一級冒険者がサポーターなのは間違っているだろうか 作:ジェイ
後程書き換える可能性大ですが一先ずお楽しみ頂けたら幸いです
人は後悔する生き物だ。過去に想いを寄せ、あの時にこうすれば、これをしなければ、等は誰もが経験があるだろう。そして次は、と心に刻み行動し人は成長してきた。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?!?!?」
「おいおい、叫んでる暇があるなら魔石とアイテム回収しろよ。ラウルは頑張ってるぞ?」
「ほい!そりゃ!そおーいっ!」
しかしそれには限度があり場合により回避は不可能なのである。
その失敗で片腕を失ったら次に備えても失った片腕は戻ってこない。
その失敗で大切なものを失ったら、失ったものは元に戻らない。
もしその失敗で死んでしまったら、もうそこまでた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ ぁーーーーーーーーー!?世界が回るぅーーーーーーーーー!?」
そして叫び続ける小人の少女、リリルカ・アーデは逆に思う。思ってしまった。生き汚くも生き残り、自由を手にしたいと願いながら生きてきた少女は逆の想いを願ってしまった。
『死んでしまえたらどれだけ楽なのだろう』
と。
現在リリを含めラン、ラウルはダンジョンを深層に向けて爆進していた。時はリリのラン助手宣言より一時間程のの事である。
早々に講習を終えたランはお試しと言うことでリリを助手としてダンジョンに誘った。試みとしては如何にランの速さに着いてこれるか、にあった。ラウルに関してはよくランが連れ出す事と、ラウルにとって良すぎるお小遣い稼ぎであることも関係しているが、ここでは関係無いので述べないでおこう。
さて、そしてリリであるが
「むっ!無理です!速すぎます!リリの目には何が何だかわかりません!」
「早いか?俺的にかなり抑えているんだがなぁ」
「ランさんランさん。ほいっ!あなたのせりゃ!抑えている、とぉっ!は、俺にとってのうりゃっ!全力以上なんで、たらせっと!下級冒険者のサポーターには、って危なっ!?っと酷な話しッス!」
「そんなもんか?」
現在ランに背負われた荷台―――文字通り荷物を乗せるための台を改造して人が乗れる様にした物だ。箱の上部と後部が無い物を想像すると分かりやすいだろう―――に乗りながらランの首に手を回し必死に振り落とされないようにしている。ラウルは慣れているのか荷台の縁に片手を添えながらランが次々にくり貫くモンスターの魔石やドロップアイテムを回収していた。ランはランで人を二人も乗せた荷台を担ぎながら第一級冒険者以上の走力を駆使してダンジョンを疾走している。その上駆け抜けつつ遭遇したモンスターの魔石を的確に抜き取りそれをラウルに回収させていた。ちなみに彼等は40層を越えまもなく41層に差し掛かっている。この一層の間隔は訳2分である。普通の一級冒険者のパーティーなら数時間を有する階層を2分。如何にランの速力が異常か、そして何気無くそのランにサポーターとして付き合えるラウルが異常なのか分かるものである。
「そりゃあそうっすよ。LV.4の俺でも6割方魔石とアイテムの回収こなせて無いッス!」
「ちょっ!?おまっ!?」
「い、1割程とぉぉーーー!?レアアイテムわぁーーーーーーー!?回収してますぅーーーーーーー!?」
「「良くやった!!!」」
そんな中で慣れ始めたリリも異常かもしれない。
リリルカ・アーデは紛れもないLV.1だ。更にサポーターに甘んじている事から戦闘能力は下級冒険者に劣る物である。しかしその中でリリは一級冒険者を遥かに超越したランの速力に1割とは言えサポーターとして応え、さらに希少なアイテムの回収に成功したのである。ランの首にしがみつきながらも。これは天性の才能なのか、リリのがめつい性格故なのかは判断しかねるが、サポーターとしての能力は他の追随を許さないほどの光るものがあるのは確かだ。
ちなみに現在は既に45階層を走破したランの推定利益は1000万を優に越えている。そ中の1割を回収したリリの功績は軽く100万を越えているのであった。
「…………やべぇぞラウル!お前の後輩、サポーターとしてならお前以上だ!」
「え!?俺一応冒険者なんすけど!?準一級の!」
「ばっかお前!リリは下級冒険者だぞ?差を知れ!」
「いやぁーーーー!!比べないでぇーー!!!」
「………………リリは……………もう限界ですぅ」
とは言えリリは冒険者になり得ない下級冒険者。流石にこれ以上は体力と言うより精神面で耐えきれなかった。
スッとランの首に回していた腕に力が抜けた刹那にランは旋回し方向を地上へと改め、ラウルもそれを察してリリを支える為に腕を回す。
「おいラウル。今から本気だすから全力でリリを支えろ。もし落としたらてめぇの文句をリヴェリアに言い付けてから《男殺し》に50ヴァリスで売り付ける」
「ちょっ!?リヴェリアさんでもヤバイのに《男殺し》って!?!?つーか安っ!」
言いながらラウルは己とリリをランの背負う荷台に縄で縛りつける。何故縄を所持していたかと言えばランの速度にラウル自身が耐えられずに振り落とされそうになるからだ。なので毎回ランと組む時は縄を持参する様になったのである。
ちなみにリヴェリアは言わずもながラウルの所属するロキ・ファミリアの副団長で《九魔姫》の二名を持つオラリオ最強の魔法使いである。
リヴェリア・ヨルス・アールブ。エルフでありその中でも王家である高等種族ハイエルフの女性だ。その容姿は非常に美しく美男美女揃いの神々すら嫉妬するほどであり、ロキ・ファミリアで母とされるほど面倒見が良い。そして面倒見が良い反面非常に厳しい女性でもある。故にランから文句等を言われてしまえばラウルにとって非常に好ましくない教育指導が下されることは間違えがなかった。
そしてラウルが最も恐れたのが《男殺し》である。詳しい説明は省くが、男にとってある意味天敵である人物である。巨体を誇る一級冒険者で無類の男好きな蛙に似た容姿の女。これだけでどれだけの男が被害にあったのかは想像に容易いであろう。
「罰だからな!お前が一番へこみそうなのをチョイスしてみた!」
「……………ロキ・ファミリアの男なら誰だってへこむっすよ」
「じゃあ落としたらそれ決定ね」
「ヤバイっす。この人マジっすよ。はやく何とかしないと」
ランは本気だと察したラウルは表情をひきつるのを自覚した。しかしそこに悲壮感はなかった。確かにリリを落とせばランは言葉通りに罰を実行しただろう。だがラウルはLV.4の準一級冒険者。この程度の任務くらい訳なくこなす。何よりオラリオ最速の視界を、ランの見る世界をランの次に見てきた男だ。ランの様に走れなくても、ランほど見れずとも感じる事は出来るし、これから訪れるであろう衝撃に耐え、リリを守るくらいなら出来る。それをわかっているから、知っているからこその戯れであった。
「まぁどうでも良いか。喰われるの俺じゃないし。それと5秒後に全速力で駆け抜ける。今日は荷物軽いから昨日より速いぞー!」
「酷いっ!?つーか5秒後にってまだ縛り終えて無いッスよ!それに昨日より速いって!?」
ランの言葉に驚きっぱなしのラウルであるが後半の言葉が気になり、そして思い当たる。
(あ、この人昨日のダンジョンと地上の往復時は大量の荷物を抱えてたんだった!え?待つっす!あの荷物を抱えて往復二時間?荷物を置く時間や仕入れる時間も入れて二時間?)
「ごぉーーー!」
重要な事に気がついたラウルは冷や汗を身体中から流れるのを感じた。それから慌てながらも自分とリリを確りと結び付け、それを手慣れた手付きで荷台にくくりつける。
「よーーーーーーん!」
加速に対する準備は終えたが、何か嫌な予感を感じたラウルは予備の縄を全てを自分の体とリリに結び、さらに全てを絡ませけっしてほどけない様に結びつけた。
「さーーーーーーーん!」
要心に要心を重ねたラウルであるが未だに不安が残ったラウルはリリに覆い被さる様に、そして身を守るように小さく、少しでも゛風゛から逃れる様に縮こまる。
「にーーーーーーーーーーぃ!」
ラウルはわかってしまった。己が今まで感じていた、知っていたと思い込んでいたランの世界がまだ入り口に過ぎなかった事を。これから訪れる物が本物の、今まで感じていた物が生易しく感じるであろう衝撃が訪れる事をわかってしまった。
(ヤバイっす。俺の考えが間違っていないならこの人には――――――)
「いぃぃぃーーーーーーっっっち!!」
「っっっっ!!!!!ランさん!ちょっと待つっ―――――――――」
「0!!よっしゃいくぜっ!」
ラウルが言い切る前にカウントダウンは無情にも0を迎えた。そしてランの宣言の直後
「―――――――――――――――っ!?!?!?」
ラウルは言葉を失う。文字通り言葉を失った。あまりの速さに感動したとか驚愕したと言った事では無く言葉を放てない程の衝撃に見舞われたのだ。
未だかつて無い程の衝撃を味わった刹那、音が消え去った。そして何も感じなくなり世界はまるでパラパラと捲った絵本の様に感じた。一瞬一瞬で光景が変わったのだ。
目まぐるしく変わる視界の中で、音の消えた世界でラウルは思う。
(―――――――誰も追いつけな――――――――)
そしてラウルの意識は途絶えた。
「いやーー、すまん」
「……………………リリはよくわかりませんが気持ち悪いです」
「俺、世界が初めてコマ送りになったっす…………」
時は少し流れて現在ロキ・ファミリア遠征終了後の宴会を行っていた。場所は《豊穣の女主人》。オラリオでも人気高い食事処兼飲み屋だ。ロキ・ファミリアの主神ロキがこの店を気に入っているため遠征後は基本的に《豊穣の女主人》が定番でもある。参加者はロキ・ファミリアの面々とランとレスティアにリリ、後はヘファイストス・ファミリアの団長である椿と遠征に参加した団員の一部がいたりする。かなりの大所帯であるが《豊穣の女主人》の店主としては稼ぎどころ。嬉々と予約を受け入れているほどにはこの店は大きい。
参加者はみな遠征の疲れやストレスをこの宴会で晴らす中でラウルや遠征に関係ないかつランの愛弟子になった事により強制参加させられたリリは正にグロッキー。テーブルに突っ伏しながらランの謝罪に素直な感想を言った。
「いや、本当に悪かったって!リリは気絶してたから構わないと思ったけど、まさかラウルが耐えられないとはおもわなかったんだって!つーかラウルが思ってたより弱かった件についてロキ様どうぞ!」
「ワンコについて行っただけでも上等やで?うち気が付いたら自室のベッドにいたわ」
「ロキ様寝てると可愛いですよね」
「喧嘩売ってんのかコラワンコ!?!?」
ロキは以前ランの世界を堪能しようとしたことがある。その際ロキはあまりのランのスピードに気絶して介抱されたことがあるのだが、ランにとっては可愛らしいロキを見れて眼福であったものの、ロキに至っては情けない姿を見せたと思い、羞恥に顔を赤らめていたりする。この事はロキのセクハラをやめさせる手段としてロキ・ファミリアではよく話題にあがっているためロキは怒りを示していたのである。どうもからかわれるのは嫌なロキであった。
「がぁーーーーー!!もうええ!ワンコにラウルは今日はうちのオモチャや!そこのちっこいのは勝手にくたばってれーたんに介抱されてれば良いんや!」
突如のオモチャ宣言に巻き込まれるラウル。理不尽だと思いつつも原因がランで、宣言したのがロキであるため逃れられないと判断した。故に出来るだけ絡まれない様に徐々に徐々に中心から距離を離して行く。それにより上手く逃げ切れたと思えば
「よぉ助手1号。何逃げてんだ?戻るぞオモチャ」
無情にも己が師と仰ぐランにより連れ戻された。ちなみにラウルはアルバイトと称してランの助手を行っているが、実際には助手としてランより最も多くを学ぶ最初の助手でもある。故にロキ・ファミリアの最強のサポーターであり、次にランクアップするであろう最有力候補でもある。後に盛大に落ち込むことになるがそれは先の話である。
話は元のロキの乱心?に戻ろう。
ランは確実に逃げられないのを確信していた。何しろロキは気に入った相手に対して蛇の様に絡み付き執拗で執念深く文字通り絡み付く。さらに仕事柄ロキ・ファミリアとは付き合いも多く、主神同士の仲も良好な事からいずれはこの事で何かしらのアクションがあるのは確実だからだ。故にランがとった行動は少しでも被害を無くすために標的の一人であるラウルを連れ戻し
「ロキ様…………優しくしてね?」
「お前は生娘か!?つーかラウル何逃げてんのや!うちと遊ぶんはそんなにいやか!?」
頬を赤らめてロキに抗議?と言うよりからかう事にした。ラウルは完全に巻き沿いだ。
「ランさん、いや師匠ひどいっす」
「うっせ!弟子なら師匠の面倒にも協力しろ」
完全な巻き沿いにラウルは悲観する。発端はランであるのにそのランの一言で巻き込まれたのだから無理もない。
「どーでもええわ!ワンコはうちの椅子!ラウルは酌せぇ!」
そんな事は関係なしとロキはランの膝の上に座り首に腕を回し酒が尽きたジョッキをラウルに向けた。ランは仕方無しと片腕でロキを支え、ラウルはまだ酌だけですむならと次の酒を注ぐ。
本来ロキは美女、美少女を好む。その中で男であるランやラウルを侍らす事は珍しいが周知の事実であり、本人すら自覚するラン好き故にこの状況を楽しんでいた。ラウルは完全に巻き沿いだ。周囲は周囲で余計な手間を省ける、もとい避けられる、と言うより回避出来るので放置する。ちなみにランと戯れるロキは可愛いと神々で評判になる位には駄々甘えなロキは愛らしく、可愛いと評させる姿に微笑ましく見守るロキ・ファミリアである。普段のセクハラや親父臭さなどなければ美しい神なのだ、ロキも。
そんな中でランの主神レスティアはひたすらに暴食の限りを尽くしていた。しかしそれは嫌なことがあった、気に食わない事象がおきているとは全く関係無くただただ何時もの事。見た目不相応に食事をとる姿は優雅でありながら凄惨である。瞬く間にテーブルから料理が消えていくため、そのテーブルはレスティア専用と化し誰も近付かない。いや近付けない。
「ん~!おいしぃー!」
間延びした口調と幸福そうな表情からは想像できない程の圧力が周囲に撒き散らせ、まるで『これは全て私のだ。もしくったら…………わかるよなぁ?』と幻聴が聞こえそうになるほどの物。誰も危ない橋は渡りたくないのだ。そもそも何も食えない宴会になんの意味も無いのだし懸命な判断と言えよう。
「ミアちゃーん~!おかわりぃ~!」
「あいよー!」
この女神の胃袋はきっとブラックホールで出来ている。
感想お待ちしています。