ここはどこだろう?目を覚ますとそこはあまり見覚えのない場所で、自分は縛られていると妖夢は自覚した。辺りを見回すと右側には気を失っていながら妖夢と同様、縛られている藍がいた。
「藍さん、藍さん起きてください!」
「んん・・・ああ妖夢か。ここは一体どこだ?」
「分かりません、私は誰かの奇襲を受けて気を失って・・そこから何も思い出せません。」
「奇遇だな、実は私も奇襲を受けた後が全く思い出せないんだ。」
「一体誰がこんなことを・・・」
「お目覚めかね?」
二人の前から男の声が聞こえた。前を見るとそこには長身で後ろ髪を束ねていて、左腕を背に回していて、宝刀を持っている男がいた。二人を見たまま笑みを浮かべていた。
「状況がだんだんと面白くなってきたよ。」
「!?」
「妖怪と幽霊達が、影舷隊の施設に身を寄せていると聞いた。兼ねてより欲していた宝、スキマ妖怪にして幻想郷最高地位を誇る八雲紫の『境界を操る程度の能力』と白玉桜で長き年月を生きる亡霊、西行寺幽々子の『死を操る程度の能力』を合わせて手に入れる好機と踏んだのだが、よもや卿らがその二人の家臣だったとは・・・。言われてみればそのいいようで分かろうものだ。」
「貴様なめているのか!」
「私達に喧嘩打って、ただで済むと思わないで下さい!」
「フフッ、」
男は二人が怒っているのに対して鼻で笑った。そして話を続けた。
「影舷隊は地王によって傷ついた妖怪達を害をなすもの有無を問わずに預かっているという話を聞くが、程無く偽善と過ぎると分かる。明日は私が行動をするや否かで両者は紛糾するだろう。それも卿らが如き雑兵を、勇力と引き換えに助けようなど、妖怪らの当主らがするはずもない。」
「やるならやれ!」
「私達はいつでも腹をくくっています!」
「フッ、だが・・・伝達隊によると、たった今スキマ妖怪と亡霊が影舷隊の施設から出て今こちらに向かっているようだ。」
「!?」
「紫様と幽々子様が・・・!?」
「だから面白くなったと言った。」
「そんな・・・紫様と幽々子様が・・・。」
「幻想郷の中でも最大の力を有するあの二人ならば、卿らを拉致しようとしたであろう影舷隊も流石に対応せざるを得ないだろうな。今の状況ではな。」
「紫様と幽々子様がそんな下手打つものですか。それに私達は何処とも同盟なんか組んでいません!」
「今の状況はそれに等しい。それとも、仲良しごっこをしているだけの影舷隊と物見のためにあの場へやって来た卿らだけと?」
「あれは違う!その・・・」
「境界の力のみならず、死を操る力を差し出すかいなかで両者は変わるだろう。他人のために力を差し出す者など、この世のどこにも存在しない。五大王・・・」
男の言葉に二人は少しピクリとなった。妖夢と藍は二人の人物が頭に浮かんだ。小宝剛岐である。そんな彼女とは別に男が話を続ける。
「かつて現実世界のバランスを保つことを命じられたはずの小宝剛岐がそれを放棄し、影舷隊に仕事を擦り付けた。奪おうとしていた現実世界を黒き刀が結託して守ろうなどと、戯れ事に過ぎる。その行為で胸襟を開いたことが仇となり今に至る。黒き刀は所詮そのような存在だ。影舷隊は過去に家族を失い、生き方を忘れた。過去に現実世界で不良戦争があったのは存知かね?」
「不良戦争?」
「確か悠岐殿達が経験した地獄と呼ばれた戦争のことか?」
「それにより彼らは数えきれない程の人を殺しているのだよ。卿らはそんな彼らを信じるのかね?」
「悠岐さん達は信頼できる仲間です。」
「そうか、君は彼らを信じるか・・・まあ悪くはないだろう。まあ影舷隊を滅ぼすのもやらないとな。」
「なっ!?」
「悠岐さん達を!?」
「嘆くことはない。卿らがこのように生を成し遂げた意味はある。大丈夫だ、死ぬ時は一瞬でする。」
その頃、紫と幽々子は・・・。スキマを用いて無縁塚に行こうとしていた。だがスキマが思うように開いてくれなかった。
「どういうこと?どうしてスキマが開かないのよ!」
「何か強い結界がこのあたりに張ってあるわね。私の力じゃ、到底壊せないわ。」
「仕方ないわね、走って行きましょう。」
そう言うと二人は走って無縁塚に向かっていった。その時だった。二人の前に長身で黒いジャンバーを着ていて、灰色のジーパンをはいていて、刀を手に持っている男が現れた。
「どうも、八雲紫に西行寺幽々子。」
「地王セコンド、何のつもりかしら?」
「君達を足止めさせるんだよ。グランチの所には行かせないよ。」
「いいわ、やってあげようじゃない。」
そう言うと二人は戦う構えをした。
その頃、無縁塚最深部では・・・。長身の男の元へ一人の忍者が来た。
「メルト・グランチ様、伝令です。」
「何かね?」
そう言うと忍者は男の耳元で何かコソコソと話し始めた。二人は男の名前をしっかり聞いた。どうやら長身の男の名前はメルト・グランチと言うらしい。忍者の話が終わるとメルト・グランチは深いため息をついた。そして二人にこう言った。
「やれやれ、私があれほど手を出すなと言ったのに手を出すとは・・・背反、背反。」
「一体何があったと言うのだ!」
「八雲藍、私の計画が地王によって水の泡となったよ。」
「!?どういうことですか」
「魂魄妖夢、地王セコンドが八雲紫と西行寺幽々子を足止めしているようだ。」
「なっ、紫様と幽々子様を足止め!?」
「残念だ、卿らの主がどのような選択をするのか楽しみにしていたのだが、計画を邪魔されては無理もないな。仕方ない、黒き刀や博麗の巫女が来るのを待つとしよう。」
その頃、悠岐と霊夢は・・・。無縁塚に来ていた。紫と幽々子を探しながら無縁塚に向かっていたが二人とは合流しなかった。仕方なく二人は無縁塚の一番奥へと向かっていった。そこにある建物が見えたことに気がついた。二人はためらうことなく中に入った。そこには二人を見て笑うメルト・グランチがいた。
「ごきげんよう、黒き刀に博麗の巫女。卿らが来ることを楽しみにしていたよ。」
「メルト・グランチ、妖夢と藍はどこだ!」
「あの二人なら私の後ろにいるだろう。好きに持っていきたまえ、もう用済みだ。」
「じゃあそうさせてもらうわ。」
二人が妖夢と藍を助けようとした時だった。メルト・グランチが左腕を上げた。そして指を鳴らそうとしていた。マズイと感じた悠岐は霊夢を無視して急いで妖夢と藍を縛っている縄をほどいた。その瞬間、パチンとあたりに音が響き、妖夢と藍が縛られていた場所が爆発した。もし悠岐が気づくのが遅かったら二人の命はなかっただろう。
「ほう、気づくのが速いようだな、黒き刀?」
「テメェ、二人を殺すつもりだったのか!」
「左様、もう用はないのだからね。人質にしたってもってのほか無駄。待つより殺したほうがよほど手っ取り早いからね。」
「殺すなんて最低な男ねあんたは!」
そう言うと霊夢はメルト・グランチに向かっていった。だが攻撃しようとした瞬間、メルト・グランチの姿が一瞬にして消えた。気づくと彼は四人の後ろにいた。
「さて、私も明日から行動するとしよう。そうだな、まずはどこから行こうか・・・」
「あなたの好き勝手にはさせません!」
そう言うと妖夢はメルト・グランチに斬りかかった。だが妖夢の攻撃はメルト・グランチの左手によって受け止められていた。そのままメルト・グランチは桜観剣をつかんだまま、妖夢を投げ飛ばした。吹き飛ぶ妖夢を悠岐は受け止めた。
「ありがとうございます、悠岐さん。」
「礼はいい、奴を倒すぞ。」
「残念だが、今は私は卿らと戦うつもりはないのだよ。明日のために備えるために今日は休ませてもらうよ。」
そう言うとメルト・グランチは霧のように消えていった。
影舷隊の小屋に戻ると傷ついた紫と幽々子がいた。それを心配そうに麻里とウロボロスが見ていた。すぐさま二人の元に妖夢と藍が駆け寄った。
「紫様、大丈夫ですか?」
「幽々子様、お怪我は大丈夫ですか?」
「ありがとう、藍。私は大丈夫よ。あなたは大丈夫だったの?」
「はい、大丈夫です。」
「私は大丈夫よ、妖夢。」
「ですが、幽々子様がこんなにも傷だらけになっていたので私心配したんですよ!」
「あら、心配してくれたのね。ありがとう妖夢。」
「いえ、幽々子様がご無事なら問題ありません。」
「ところで、二人は誰に捕らえられていたんだ?」
「ウロボロス、お前も知っている奴だ。」
「・・・まさかメルト・グランチか?」
「嘘でしょ、あの梟まで来てるなんて!!」
「明日奴はどこかを襲撃するだろう。だが場所が分からない。万が一に備えておこう。」
「その案がいいわね。悠岐君、しばらくはあなたにトップを任せるわ。みんなをまとめるのよ。」
「分かりました、あなたが休養を取っている間に出来るだけ頑張ってみます。」
「藍、妖夢。私と紫はしばらく休ませてもらうからしっかり悠岐君の言うことを聞くのよ。」
「分かりました。」
「幽々子様も早く元気になって下さいね!」
二人は笑顔を見せあった。啓介も魔理沙も怪我が癒えたため、明日から行動することになった。
「悠岐、メルト・グランチは明日どこを襲撃するんだ?」
「分からない、奴のことだ。おそらく強い力を持っている人を標的とするだろう。」
「とするとレミリア、紫さん、西行寺さん、輝夜あたりが狙われそうだな。」
「啓介も明日に備えて今日は休め。」
「分かった。」
そう言うとみんなは影舷隊の小屋で寝息を立てながら眠りについた。
今回、メルト・グランチがパクりオリジナルキャラクターとなっています。ちなみに戦国BASARAの松永久秀をパクりました。松永ファンのみなさん、申し訳ありませんでした。
さて、次回は奇襲と仙人です。メルト・グランチが幻想郷奇襲を開始し、宝を奪おうと企む。果たして霊夢達はセコンドとメルト・グランチの計画を阻止することが出来るのか!?次作もお楽しみにしてて下さい!