま、ちょっと不機嫌なご様子だ。フェイトも適当に自分のブラを渡すと、それを難なく着用する。

 

「どうかな?キツかったり、大きかったりはない?」

 

「そうね、まぁ悪くはないわ。」

 

見事なまでにジャストフィット。自分に合わせてオーダーメイドしたのかと一瞬思ってしまった。

合わせて渡された紺のジーンズと、白のブラウス、青のカーディガンを着込むと、違和感なく着こなしていた。

 

「それじゃ、御飯でも食べに行こうか。丁度今お昼時だから。」

 

「…そうね。思えば少し空腹感があるかも。でもこの世界のキャッシュ、私持ってないわよ?」

 

「その辺りはまぁ、はやてが予算を回してくれるって。」

 

「はやて…、あぁ、あの狸っぽい…ね」

 

出会って間もない相手にまで狸呼ばわりされるなどと、どこまで狸らしさが前面にでているのだろう?

昔からの付き合いだから、自分たちが気付いていないだけなのだろうか?

苦笑しながらもフェイトはアンジュを連れて、部屋を出る。

 

「なのは、終わったよ…?」

 

扉をくぐって廊下に出れば、壁を背にして座り込む親友の姿。膝を抱え、そこに顔を埋めるように落ち込んでいるように見える。

その傍ら、慰めるように、ブロンドでオッドアイの少女が頭を撫でている。

シュール。

アンジュの頭に浮かんだ言葉はそれだった。

 

「だいじょーぶ、なのはママは、ばりぼーでないすばでぃだよ」

 

少女―ヴィヴィオ―はそう言葉を掛けながら、なのはを慰め続ける。

娘に何を言わせて慰めさせてるんだ?

フェイトは内心、疑問符を浮かべる。

 

「ほら、なのは。ヴィヴィオが心配してるんだから、そろそろ立ち直らないと、ママとしての威厳がなくなっちゃうよ?」

 

「ちょっと……赤ん坊とかならともかく、こんな大きい子が娘って…何歳で産んだのよ?」

 

小声でボソッとフェイトに尋ねてみる。

なのははギリギリ未成年。

ヴィヴィオは見たところ6歳ほど。

どう考えても出産年齢を鑑みれば、相手は犯罪者である。

 

「ヴィヴィオ…あぁ、この子はね、なのはの養子になるかもしれない子なんだ。ちょっとした事件で保護してね。そのままなのはに懐いて…。それで私が後見人なの。」

 

「ふ~ん…。」

 

子供と母親、か…。

ほんの少し、昔が懐かしく感じた。

母が当たり前にいてくれた日々。

16になったあの日から…母はもういない。

…家族すらいない。

兄は父を処刑して皇帝位についたし、妹からは化け物と罵倒され。

ノーマという存在として生きると決めたあの時に踏ん切りを付けたはずなのに、未だ母からの愛を求める自分。

 

「アンジュ…?」

 

「…なによ?」

 

「大丈夫?なんか…寂しそうにしていたけど…。」

 

「バ…!んな訳ないでしょ?」

 

このフェイトという女、どうにも人の気持ちを見透かしたように…。

あながち間違いとも言えない自分の気持ちを言い当てられ、アンジュは少し驚きつつも、平常心を装う。

 

「ま、見ず知らずの所に飛ばされるのは3回目だし。もうそろそろ慣れなきゃって思ってたくらいよ。」

 

強がりの皮肉めいた笑いを浮かべながら、アンジュは進んでいく。

一度目はアルゼナル。

二度目はサラマンディーネの世界。

三度目は全く見ず知らずの世界…ミッドチルダ、と。

どうしてこうもまぁあちこちに飛ばされるのが多いのか。

退屈はしないが、勘弁して欲しいものだ。

 

立ち去るアンジュを、フェイトはじっと見ていた。あの寂しそうな目はよく知っている。

孤独感。

10年前、他人から見た自分なら、あんな目をしていたのだろう。

元の世界に帰るときまで、右も左も分からないという、計り知れない不安。彼女にとって救いになるかは分からないが、治安課に問い合わせたところ、アンジュは六課預かりとなった。

御都合主義、と言えばそれまでだが、それでもある程度盥回しにされるよりは良いかもしれない。

 

…と、立ち去ったはずのアンジュが再び戻ってきた。

 

「ど、どうしたの?」

 

「…………ぃょ…。」

 

ボソボソと蚊が鳴くような声でアンジュはいう。その視線は逸らし、少し頬を染めて俯いている。

 

「き…聞こえないんだけど…。」

 

「だ、だから…食堂まで案内してって言ってるのよ!私、ここの構造とか配置、知らないんだから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇティア。」

 

皿一杯ドカ盛りのペペロンチーノを啜りながら、青毛のボーイッシュな少女―スバル―がふと口と手を止めて左隣に座る相方に尋ねる。

 

「またヒカリさんが拾い物したんだって。結構部隊の中で騒ぎになってるよ。」

 

相方たる橙色の髪をツインテールにした少女―ティアナ―は目の前のニンニクとオリーブオイルたっぷりの麺類を見ながら、胸焼けするのを抑えつつ、自身のグラタンを片付けている。

 

「…らしいわね。あの人も物好きな人だから。今度は何を拾ったんだか…。」

 

とりあえずヒカリの物拾いは置いといて、スバル、あんたそれを食べ終わったら口臭ケアしなきゃぶっ飛ばすわよ、とティアナは心中で怒鳴っておく。

こちらはようやく半分と言ったところだが、その割合に比例するように目の前の山は消化されている。どんなペースでかき込んでいるのだろう。毎度の事ながら不思議な物だ。質量保存の法則も何もあったものじゃない。

 

「自然保護隊の人達は喜んでましたよ。なんだか泣いてたくらい。」

 

「まだ滅んでなかったーって、泣いたよね。あぁ言うのを男泣きって言うのかな?エリオ君。」

 

知らないよ、と苦笑しながら返す、癖のある赤毛の少年―エリオ―は、スバルほどではないが、キノコソースの掛かった大盛りのオムライスを口に運ぶ。

エリオの右隣に座る、桃色セミロングの少女―キャロ―はビーフシチューを啜りながら、付け合わせのサラダに入っているブロッコリーを、相方の白い竜―フリードリヒ―に与えている。

 

「まぁ、何にしても問題にならなきゃさえ良いんだけど。」

 

「そうだねぇ…この前の白い角がついた鹿?みたいなのに、ティアってばお気に入りのパンツを引っかけられて走ってたもん。」

 

タブー。

禁句。

そんな言葉がこの世には存在する。

言ってはならない。

それがルール。

そう。

それは禁断の果実。

それを囓ったアダムとイヴが、エデンから追放されたように。

禁忌を破る物には、制裁を与えられると言うのが世の理だ。

 

「ス~バ~ル~………!!」

 

左隣に般若がいた。

ゆらり揺らめくツインテールは、海中で波の流れに揺れるワカメのよう。

目元は陰で分からないが、感じるのだ。

オーラを。

プレッシャーを。

何よりも第六感が告げる『嫌な予感』を。

 

「ティ…ティア…!?ご、ゴメン!ゴメンなさい!わ、悪気はないんだよぅ!だ、だから…」

 

「やかましいっ!!!」

 

立ち上がりじりじり後退するスバルを、ティアナは逃さない。

中腰になってスバルの腹に頭からタックル。おふっ!と、スバルが変な悲鳴を挙げるが無視。そのまま両手を彼女の背中に回しウェストをホールド。スバルを掴んだ腕を中心にして背後に回り込む。左足をスバルの同じく左足にフック。相手の右脇に体を潜り込ませ、自身の両手をスバルの首を経由してホールド。そしてそのまま背筋をゆっくり伸ばしていく。

 

「あぁっと!ここでランスター選手!相手に見事なコ・ブ・ラ!ツイストー!関節をこれでもかと決められ、脱出は絶望的かァァァァッ!?!?」

 

「キ、キャロ!?どこでそんな知識を…!?」

 

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いィィィィ!!!!!ティア!ギブギブウゥゥゥ!!!ミシミシ変な音がするゥゥゥゥッ!?!?」

 

極上のコブラツイストを極めるティアナ、彼女に必死でタップするスバル、なぜか解説もとい実況をどこからか取り出したマイクで行うキャロ、それにツッコむエリオ。

食堂のこの一部がカオスと化す。誰も制止しない。

 

ひとしきり間接の悲鳴を浴びせた後、スバルを解放すると、前のめりに倒れて、冷たい床と熱い抱擁を交わす。どこかでゴングが3つ鳴った、という幻聴を、その場にいた誰もが聞いたとかなんとか。

 

「じゃれ合うのも良いけど、食堂でプロレスごっこは止めとけよ。せっかくのランチに埃が入るだろが。」

 

カレーをトレイにのせて運ぶヴィータと、それに沿い歩く狼形態のザフィーラ。フォワード4人が座る席の隣に座ってカレーを口に運び始める。

 

「す、すいませんヴィータ副隊長。」

 

「ま、ティアナが例の件に関してある程度のトラウマがあるのは知ってるからな。迂闊に口にしたスバルにも責がねぇとは言わねぇさ。ただよ、そー言うのは部屋でやってくれ。暴れてる近くで喰いたいなんて誰も思わねぇからな。」

 

「は、はい…」

 

シュン、となるティアナの正当性をある程度認めつつも、窘める所はしっかり窘める。幼い身なれど尊敬されるのは、一重にヴィータの人柄と面倒見の良さが一因となっているのだろう。

 

「まぁ、安心しろ。ヒカリの奴が拾ってきたのはもっと面白いもんだからな。」

 

「「「「余計に安心できません。」」」」

 

異口同音。復活したスバルまでもが口をそろえていた。

いたずら小僧が悪戯を思い浮かべたかのような含み笑いを浮かべるヴィータ。こういったことに関しては見た目相応だ。良く言えば、公私の分別が出来ている、とも言える。

 

「…ふぅん。結構賑わってるじゃない?」

 

食堂の入り口から現れるのは件の人物、アンジュだ。きめの細かい肩口で切り揃えられた金髪。ぱっちりとした勝ち気そうなワインレッドの瞳。そしてその抜群のプロポーションが見るものの目を、特に男性の目を惹き付ける。

 

「をぉっ!?なんだあの美人は!?」

 

スナイパーに返り咲く男、ヴァイスである。食べ終わった鯖味噌定食のトレイを下膳する途中で、その場に立ち止まってアンジュに目を奪われている。

 

「フェイトさん…?いやでも、髪を切ったなんて知らないし、しかも今勤務中だし…。」

 

「でも、フェイトさんの外出着じゃない?あれ… 」

 

フェイトをよく知る2人は、アンジュに対しての疑問符を浮かべ続ける。そんな怪奇の視線を知らぬとばかりにきょろきょろと食堂の中に視線を巡らせる。まるで、初めて来た街で目的の店を探すかのように。

 

「お嬢さん、何かお探しですか?何でしたら、このヴァイス・グランセニックにっとぉ!?」

 

軟派をしかけようとしたのか、どや顔自信満々にアンジュへ近寄るヴァイス。

しかし誰が置いたのか、足下に転がる醤油差し。

それを支給されるブーツで思いっきり踏んづけた。

ゴムの靴底のそれは、見事に醤油差しを足裏で転がし、ヴァイスを飛ばせた。

地面と平行になる体躯。

…あぁ…これが…跳ぶって事か…!

飛んでいる割には足も曲がり、不格好この上ないのだが。

飛ぶ先に迫るのは、来訪者アンジュのその胸。

こ、このままではいろいろ社会的にマズいのでは!?

この勢いなら間違いなく相手を押し倒して、世間の男共が羨み嫉妬する、『ラッキースケベ』になってしまう。

あぁ、このままではあの豊満な胸にダイブしてしまう。

しかし、

 

それで、

 

社会的に、

 

抹殺されても、

 

 

 

 

本望ッッッ!!!!

 

 

 

 

全てを諦観し、そのままユートピアに包まれようとするヴァイス。

 

しかし、

 

アンジュは腰を落とし、迫り来るヴァイスの手を掴み、反転して右肩に乗っけると、そのまま前屈みに。飛び込んだ勢いそのままに、アンジュを支点として豪快にヴァイスの体が縦回転する。びたーん!という破裂音にも似た音が、彼の身体が背中から叩き付けられると同時に食堂を支配した。

 

ヴァイスの手を離して、まるでやり遂げたと言わんばかりに手をぱんぱんと叩く。

 

「悪いけど、このテのラッキースケベには慣れてるの。……不本意だけど。」

 

途端、大歓声が食堂を支配した。目の前で咄嗟に極められた背負い投げ。その綺麗なフォームと、ヴァイスの背から放たれた快音。それに皆が感動を覚えた。

 

「……誰だよ、醤油差しなんて床に置いてたのは…」

 

そして、1人床に大の字になって転がるヴァイスの言葉は、アンジュへの喝采で打ち消され、誰の耳にも届かなかった。




次回予告

アンジュ「戦い終わって辿り着いたのは、右も左も女女女!アルゼナルかと思うような場所!見掛けた男と言えば、ちみっこと、あとラッキースケベっぽい男!…でもあいつの声、どっかで聞いたことあるんだけど何処でだったかしら?
え?他にも男が居たはずだって?…モブキャラのことは目に入らないのよ!」

ザフィーラ「テオアァァァァァァァっ!!!」

アンジュ「うるさいポチ!おすわり!!」
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