満身創痍などという言葉では済まない状態・・・
名前の由来である太刀の片方を失い、獣王の名にふさわしい鬣のほとんどが焼け落ち、身体中の装甲に亀裂が入り、焼け爛れている。
そればかりか、骨格にも、傷や亀裂が目立ちスパークが走っている。
さらには、力の源である核が露出し、決して軽くはないダメージを受けている。
もはや、とうの昔に物言わぬ遺跡の一部に成り果てているはずの状態なのに、鼓動が消えぬのは、無理矢理に搭載されたOS(オーガノイドシステム)が故。
虫の息の獣王は、自身の頭部に座る主の骸を抱きながら、力なく吠える。
死に際の遠吠えでもなければ、主をうしなった哀しみからくる咆哮でもない。
紅の獅子は、誇らしいのだ。
無理矢理に進化を強いられた己を乗りこなすばかりか、心まで理解し合えた主と共に、強大な敵を打ち倒したことに。
そんな獅子の前に黒い竜が舞い降りる。
こちらの黒竜も紅の獅子ほどではないにしろ、見る影もなくボロボロだ。
「そうか。
やはり、お前の主人は助からなかったか。
だが、お前達のおかげで勝てた。
そして、済まなかったな。
お前の主人、いや、相棒を死なせちまって。
だから、せめて、俺に弔わせてくれ。」
そう言って、黒竜の主は、降りてきた。
この人間にならば、主を任せられる。
そう思ったのか、紅の獅子は、穴だらけになったキャノピーを開け、主を降ろした。
墓石にはこう刻まれた。
アーサー・ボークマン
私の知る限り、最高のゾイド乗りここに眠る。
その勇気、決断力、魂は、帝国、共和国の垣根を越えて、全てのゾイド乗りの指針となるべきものである。
紅の獅子が短く、礼でも言うように吠える。
「俺ができるのは、これくらいのものさ。
そして、これは、クレイジーアーサーを超えるという俺自身の誓いだ。
行こう。ブレイカー。
次に会う時はこいつらを超えるんだ。」
黒竜が飛び立つ。
同時に紅の獅子も歩き出す。
今度は、己のみが助かるような生き恥は晒さない。
自分達の種族で初めて、太刀を携え、ブレードライガーと呼ばれた個体がいる。
まだ、そいつには届かない。
だが、いずれは超えてみせる。
そう誓って歩みを進める。
そして、永く悠久の時が流れ、戦が消えた頃。
己が越えようとする蒼の獣王がかつて旅をしたと言われる谷を根城した紅の獅子は、満身創痍の青年と出会った。
姿はボロボロでも、心は折れかけていても、強くなると誓った信念に嘘はない。
そんな目をしていた。
そう。
紅の獅子は出会ったのだ。
アーサー・ボークマンが最高の主ならば、最高の相棒となる男、レオン・トロスと。
勇者の谷で。
時はこの話よりしばしの間遡る。
皆様、お分かりでしょうか?
クレイジーアーサーが最高の主人ならば、最高の相棒はレオン・トロスということになるブレードライガー。
本偏終了後にレオン・トロスと出会うまでのブレードライガーを描いたつもりです。
そもそも、なぜ、ブレードライガーが赤いのか、なぜこうなったかは、ストーリーが進むにつれてわかると思います。