「そう、卿がまだ幼い頃の話だ。先程言った通り、博霧合戦は博麗家と霧雨家による権力争い。その源と真実を語ってあげよう。」
霊夢は呆然としながらただメルト・グランチを見ていた。そして、彼は話し始めた。
「時は八年前、幻想郷には二つの妖怪退治専門の一家があった。それが博麗家と霧雨家だ。両者が争うことは一切起こるはずないのだよ。何故ならその一家達は妖怪を退治することだけを考えていたからだ。だがそれにより両一家は人里の者達から恐れられた。理由は単純で妖怪を意図も簡単に倒せる程の力を持っているからなのだよ。後に博麗家の中心人物、卿の母親は仮面で顔を隠すことにした。理由は明らかではないが。彼女は妖怪退治をしている中、ある妖怪に会い、少し心を緩めてしまった。その妖怪は卿も知っている、宵闇の妖怪ルーミアだ。卿の母親は彼女を殺さなかった。それは道具として利用するため。」
「私のお母さんがルーミアを道具のように使うことなんてないわ!」
「卿はそう思っているが、彼女はそうした。理由は後に霧雨家と争うことを予期していたからだ。そして、妖怪退治の評判は博麗家が多かった。それは博麗家の退治の方法が大胆過ぎたからだ。そして、霧雨家は自らの評判を上げるべく、博麗家を打ち倒そうと判決した。博麗家も霧雨家が襲ってくることを予期し、合戦に備えていた。そして遂に無縁塚の地で博霧合戦が始まった。力的には博麗家が断然有利だった。だがある人物によって霧雨家が有利となり、最終的には博麗家は卿の母親のみ残り、霧雨家が危うく勝利した。両一家には子供がいてね、それが卿と卿の友達なのだよ。卿の母親は博麗神社の前で力尽きた。その時の状況を私は鮮明に覚えているよ。」
「なっ、あんた幻想郷に来てたの!?」
「無論。私は卿の母親とは腐れ縁のようなものだったのだよ。私が博麗神社に来たとき、彼女は仰向けで倒れていた。私に気がつくと笑みを浮かべた。私はすぐに駆け寄り、傷の具合を見た。生憎、治せる傷ではなかった。彼女は私を見てこう言った。‘私を殺して,と言った。」
「そんな、お母さんがそんなこと言うなんて・・・・」
「私は拒否した。彼女を殺すことなど出来なかった。そこで私は別の者に彼女を殺させた。それがあの宵闇の妖怪だ。宵闇の妖怪に彼女を殺させる代わりに私はあることをした。それは霧雨家への復讐、つまり抹殺だ。」
「殺したってこと?」
「そう、私は満身創痍で残っている霧雨家の者を一人残らず殺した筈だった。だが卿の話によると一人生き残っているようだな、後で殺すとしようか。それはさておき、私が博麗神社に戻ってくると宵闇の妖怪は幼い子供になっていた。だが私はそれが誰の仕業かすぐに理解した。それは幻想郷の妖怪賢者、八雲紫だと。彼女は宵闇の妖怪を封印し、子供の姿にした。だがそれももう終わる。時の流れは速い。今夜彼女にかけられた封印が解かれる。おっとそうだ。卿は霧雨家に協力したある人物を知っているかね?」
「魔理沙と関係のあった人?まさかその人って・・・・」
「然り。卿もよく知っている、この幻想郷に滞在していて香霖堂の店主を務めている男、『森近霖之助』だ。」
「そんな・・・霖之助さんが霧雨家の勝利の切り札だと言うのつもりなの?」
「左様。彼は博麗家、霧雨家の両一家と関係を持つ人物だった。だが合戦の時、彼はどちら側につくかの心の中で迷宮をさ迷っていた。そして彼が出した答えは霧雨家につくこと。なんせ彼は霧雨家の弟子だったからだ、簡単に師を裏切ることなど出来やしないだろう。彼は合戦が終わった瞬間、無縁塚から姿を消した。理由は己の身を隠し、他者からの抹殺を避けるため。彼はエゴイズムを欲していたのだよ。彼は自らアイデンティティーを捨て、他者からの襲撃が来ないと判断するまで香霖堂に籠っていた。時は流れ、彼は香霖堂から顔を出し、もう誰も自分を殺さないと判断し、今に至る。」
「もう、いいわよ。」
「?」
霊夢の突然の言葉にメルト・グランチの表情が一変し、思わず首を傾げる。そんな彼とは別に霊夢が言う。
「あんたの話はもう聞き飽きたわ。霖之助さんがエゴイズムを欲する?ルーミアの封印が解かれる?そんなことどうだっていいわ!私はあんたを倒すことだけを考える。覚悟しなさい、帝王梟雄!」
「ハハハ、私の話に飽きたかね。卿のその減らず口を益々塞ぎたくなってきたよ。」
「上等よ、今ここであんたを退治する!」
そう言うと霊夢は飛び上がり、上から彼目掛けて弾幕を放つ。それに対抗するために彼は左手を上げ、人差し指から緑の光線を放った。力はメルト・グランチが圧倒的に上だったため、霊夢の弾幕は全て弾かれた。霊夢はそれを理解していたので、彼女はメルト・グランチの目の前まで来るとスペルカードを使った。
「夢想封印・瞬!」
目の前で彼女はメルト・グランチに殴りや蹴りを休む間も与えずに入れていく。だが彼はそれを全て受け止めた。そのまま彼は霊夢を蹴り飛ばした。霊夢は上に飛ばされながらも体勢を立て直した。
(あまり使いたくなかったけど、奴を倒すにはこれしかないそうね。)
そう言うと霊夢はスペルカードを取り出した。メルト・グランチはそれを見て少し目を見開いた。そして彼女はスペルカードを使った。
「夢想転生!」
彼女はそのままメルト・グランチに放った。だが彼は笑みを浮かべたままだった。と、彼は背に回していた左手を前に出した。
「なっ!!」
霊夢は彼を見て目を大きく見開いた。彼の左手には見覚えのあるスペルカードがあった。そして彼はそのスペルを発動し、霊夢の放った夢想転生に放った。彼の放った攻撃は彼女の夢想転生を遥かに越える力を誇っていた。霊夢は彼の攻撃をかわすことが出来たが爆風に巻き込まれ、そのまま壁に衝突した。
「ぐっ、」
その瞬間、メルト・グランチが彼女の目の前に来て彼女の腹を蹴った。
「ガハッ!」
霊夢は腹を圧迫され、その場で吐血した。霊夢はメルト・グランチを睨みながら言った。
「あんた、どう・・して、使える・・・のよ・・・」
「おや、私であればこのくらいは容易いだろう?」
「容易いわけないでしょ?それは本来・・私のような、博麗の巫女しか・・・使えない技・・夢想転生なのよ!」
「確かに卿の言う通り夢想転生は博麗の巫女と呼ばれる者しか使えない技だ。だが私は彼女の夢想転生を見て私のオリジナルの夢想転生を作り上げたのだよ。」
「作り上げた?そんなこと・・・・」
「あり得るのだよ。そして私の夢想転生は卿と卿の母親とは全く違う次元のモノだ。卿の母親の夢想転生は己の力と邪気と相手に放つモノ。卿の夢想転生は放った後、相手の側に卿の心のクローンを置くことが出来るモノ。そして私の夢想転生は目の前にあるもの全てを消し去る夢想転生。見たまえ、そこだけ壁がないだろう?」
霊夢は彼の言うところに目を向けた。彼の言う通り、そこには壁が存在しなかった。彼女は再びメルト・グランチの方を見る。だがそこに彼はいなかった。
「実に恐ろしいモノだろう?だが、これが私の作った夢想転生なのだよ。」
「あぐっ!?」
背後から声がして振り返った瞬間、メルト・グランチの左手が霊夢の首を締め上げていた。彼女は彼の手首を両手で掴み、放れようとするが彼の左手は鉄のように硬く、放れなかった。さらに彼は霊夢の首を絞めたまま、彼女を空中に持ち上げた。これで彼女はメルト・グランチに首を絞められ、宙吊りの状態になっている。霊夢は足をばたつかせるが全く歯がたたなかった。それとは別にメルト・グランチは霊夢に笑みを見せながら言った。
「存分に楽しめたよ、博麗の巫女。」
「あがっ、かはっ。」
「卿との戦いは実に面白みがあった。流石セコンドを倒したものだ、と言うべきかな?まあ、今の卿には関係ないな。今私に首を絞められ、もがくことしか出来ないのだからね。そんな愚かな卿には『死』を贈り、『使命』を貰おう。」
「なん・・・ですって・・」
「卿の使命は人里の者を襲う妖怪を退治すること。だが卿から貰った際には使命を変えようと思う。それは幻想郷を支配し、私の思うがままの世界を創ること。卿は冥界でそれを見ていればいいのだよ。」
「あ、あぁ・・・・」
「さ、後のことは私に任せたまえ。卿は私に殺され、安らかに眠るのが一番だ。安心するといい、卿の屍は残しておくとするよ。卿の無惨な姿を見たい者がいると思うからな。では、さようならだ。」
(誰か、誰かぁ。・・・私を助けて!)
霊夢は心の中で祈ったが、誰も来る様子は無かった。死ぬのが怖い。そんなことで彼女の頭は一杯だったが抵抗することも出来ず・・・・・・・・自然と彼女の目から涙が零れる。そのままゆっくりと霊夢の瞳が閉じ、彼の手首を掴んでいた両手がだらんとなった。
「終わったか・・・」
メルト・グランチが一言呟いた時だった。突然彼目掛けてナイフが飛んできたのだ。彼は宝刀でそれを弾き、ナイフが飛んできた方向を見た。そこには意識を失っていた筈の咲夜がいた。
「・・・もう起きたのか。」
「霊夢を放しなさい、帝王。」
「残念ながら無理だな。彼女からは使命を貰うために放す訳にはいかないよ。それに卿は私に力を奪われたではないかね?そんな卿が一体何が出来るというのかね?」
「霊夢!!」
声がした方向に二人は目を向ける。そこには八岐大蛇との戦いによって傷をおおった隼人達がいた。メルト・グランチを見て啓介、早苗が怒鳴った。
「テメェ!霊夢を放せ!」
「そうです!霊夢さんを放してください!」
「おや、あの八岐大蛇を倒すとはね、卿らも大したものだな。」
「帝王、いい加減放しなさい。私は今、お嬢様と妹様を殺されたことにまだ腹が立っているのよ!」
「私もそうです!お嬢様とフラン様を殺したあなたを許しはしません!」
「主の敵討ち、か。成程な。」
「ここに倒れているのはもしかして、天人の方々と、月人の方々でしょうか?」
「どうしてこんなところに?」
「私に気づいて駆けつけたようだが、私が始末しておいたよ。安心したまえ、死んではいない。」
「安心出来ないわよ!こんなボロボロになって・・帝王!許さないわよ!」
「とっとと倒してやる!」
「土地神と鬼風情が言うか・・・面白い、その期待を私に楽しませてくれたまえ。」
「テメェ啓介らの言ったことがまだ分からないのか?霊夢を放せって言ってんのが分かんねぇのか!」
「先程言ったが、何故放す?」
「テメェ!!」
隼人がメルト・グランチに向かって行くがメルト・グランチは隼人の動きを見切り、彼の腹を蹴り飛ばした。
「ガハッ!」
隼人は壁に激しく衝突し、吐血した。そのまま彼が余所見していた時だった。突然現れた影が霊夢をメルト・グランチから助けたのだ。
「?」
彼は思わず眉を潜める。そして霊夢を助け、地面に着地する影を見る。そこには霊夢を抱き抱えたまま、黒い刀を持っている青年、西田悠岐がいた。
「悠岐!来てくれたのか!」
「俺だけじゃないぜ。」
そう言った瞬間、彼の背後から四人の影が現れた。それぞれ妹紅、慧音、幽香、アリスが来た。
「また会ったな、帝王。」
「またあなたと戦えるとなると、やる気が湧いてくるわね。」
「さ、ここでテメェを倒すぜ、メルト・グランチ。テメェの墓場はここだ!」
「よろしい。幻想郷と影舷隊の力、私に見せてくれたまえ。」
次作は憤怒と王です。メルト・グランチとの戦いの中、あることをきっかけに彼の怒りをかってしまった悠岐達。果たして彼らの運命は!?そして遂にあの男が動き始める。
次作もお楽しみに!