紫はスキマから体を出し、メルト・グランチと対峙する。相手が紫だろうと彼は笑みを浮かべている。彼は宝刀を取りだし、ゆっくりと歩み始めた。すぐさま彼女はスペルカードを使った。
「四重結界。」
彼女から発動された数多い弾幕は一斉にメルト・グランチに向かっていく。彼はそれをただ黙って笑みを浮かべながら見ていた。当たる寸前の時だった。避けられる筈のない場所からメルト・グランチが一瞬にして消えたのだ。紫は驚きながら辺りを見渡す。
「どこへ放っている。私はここだ。」
背後から声がして、彼女はすぐに振り返る。そこには無傷のメルト・グランチがいた。余裕の表情を浮かべながらか彼女を見ていた。紫は草薙の剣を彼に降り下ろす。彼もそれに対抗し、宝刀を振る。辺りに二つの剣がぶつかる音が響く。だが彼女は気づいていた。どういうわけかは分からないが、草薙の剣が壊れそうになっていた。つまり、彼の宝刀のほうが力が上だった。彼女は一端彼との距離を離して再びスペルカードを使った。
「発光虫ネスト!」
再び弾幕がメルト・グランチを襲う。だが彼は宝刀でそれを全て弾いた。弾かれることを悟っていた彼女は追い討ちをかけるようにスペルカードを使う。
「ぶらり廃駅下車の旅!」
彼女の背後から大量の列車が現れ、一斉にメルト・グランチに向かっていく。一瞬少し驚いた表情をした彼は左手を上げ、そのまま握り拳を作った。その瞬間、列車が全て爆発した。再びスペルカードを使おうとした紫だったが、急に目の前にメルト・グランチが現れ、そのまま紫の腹部を斬りつけた。彼女はそのままうずくまり、不意打ちをしようと草薙の剣を彼に突こうとする。だが彼はそれを左手で受け止めると、そのまま草薙の剣を握り潰した。そして彼は紫の背中を踏みつけた。
「ガハッ・・・」
力が強いためか、彼女は吐血した。そして彼は宝刀を上げ、そのまま彼女を斬りつけようとした時だった。
「?」
突然何かを感じたメルト・グランチがある方向を見る。それは守谷神社だった。
守谷神社では急におかしくなった村山に一同は目を大きく見開いていた。
「ミクさん、あれは何ですか?」
「さっきモルトさんが言ってた応報よ。気をつけないと一瞬でやられてしまうわ。」
おかしくなった彼を見つめる中、麻里が美鈴の肩を叩き、言った。
「美鈴、協力してもらいたいことがあるの。手伝ってくれる?」
「もちろん。で、何をすればいいんですか?」
「萃香と美鈴で奴を誘き寄せて。その間に私が奴に強烈な一撃を当てるわ。恐らく、チャンスは一回よ。」
「みんな、全てをかけるわよ!」
そう言うと美鈴は腕が痛むことを忘れて村山に蹴りや殴りをどんどん入れようとする。彼もそれを防ぐために大鎌で防ぐ。その間に萃香がスペルカードを使った。
「四天王奥義三歩壊廃!」
彼女達はどんどん彼に攻撃していく。彼が彼女達に攻撃しようとした時だった。麻里が全ての力を貯めて村山に攻撃を放った。
「マスタースパーク!」
そのまま彼女の攻撃は彼に命中した。マスタースパークが当たった場所からは砂埃が舞っていた。その中には仰向けで倒れている村山がいた。麻里達はじっと彼を見つめる。突然村山がゆっくりと起き上がった。そして言った。
「おやおや、思ったよりも傷が深いようですね。私の力ではもう応報は使えないようだ。」
「さ、終わりよ。小太郎。」
「終わり?成程。あなた方はこれで全てが終わったと思っているのですか?まだ私がいますし、あの方の計画が成功すればあなた方は終わりですよ。」
「あの方の計画?まさかメルト・グランチの!」
「そうです、我が主、メルト・グランチ様の計画です。それが成功すれば!!」
その瞬間、突然誰かが村山の背中を斬りつけた。彼の背中からは鮮血が飛び散る。そのまま彼は地面に倒れた。
「さっきから調子に乗ったことばかり言いやがってよ、頭が腐りそうだ。」
そこにいたのは啓介だった。彼の後から霊夢と妖夢がやって来た。
「啓介!無事だったのね。」
「ミク、お前は休んだほうがいいな。腕がねぇじゃねぇか。」
「それなら、私が治療しますよ。ここにいる全員を。」
「ありがとう美鈴。そうするわ。」
「さて、後は梟だけですね。」
「フフフ、さてそれはどうでしょう。」
一同が一斉に彼の方を見る。村上は倒れていたが、まだ話す余力はあった。そして言った。
「まだ私は倒れませんよ!あの方の計画が成功するまで、私は諦めません!」
「うるせぇよテメェ。」
そう言うと啓介は村上の顔を蹴った。村上は笑いながら言った。
「私はこの程度では朽ちません!」
その瞬間、彼は体に違和感を覚え、その場で吐血した。啓介は冷静に村上に言った。
「テメェは無茶しすぎなんだよ。メルト・グランチのためだけに自らを犠牲にするなんて。テメェそれでも副臣なのかよ。」
「・・・・・ええ、私はこれでも副臣です。メルト・グランチ様のためならば全てを尽くす。それが帝王軍の副臣、村上小太郎の真理です。」
「そうなのね・・・・」
「どうやら、私の体が持たなくなっているようですね。」
「テメェはあいつより若いのに、先に死んでいくと言うのか?」
「この世界では生者必滅ですからね。いつ死んでも悔いは残りません。」
「そうなのね・・・・」
「ああ、メルト・グランチ様・・・あなたの元で戦えたことを・・・心から・・感謝・・・しております。では、先に・・・・失礼します。」
そう言うと彼は瞼を閉じ、そのまま動かなくなった。
「・・・小太郎。」
守谷神社を呆然と見ていたメルト・グランチは再び紫の方へと目を向ける。彼はしゃがむと紫の前髪を掴み、無理矢理顔を上げさせ、自分の目線に合わさせた。そして言った。
「たった今、私の副臣が死んだ。これから私はある魔獣を蘇らせる。」
「魔獣?まさか!!」
「そう、幻想郷でも現実世界でも恐れられている怪物。それを解き放つ。」
「やめて、あれだけは・・・・」
「卿が苦労して封じ込めたのだから、かなりの力の持ち主だということが分かる。それを解き放てばこの幻想郷は私のものだ。」
「そんなことはさせないわ!」
「フッ、卿風情の力で私を止められるとでも?無駄だな。今の卿では私を倒すことは断じて不可能。力の差がありすぎるのだよ。」
「・・・・・」
「さて、私はここで失礼させてもらうよ。早くあの魔獣の姿が見たいのでね。では、さようならだ。」
そう言うと彼は紫の前髪を放し、ゆっくりと歩み始め、そのまま霧のように消えていった。紫はフラフラしながら起き上がり、スキマを展開した。そして中へ入り、ある場所へ行った。
守谷神社では死んだ村山を一同は黙って見ていた。と、その時、モルトが急に話し出した。
「どうやらスキマ妖怪さんが来たらしいぞ。」
そう言った瞬間、麻里の背後からスキマが現れ、その中から傷だらけの八雲紫が現れた。彼女はスキマから出るとその場で倒れてしまった。
「紫様!?」
「ちょっ、紫!?」
一同が彼女の元へと駆け寄る。啓介が彼女の頭をゆっくり起こし、一同が彼女を見る。そして紫は言った。
「急いで・・・・急いで玄武の沢に向かってちょうだい・・・お願い。」
「玄武の沢?どうしてそこへ?」
「帝王が怪物を解き放つつもりなのよ。だから、急いでそれをあなた達で止めて。」
「霊夢さん!これはまずいですよ、急いで行きましょう!」
「ええ、分かってるわ。美鈴、怪我人のほうは大丈夫?」
「はい、全員治りました!」
「紫様、スキマの展開をお願いします。」
「ええ、分かってるわ。」
そう言うと紫はスキマを展開した。そして霊夢達はスキマの中へ入っていった。モルトは中へ入らず、紫を黙って見ていた。モルトと紫以外の全員が中へ入っていった後、彼女はスキマを閉じ、彼を見た。そしてモルトに尋ねた。
「闘王さん、何故あなたは行かないのかしら?」
「俺は後から行く。奴が疲れている時を狙うんだ。」
「流石闘王ね。私は少し眠ってるとするわ。」
「ああ、ゆっくり休め。奴のことは俺達に任せろ。」
「承知したわ。」
そう言うと紫はスキマの中へ入っていった。その後、モルトは加奈子が眠っている守谷神社に結界を張った後、どこかへ消えていった。
スキマから出て玄武の沢へ着いた霊夢達。
「ごきげんよう、やはりスキマ妖怪の力を借りたのだな。」
低い男の声が奥から聞こえた。そこには面積は65㎡ほどの大きさの湖とメルト・グランチがいた。
「帝王!これからどうするつもり?」
「これを見てくれたまえ。」
彼が指差す方向。そこには天井にある綱で体を縛られて気を失っている咲夜がいた。
「咲夜!」
「咲夜さん!」
「テメェ!咲夜をどうするつもりだ!」
「彼女は魔獣を呼び覚ますための生け贄だ。」
「生け贄だと!?そんなことはさせないわよ!」
「おや、これは土地神の・・・・成れの果てか。まあ、それはどうでもいい。さて、卿らは今、千年前の魔獣をこの場で見ることが出来る貴重な時だ。十分に興奮したまえ。」
「テメェのことになんか興奮しねぇよ!」
「しないか。ならば黙って見ているといい。」
その瞬間、メルト・グランチは左腕を上げて指を鳴らした。その瞬間、咲夜を縛っていた筈の綱が切れ、そのまま彼女は湖へ落下していった。と、その時だった。黒い影が落ちていく咲夜を救出したのだ。影は彼女を啓介に渡した。彼は咲夜を抱えながら影を見る。影の正体は白い刀を持ち、目は茶色く、勇ましい格好をしている青年、隼人だった。
「は、隼人じゃねぇか!」
「よっ、啓介。無事だったんだな。良かったよ。」
「疾風の青年よ。卿は何故私に殺されかけてもなお、生きてられるのかね?」
「小宝さんが助けてくれたんだよ。あとしばらくすれば妹紅も来る。」
「そうか、剛岐の仕業だったか・・・」
「さ、これで生け贄が消えたわ。正々堂々と勝負しなさい、梟!」
「フッ、卿らはこれで私の計画をするための生け贄がもうないとでも?勘違いだよ。」
そう言った彼は背に回していた左手を前に出し、持っているものを霊夢達に見せた。それは赤く、クリスタルのような形をしているものだった。美鈴はそれに見覚えがあり、すぐにメルト・グランチに言った。
「梟!何故フラン様のものを!」
「なっ!?あれはフランの?」
「そう、これはレミリア・スカーレットの妹の体の一部。宝に値すると思っていたのだが違っていてね。折角だから万が一咲夜が救出された際に生け贄に捧げるとしようと考えていたのだ。」
「なんだと!?」
「さあ、見てるがいい。魔獣の復活を!」
「しまった!」
そう言うと彼はクリスタルを湖の中へ落とした。その瞬間、湖が赤く染まり、地面が揺れ始めた。天井からは岩が落ちる。危険と感じた霊夢達は急いで玄武の沢から脱出した。その瞬間だった。玄武の沢から巨大な何かが現れた。砂埃が舞ってすぐには分からなかったが、晴れた瞬間、一同はそれが何だかをすぐに理解した。
「霊夢さん、これは・・・」
「嘘でしょ。」
「出雲の国で伝えられている怪物・・・」
霊夢達は絶望を味わったかよように嘆いた。そこには八つの頭に八本の尻尾、宝石のように赤く染まる目、そして八つの谷を越えるほどの巨大な怪物。
「見たまえ、これが千年前に日ノ本にいたとされる怪物だよ。」
メルト・グランチが怪物の頭の上から言う。この場にいる全員がその怪物の名前を言った。
「八岐大蛇。」
次作は魔獣です。メルト・グランチによって放たれた怪物八岐大蛇。果たして霊夢達の運命は!?
次作もお楽しみに!