問題児たち+一般人?が異世界から来るそうですよ?[凍結中]   作:fateplanet

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今回ヒロイン(?)が登場します


EPISODE 4 『白夜』

 

 

前回より場面は変わり、今は日暮れ。

その時分の噴水広場にうら若き乙女の怒号が立て続けに響く。

 

 

「な、なんであの短時間に“フォレス・ガロ”のリーダーと接触して、しかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」「しかもゲームの日取りは明日!?」「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」「一体どういうつもりがあってのことです!」「聞いているのですか4人とも!!」

 

 

「「「「ムシャクシャしてやった。今は反省している」」」だが私は謝らない」

 

 

「黙らっしゃいっ!!!」

 

 

誰が言いだしたのか、まるで口裏を合わせていたかのような言い訳に大激怒する黒ウサギ。また、ソレをニヤニヤと笑ってみていた何故かずぶ濡れの十六夜が止めに入る。

 

 

「別にいいじゃねぇか。見境なく選んで喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ、黒ウサギ。第一、先にちょっかいかけてきたのはアッチなんだからな」

 

 

ヤハハと笑いながら楽しそうな顔を黒ウサギに向ける。

しかし黒ウサギは、そうはいかないとばかりに話を続ける。

 

 

「い、十六夜さんは面白ければそれでいいと思っているのでしょうけど、このゲームで得られるものは自己満足だけなのですよ?

この“契約書類(ギアスロール)”を見てください」

 

 

黒ウサギが見せた“契約書類”とは“主催者権限”を持たない者たちが“主催者(ホスト)”としてゲームを開催する際に必要不可欠なギフトであり、ルールやチップ、ゲーム内容、そして賞品が明記された物である。

これは主催したコミュニティのリーダーが署名することで成立するのだが、黒ウサギが示したのはその中でも賞品に関する項だ。

 

 

「“参加者(プレイヤー)”が勝利した場合、“主催者”は参加者の言及する全ての罪を認め、箱庭の法の下で正しい裁きを受けた後、コミュニティを解散する―――まぁ確かに自己満足だな。時間をかければ立証できるものをわざわざ取り逃がすリスクを背負ってまで短縮させるんだからな」

 

 

ちなみに昂樹達が出したチップは“罪を黙認する”というものだ。それは今日に限ったことではなく、これ以降もずっと口を閉ざし続ける事を意味している。

しかし今回のことに限ってはそのことはあまり意味をなさない。

それはあの場にいた全ての人間が承認だからだ。昂樹はあの店員を第三者として置くことに留めたが、それでは足りない。だからこそ彼はあの場で吠えたのだ。

そうすると、人はその声のするほうに無意識でも関心が高まり注目する。そう、注目するのだ(・・・・・・)。それは吠えた時からの一部始終を見聞きしたのと同じ。

つまりガルドの悪事は一気に広まる事を意味しているのだから。

しかしながら黒ウサギはそんな事情など知らず、話は続く。

 

 

「でも時間さえかければ、彼らの罪は必ず暴かれます。だって肝心の子供は……その…」

 

 

黒ウサギはそこで言い淀んでしまう。彼女も奴らの悪評は聞いていた。しかし、そこまで残酷なことを彼らがしていたとは思ってもいなかったのだろう。

それもそうだろう。いくら悪評が多くとも本人は紳士を自称していたのだ。彼がしたことは、その自称するものと正反対の所業であったのだから。

 

 

「まぁ、黒ウサギちゃんの言う通りではあるんやけどな」

 

 

「時間をかけたくないのよ。あの外道を裁くのに」

 

 

箱庭における法はあくまでも箱庭都市内でのみ有効であるのだ。ここに来るまで、外門をくぐるまでの外は無法地帯であり、様々な種族によるコミュニティ()がそれぞれの法とルールの下で生活しているのだ。

つまり外に出られてしまえば箱庭では裁けない。しかし“契約書類”の強制執行であるならば、どれだけ逃げ出そうが“契約(ギアス)”を振り切ることはできないのだ。

 

 

「それにね、私は道徳云々よりも、あの外道が私の活動範囲内で野放しにされることも許せないの。ここで逃せばいつかまた狙ってくるに決まっているわ」

 

 

「ほんでああいう手合いは忘れた頃にやって来て手ェ出してくる。あんなんはいつまでも恨みは忘れへんかんな」

 

 

「うぐ……」

 

 

更に釘を刺すように昂樹が続けると黒ウサギは黙ることしかできず、結局

 

 

「はぁ~……仕方がない人たちデスね。まぁいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。“フォレス・ガロ”程度なら1D(ダース)居ようが十六夜さん1人いれば楽勝でしょう」

 

 

それは蛇神(・・)を圧倒した十六夜に対する黒ウサギの偽りなき正当な評価であり、だからこそ諦めもついたのだろう。だが忘れてはいけない。

彼ら4人は黒ウサギの発想の斜め上どころか垂直上を行くような人間(問題児)であるということに。

黒ウサギのその言葉に十六夜と飛鳥は怪訝な顔をして

 

 

「何言ってんだよ。俺は参加しねぇよ?」

 

 

「当たり前よ。貴方なんて参加させないわ」

 

 

フン、と鼻を鳴らし合う2人。それを、ま、そーやろーなー、と苦笑しながらも止めない昂樹やそもそも興味を示していない耀に黒ウサギは慌てて食ってかかる。

 

 

「だ、ダメですよ!皆さんはコミュニティの仲間なんですから!ちゃんと協力しないと「そういうことじゃねぇよ、黒ウサギ」…へ?」

 

 

十六夜は真剣な顔で黒ウサギを右手で制する。

 

 

「いいか?この喧嘩はコイツらが売った(・・・)。そして奴らが買った(・・・)。なのに俺が手を出すのは無粋だって言ってるんだよ」

 

 

「あら、わかってるじゃない」

 

 

「まぁ、逆廻も男の子やからなぁ」

 

 

「……あぁもう好きにしてください」

 

 

丸1日振り回され気力も体力もごっそりと無くなってしまった黒ウサギは力なく肩を落としたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、色々と予定をすっとばした事になってしまった“ノーネーム”の面々。今はジン以外の5人がある場所へと向けて歩を進めていた。

 

 

「なぁ、黒ウサギちゃん。“サウザンドアイズ”って何の名前なん?お店?」

 

 

「YES。お店であり、コミュニティの名前です。“サウザンドアイズ”は特殊な“瞳”のギフトを持つ者達の群体コミュニティ。箱庭全てに精通する超!巨大商業コミュニティです。

幸いこの近くに支店がありますし、そこで皆さんのギフトの鑑定をお願いしようかと」

 

 

「ギフトの鑑定?」

 

 

「えぇ。ギフトの秘めた力や起源を鑑定することデス。自分の正しい形を把握しておいた方が引き出せる力はより大きくなります。自分の力の出処はきになるでしょう?」

 

 

同意を求める声に皆複雑な表情を作る。特に昂樹は自分のギフトについて以外にも、“サウザンドアイズ”の話の中に出てきたことが気になっていた。

 

 

(“瞳”のギフト、か……。こりゃワイのもんと似たもんもあるんやろか…。知りたいなぁ、ちゅーか話がしてみたいもんや)

 

 

そんな風に考えていても歩みが止まることはなく道中の町並みを眺めることで考えを違う方に向けていた。

彼らが歩いている場所は商店へと向かうペリペッド通り。石造で整備されており脇を埋める街路樹は桃色の花を散らし、新芽と青葉が生え始めている。その様を見て飛鳥は不思議そうに呟く。

 

 

「桜の樹、ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」

 

 

「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合の入った桜が残っていてもおかしくないだろ」

 

 

「…?今は秋だったと思うけど。栗が美味しかったし」

 

 

「あり?今は真冬ちゃうん?こないだ雪()んりょったし」

 

 

……あれ?と噛み合わない4人は顔を見合わせ首を傾げている。それを聞いていた黒ウサギは笑って説明する。

 

 

「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など、所々違う箇所があるはずですよ」

 

 

「へぇ、パラレルワールドか?」

 

 

「近しいです。正しくは立体交差並行世界論というものなのですけれど…今からこれを説明するととても時間が足りないですし、もう着いちゃいました」

 

 

黒ウサギの説明を聞いた昂樹の頭の中では何故か外国の高速道路が浮かんでいた。

さて、そんな昂樹の頭の中はともかくとして、着いた商店には蒼い生地に互いが向い合う2人の女神像が記されている。あれが“サウザンドアイズ”の旗なのであろう。

もう日が暮れて看板を下げる割烹着の女性店員に黒ウサギは滑り込みでストップを

 

 

「まっ」

「待った無しです。お客様、うちは時間外営業はやっていません」

 

 

……かける事すらできなかった。黒ウサギは悔しそうに店員を睨みつけるが1人、すっと黒ウサギの前に出ると

 

 

ガシッ!

 

 

「アンタ!ワイと一緒に漫才No.1を目指せへんか!?」

 

 

「「「「……………は?」」」」

 

 

「申し訳ありませんが私はこの店の店員ですのでお断りします」

 

 

1人…そう、昂樹は何を思ったのか女性店員を……口説いているといっていいのだろうか?

突然の出来事に“ノーネーム”の女性陣は呆け、十六夜は面白そうにニヤニヤしている。

しかし、流石は超大手の商業コミュニティの店員だ。冷静に、というか冷めた目で返す。

 

 

「いいや!アンタのそのツッコミの腕を見込んで!アンタがツッコミ、ワイがボケ!そんで世界1を目指そうやないか!」

 

 

それでも昂樹は止まらない。だが店員もさるもの。何度も軽く返し決して乗ることはない。というか乗るわけがないだろう。

そんな混沌(カオス)の場に更に

 

 

「いぃぃいいいいやほぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!久しぶりだ黒ウサギィィィィィイイイイイ!!!」

 

 

呆けていた黒ウサギが和装ロリの白髪の少女に抱きつか(フライングボディーアタックさ)れ少女と共に吹き飛んでいく。

それを頭を動かし追っていく3人。そう3人。

異邦人最年長は未だに店員を口説き続けている。そんな正しくツッコミ不在の状況にとうとう飛鳥は耐え切れずに叫ぶ。

 

 

「なんなのよ!この状況!!」

 

 

どうもこうもなくこういう状況であるとしか言えないと思った三毛猫であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてはて、あのカオス空間もどうにか脱し、黒ウサギに抱きついていた少女の部屋へと招かれた5人。

個室というには若干広い和室の上座に腰を下ろした彼女は話し始める。

 

 

「では自己紹介と行こうかの。私は四桁の門3345外門に本拠を構えている“サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があっての。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっておる器の大きな美少女と認識しておってくれればよいよ」

 

 

先程までの黒ウサギに対してのアホな姿とは違い、どことなく威厳を感じさせるその姿と言葉に、しかし黒ウサギは投げやりに返す。

 

 

「はいはい、お世話になっておりますよ、ホントーに」

 

 

…失礼。若干の冷めた目と共に、であった。

そんな隣で耀が小首を傾げて白夜叉に問いかける。

 

 

「その外門って、何?」

 

 

「ふむ。箱庭の階層を示す外壁にある門のことだ。数字が若ければ若いほど都市の中心部近くでの、同時に強大な者達が住んでいる、という感じじゃな」

 

 

此処、箱庭は上層から下層まで7つに分かれており、それに伴い、それぞれを区切る間には数字が与えられいる。外から七桁、六桁となっていき、四桁ともなると名のある修羅神仏が割拠する正しく人外魔境といった体である。

そんな場所に本来ならいる彼女はこの最下層では神に等しき強さを持つ者と考えてもいいだろう。

さて、そんな箱庭の簡単な上から見た図を示された問題児一同はというと

 

 

「…超巨大玉ねぎ?」

「う~ん、どっちかてーとネギじゃね?」

「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」

「そうだな。どちらかというとバームクーヘンだな」

 

 

なんて身も蓋もない感想なのだろうと肩を落とす黒ウサギに対し、白夜叉は呵呵大笑し、2,3度頷いた。

 

 

「ふふ、おんしら、なかなかうまいこと例えるな。その例えであるならば、今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分にあたるな。

更に説明するならば、東西南北の4つの区切りの東側だ。外門のすぐ外は“世界の果て”と目と鼻の先。あそこはコミュニティに属しておらんが強力なギフトを持ったモノが多く棲んでおるよ―――――その水樹(すいじゅ)の持ち主などが、な」

 

 

白夜叉は薄く笑い、黒ウサギが抱えるそれ―――“世界の果て”にあるトリトニスの滝に棲む蛇神を力任せ(・・・)に打倒し手に入れた水樹の苗を指したのであった。

 

 

「して、一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ?知恵比べか?勇気を試したのか?」

 

 

白夜叉は興味深そうに問う。当然であろう。神相手に人の子が力比べで勝ったとは夢にも思わないのだから。

どのようにして考え勝ったのか。彼女も他の修羅神仏と変わらず、人の知恵や勇気が大好きなのだから。

 

 

「いえいえ。この水樹は十六夜さんがここに来る前に蛇神様を素手で叩きのめしたのですよ」

 

 

黒ウサギが自慢気に豊かな胸を張り言うと白夜叉は声を上げてたいそう驚いた。

 

 

「なんと!?クリアではなく直接的に倒したというのか?!ではその(わらべ)は神格持ち……ではないか」

 

 

「ですね。神格持ちならば一目でわかりますし」

 

 

神格、それは種の最高ランクに体を変化させるギフトの事を指すものである。ようは遊●王のLv.アップモンスターやデ●モンを想像すればわかりやすいだろうか……。

また神格は自身の持つギフトを同時に強化するという特性を持ち合わせている。そのため神格持ち=強いという解釈で問題ないだろう。

 

 

「ところで白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?」

 

 

「知り合いも何もアレに神格を与えたのは私なのだぞ?もう何百年も前の話だがの。そうだ、黒ウサギもいるか?1週間私の好きなようにされるという契約で……」

 

 

「このお馬鹿様!!」

 

 

スパーン!と見事なハリセンが白夜叉に炸裂した。

と、それまでの話を聞いていた十六夜が瞳に物騒な色を携えて問う。

 

 

「へぇ?じゃあオマエはあの蛇よりも強いのか?」

 

 

「ふふん、当然だ。私は東側の“階層支配者(フロアマスター)”だぞ?この東側四桁以下にあるコミュニティでは並ぶ者がいない“最強の主催者”なのだからの」

 

 

“最強の主催者”――その言葉に若い問題児達は一斉に目を輝かせ、1人はあらら、という風に肩をすくめ“瞳”を開く。

 

 

「そう……ふふ。ではつまり貴女のゲームをクリア出来れば私達のコミュニティは東側最強のコミュニティということになるのかしら?」

 

 

「無論、そうなるのう」

 

 

「そりゃ景気のいい話だな。探す手間が省けた」

 

 

3人は闘争心をむき出しにして白夜叉を見、それを白夜叉は楽しげの笑う。

 

 

「抜け目のない者達だのう。依頼しに来ておきながら私にギフトゲームを挑もうとするとはの」

 

 

「え?ちょ、ちょっと皆様!?」

 

 

慌て始める黒ウサギを白夜叉は扇子を口元に持っていきながら右手で制した。

 

 

「よいよい黒ウサギ。私も遊び相手を欲しておってなぁ。私としても願ったり叶ったりじゃよ」

 

 

「ノリ、えぇなぁ、白夜叉()

 

 

その姿を昂樹は額に脂汗を(にじ)ませながら白夜叉を“視る”。

それを視界に収め、白夜叉は愉快そうに笑った。

 

 

「ほう…おんしはなかなかの“瞳”を持っておるな。

――――――さて、ゲームを始める前に1つ訊いておかねばならぬことがある」

 

 

「なに?」

 

 

白夜叉が着物の袖から双女神の記されたカードを出し

 

 

「さて、おんしらが望むのは“挑戦”か?それとも――――――」

 

 

そして壮絶な笑みを浮かべ告げる。

 

 

「――――――対等な“決闘”か?」

 

 

刹那、この場にいる全員の視界が爆発的に変化する。

いくつもの場面へと視界が移り変わり、そして……投げ出されたそこは白い雪原と凍る湖畔―――水平に太陽が廻る世界(・・・・・・・・・・)だった―――――!

 

 

「……なっ!?」

 

 

そのあまりの変容に白夜叉を除く全員が言葉を失い、そして昂樹は膝を付く。

 

 

「はぁ……ハァ…」

 

 

「ちょっ、昂樹さん!」

 

 

「ほ、結構耐えたの、おんしは」

 

 

だがしかし、それに対応を返せたのは黒ウサギのみ。何故なら箱庭に召喚された時とはまるで違う感覚に戸惑い、言葉を失くしていたのだ。

遠く薄明の空にある星はただ1つ。緩やかに世界を水平に廻る太陽のみ。

まるで星1つ…世界を1つ創り出したかのような奇跡の顕現。

喘ぐ昂樹はそれでも白夜叉を“視つつ”

 

 

「よう言うわ、アンタ。太陽と白夜の精霊、いや“星霊”、それがアンタやろ」

 

 

未だに紅い双眸を自身に向ける昂樹の胆力に内心舌を巻きながらも頷き今一度問いかける。

 

 

「いかにも。私は“白き夜の魔王”―――太陽と白夜の星霊・白夜叉。今一度問うぞ。

おんしらが望むのは試練への挑戦か?それとも対等な決闘か?」

 

 

“魔王”“星霊”白夜叉。彼女は箱庭の特権階級者であり惑星そのものという最強種の1つ“星霊”という与えられる側ではなく与える側の存在。それはすなわち種としての格自体が遠すぎるほど強大な存在だということだ(普段はそんなのを感じさせないくらい色んな意味でブッ飛んでいるが)。

十六夜は背中に心地のいい冷や汗を感じながらも白夜叉を睨んで笑う。

 

 

「水平に廻る太陽と星霊、そうか、そういうことか。白夜と夜叉(・・・・・)。あの水平に廻る太陽とこの土地はオマエを表現してるってことか。規格外だな…」

 

 

「分かるか、童。そうとも。この白夜の湖畔と雪原。永遠に世界を薄明に照らす太陽こそ、私が持つ“ゲーム盤”の1つだ」

 

 

白夜叉が声に合わせて両手を拡げると地平線の彼方の雲海が瞬く間に裂け、薄明の太陽が晒される。

“白夜”―――それはフィンランドやノルウェーといった高緯度の地域で見られる太陽が沈まない現象のことを指す。

そして“夜叉”とは水と大地、いわば地球の神霊にして悪神。

それこそが彼女―――――“白夜の魔王”なのだ。

 

 

「これだけ莫大な土地がゲーム盤…!?」

 

 

「如何にも。して?おんしらの返答はいかに?

“挑戦”であるならば手慰み程度に遊んでやろう。

―――だがしかし“決闘”を望むのならば話は別だ。魔王として、命と誇りの限り闘おうではないか」

 

 

「…………」

 

 

若い3人は即答できずに返事をためらった。

白夜叉が如何なるギフトを所持しているのかは定かではないが、これだけのことを軽くやってのけるのだ。勝ちの目が見えてこないのは確かだ。

けれども自分達が売った手前、今更取り下げるには若いプライドが邪魔をする。それでも格の違いが分からない愚者でもない。

口火を切るのを躊躇う彼らは、しかし自分が弱いこと(・・・・・・・)をよく理解し、多少なりとも彼らよりも年を経た人間がいたことが救いだった。

 

 

「白夜叉様、ワイらは挑戦を選ぶよ」

 

 

そう、膝をつき黒ウサギに肩を貸されていた昂樹だ。自分には“瞳”以外の才能が無い(・・・・・)と思っている彼だからこそ、負けるだけだと分かっている戦いを無理に背負い込む必要はないと素直に考えたからだ。

 

 

「こんだけの力があるんや、存分に試されようやないか(・・・・・・・・・)、なぁ逆廻?」

 

 

そして年長者故に若い3人のフォローも心がけなくてはならない。“瞳”を閉じた昂樹に話を振られ、その言葉の意味を正しく理解した十六夜が続く。

 

 

「あぁ、そうだな小山サン。確かにこれだけのモンができるんだ。黙って試されてやろうじゃねぇか」

 

 

その尊大な態度に1度呆けた白夜叉だったが、即座に意味を理解し大笑する。

 

 

「ハハハ、試されてやるか。いいだろう。そこな2人もそれでよいか?」

 

 

「え、えぇ、試されてやろうじゃない」

 

 

「うん、試されてやる」

 

 

こちらも同じく尊大な態度で応える。

それに口元が笑みの形にされた白夜叉は高らかに宣言する。

 

 

「よいだろう。おんしらを我が試練で相手をしてやる!

さぁ勇気を示してみろ!!」

 

 

これが問題児達とギフトゲームの初の邂逅であり、本当の意味での始まりであった―――。

 

 

      to be countinued...

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