~IS~最強と天災の幸せ物語   作:五段AB

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(^_−)−☆ Σ(゚д゚lll)

(挨拶などは長くなるので後書きでさせていただきますm(_ _)m)


小話〜未来編(後)〜

 

龍美が教科書を閉じたのと、ほぼ同時に授業終了のチャイムが鳴る。

 

「みんなお疲れ様、それと今日やったところはちゃんと復習するんだよ? なにか質問があったら職員室まで来てね」

 

龍美は荷物をまとめ教室を出ようとするが、もちろん生徒達はそれをただ見送ることはしない。 それもそのはず、いつも見慣れている人物が、突然幼くなったら誰だって気になるだろう。 生徒達が、龍美に声をかけようと立った瞬間教室のドアが開く。

 

「全員席に座れ。 それと、次の授業まで自分の席で待機だ」

 

千冬は教室につかつかと入ってくると、なんとも理不尽な事を言いながら、龍美の腕を掴み連れて行く。

 

「ち、千冬ちゃん?」

 

龍美はよくわからないまま教室の外に連れて行かれる。 残された生徒達は千冬の睨みに威圧され任務を遂行する事に全力を注ぐのだった。

 

千冬は屋上に着いてやっと龍美の腕を離す。

 

「兄さん、どうして授業をされていたんですか?」

 

千冬は龍美に向き直りながら言った。

 

「こっちの僕に頼まれたからかな、それよりも、話し方が堅くない?」

 

「公私混同しないためです、それでどのようにして頼まれたのですか?」

 

「手紙でなんだけど・・・やっぱり普通に話そうよ・・・お願い」

 

千冬はしばらく黙っていたが、やがてため息を吐き、

 

「わかったからそんな顔しないでくれ」

 

いつもの話し方に戻ると龍美は安心したのか、ほっと息を吐く。 そこである事に気づく、

 

「そもそも、【今】の僕は年下なんだから堅くなる必要ないよね?」

 

千冬はそうえばと、ふっと笑う。

 

「それで、手紙なんだけど「ちょっと待ってくれ」えっ?」

 

龍美が手紙を出そうとするのを、千冬は止め屋上への入り口に眼を向けると、

 

「隠れてないで出てこい馬鹿ども」

 

するとドアが開き、一夏と箒が出てくる。 しかし、千冬は不思議そうな顔をする。

 

「隠れてたのはお前達だけか?」

 

一夏と箒は首を縦に振る。

 

「・・・も来ると思ったんだがな」

 

千冬が顎に手をあて考えていると、

 

「なんで、たつ兄がこっちにいるんだ? 千冬姉?」

 

瞬間、一夏の頭に出席簿という名の鈍器が直撃する。

 

「うぐっ!」

 

一夏は普段出さないような声をあげ、頭を押さえる。

 

「織斑先生だ」

 

千冬は腕を組みながら言う。 龍美は一夏の頭をよしよしと、撫でる。 しかし、急に龍美は手を退ける。 一夏は不思議に思い顔を上げると、

 

「僕のことわかる!? シャロだよ!? お兄ちゃん!」

 

龍美の両肩を掴み、勢いよく揺さぶっているシャルロットがいた。

 

「ちょ、っと、まっ・・・うっぷ」

 

「しゃ、シャル! それ以上はたつ兄が危ないから!」

 

シャルロットは一夏に言われ、はっと気づき手を離す。 しばらくして、落ち着いた龍美はシャルロットを見る。

 

「あの・・・初めまして?」

 

「っ・・・」

 

シャルロットは顔を俯かせ、必死に涙を堪える。 そんな、シャルロットを見て、千冬は、ため息を吐き、

 

「デュノア・・・おまえ勘違いしてないか?」

 

「へっ?」

 

「ここにいるのは、十年前の兄さんだぞ?」

 

「え、えっと・・・」

 

シャルロットの様子を見た、千冬は額に手を当てまた、ため息を吐く。

 

「おまえは十年前に兄さんに会ったのか?」

 

「会ってないですけど・・・あ!」

 

千冬はやっとわかったかと、ため息を吐く。 しかし、

 

「けっきょく・・・どういうことなんだ?」

 

一夏、一人だけ理解していなかった。

 

「一夏・・・おまえには課題を用意しておく」

 

「えぇ!? なんでだよ千冬姉!?」

 

またもや、一夏の頭に出席簿振り下ろされる。

 

龍美、箒、シャルロットは苦笑いを浮かべるのだった。

 

 

「改めまして、フランス代表候補生、シャルロット・デュノアです」

 

「桜井 龍美です」

 

シャルロットは右手を差し出す。 龍美も握手をしようと、手を握った瞬間いきなり引っ張られ、抱きしめられる。

 

「えっ?」

 

シャルロットはそのまま龍美の頬にキスをした。 ちなみに左右両方ともに。

 

「えっ?」

 

龍美はみるみる顔を赤く染めていく。

 

「な、なにをするんですか!? デュノアさん!」

 

龍美は、必死にシャルロットから離れようとするが、がっちりと抱きつかれているため動けない。

 

「もう、デュノアさんだなんて畏まらなくていいよ? いつもみたいに、シャロって呼んで?」

 

そんなやり取りを見ていた、一夏と箒は顔を青くさせる。

 

『『こ、こんな光景を千冬(さん)姉が見たら・・・』』

 

二人は、ゆっくりと振り返り千冬を見る。 しかし、千冬は特に気にする素振りもせず、腕を組んで目を閉じていた。 一夏と箒は首を傾げる。

 

ーーーーーー!

 

「ん?」

 

一夏は何か聞こえたような気がして、周りを見渡す。 しかし、龍美たち以外は誰もいない。

 

ーーーーーーー!

 

やはり何か聞こえると辺りを見回す。

 

「どうかしたのか?」

 

「なんか聞こえないか?」

 

箒も一夏と同じように辺りを見回す。

 

ーーーーーさ!

 

・・・聞こえる。 ぶっちゃけ聞こえて欲しくない声が、聞こえた気がしたとゆっくり顔を上げる。 最初は黒い点だったのが、だんだんと大きくなりやがて人型になる。 ついでに、うさ耳らしき物も見える。

 

「いつまで抱きついてるのさ!」

 

束が凄い勢いで落下しながら言う。 ちなみに、落下予測地点は龍美の真上だったり・・・が束は大きく方向を変える。 正確に言うなら強制的に変えられた。 千冬が思いっきり蹴り上げたのだ。 束は同じ軌道を描いて飛んでいった。

 

「さ、さすがにやり過ぎじゃないか? 千冬姉」

 

「さすがの束さんでも、死ぬ三京歩手前だったよ」

 

一夏の隣でうんうんと頷く束。

 

「うん? えっ!? なっ、なんでここに束さんが!?」

 

一夏がワンテンポ遅れて驚く。 束は呑気にやあと手をあげる。

 

「さすが、いっくん!いいツッコミだね!って、いい加減離れなよ!」

 

束が龍美とシャルロットを引き離し、そのまま流れるように龍美を抱きしめる。 抱きしめられた龍美は、もう抵抗する力もなくぐったりとしている。束が龍美を堪能していると、

 

「それで、兄さんを元の時間に戻す方法はわかったのか?」

 

千冬が腕を組んで聞く。

 

「こっちでもニンジンメイデンを使えばいけるぜい!」

 

束ぐっとサムズアップする。

 

「そうか・・・ん? 束、お前まさか・・」

 

「いや〜実は造り方忘れちゃった・・・てへっ☆」

 

千冬はアイアンクローを束に極める。

 

「うぎゃぁぁぁぁ! ちょ、ちょっと待って! 三日! ・・・い、一日半で造るから!」

 

千冬は束を解放する。 束は地面に突っ伏し呻いている。

 

「整備室の一部を開放する。 そこで造ってもらうぞ束。 だが、おまえ専用の整備室にするために数時間かかる」

 

「え〜その間、束さんってば暇人じゃ〜ん・・・たつ兄は、なにして待ってるの?」

 

いつの間にか復活した束は、立っているのがやっとの龍美に聞く。

 

「え? うーん僕は頼まれたから授業を続けたいけど・・・いいかな? 千冬ちゃん」

 

「本来なら許可はできないが、正直なところ、私たち教師陣も兄さんが抜けた穴を埋めるのに手一杯でな、さっき教えていたクラスだけ頼みたい」

 

「ありがとう千冬ちゃん!」

 

「ほうほう、たつ兄は授業をするのか〜・・・そうだ! 私も、たつ兄の授業受ける!」

 

束はまた龍美を抱きしめようと手を伸ばすが、龍美を捕まえることができなかった。 千冬が引き寄せ抱きしめたからだ。

 

「・・・お前さっき私が言ったことを理解したのか? わざわざ、お前専用にするのも騒ぎを避けるためなんだぞ?」

 

「あ、あの千冬ちゃん? 僕を抱きしめる必要ある?」

 

「大丈夫、大丈夫! ちゃんと変装するからさ!」

 

にこにこ笑っている束を、訝しげに見ていた千冬だが抱きしめている龍美を思い出し見てみると、

 

「み、見ないで・・・恥ずかしぃ・・・」

 

耳まで真っ赤にした龍美が必死に顔を隠そうとしていた。

 

『『『・・・ぐはっ!』』』

 

『千冬、束、シャルロットに一万のダメージ、シャルロットは倒れた』

 

「シャ、シャルロットー!」

 

箒はシャルロットを抱きしめ、天に向かって叫ぶのだった。

 

 

 

「だいたいの話は纏まったが、一番重要なことが残ってるな」

 

千冬は腕を組み眉間にしわを寄せる。

 

「一番重要なことってなんだ?」

 

一夏は首を傾げる。 ちなみに、シャルロットは龍美に膝枕をされ、どこか嬉しそうに眠っている。

 

「兄さんが寝泊まりする部屋をどうするかだ」

 

「え? 普通に、こっちのたつ兄の部屋でいいんじゃないのか?」

 

千冬は首を振る。

 

「重要な書類が置かれてるからな、私の部屋も同じようにに無理だ」

 

「じゃあ、俺の部屋でいいんじゃないか?」

 

「学園の女子が知ったら部屋に押しかけるだろ、お前に女子達が捌けるか?」

 

「あー・・・」

 

一夏は明後日の方を見る。

 

「じゃあ! 束さんのラボにおいでよ! くーちゃんも会いたがってたしさ!」

 

「なにを言ってるんだ束? お前も今日からここに泊まるんだ」

 

「・・・へ?」

 

束には珍しく口をぽかんと開ける。

 

「も、もしかして・・・たつ兄と相部「私の部屋だ」なぬ!? ちーちゃんと相部屋!? 今夜は寝かさないぜー!」

 

束は千冬に飛びかかるが一発でKOされる。 倒れた束を千冬は肩に担ぐ。

 

「篠ノ之はデュノアを保健室まで連れって行ってくれ。 織斑と兄さんは私の部屋に来てくれ」

 

ひとまず、屋上での事件は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

場所は変わって千冬の部屋なのだが、

 

「「「・・・」」」

 

「な、なんだ?」

 

「千冬ちゃん、さすがにこれは・・・」

 

「たしか、三日前に千冬姉がどうしてもって言うから掃除したよな・・・」

 

「束さんでもこの状況は作り出せないよ・・・」

 

龍美たちは惨状を目の当たりにし、それぞれ思ったことが口から出てしまう。

 

「し、仕方ないだろ、物が多いのに加え、部屋を掃除する時間が無いんだ。 それに、何処になにがあるかは、把握しているから問題ないだろ」

 

「いやいや、それでもこれは酷いだろ・・・せめて、下着ぐらいは片付けをさ・・・」

 

一夏が指をさしながら言うと、千冬は目にも留まらぬ速さで、散らばっていた全ての下着を回収する。

 

「何処に下着があるって? いたっ!」

 

千冬が少し自慢気に笑っているところに、龍美が軽くチョップをする。

 

「そんな、子どもみたいなことしてないで掃除始めるよ?」

 

龍美に言われ、千冬はしぶしぶ掃除を始める。 それを見ていた束と一夏は、

 

「世界中探しても、ちーちゃんにチョップができるのはたつ兄だけだろうね・・・」

 

「改めて、たつ兄の凄さを知った気がする・・・」

 

 

龍美や一夏の協力もあり、数時間で元の綺麗な部屋に戻った。

 

「さて、たつ兄の部屋のことだが・・・」

 

「僕は、一夏くんの部屋がいいと思うんだけど」

 

「しかし、さっきも言ったが「数分あれば束さんがトラップ設置できるよ?」・・・あまりやり過ぎるなよ」

 

「おっけ〜」

 

「とりあえず、俺の部屋に行こうぜ」

 

龍美たちは、一夏の部屋に移動する。 ちなみに、千冬は授業があるとのことで学園に戻っていき、一夏は特例ということで、案内を任されたのだった。

 

「俺は窓際のベッド使ってるから、たつ兄はこっちのベッドで寝てくれ」

 

一通り、部屋の中の説明を終え、一夏と龍美は学園に行き案内を続けるのだった。

 

 

 

 

 

時刻は午後六時、龍美たちは食堂に来ていた。

 

「俺が持って行くから、席とっておいてくれ」

 

龍美は窓際の席を取り、一夏を待つ。

 

「お待たせ〜、ほい、たつ兄の分な」

 

「ありがとう・・・ってこれはなに?」

 

一夏から渡されたのは、普通のとんかつ定食なのだが量がかなり多かった。

 

「ん? とんかつ定食だけど?」

 

「量が多くない?」

 

「いや〜たつ兄お腹空いてるかなと思ってさ」

 

「逆に一夏くんの少なくない?」

 

「俺はあんまり夜は食べないからさ、それじゃいただきます!」

 

一夏は食べ始める。 しばらく、山盛りの定食を見ていた龍美も、ゆっくりだが箸を動かし始めるが・・・

 

 

 

 

「うっぷ・・・」

 

「だ、大丈夫か?たつ兄」

 

山盛りの定食を、なんとか食べきった龍美は、一夏に肩を貸してもらい部屋に帰れたのだが、

 

「く、苦しい」

 

ベットに入り丸まっていた。

 

「備え付けのシャワーならいつでも使っていいから、今は寝ちゃった方がいいかもな。 とりあえず、胃薬用意したから飲んでくれ」

 

龍美は礼を言い、薬を飲み布団にくるまる。

 

「おやすみ、たつ兄、ってもう寝てる!?」

 

龍美は既に寝息を立ていた。

 

「いろいろあったもんな、さて! 俺はシャワー浴びて寝るかな」

 

一夏は脱衣所への扉をそっと閉めた。

 

 

 

 

 

時刻は朝の五時、龍美はベットから起き上がり、脱衣所へ向かいシャワーを浴びる。 脱衣所から出ると、一夏は、まだ寝息を立ていた。 龍美は、来た時に着ていた服に着替え、そっと部屋を出る。 そのまま食堂に行くと既に、おばちゃんたちが慌ただしく働いていた。

 

「おはようございます」

 

「おはよう、今日も早いわねぇ〜あ、食材なら用意しといたから好きに使っていいわよ」

 

「ありがとうございます」

 

龍美は、卵を茹でたり野菜を洗ったりと、手際よく調理していく。 パンにマヨネーズを塗り、野菜やハムを詰めていく。 卵はマヨネーズ、胡椒、少量の辛子を入れて混ぜ、パンに挟む。

 

「ふう、これぐらいで足りるかな」

 

龍美は作ったサンドイッチを、バスケットに詰めていく。

 

「キッチンと食材、使わせていただいてありがとうございました。 それと、何処か静かで落ち着ける場所って、ありますか?」

 

「はいよ、ご苦労様。 落ち着ける場所ねぇ・・・あ!学園の裏手に森が広がってるでしょ! 少し歩くと木漏れ日が綺麗〜なとこがあるのよ!」

 

「学園の裏ですね、ありがとうございます」

 

龍美は、バスケットを持ち行こうとすると、

 

「これも持って行きなさい」

 

「え? に、人参ですか?」

 

龍美はおばちゃんから、人参を数本渡される。 龍美は首を傾げながらも、ちゃんと人参をしまい食堂を出て行った。

 

「ふう・・・まったく、うさちゃんたら世話がやけるわね」

 

「うさちゃんも、恋する乙女なんだから仕方ないわよ」

 

おばちゃんたちは、会話に花を咲かせながらもしっかりと、仕事をこなすのだった。

 

 

龍美が森の中をしばらく歩いていると、開けた場所にでる。 そこは、龍美が想像していたより、ずっと綺麗な場所だった。 そんな中、一点だけ、まるでスポットライトに照らされているかのように明るかった。 自然と足はそこに向かって動いていく。 日の光の中に入り、周りを見渡す。 しかし、ある一点から目が離せなくなる。 龍美は、何度も瞬きをしたり、目を擦ったりしたがそれは、居なくならなかった。 そこには、一頭の白馬が立っていた。 馬は、龍美と目が会うと、ゆっくりとこちらに近づいてくる。 龍美と同じように馬は光の中に入る。 しばらくの間、龍美と馬は見つめ合う。

 

『どうしてだろう・・・不思議と怖くない』

 

龍美はゆっくり手を伸ばし、そっと鼻筋を撫でる。 馬は目を細め「ブルルル」と低い声で鳴く。 龍美自身も、こんなに馬に近づき撫でるのが初めてなので、結構喜んでたりする。 そんな光景を遠くから見ている、人物に気づくこともなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たつ兄が森に入っていくのを、確認した私は、一定の距離を保ちながら後をつけていく。おばちゃん達に頼んで、この場所に誘導してもらったのだ。 今も昔も、おばちゃん達には感謝しても仕切れないね。 しばらくして、開けた場所に出る。 あ、ペーちゃんそのままだけど・・・平気だよね? ゆっくりと顔を上げると私は目を奪われた。 その光景は例えるならまるで、

 

「印象派の画家が描いた絵のようだ・・・か?」

 

「さすがだね、ちーちゃん。 けどもっと詳しく言うならモネが描いただね!」

 

「・・・おまえにしては詳しいな」

 

お、ちーちゃんが珍しい顔をしてるこれはレアだね! 脳内メモリーに保存完了〜!

 

「たつ兄が好きだからね」

 

「ああ、なるほど」

 

ちーちゃんは納得したような顔をする。 それにしても、

 

「随分朝早くない?」

 

「誰かさんが、一晩中キーボードを叩いていたからな」

 

「あ、あはは」

 

今まで、呆れた顔をしていたちーちゃんが、すっと真剣な顔になる。

 

「・・・行くのか?」

 

「・・・うん」

 

「こっちの兄さんに聞いても変わらないと思うが・・・」

 

「それでもだよ・・・それでも私は聞かなきゃいけない」

 

「そうか・・・まあ、心配なんて微塵もしてないがな」

 

「え〜少しはしてよ〜」

 

「いいからさっさと行ってこい!」

 

一見怒っているように見えても、実は照れ隠しなのだ! ちーちゃん可愛い! ・・・さて、私も覚悟を決めないとね。 私はたつ兄に向かって歩き出す。

 

「やっほー! 奇遇だね〜たつ兄!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍美が、馬を撫でていると、束が手を振って歩いて来た。

 

「おはよう束ちゃん」

 

龍美は馬を撫でる手を止め、束に目を向ける。 そして、じーっと、見始める。 最初は首を傾げていた束だが、次第にもじもじとし始める。 そして、

 

「束ちゃん、徹夜したでしょ」

 

あまりにも予想外のことを言われ、束はしばらくかたまる。

 

「うぇぇ!? な、なんでわかったの!?」

 

束はちゃんと隈を隠し、ボサボサになった髪なども整えて来たのに、なぜばれてしまったのか、わからなかった。

 

「うーん、実は昔から束ちゃんは徹夜したりすると、くせに出ちゃうんだよね」

 

「くせ?」

 

束は今の自分の体を見回す。 特にいつもと変わっているところはない。

 

「髪をね、耳にかけるんだ」

 

龍美に言われ、手で触ってみると、確かに耳にかかっていた。

 

「いや〜、作業に没頭したら朝になっててさぁ〜」

 

束は、観念したように頭を掻く。 そして、すっと顔を引き締める。

 

「ここからは、少し真面目な話なんだ」

 

束の言葉を聞き、龍美も顔を引き締める。

 

「たつ兄はさ・・・この世界の現状を知りたい?」

 

龍美は、いまいち要領を得なかったが、頷いて返す。

 

「こっちでの記憶が無くなるとしても?」

 

束は、龍美の反応を見る前に、先を話し始める。

 

「現状を知るってことは、良くも悪くも未来のことを知るってこと。過去に戻ったときに、自分が望むような未来を迎えるために、立ち回ることもできちゃうんだ。未来を知ってるからね。 例えば、競馬でどの馬が勝つとか、どこどこで運命的な出会いをする、とかね。 だから、記憶を消さなきゃいけないんだ」

 

束は、いつものおちゃらけた感じではなく、真面目に話す。

 

「それでも・・・知りたい?」

 

「知りたい」

 

「えっ?」

 

束は呆気にとられた。 間髪を入れずに、龍美が言ったからだ。

 

「き、記憶が無くなっちゃうんだよ? こっちであった、楽しいことも、嬉しいことも」

 

「それでも・・・僕は知りたい」

 

束はしばらくの間迷っていたが、ゆっくりと話し始める。

 

「今、世界の中心になっているのは、インフィニット・ストラトス 通称【IS】、簡単に言うとパーワード・スーツかな・・・各国がISの開発に力を入れてより強いISを・・・兵器を造ろうと躍起になってる。 そしてここはIS学園、名前の通り、ISの操縦者や、技術者を育成するとこだよ。 もう知ってると思うけど、たつ兄とちーちゃんは、ここで教師として働いてる。 ISが有名になったのはね・・・とある事件があったからなんだ、詳しいことは省くけどね」

 

束は一旦そこで言葉を切りまた話し出す。

 

「ISを作ったのは私なんだ・・・そのせいで、たつ兄やちーちゃんを、今もISという枷で縛り続けてる・・・きっとこれから先もずっと・・・いろいろ省いたけど、これが世界の現状」

 

束は話し終えると、悲痛に顔を歪める。 束の話を黙って聞いた龍美は、疑問に思ったことを問う。

 

「束ちゃん、それって本当に束ちゃんが作ったの?」

 

最初、束は何を言われているか、わからなかった。 むしろ自分が、嘘をついているのではないか、自分では、そんなもの作れないのではないか、と言われているようで、胸が張り裂けそうになる。 しかし、次の一言で、その全てが吹き飛んだ。

 

「だって、束ちゃんが、面白くないものを作るはずないよ」

 

束は、数分固まった後、声をあげて笑った。 なぜあんなに、気合いを入れ、覚悟を決め、そして心配していたのか。 まったく馬鹿らしい。 なにも、心配することなんてなかった。 束は笑い続ける、涙がこぼれないように。 ひとしきり笑い、落ち着いた束は、憑き物が落ちたように、晴れやかな顔で言った。

 

「たつ兄は、やっぱりたつ兄だね! さてさて、束さんが徹夜で直した【ニンジンくんα】で過去に帰ろう!」

 

「あれ? 【ニンジンメイデン】じゃなかったっけ?」

 

「え? うーん・・・忘れちゃった! はいはい! 中に入ってね〜」

 

龍美は束に背を押され中に入る。

 

「それじゃあね! あっちに戻ったら、ちーちゃんと私をよろしく頼むよ!」

 

束は扉を閉めボタンを押す。 ドアの隙間から煙が放出する。 暫くして、その煙も止まり成功したことを伝える、音が鳴った。

 

「無事・・・帰ったみたいだな」

 

千冬が後ろから歩いてくる。

 

「うん、もう少し話したかったけどね」

 

「記憶は?」

 

「大丈夫だよ。 送り返すときに、消えるようになってる」

 

「そうか」

 

ふと、束は地面に目を向ける。 そこには、龍美が持ってきたバスケットが置いてあった。 束はバスケットを手に取り開けると、中にはサンドイッチと一枚の紙が入っていた。 束は紙を広げ読み始める。

 

 

〜千冬ちゃんと束ちゃんへ〜

 

千冬ちゃんも束ちゃんも、朝食はまだだと思うのでサンドイッチを作っておきました。 残さず食べてね? それと束ちゃん、徹夜や夜更かしは女の子の敵だから、ちゃんと寝ないとダメだよ? 千冬ちゃんも、しっかり休養をとってね。 短い間だったけど楽しかったよ、ありがとう。 一夏くんたちにもありがとうって伝えてください。

 

桜井 龍美

 

 

束は読み終えると、丁寧に折りたたみ懐にしまう。 そして、お互いにふっと笑う。

 

「やはり兄さんには敵わないな」

 

「だね」

 

千冬と束は腰を下ろしサンドイッチを頬張りつつ、時間が許す限り龍美の話に興じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「束」

 

「ん?」

 

「さっきの手紙を渡せ」

 

「やだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからだいぶ時間も経ち、辺りは真っ赤に染まっていた。 そんな中、千冬と束はニンジンメイデンの前で座り、龍美の帰りを待っていた。 ちなみに、ニンジンメイデンの中は、ちゃんと修理済みだ。

 

「まだ帰ってこないのか?」

 

「うーん、あっちの私が帰らせたくないのかもね〜って冗談だからその振り上げた拳を下ろして」

 

そんなやり取りをしていると、ニンジンメイデンの扉がゆっくりと開く。

 

「「たつ兄!!」」

 

二人は龍美に駆け寄る。

 

「け、怪我はないか!? 向こうの束には何もされてないか!?」

 

「そうだよ! あっちのちーちゃんにセクハラされてない!?」

 

「ちょ、ちょっと落ち着いて二人とも! お互いに言ってることが酷いよ!?」

 

まず、龍美は二人を落ち着かせる。

 

「それで、あっちでのことなんだけど・・・実は何も覚えてないんだ」

 

龍美は申し訳なさそうに言った。

 

「うーん、たぶんあっちの私がなんだかの理由で消したんだろうね〜」

 

束は、後片付けをしながら言った。

 

「まあ、兄さんが無事に帰って来た、それだけで十分だ」

 

「だね!」

 

千冬と束は顔を綻ばせる。 ここで、ふと龍美はある事に気がついた。

 

「遅れちゃったけど・・・二人とも、ただいま!」

 

龍美は、優しく微笑みながら言うのだった。

 




まず、お久しぶりです( ´ ▽ ` )ノ

そして、すいません!m(_ _)m 大学受験のために活動を休んでいたのですがなにも言わずに休んでしまっていました。 しかも、受験という名の戦争が3月まで続きまして・・・無事受かりました(`_´)ゞ

その後、受かった3日後に海外に飛びました(-_-)
やっとの思いで帰ってきたら、大学の入学準備やらなんやらで時間もない・・・入ったら、入ったでガイダンスやらなんやら・・・

本当にすいませんでした_| ̄|○

しかし! これからはちゃんと更新しますよ!(ふ、不定期で)

改めまして、これからもよろしくお願いします!( ´ ▽ ` )ノ

感想、質問、応援メッセージ、誤字脱字の報告、お待ちしてます( ´ ▽ ` )ノ
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