一級冒険者がサポーターなのは間違っているだろうか   作:ジェイ

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3話・サポーターと会議

 「ふっ!」

 

 命の振るう刀が横になぎ払われ数体のコボルトはその一線に真っ二つとなった。息絶えたコボルト達に見向きもせずに返す刀で振り向きざまに回転を加えた突きを放つ。刀の切っ先は吸い込まれる様に影のモンスター、ウォーシャドーの剥き出しの魔石を砕く。

 魔石はモンスターを倒すと手に入る。それが冒険者の収入源であり、迷宮都市オラリオを発展させた動力源である。命はそれを躊躇無く砕いた。それと言うのも魔石とは言わばモンスターの心臓にあたる部位でもあるのだ。

 

 「………ふぅ、ランどのいかがでしたか?」

 

 一先ず周囲のモンスターを一掃した命はそそくさと魔石とドロップアイテム回収に勤しむランに問い掛けた。

 

 「ん?あぁちょっと待ってろ。すぐ終わらせるから」

 

 ランの言葉の直後、ランの姿は消え去り数十は在ろうモンスターの遺体が宙を舞う。舞ったと命が目を見開いた直後には数十のモンスター達は数百の残骸と成り果て魔石やドロップアイテムは姿を現したランの腕に抱えられていた。時間にして2秒ほどの早業はランがLV.6と言うだけでは説明がつかないが、それがわかる者はこの場にはいなかった。命は流石一級冒険者としか思えなかっただろう。

 

 「おまたせ。んで今の戦闘の感想か?それとも最後の総評にしておく?」

 

 「総評でお願いします。すでに地下6層まで戻ってますから」

 

 今回ランはタケミカヅチの依頼で命のサポーターとしてダンジョンに潜っていた。道中特に問題無く、目標であった13層も多少危ない面もあったがランは支援しただけで直接戦闘には参加しないで攻略できた。ただそれはランの支援が的確過ぎた故であり、普通のパーティーならばここまでうまく簡単に攻略など出来なかっただろう。

 

 「では総評ではもう少し頑張りましょうってところだな」

 

 「………理由を聞いても?」

 

 故にランの評価は少し厳しい。

 

 「遠回しにしても何のプラスにもならんからストレートに言うと______お前何回俺に支援させてんの?物理的に」

 

 「あうっ!」

 

 「俺久々だぜ?投石しまくったの。何回俺にヘイトあつめさせんのよ。特にヘルハウンドの時は数回に一回は石当て遊びしてたよ俺」

 

 「ふぐぅ!?」

 

 「つーかソロでやるならもっと自己管理をしっかりしろ。周り見えてるくせに自分見てねぇじゃん。俺を見る暇あるならポーション飲めよ。ボロボロじゃねーか」

 

 「ひぎっ!?」

 

 ここで命はがくりと膝をつく。その目は涙目で今にも雫が零れそうなほど潤んでいる。心当たりがあるのだろう。言い返す事も出来ないほどに。

 

 「しかしまぁ最後に言うとすればもう少しだな。LV.2まで」

 

 「え?」

 

 「支援があったとは言え13層を攻略したんだぞ、ソロでな。俺の投石支援があったとは言っても5体のヘルハウンドを倒したのはお前だ。頑張ったな!」

 

ランの評価は辛口ではあったが実はそう悪い結果ではなかった。考えてみればランのレベルは6。LV.1の命のステイタスと数字上で六倍の能力は確実にあり、レベルが上がればそれだけでステイタスが上昇することから単純に十倍以上の戦力差があり、さらに加えるとランと命には経験の差もある。故にランからすればもう少し頑張りましょうでも、一般的にみれば大変良く出来ましたに等しい評価だったのだ。ランの言葉から勘違いされやすいが、これはランからしても高評価であった。

 

 「あ、ありがとうございます!」

 

 命は嬉しそうにお礼を言う。ランの様な高レベル者に言われて実感が持てたからだ。さらに言えば憧れであるランに褒められた事が嬉しかったのもあるだろう。

 ランは様々な冒険者とパーティーを組んできた。その中でもタケミカヅチ・ファミリアとはランとタケミカヅチの契約により他ファミリアよりパーティーを組む機会は多く、団長の桜花はもちろん他の団員も深くランに信頼と憧れを寄せていた。故に命は認められたと思い嬉しかった。

 

 「ま、俺もレベルアップしたのは13層だからな。近いうちに上がるさ。あ、でも今回上手くいったからってパーティーで無理すんなよ?桜花とお前はまだしも他の奴らじゃまだ厳しい。せめてお前がLV.2になってからだ。パーティーでもクリアしてなかったんだろ?13層」

 

 「ハハハ…今回ので実感しましたがラン殿の支援なくてはクリア出来ませんでした。タケミカヅチ様の慧眼に感謝です。ラン殿、あなたにも」

 

 ランのアドバイスを真摯に聞き入れた命は感謝の意を示し頭を下げる。それに対してランはおう、と軽く応え回収した魔石等を背負うバックパックに詰めた。そんなランを周囲の警戒をしながら眺めていた命はふと思い出した様に言う。

 

 「そういえば先ほど13層でレベルが上がったと聞きましたが、どのような状況だったんですか?」

 

 「ああ、お前と同じでヘルハウンドに囲まれたんだ。そんときはソロだったから焦ったぞ。一匹倒したらまた現れての繰り返し、気がついたら10匹くらいに囲まれてた」

 

 あの時は無茶したと笑いながら作業を続けるランに今度こそ命は戦慄した。

 

 (ヘルハウンド10体に囲まれた!?しかもソロでだと?ラン殿の支援があっても5体が限界だったと言うのに、この人は単身でだと?何が違うのだ、私達とこの人は)

 

 命は憧れのランに対して初めて恐怖を覚える。自分があれだけ苦労したものの倍の数を倒し生き残ったこの男の力を恐れた。

 ヘルハウンドは強敵だ。下手をすればLV.2でも命を落とす危険性があるほどの。俊敏な動き、強靭な牙、鋭利な爪、仲間を呼び冒険者を追い詰める集団性、そして何よりもヘルハウンドの代名詞と言える灼熱の業火は数々の冒険者の命を奪った。そんなモンスターを単身で10匹以上を倒したと聞けばランの異常性に気がつくと言うものだ。

 命が黙ってしまい、原意を把握したランはいつもの様な人好きな笑顔を浮かべて言った。

 

 「まっ、オラリオ最速は伊達じゃねえって事だよ。あ、後今の話は内緒だぞ!真似しだす馬鹿がいるかもしれん」

 

 ランは過去に無茶をしてよく叱られていた。ギルドの初心者冒険者のアドバイザー、所謂担当者からそうで無いもの、常連の鍛治のギルドやたまにパーティーを組んでいた冒険者など様々だ。中には笑い話や酒の肴にしたり、ランの破天荒さを気に入る者もいたが一部である。しかしそんなランの無茶を支えてきたのは類い稀な敏捷のステイタスと生まれた時からもつスキルにあった。そのスキルがランをオラリオ最速に押し上げる要因でもある。

 

 「何?命ちゃんビビった?大丈夫だよー。可愛い可愛い命ちゃんはお兄ちゃんが守ってあげるから怖がらなくていいんだよー」

 

 「い、いひゃいいひゃい!りゃんどにょ!いひゃいれす!」

 

 ランはこの何とも言えない空気を変える為に命の頬を両側から引っ張りからかい始める。命は命でランの奇行に恐怖心を忘れ、と言うより両頬の痛みから逃れるのに必死で呂律のまわりきらない言葉で抗議する。ランの予想を超える命の頬の柔らかさと弾力に夢中になるランは命が本気で涙目になり、刀を抜くまでやめなかった。その時には命の雰囲気はからかわれた羞恥と頬を引っ張られた怒りで先ほどの雰囲気は消え去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 「と、言うわけで命は無事LV.2になった。予想以上の働きに感謝する」

 

 命とダンジョンを抜けた後日、依頼報告の為にタケミカヅチ・ファミリアの本拠地を訪れたランにタケミカヅチを初めとしたファミリアの面々は深々と頭を下げる。所謂土下座で。

 命は帰るとさっそくステイタスの更新をタケミカヅチに願い、経験値を更新したところレベルが上がった様だ。

 

 冒険者はただダンジョンに挑むだけではレベルは上がらない。経験値はダンジョンに潜ったり、日常生活で経験を積むなどして得ることは出来るが、その経験値を反映させるには主神に更新してもらわなくてはならないのだ。

 

 「いえいえ、お役に立てたなら俺も嬉しいですよ。これなら報酬も期待出来そうだ」

 

 「ああ、勿論だ。今のお前に最適な奴を教えるつもりだ。ほれこれが報酬の一部の指南書」

 

 「良いんですか?今までは一つの依頼に一つの技だったのに。これ、売れば相当な値がつきますよ?」

 

 タケミカヅチから受けとった指南書をパラパラと流し見したランは冷や汗を流す。その指南書にはその道の全てが記されていると思われる程細かく丁寧に図解も記されていたからだ。流石に魔導書の様に読んだだけで身につくものでは無いが、それでもこれにはかなりの価値があるだろう。

 

 「かまわねぇよ。お前はそれだけの事をしてくれた。後たまに指導してやるから空いてる時は俺のところに来いよ。そして最後にそれ売るな。売るなら燃やすか俺に返せ。お前だから教えてるんだぜ。俺の信用を裏切るなよ」

 

 「そんな事出来ませんよ。俺が死ぬ時までこれは俺の物だ。貴方にも渡しません」

 

 死んだら取りに来てくれ、そう告げてランはタケミカヅチ・ファミリアの面々に背を向けた。タケミカヅチは嬉しそうに微笑み、眷族達は眩しそうにその背を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そこの者!止まれ!っと失礼しました。マーナガルム殿でしたか」

 

 「おーす門番お疲れ様!つーかランで良いって言ってんだろ。あるかもわかんねぇ家名で呼ぶなむずがゆい」

 

 「そうは言いますが我が主神ロキのお気に入りのあなたに失礼な態度はとれませんよ。せめてランハティ殿と」

 

 「相変わらず頭かたいなぁ」

 

 そう言ってランはロキ・ファミリアの本拠地の門を潜る。通い慣れた物で案内も無くスイスイと巨大な城の如き屋敷を歩くラン。すれ違うロキ・ファミリアの眷族に挨拶をしたり、何気ない世間話を交えながら通路を進む。進むと見るからに会議室と言わんばかりの扉が見えた。ランは迷わず扉をノックし、返事が来る前に扉を開けた。勝手知ったるなんとやらである。

 

 「おうワンコ来たか!」

 

 ランの無礼にも見える態度は神ロキにスルーされ、それを気にする面子はロキ・ファミリアにはほぼ存在しない。

 

 「いつもの事なので勝手に此処まで来ましたよ」

 

 「ええからこっち来い、かいぐりしたるから」

 

 相変わらずのロキにランは断る旨を伝えて残念がるロキを余所に空いてる席を探すために部屋内を見渡した。そこにはロキ・ファミリアを代表する面々、幹部達の姿があった。当然と言えば当然で必然でもある。次の遠征は新な階層攻略としたもの。ロキ・ファミリアの最高戦力を遊ばす理由はない。

 ランはその中で空席を見つける。

 

 「よぉ、久しぶりだなアイズ」

 

 「………久しぶり、ラン」

 

 アイズ・ヴァレンシュタイン、それが隣席の少女の名前だ。

 

 「なんやワンコ?結局ウチの隣やないか!」

 

 「ちっ!」

 

 「何で今舌打ちしたん!?」

 

 そしてその隣は断った筈の神ロキの隣の席。ランは意図せず舌打ちした。ロキが大のお気に入りであるアイズを隣にしないで席を空けていた理由を把握していたからだ。

 

 「………はかりましたね?ロキ様」

 

 「ほんまはワンコから来て欲しかったんやけどなぁ?ってちょ!?何でわざわざアイズたんと席交換しようとすんねん!アイズたんも何で嫌がんの!?」

 

 ロキの言葉が示す通りランとアイズは席の取り合いをしている。隣になれば己の行方をわかっているからだろう。その必死さは苛烈を極め、互いに武器を抜きかねない程であった。

 

 「テメェうぜぇぞ!どっちみちロキの餌食になるんだ!とっとと座れ!」

 

 「言葉は悪いがベートの言う通りだ。ランハティ、アイズ座ってくれ」

 

 その二人を止めたのは狼人であるベート・ローガと小人でロキ・ファミリアの団長であるフィン・ディムナであった。ベートはランとアイズが仲良さそうに(本人等は本気で)やり合っているのが気に食わず、フィンは会議進行のために待ったをかけた。

 

 ランは本名を呼ばれた事に、アイズは団長の指示により席につく。幸か不幸かランはロキとアイズの間に挟まれる形となった。

 つい先ほどまで不貞腐れていたロキは上機嫌となりランをアイズはその姿を見てホッと息をつきつつもランの姿をチラチラ見る。それに面白くないようなベート、逆に楽しそうにそれらを眺める面々を他所に会議は進むのであった。




この話で主人公の名前の由来と、レスティアの関係をわかった人は私の同士であると信じたい。
あの神話好きなんだよなぁ(* ̄∇ ̄*)
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