アンチリリカルな日々   作:平乃

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 前回まで読んで頂いた方、お久しぶりです。
 前の投稿から1ヶ月の放置プレイをかました莫迦野郎こと、平乃で御座います。

 いろいろ立て込んでおりましたが、まさに今夜、暇な時間ができたので一気に書き上げました。
 2,30分で思うが侭に打ち込んだので誤字とか変なテンションとかあると思いますが、考えてみればいつものことですので、お気になさらずどうぞ。

【注意】
 ここの主人公君はなのはが絡むと変態っぷりを隠しませんので、そういうのが苦手な方はご注意を。
 あとサブタイトルがイマイチだったので単なる連番に変えました。
 なお過去分の内容は変わってません。


第4話

 とある日曜日、僕はなのはさんに呼び出された。

 そう、()()()()()()のである。しかも、その用件は僕と二人っきり、とまでくれば僕が電話越しに裸エプロンまで妄想を走らせたのも、想像に容易いことだろう。

 

「走りすぎだよ」

 

 そして当日の朝、僕が告白の返事として考えた数百通りから選び抜いた最適解を持って高町家を訪ね、いつも通り桃子さんの朝食作りの手伝いをして、いつも通りなのはさんを起こしに行き、いつも通り寝ているなのはさんの唇を奪おうとして鳩尾に蹴りを食らい、いつも通り起きたなのはさんに引きずられて食卓についた。

 

 そして今、朝食を終えて道場へと移動した僕となのはさんは真剣な表情で向かい合う。

 辺りは静寂に包まれて、遂に告白か、と僕は逸る鼓動を抑え、朱に染まった顔でなのはさんの言葉を待って――

 

「賛歌くん、いい加減現実を見ようよ」

 

「嫌だッ! こんな現実認めるかぁぁぁぁああ!」

 

 僕は手に持っていた()()()()を床に叩きつけた。

 そう、この甘々な雰囲気をぶち壊すのは互いの手に持たれた練習用の槍。とどのつまり、なのはさんの用件は槍術の練習相手になってほしいということだったのだ。まさに外道の所業、正真正銘の詐欺である。

 

「雰囲気を偽証してる賛歌くんに言われたくないよっ!?」

 

 偽証とは心外である。僕の脳内では24時間365日、甘々のラブラブだ。

 

「もうツッコむ気力もないよ……。それに、私の用件は朝ごはんの後に伝えたはずだよね?」

 

 確かに、朝食後すぐに大事な相談ごとの内容は聞いた。しかし、それも告白前の気恥ずかしさから出た照れ隠しだと思って何の不思議があるのか。その後、練習着に着替えて、槍を持たされてなお、なのはさんの告白を信じて疑わなかった僕に対して、あまりに惨い仕打ちというものだ。

 

「賛歌くんのその無駄なポジティブ思考が羨ましいよ」

 

「えっ、結婚する?」

 

「告白前に長所を褒めたわけじゃないからね!?」

 

 ちぇっ、なんだ違うのか。なのはさんが僕の事を褒めるなんて100年に1度あるかないかのレアな行動をとるから勘違いしちゃったじゃないか。これだから女子ってやつは。

 

「さっきのも褒めてないんだけど」

 

 聞こえません。というか僕もう、やる気/Zeroなので、なのはさんの部屋に戻って、なのはフレイバーを補充してもいいですか。

 

「お礼に来週一緒にお出掛けしようかと思ってたんだけどな」

 

「早く構えるんだ、なのはさん。僕の槍術、足腰立たなくなるまで叩き込んであげるよ」

 

 やれやれ、僕がなのはさんのお願いを無視できるわけがないじゃないか。それに疲れ切って動けなくなったなのはさんになら、普段迎撃されて出来なかった、あんな事やこんな事も――、

 

「うん、わかった。とりあえず、疲れ切る前に賛歌くんをブッ血KILLすればいいんだね」

 

 なにそれ怖い。

 いつからここは死合の場となったのか。

 

「じゃあ、いくよっ!」

 

「あ、今のセリフ、「イク、行くの!」に変えて、もう一回――ちょっ!? 今、頬をかすめた穂先が摩擦でチリッて鳴ったんだけど!? なのはさん、ホントに未経験者!?」

 

 突如として膨れ上がった殺気から放たれた一突きで始まった稽古はその後、休憩をはさみながら正午まで続いた。

 

 

 昼食を終えた昼下がり、高町家の一角に位置する道場で独り、僕は居住まいを正して物思いに耽っていた。

 静謐な空気の中、一つ息を吐く。

 体に流れ込んだ澄み切った空気は、清冽な湧水を想起させ、体内を洗われるような爽やかな心地に肩の力が抜けていく。

 道場の窓から注ぐ陽光は春の穏やかな暖かさを帯び、磨き上げられた鏡面のような床で輝く様は優しい温もりを見る者に伝えてくれる。

 

「賛歌くん」

 

 突然かけられた声に、自分の顔が綻んでいたことに気づき、急いで顔を引き締めた。

 気が抜けていたのか、道場に足を踏み入れたなのはさんに全く気付かなかった。

 

「何か良い事でもあったの?」

 

 結局、さっきの緩んだ顔は見られていたらしい。クスクスと小さく笑いながら近づくなのはさんに、咄嗟に意地の悪い笑みを向けて、

 

「なのはさんのシャツに染みこんだ至上のフレグランスを想像していただけさ」

 

「着てた服なら、さっき洗濯機に入れて回したところだけど」

 

「この世に神はいないのか」

 

 嘆く僕を尻目にスタスタと歩いてきたなのはさんは、僕の隣に腰を下ろし、ふう、と息を吐いた。午前の練習がハードだったからか、やや疲れ気味のようだ。

 

「……そういえば、1つ聞きそびれていたんだけどさ」

 

 そのままうつらうつらと船を漕ぎそうになっていたなのはさんに声をかける。ハッと目を覚まして、ぱちぱちとまばたきしたなのはさんが「なに?」と首を傾げて続きを促した。

 

「なんで、急に槍を習おうなんて思ったの?」

 

 聞いたのは、今日の特訓のそもそもの発端となること。

 高町家は母親の桃子さんとなのはさんを除けば、永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術という古武術の使い手であり、常人離れした実戦的な実力を持つけれど、これまで武術に関わることなく生きてきたなのはさんが急に、しかも父や兄妹にではなく、僕に槍術を習うなんて、何か切っ掛けがなければありえないことだ。

 「それは」と口を開いたなのはさんは、それ以上は続けることなく、しばらく口をつぐんで考え込む。

 

「この前、1人の女の子と会ったんだ」

 

 そう話し始めたのは、沈黙が1分ほど続いてからだった。

 

「私にはあの子とお話しをする為に、声を届けられる場所まで行く為に、戦う力が必要なの」

 

「恭也さん達が聞いたらひどく心配しそうな話だね」

 

「うん、でもお兄ちゃんたちも話せば分かってくれると思う」

 

 だから、それが小太刀二刀流を選ばなかった理由じゃない。そう言外に添えて、なのはさんは話を続ける。

 

「私があの子と戦う時に使う武器は槍、というか杖みたいなものだから」

 

「そこで、ちょうど僕が槍術をかじっていたから、ってこと?」

 

 僕の言葉を決まりの悪そうな笑みで肯定する。

 

「……相変わらず即断即決、悩むより飛び込む方が先か。危なっかしいなあ」

 

 愚痴りながらため息をついた。

 残念な事に、午前の特訓の成果は上々だった。以前から恭也さんや美由希さんの鍛錬、ついでに一緒にしごかれてた僕の動きを見ていたなのはさんは戸惑いを見せる事なく、驚くほど容易く槍を扱ってみせた。

 自他共に認める運動オンチである彼女だが、そこはさすがに士郎さんの子といったところか、驚異的な目の良さと戦いの最中に最善の一手を嗅ぎ取る嗅覚は天性のものだ。それに加え、空間認識能力に長け、自分と相手の間合いの測り方が上手い。

 まあその代わりに、自分から攻める時は機敏な反応速度に動作がついていっていないが。

 結果的に、相手の攻撃を牽制しつつ、死角を突いて反撃する彼女のスタイルは小太刀よりも槍に適した戦い方だろう。

 

 ああ、今だけは戦闘のセンスを受け継がせた士郎さんの血が憎い。なのはさんはきっと彼女の望む結果を得る為の力を付けることだろう。

 叶うなら、今からでもその願望を絶ち切ってしまいたい。

 雛鳥を広い大空から隔離して、箱庭に閉じ込めて愛でるように。空の果てに刻まれた僕の暗い傷痕を分厚いカーテンで覆い隠すように。

 今ならまだできる。まだ小さい翼を手折って、素知らぬ顔でその傷を慰めることも。

 

「……選んだ理由は、それだけじゃないけどね」

 

 そう続けられた言葉に、いつの間にか俯いていた顔を上げる。

 

「どういう意味?」

 

「えへへ、内緒っ」

 

 そう言って僕に向けられたなのはさんの笑顔は、道場に差し込む陽光のように眩く光って見えた。

 そんな僕の憧れた笑顔に、胸に燻っていた靄は晴れ――るわけもなく、胸に去来したのは鬱屈とした怒りのような複雑な感情。端的に言えばイラッとした、いうやつだ。

 

「ふぇっ!? にゃにふゅるの!?」

 

 だから僕がなのはさんの両頬を伸ばしてぐにぐにしているのも仕方ないことだ。

 イラッとするのに可愛いという新境地を開拓しそうになった僕の衝動を落ち着けることができるのは、このぷにぷにの頬っぺただけ。そして僕をこんなに混乱させたなのはさんにはそれを甘受する義務があって然るべきだ。

 

「だから、僕は悪くない」

 

「ほう、いつもながら随分脈絡のない責任転嫁だな。感心するよ」

 

「どこのどいつだっ! なのはさんがあざと可愛いなんて周知の事実を喧伝する輩は――誠に申し訳ありませんでしたっ!」

 

 全力で目の前の阿修羅に平伏する。

 マジでどこから現れたんですか、恭也さん。なのはさんをつねる腕に添えられていた練習用の小太刀から真剣並の怜悧さが伝わってきたんですが。

 

「まったく、自分の弟分がお前だということが、俺にとっては羞恥の事実だよ」

 

 やれやれと肩をすくめて、小太刀をしまう恭也さんは、展開についていけずキョトンとしているなのはさんの頭を撫でると、桃子さんからの伝言を伝え、なのはさんを家のリビングへ向かわせた。

 

「さて、じゃあ僕はこれで」

 

 そう言って、なのはさんの部屋へ退避しようとする僕の肩に力強い手が置かれる。

 ……一ミリも動けない、っていうか肩がすごくミシミシ音を立てて軋んでいるんですけどっ!?

 

「まあ待て。せっかくなのはに稽古をつけていたんだろう? 久々に兄弟子から稽古の一つも受けていけ」

 

「いやー、全力で遠慮したいかなーって」

 

「なに、なのはを任せるに足る男になる為だ。二、三回死んでも文句はないだろう」

 

 人の命は一回限りなのですが、それは。

 

「さあ、死力を尽くして削り合おう、賛歌」

 

「この人、絶対鎬じゃなくて命とか魂削り取る気だよっ!?」

 

 その後、恭也さんの言葉通り三途の川を三往復した僕が道場の床のシミになりかけたのは言うまでもない。




 今回、書いてた時の感想「御神流の正式名称なげぇ」。字にするとホントに長い。

 ちなみに賛歌VSなのは、賛歌VS恭也の描写自体は書いてましたが、長い上にそんな重要じゃないんで全編カットして艦○れネタでぶった切りました。これまた字面で見ると酷い。これに声がつくとかマジか。

 中途半端な長さで切りましたが、残りの書いた分はちょこっと追加して明日あたりに次話投稿できればいいかなー、とかなんとか。
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