「ライガー!ヤツにとって、こっちの装甲は紙切れ同然だ!
絶対当たるなよ!」
アーサーとブレードライガーは、ブースターをバラバラに吹かして攻撃を避ける。
「馬鹿野郎!
逸るんじゃない!
心配しなくてもとっておきの一撃をお見舞いしてやる。
だから、それまで当たるんじゃないぞ!」
アーサーは、逸るブレードライガーを抑えて、デススティンガーを付かず離れずの距離で翻弄する。
「ちょこまかと・・・
うっとうしい!」
キシャアァァァァァァ!
足元から徐々にデススティンガーと同化するハンナとデススティンガーが苛立つ。
グアアアァァァァァァ!
突如として咆哮をあげたジェノブレイカーにデススティンガーの意識が向く。
「今だ!相棒!」
一瞬の隙をついてブレードライガーがブレードを展開し、左の鋏を切り落とす。
「ぐぅぅぅ・・・
貴様ァァァァァァ!」
キシャアァァァァァァ!
デススティンガーと同化しつつあるハンナに痛みが伝わり、怒りを露わにする。
次の瞬間、ジェノブレイカーが荷電粒子砲をデススティンガーの頭部に向けて発射する。
「お前も目障りだァァァァァァ!」
ハンナはシールドを展開し、受け止める。
「さっきの礼だ。
受け取れ。」
ジェノブレイカーが咆哮をあげ、荷電粒子砲の出力が向上する。
シールドと荷電粒子のぶつかり合いで激しいスパークが生じる。
重量と大出力のシールドで耐えていたデススティンガーであったが、ジェノブレイカーと精神リンクを果たしたリッツに押され始め、遂にはシールドが破れ、頭部の装甲が消し飛んだ。
「少しは効いたか・・・」
限界を超えた荷電粒子砲の照射でジェノブレイカーが緊急放熱をする。
爆炎の中からデススティンガーが大出力の荷電粒子砲を放つ。
リッツのジェノブレイカーを飲み込むかに見えた荷電粒子砲は、アーサーのブレードライガーがシールドで防ぐ。
「やっと戻ったか若僧!」
「あんたにばかり手柄を盗られるわけには行かんからな。」
「ほう、若僧にしては気合が入ってるじゃないか!」
「若僧じゃない!
リッツだ、
いずれあんたも超えてやるさ。」
「面白い。
わしとライガーがとっておきの一撃をヤツにくれてやる。
トドメはお前に刺させてやるよ。」
「何か作戦でもあるのか?」
「とにかく、一撃も喰らうな。
そんでもって、荷電粒子砲をチャージしておけ。
わかったら行くぞ!」
「ちょっと待て!
結局何の説明にもなってないじゃないか!」
リッツが抗議の声をあげるころには、アーサーとブレードライガーは走り出していた。
全ての火器がブレードライガーとジェノブレイカーに集中する。
「くそッ!
何だこいつは?
姿だけじゃなく、動きがさっきと全く違う。
まるでこっちの動きを先読みしてるような・・・」
ジェノブレイカーが残されたフリーラウンドシールドで砲撃を防ぎつつ、機体を後退させる。
リッツが動きを先読みされてるいるように感じるのは当たっている。
ただし、ハンナは先読みしているのではなく、すでに知っているのだ。
デススティンガーには、戦闘時に起こりうる状況の全てをパイロットの脳に送り込むシステム-通称バーサーカーシステム-が搭載されている。
しかし、それは人間の脳が耐えられるものではない。
ハンナの場合は脳にデスザウラーのゾイドコア細胞が埋め込まれているため、システムを使いこなすことができる。
さらには、デススティンガーのリミッター解除、ゾイドの闘争本能による精神汚染を厭わないほどの精神リンクを敢行している。
それにより、デススティンガーの戦闘能力はバンと戦った時よりも向上している。
もっとも、ハンナの身体は徐々にデススティンガーと同化しているため2度と人間には戻れないのだが・・・
「リッツ!
荷電粒子砲のチャージまでどのくらいだ!?」
「現在チャージ率18%・・・後7分かかる!」
「かかり過ぎだ!
気合いで何とかしろ!」
「気合いで何とかなる問題か!」
リッツが怒鳴り返しながら二連ショックカノンを放つ。
「チャージする暇など与えるか!」
デススティンガーが荷電粒子砲を放つ。
「気合いで何とかしなきゃ勝てるか!」
尻尾に体当たりし、無理矢理荷電粒子砲を軌道を変えるアーサー。
「何て無茶を・・・」
「貴様ァァァァァァ!」
ブレードライガーが鋏で振り払われる。
「アーサー!」
「うるさい!
黙ってチャージしてろ!」
アーサーが空中で体制を立て直して次の攻撃を避ける。
「行くぞ!相棒!
ヤツがわしらの動きを読むなら、それでも追いつかない攻撃をするまでだ!」
グアアア!
ブレードライガーがアーサーの操縦に応え、デススティンガーを翻弄する。
「くそッ!
なぜだ!なぜ、強化人間であるあたしがたった2体の敵に遅れをとる・・・」
「ふん・・・
力に溺れているうちはわしとライガーには勝てんよ。
わしらは力を持ちすぎた自分を憎んでる。
過ぎた力は驕りを生み、心を弱くするからな。」
ブレードライガーを捕まえようと伸ばした後ろの鋏を噛み砕く。
「己の力を憎む者同士だから、心で繋がり、互いに戦いを楽しめる。
ただ、精神を取り込まれたお前とは違うんだよ。」
アーサーが不敵に笑う。
「だまれぇぇぇ!!」
すでに7割が同化していたハンナの身体が完全に同化してデススティンガーのコアに引き込まれる。
「何も持たずに産まれて、プロイツェン閣下に全てを与えられたあたしの何が分かる?!
あたしに敗北は許されないんだぁぁぁぁぁ!」
デススティンガーの背中の装甲が開き、無数のレーザー砲が放たれる。
「ぐぅぅぅ・・・」
「くそッ!
なんて威力だ・・・」
ブレードライガーは、シールドを展開するが、易々と打ち砕かれて、全身を貫かれる。
ジェノブレイカーもフリーラウンドシールドで防御するが、耐えきれず、唯一残った防御兵器を失った。
「これで終わりだ!」
コアに取り込まれたハンナが不敵な笑みを浮かべる。
リミッターが外れ、デスザウラーの細胞を持ったハンナが融合したことによって、先程とは比べ物にならないエネルギーがデススティンガーの尻尾に集中する。
「おい!
リッツ!
動けるか?」
「ああ・・・
だが、あんたの機体は限界だろう!
俺に任せて退がれ!」
「何言ってる!
わしのライガーはまだやる気だ!
遅れるんじゃないぞ!」
ボロボロのブレードライガーと血反吐を吐き出すアーサーが咆哮をあげて走り出す。
「最後まで付き合ってやるよ!相棒!」
疾走するブレードライガーが片方残ったアタックブースターをパージして、シールドとブレードを前面に展開する。
「死ねぇぇ!!」
デススティンガーの荷電粒子砲が放たれる。
ブースターを吹かした真紅のブレードライガーは、機体の周りにエネルギーの渦が巻き加速する。
真紅の砲弾と光の柱が衝突する。
「相棒!
シールドのエネルギーをブレードにまわせ!
リッツ!トドメは任せたぞ!」
アーサーが操縦桿を押し込み、ブレードライガーが荷電粒子砲を切り裂いて進む。
「なに?
馬鹿な!」
赤い獣王と蠍の魔物の影が1つになり、また、2つに別れた。
次の瞬間、獣王が倒れ、魔物の尻尾と左半身が消し飛んだ。
「アーサー!
くそッ!そのまま死ぬなんて許さない!
俺たちはあんたを超えるんだ!
勝ち逃げなんかさせるかよ!
ブレイカー!
奴らの犠牲を無駄にはしないぞ!」
ジェノブレイカーが咆哮をあげ、最大出力の荷電粒子砲をゼロ距離から放つ。
「おおおおぉぉぉぉぉ!
くたばれぇぇぇ!」
リッツの気合いに反応し、荷電粒子砲の出力が限界を超えて向上する。
「プロイツェン閣下・・・
ヴォルフ陛下・・・
申し訳ありません。
あたしは、ゼネバスの役には立てませんでした・・・」
荷電粒子砲の連続照射を受けたデススティンガーは、力なく倒れた。
「アーサー!」
リッツは急いでアーサーのブレードライガーを探す。
レーダーが反応した。
「なっ・・・
あいつ、あんな状態でなにを・・・」
ブレードライガーは、ボロボロの身体を引きずりながら、移動している。
ブレードライガーを追ってリッツのジェノブレイカーが辿り着いた先は、かつてイブポリスがあったレアヘルツバレー・・・
そこでブレードライガーは、力なく横たわる。
「そうか・・・
最初に産まれたブレードライガーとジェノブレイカーが共に戦ったこの場所で眠るのか・・・
なら、お前の主人は俺に葬らせてくれ・・・」
アーサー・ボーグマン
私の知り得る限り最高のゾイド乗りここに眠る。
その勇気、その決断力、その魂は、ヘリック、ガイロスの壁を超え、全てのゾイド乗りの指針となるべきものである。