霊夢は天子に手伝ってもらい、腹を押さえながら起き上がった。二人もメルト・グランチと対峙する衣玖に加わった。そこへ衣玖がメルト・グランチに言った。
「いえ、今私には永江衣玖という名前があります。なので今の私は名もなきモノではありません。」
「そうか。卿は名を貰えたのだな。どこかの心優しい者が卿に名を与えたのか。ならば今の卿の名をいただくとしようか。」
「私はあなたには負けられません。あの時のようになっては元も子もないので。」
「私も戦うわよ。」
「総領様?あ、ありがとうございます。」
「さて、さっさと始めるわよ!」
そう言うとまず霊夢が夢想封印を放つ。メルト・グランチはそれを片手で受け止めた。その隙に天子が緋相の剣を振りかざす。だが彼はそれを後ろ向きのまま防ぎ、天子を殴り飛ばした。飛ばされる彼女を衣玖が受け止めた。
「悪いわね、衣玖。」
「いえ、このくらいはどうということはありません。」
立て続けにメルト・グランチが火渦を起こし、霊夢達に向かって放つ。三人はそれを避け、それぞれスペルカードを使った。
「非道是非の剣!」
「五爪龍の珠!」
「夢想封印!」
三人の攻撃が一斉に彼の元へ向かって行く。だが彼は笑みを浮かべているままだった。と、突然彼が左手を上げた。そして言う。
「神槍、・・・」
「なっ!?」
その瞬間、霊夢達が見覚えのある紫の槍を生み出し、そのまま三人の攻撃に向かって投げた。三人の攻撃は呆気なく壊され、槍が三人に向かって飛んできた。その瞬間に爆発が起こった。砂埃が舞い、中から出てきたのは霊夢と衣玖だった。天子はまともに攻撃を喰らったため、そのまま意識を失っていた。霊夢はよろめきながら彼に尋ねた。
「あんた、何でその技を使えるのよ。」
「私であると考えればこのくらい当然だろう?」
「いえ、当然ではありません。」
「そうよ。今あんたが放ったのはレミリアの使う、『スピア・ザ・グングニル』よ。」
「力を置いて私が屍を残すとでも思っていたのかね?折角だからいただいておいたよ。」
「人の物を奪うなんて、帝王梟雄。あなたは邪気に満ちた存在ですね。」
「そうだな。さて、続きを始めようか。」
そう言うと衣玖は彼に向かって落雷を発生させた。その瞬間、彼は左手を上げ、指を鳴らした。その瞬間、彼は七人に分身した。そして二人に襲いかかってきた。霊夢と衣玖は攻撃を続けるが、なかなか本物に当たらなかった。
(くっ、フランの能力・・・奴め、フランまで!!)
そう思いながら彼女は分身を攻撃していく。だが彼の力が強いため、分身でも倒すことは出来なかった。 霊夢と衣玖は体を斬りつけられながらも踏ん張った。と、メルト・グランチの分身が一瞬にして消え、彼の左手から炎の剣が現れた。彼はそのまま霊夢と衣玖を切ろうと襲いかかる。二人はそれをかわしていく。と、メルト・グランチが指を鳴らした。何かに気づいた霊夢は衣玖を連れて逃げようとしたが遅かった。二人の回りには数えきれない程のナイフが二人目掛けて飛んできたのだ。
「くっ、夢想封印!」
霊夢はすぐさま攻撃を放ち、ナイフを全て弾いた。砂埃が舞っている間に隙を狙った衣玖がメルト・グランチの背後から雷を落とした。だが彼はそれを後ろ向きのまま自らの宝刀で防いでいた。
「卿の攻撃、分かりやすすぎるよ。彼の能力の前では卿らは無力だ。」
そう言うと彼はまず衣玖の腹を殴り飛ばし、次に霊夢を蹴り飛ばした。
「ガハッ・・・」
「ゴホッ!」
二人は壁に衝突し、吐血した。メルト・グランチはゆっくり衣玖に近づき、彼女の前で足を止めた。そして言う。
「卿はあの日と全く変わってないな。まるで何もしていなかったかのようだ。さて、卿からはあるモノを貰うとしようか。」
「あぐっ!?」
そう言うと彼は衣玖の首を掴み、持ち上げた。そして彼女の首を締め上げながら霊夢を見て言った。
「名もなきモノの真実を教えよう。彼女の本当の名は沢山薫。私の公を討ち取った英雄だよ。」
「あんたの公なんてどうでもいいわ。とにかく、衣玖を放しなさい!」
「私は彼女からあるモノを貰うのだよ。何故放す必要があるのかね?まるで理由が分からないな。」
「くっ、・・・あなたは・・・・因果応報と言う言葉を、知って・・・いますか?」
「知っているがそれが何かな?」
苦しみ、もがきながらも衣玖はメルト・グランチに言った。
「悪い行いを、すればあなたには・・悪いことが、報いるでしょう・・・。」
「・・・・・・」
彼は黙ったまま彼女を締め上げていた。そして笑みを浮かべながら言った。
「これはこれは、卿は私が討ち倒されるとでも思っているのかね?」
「ええ、思って・・ますよ。」
「そうか。ならば私も倒されぬように対策を取るとしようか。その前に、卿からは名前を貰おう。」
「なっ、やめなさい!」
霊夢が必死に叫ぶが、彼の耳には聞こえてはいなかった。そして彼は衣玖の首を絞める力を強くした。衣玖は必死に抵抗するが全く歯がたたなかった。彼女の意識が遠くなりかけた時だった。突如上空から二人の影が現れた。影は霊夢の前に立ち、メルト・グランチを睨む。
「こいつでいいのかしらね、帝王梟雄って。」
「あの背丈、あの宝刀を見る限り、本人だと思われますよ、お姉様。」
「あ、あんた達は・・・・」
「これはこれは、お久しぶりね。人間さん。」
霊夢の前に現れたのは月人である姉妹、綿月豊姫と綿月依姫だった。普段地上には降りてこない二人が突如降りてきたことに霊夢は唖然となった。
「な、なんであんたはこいつが黒幕だって分かったの?それとどうして地上が危ないと感じたの?」
「ついさっき、八意様との通信が切れましてね、そしてレイセンからの情報で地上が危機に迫っていると聞きましたからね。」
「ほう、月人の綿月豊姫と綿月依姫か。これは楽しめそうだな。名前を貰う前に少し戯れるとしようか。」
その頃、隼人達は。八岐大蛇に苦戦している中、モルトとマーグルの乱入に驚くしかなかった。
「モルト!どうして今頃なんだよ。もっと早く来てくれよ。」
「悪いな啓介。俺達にはある作戦があるもんでな。」
そう言うと二人は八岐大蛇と対峙した。八岐大蛇は恐ろしい顔つきで二人を睨みながら唸っていた。
「グルルルル・・・」
「大蛇なのに唸るとはな。」
「さて、モルト。さっさとやろうか。」
そう言うと二人は八岐大蛇に向かって行った。怒りに満ちた八岐大蛇は二人を絞め殺そうとするが二人はそれを意図も簡単に避けた。そして始めにモルトが一番端の頭を切り落とした。
「す、すげぇ・・・」
隼人達でも切り落とせなかった頭を簡単に切り落としたモルトを見て隼人達は驚きを隠せなかった。さらにマーグルが頭を三つ同時に切り落とした。さらにモルトはマーグルと力を合わせ、八岐大蛇の全ての頭を切り落とした。頭部を失った八岐大蛇はそのまま地面に崩れ落ちた。倒れた衝撃で砂埃が舞った。隼人達は二人の元へ駆け寄る。と、二人が八岐大蛇の頭に近づき始めた。
「ちょっ、モルトさん。危ないですよ!」
「二人とも、戻ってきなよ!」
萃香や早苗達は必死に二人に呼び掛ける。が二人は冷静に早苗達に言った。
「問題ねぇよ。俺達はこいつにあることを聞くんだからな。」
そう言うと二人は八岐大蛇の一つの頭に近づいた。まずモルトが言った。
「答えよ魔獣、お前は何者だ?」
モルトの行動に一同は言葉を失った。隼人達はただ黙って見ていた。と、八岐大蛇が言葉を返した。
「余は憎しみ、怒り、悲しみ。数多最悪の頂点に座する者なり。」
「頂点!!」
「つまり、化け物たちにとって一番上の奴か。」
「何故こいつらを襲った?」
「憎悪に包まれた梟に余は操られていた。無意識のまま動き、今や朽ち果てた姿ぞ。」
「なっ、メルト・グランチに操られた!?」
「成程、それであいつは自身の邪気に包まれたフランの翼の一部を使ったのか。」
「じゃあ、咲夜さんは何だったって言うのですか!」
「恐らく、ただの囮だ。」
「ね、ねぇ八岐大蛇。良かったら私達と共にあの梟を倒さない?あなたがいれば奴なんて余裕よ。」
「・・・・お前達の言葉には感謝なり。だが朽ち果てた余の体では奴を倒すこと叶わぬ。」
「そんな・・・・」
「じゃあ、お前は戦えないっていうのか。」
「だがお前達の心は強い。その強き心を持っているお前達なら、奴を倒すこと叶うなり。」
「それは本当か?八岐大蛇。」
「幾度となく続く試練を越えれば叶うなり。」
「分かった、ありがとう八岐大蛇。」
「余は期待している。その期待を裏切ることなかれ。」
そう言うと八岐大蛇の体がみるみる砂になっていき、遂には跡形もなく消えていった。モルトとマーグルは隼人達を見て言った。
「霊夢はどこだ!」
「あの奥にいます。恐らく、今頃は梟と戦っていることでしょう。」
「今すぐ行くぞ。奴の好きにはさせない!」
そう言うと隼人達は霊夢達の元へ走って行った。
その頃、霊夢達は。メルト・グランチと激戦を繰り広げていた。豊姫と依姫は戦っている中、あることを思っていた。
(すごい、私達を圧倒する力を持つ者が地上にいるなんて・・・)
(これは十分注意したほうが良さそうですね。)
メルト・グランチは左手を上げると黒渦を起こし、爆発させた。その衝撃で三人は吹き飛ぶが、体勢を立て直してすぐに攻撃を続ける。三対一だというのに全く彼に歯がたたなかった。少し疲れが三人から出てくるが、メルト・グランチからは全く疲れている様子が見えなかった。メルト・グランチは霊夢の腕を掴み、そのま豊姫に向かって投げた。豊姫は彼女を受け止めようとするがそのまま壁に衝突した。
「お姉様!」
豊姫の元へ依姫が向かおうとするがその行く手を防いだ。メルト・グランチは依姫の首を掴み上げ、言った。
「卿から生じるモノは・・・」
「夢想封印・瞬!」
マズイと感じた霊夢はすぐさま弾幕を放った。霊夢の攻撃は見事命中し、メルト・グランチは依姫を放してしまった。彼は霊夢達を見ながらグングニルを作り上げ、それを投げた。三人はそれをかわし、弾幕を放つ。だが彼はそれを炎で全て弾いた。豊姫と依姫はそのままメルト・グランチに向かって行くが、砂埃が消えた時にはメルト・グランチの姿は無かった。その時だった。ドスッという音が辺りに響いた。霊夢は二人を見て唖然となった。豊姫にはグングニルが、依姫にはメルト・グランチの宝刀が刺さっていたからだ。
「ぐふっ。」
「ゴフッ。」
二人はそのまま吐血し、地面に倒れた。メルト・グランチは飛び散った鮮血を刀で拭った。その瞬間、宝刀に付着していた鮮血が宝刀の中へ吸収されていったのだ。霊夢はそれを見た瞬間、鳥肌が全身にたった。そしてメルト・グランチは霊夢に不気味な笑みを見せながら言った。
「さて、卿には過去の真実を教えなければならないな。」
「過去の・・・真実?」
次作は真実です。メルト・グランチから語られる過去の出来事。果たしてその内容とは!?そして隼人達は無事メルト・グランチとの戦いに間に合うことが出来るのか!?
次作もお楽しみに!