満月の夜、玄武の沢で身を休める霊夢達がいた。と、霊夢達のところへある少女が走って来た。彼女の名は射命丸文。その後ろには白狼天狗の犬走椛がいた。二人は相当慌てていた。文は悠岐の元へ来るとあることを言った。
「ルーミアの・・・ルーミアの封印が解かれました!」
「!?」
「ルーミアの封印が解かれた?」
「マズイな。文、場所は?」
「はい、無縁塚です。」
「無縁塚か。みんな急ぐぞ!」
そう言うと霊夢達は無縁塚へ向かった。まだ残っている五大王三人を置いて。と、剛岐が口を開いた。
「ああゆうことになるとすぐに行動しちまうよな、あいつらは。」
「そうだな、まるで彼女そっくりだ。」
「懐かしいな。」
そのまま三人は黙り込んでしまった。
その頃。無縁塚に到着した霊夢達はある人物を見つめる。その人物は黒い服に黄色く腰まで伸びる髪、紅い瞳に紫と同じくらいの背丈の少女、ルーミアがいた。彼女は霊夢達を見て笑っていた。と、悠岐が口を開いた。
「お前、本当にルーミアなのか?」
「えぇ、私よ。正真正銘のルーミアよ。随分と派手に暴れてくれたわね。」
「?お前は何を言ってるんだ。」
啓介がそう言った瞬間、悠岐の方へ赤い手のようなモノが飛んできた。彼はすぐに対応し、避けようとするが少し遅かったのか、頬に深い傷をおおった。彼は頬を抑えながら言った。
「テッ、テメェ!何のつもりだ!」
「何のつもり?決まってるでしょう?侵略者を殺すのよ。」
「侵略者?何を言ってるのよ!悠岐は信頼できる人なのよ!」
「確かにあなた達にとって彼は信頼できるかもしれない。けど、私から見ればこいつは炎を使う侵略者よ。私はこいつを信頼出来ないわ。だってレミリアとフランを殺したのはこいつでしょ?」
「違う!俺じゃない!俺はあの二人を殺すようなことはしない!」
「惚けるな!この侵略者め!私が冥界に送ってあげるわ!」
そう言うとルーミアは赤い手のようなモノを悠岐目掛けてどんどん飛ばした。彼はそれをかわしていく。だが彼には一つ問題点があった。それはルーミアを攻撃出来ないことだった。自分の味方である彼女に傷をつけることなど彼には出来なかった。そこで彼はなるべくルーミアに傷をつけないように避け続け、疲れきったルーミアを説得させるつもりである。だが彼女の怒りは相当大きく、悠岐は彼女の攻撃を避けることが精一杯だった。少し彼女に疲れが見えたと悠岐が確信した時だった。ドンッという音が響いた。そこには悠岐の腹部がルーミアの赤い手によって貫かれていた。
「ガハッ・・・」
彼は吐血し、そのまま動かなくなった。ルーミアは動かない彼を目の前まで寄せると涎を垂らしながら口を大きく開けた。
「悠岐!!」
啓介が悠岐を救おうとした時だった。突如現れた影がルーミアから悠岐を救った。影の正体はなんと剛岐だった。彼の左腕には気を失った悠岐が抱えられていた。
「馬鹿かお前。相手が誰だろうと手加減すんなよ。」
気を失っている悠岐に彼は言った。そして彼は悠岐を啓介に渡し、ルーミアの元へ歩って行った。
「あら、あなたは侵略者の仲間かしら?」
「俺か?俺はあんな雑魚の仲間じゃねぇよ。俺はあいつの師だ。」
「そう、ならあなたは侵略者の仲間ってことね!」
そう言うとルーミアは赤い手を剛岐目掛けて飛ばした。だが彼は刀を出さずに彼女の攻撃を避ける。
「アハハ、避けてるばかりでは私を倒すことなんて出来ないわよ!」
「そうかい、だったら一発いくぞ。」
そう言うと彼は目にも止まらぬ速さで彼女の目の前まで来るとそのまま彼女を殴り飛ばした。
「なんて力なの・・・ぐふっ!?」
彼女はそのまま100mほど飛ばされ、吐血した。その光景を一同はただ黙って見ていた。彼がルーミアの前までくると笑いながら言った。
「ほう、俺のパンチは吐血程度か。少し手を抜いたな。」
「何なのよあなたは。もはや人間ではないわ!」
「俺はただの人間だ。特別な力を持ったな。」
そう言うと彼はルーミアとの距離を開けた。ルーミアは彼を追いかけるかのように赤い手をどんどん飛ばしていく。
彼はそれを避け続ける。彼女が隙ありと思った時だった。剛岐は片手で赤い手の手首を掴むとそのまま握り潰した。
「なっ!?」
普通ならば溶けてしまう筈だが彼の左手には何の異変も無かった。驚きの表情を見せるルーミアとは別に剛岐は左手から紫の光を貯めた。そして技の名前を言った。
「ガイルバースト。」
その瞬間、紫の光線がルーミアを襲った。彼女は危機一髪かわしたが、その瞬間に彼がルーミアの背後にまわっていた。そのまま彼はルーミアの背中、手首を斬りつけた。彼女はそのまま座り込んでしまった。剛岐は座り込む彼女を睨む。ルーミアは彼に攻撃しようとしたが、体が思うように動かなかった。
「気づいたか?」
何かを企んでいるかのように剛岐が言った。そして続きを話した。
「俺はお前に体封印という技を使った。この技は斬りつけた場所を動けなくする技だ。今のお前は何も抵抗出来ないんだよ。」
「そうなのね・・・・」
「分かったか?とりあえず断言するが犯人は悠岐じゃない。犯人は今どこかにいる。じゃあな、宵闇の妖怪。」
そう言うと彼は霧のように消えていった。そして霊夢達は動けないルーミアを見つめる。彼女は悔しそうな表情を浮かべていた。
と、その時だった。霊夢達のところへ突如あの男が現れた。その男は剛岐よりも長身で後ろ髪を束ねていて左手を背に回していて悠々とした歩き方をしている帝王梟雄メルト・グランチである。彼の体には剛岐によって付けられた傷が完全に治っていた。まるで剛岐が帰ることを理解しているかのように。彼は笑みを浮かべながらルーミアの元へ歩み寄る。
「させるかよ!」
そこへ啓介、ミク、麻里が彼に立ち向かうが彼は見えない速さで三人の腹部を斬りつけた。三人はその場にうずくまってしまった。霊夢達も立ち向かおうとしたが体が思うように動かなかった。メルト・グランチは動けないルーミアの前までくると彼女に話し掛けた。
「久しぶりだな、宵闇の妖怪。私を覚えているかね?」
「えぇ、覚えてるとも。あなたの姿は忘れられないわ。」
「それはどうも。さて、卿にはあることを話そうと思ってね。」
「ほう、私に話したいこと?それは何なのかしら?」
「卿のやりたい事を私に授けてみないか?」
「なっ、メルト・グランチ、テメェ!」
「私のやりたい事をあなたに授ける?」
「そう、今の卿は無力だ。折角だから私が卿のやりたい事を代わりに成し遂げてあげよう。」
「・・・・悪くないわね。それで、そのためにはあなたに何をすればいいの?」
「容易いことだとも。私にあるモノをくれればいい。ただそれだけの話だよ。」
彼がそう言った瞬間、彼の左手がルーミアの胸に突き刺さっていた。その光景に一同は唖然となる。
「なっ、これって・・・・」
「卿からは源をいただこう。」
そう言うとそのまま彼は突き刺している左手をルーミアから無理矢理抜いた。彼女の胸から大量の鮮血が飛び散る。
そのまま彼女は地面に崩れ落ちた。メルト・グランチの左手には誰も見覚えがあり、普段は見ることが出来ないモノが握られていた。怒りを抱いた慧音と霊夢が彼に怒鳴った。
「お前!ルーミアに何をした!」
「あんた!ルーミアに一体何をしたの!」
「『命』という宝をいただいた。卿らには見て分からないのかね?」
「ふざけるな!お前には慈悲という言葉はないのか!」
「無いとも。私は古くから無慈悲な王と呼ばれてきたからね。」
「お前、殺してやる。絶対に殺してやる!」
そう言うと妹紅は彼に向かって走っていった。彼は容易く彼女を蹴り飛ばした。妹紅が壁に打ち付けられる時だった。影が危機一髪のところで彼女を受け止めた。妹紅を受け止めたのは五大王の光王ゴールド・マーグルだった。
「そこまでです。帝王梟雄。」
その声と共に出てきたのは仙人茨木華扇だった。彼女の後から次々といろいろな人がやって来た。先程帰った筈の剛岐に紫、幽々子、加奈子、モルト、永琳、魔理沙、パチュリーなど様々な人達がこの場にやって来た。そしてメルト・グランチを囲んだ。そして華扇が口を開いた。
「あなたの飼っていたエンペラースパイダー、エンペラードラゴン、そしてあなたの部下である村山小太郎、そしてあなたが復活させた八岐大蛇は退治されました。もうあなたに切り札はありません。終わりです、帝王梟雄。」
華扇がそう言った時だった。
「フ、ククククク。ハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!」
無表情だった彼の顔が一瞬にして笑みに変わり、そのまま彼は大きな声で笑い始めた。その光景に一同は唖然となる。驚きの表情を見せながら再び華扇が言った。
「何が、一体何がおかしいと言うのですか、帝王梟雄!」
「ハッハッハッ、卿らはこれで勝ったつもりかな?」
「先程言った通り、あなたの切り札は全て消えました。もうあなたには・・・」
「これで勝ったつもりかなと聞いているのだよ。」
「!?」
「何故私がこれほどまでに余裕を見せているのか分からないのかね?私は自分の部下達にある一定の範囲内で戦うことを命じた。500人は黒き刀達に討伐され、4000人は花の妖怪によって討伐された。だが卿らはもう疑問に思っていることがあるのではないかね?残りの5500人は何をしたのかと。彼らには幻想郷中にあるモノを設置しておくように命じた。」
「!!まさか!」
何か嫌な予感を感じたモルトが言った。そしてメルト・グランチは彼に答えた。
「そうだ!私は幻想郷中に爆破装置を用意しておいたのだ!」
「!?」
その言葉に一同は目を大きく見開いた。
「なんですって!?」
「参ったな。まさかもうここまでやられてるとはな。臨機応変とはこのことか。モルト、マーグル、行くぞ。」
「無駄だよ。」
「!?」
爆破装置を止めようとした三人にメルト・グランチが言う。
「彼らには卿らでも分からない場所に設置するように命じた。」
「クソッ!」
「悠岐、悪いがこいつの討伐は任せていいか?俺達は爆破装置を見つけ出す。それで構わないか?」
悠岐はゆっくりと立ち上がりながら言った。
「ああ、任せる。もう俺はこいつを許すわけにはいかないからな!」
「良く言った。じゃあ任せるぞ。」
「私も行くわ、小宝剛岐。少人数よりも大人数のほうがいいでしょう?」
「それなら私も行くぜ!」
「魔理沙が行くなら私も行くわ。」
「ありがとな、お前ら。よし、行くぞ!」
そう言うと剛岐、マーグル、モルト、紫、幽々子、加奈子、永琳、魔理沙、パチュリーはどこかへ飛んでいった。そして残った人達はメルト・グランチを睨む。先にメルト・グランチが口を開いた。
「爆破装置の電源は私が指を鳴らした時に作動する。私が鳴らしたい時にいつでも鳴らすことが出来るのだよ。」
「さて、余興はそこまでだ。とっとと倒すぞ!」
悠岐の合図でこの場にいる人達がメルト・グランチに挑みかかる。まず始めに華扇が龍を呼び寄せ、龍の波動を放たせる。それを見て悠岐も龍の波動を放った。が、彼はその攻撃を避けると二人を蹴り飛ばした。啓介、ミク、麻里、幽香、隼人が一斉に襲いかかるがメルト・グランチは炎の渦を起こし、五人を攪乱させた。その瞬間に彼は五人の背中を斬りつけた。立て続けに咲夜、美鈴、萃香、慧音、妹紅が弾幕を放つが彼はそれを炎で消し、そのまま五人を殴り飛ばした。最後に霊夢がスペルカードを使った。
「夢想封印・瞬!」
だが彼は彼女の攻撃を全て受け止めると霊夢の足首を掴み、地面に叩きつけた。彼女を救おうと幽香、慧音、啓介、隼人が向かうが彼は彼女を投げ飛ばすと四人の腹部を斬りつけた。急所に当たったのか、四人はその場にうずくまってしまった。
「相手にもならないよ。」
メルト・グランチがそう言った瞬間、突如彼の肩から鮮血が飛び散った。
「くっ、黒き刀か・・・」
突然傷口が開いたため、彼は左肩を思わず抑える。その間に慧音が背後から頭突きを食らわした。彼はよろけながら後退りした。さらに麻里がマスタースパークを放ち、妹紅がスペルカードを使った。
「フジヤマボルケイノ!」
二人の攻撃は見事彼に命中した。立て続けに咲夜がナイフを投げつけ、華扇が龍を操り、悠岐と共に龍の波動を放させた。続いてアリスが人形を使って弾幕を放った。
「龍の波動!」
「殺人ドール!」
「ぐあっ!」
三人の攻撃も見事彼に命中した。流石の彼も黙っている訳にはいかない。彼は辺りに火薬を撒き、辺りを火の海にした。そして霊夢達に向かっていく。慧音、妹紅、啓介、麻里、ミク、幽香、隼人が一斉攻撃を彼に放った。だが彼はそれを宝刀で弾くとそのまま七人の腹部を斬りつけた。
「ぐっ!?」
「ガハッ!」
彼の攻撃は七人の急所に当たり、そのまま七人は地面に倒れた。その瞬間に華扇が虎を呼び寄せ、彼の背中を斬りつけさせた。
「グカァァォ!」
「何っ!?」
彼は驚きの表情を見せながら虎を真っ二つに切り裂く。そして華扇の目の前まで来るとそのまま彼女を蹴り飛ばした。
「かはっ・・・」
そのまま彼女は吐血した。そして彼はヨロヨロになりながらも霊夢と悠岐を見ながら言った。
「後は、卿らだけだ・・・」
彼の息は酷く荒くなっていた。霊夢と悠岐は同時に彼に向かっていく。まずは霊夢がスペルカードを使った。
「夢想転生!」
それを見たメルト・グランチは鼻で笑った。そして霊夢に笑みを浮かべながら言った。
「ハッ、卿は分かっていないようだな、卿風情の夢想転生では私の夢想転生に勝つことは出来ないと!」
「いいえ、出来るわ。」
「何だと!?」
即答に言われたため、彼は思わず声を上げる。そんな彼とは別に霊夢が言う。
「今私が放つ夢想転生は私だけの力じゃない。私を支えてくれた人達、みんなの思いがこもった夢想転生なのよ!」
彼女にはたくさんの仲間達の思いがあった。魔理沙やアリス、レミリア達だけではなく、悠岐や啓介らの人達。皆はメルト・グランチを倒すことに思いを込めている。彼女はそれに答えるためにメルト・グランチを倒すことに集中する。
「ほざけ!消え去るがいい!」
彼が言った瞬間、同時に霊夢と彼の夢想転生がぶつかった。力がほぼ互角だったため、その場で二人の夢想転生は爆発した。彼が砂埃を消した瞬間、彼の周りには八人の霊夢がいた。
「小賢しい!」
そう言うと彼は炎の渦を作り、そのまま八人の霊夢に放った。だが八人の霊夢は全て札でできた偽物だった。
「そこか!」
そう言うと彼は宝刀を思い切り振り上げ、降ろした。そこには待機していた悠岐がいた。と、背後から気配を感じたメルト・グランチは後ろを振り返る。そこには霊夢がスペルカードを持って彼に向かってきたのである。メルト・グランチは先に霊夢を倒そうと考え、そのまま彼女の腹部を斬りつけた。
「くっ。」
霊夢は痛みを我慢しながら彼の横を通り過ぎていく。彼が霊夢に夢中になっている間に悠岐が彼の目の前で龍の波動を放った。
「食らいな!」
「何だと!?」
そのまま彼はよろめいた。そして顔を上げる。そこには悠岐の漆黒の刃を手にしている霊夢が彼に向かって飛んできたのだ。そして彼女はスペルカードを取り出した。これで全てを終わらせるために。そんな思いを持って彼女はスペルカードを使った。
「漆黒転生・極!」
彼女の全ての思いを込めて放つ技が放たれた瞬間、メルト・グランチはあることを思っていた。
(成長したのだな、霊夢よ。)
誰も見たことがない攻撃が彼に命中し、そのまま彼は地面に倒れた。
砂埃が消えた場所には倒れているメルト・グランチとそれを見る霊夢と悠岐がいた。と、突然霊夢がフラッとなった。
「お、おい霊夢?」
倒れそうになった彼女を悠岐が慌てて優しく抱き抱えた。悠岐は心配そうに彼女を見つめる。霊夢は目を開けると彼に笑顔を見せた。それと同時に彼も笑顔を見せた。と、突然メルト・グランチが仰向けになったまま言った。
「残念だったな、卿らの負けだ。まだ切り札はあるのだからな!」
その瞬間、メルト・グランチは左手を上げ、そのまま指を鳴らした。だが指を鳴らしても何も起こらなかった。と、突然上から剛岐が降りてきて倒れているメルト・グランチに言った。
「生憎だが、お前の設置した爆破装置は全てパチュリーが見つけ出した。だから全て解除させてもらったぜ。」
彼は黙ったままだった。
次作は終焉と予言です。遂にメルト・グランチを倒した霊夢達。そこへある人物がやって来る。果たしてその人物とは!?
次作、東方王戦録、第2章帝王決戦編完結です。第3章も出すので期待してて下さい。それでは次作もお楽しみに!