無縁塚で倒れているメルト・グランチを見つめる幻想郷の人々、影舷隊、そしてセコンドを除く五大王。メルト・グランチは笑みを浮かべながら一同を見ていた。そして口を開いた。
「そうか・・・私は負けたのだな・・・」
「帝王、あなたに頼みがあるの。」
そう言ったのは悠岐に抱き抱えられている霊夢だった。そしてメルト・グランチも言う。
「おや、博麗の巫女である卿が私にねだるか・・・まぁいいだろう。卿は私に勝利した。折角だから卿の望みを一つ叶えようではないか。」
「・・・・死んだ人達を、生き返らせて。」
メルト・グランチとの戦いによって多くの人が犠牲になってしまった。ウロボロス、レミリア、フラン、鈴仙、ルーミア。霊夢だけでなく他の幻想郷の人々、影舷隊、そして五大王にとっても犠牲になった人達はかけがえのない存在だった。と、メルト・グランチが笑い始めた。そして言った。
「卿は死者をどうやって蘇らせるというのかね?一度朽ちた者を蘇らせるなど、不可能だよ。」
「可能の間違いじゃないのか?メルト・グランチ。」
そう言ったのは悠岐だった。彼の目はいつのまにか赤く染まっていた。
「五大王は三つの能力を持っている。その内のテメェの三つ目の能力、復活があるだろ?」
「・・・・・」
「え、復活?」
「そう、メルト・グランチの三つ目の能力だ。」
「ハハハ、流石黒き刀と言うべきか。まあ、私と長くいた卿なら私の能力など、承知済みだったか・・・」
「・・・・」
「まあ、それはさておき、望みを叶えよう。」
そう言うと彼は服の中に手をいれ、そこから緑、紫、黄色の光の玉とルーミアの心臓を取り出した。そして技の名前を言った。
「死者転生。」
その瞬間、彼の左手に乗せられていたモノがそれぞれの場所には散らばっていった。その時だった。どこからか、獣が走ってくる音が辺りに響いた。それがある人物だと悟った麻里はその方向を見つめる。そこには緑色の鬣に青緑の体をしている獣が走ってきた。そして人間の姿に戻った。その人物は黒い髪に緑の瞳をしている男、ウロボロスだった。
「ウ・・・ウロボロス!!」
「麻里!」
麻里は涙を流しながら彼に飛び付いた。ウロボロスは笑顔を見せながら麻里の頭を撫でる。
「ごめんな麻里。心配かけちゃったな。」
「ううん、私はウロボロスが生き返っただけで嬉しいもん。戻ってきてくれてありがとう。」
二人を見ている中、パチュリー、咲夜、美鈴、小悪魔はある音がするのに気づいた。それは聞き覚えのある、翼の音だった。四人はその方向を見る。そこには笑顔を見せながら元気な姿をしたレミリアとフランが飛んできたのだ。四人は思わず涙を流し、二人を抱きしめる。レミリアとフランは笑いながら言った。
「ちょっとみんな、そんなに強く抱きしめられたら痛いわよ。」
「お姉様の言う通りだよ、みんな。」
「良かった・・・レミィとフランが戻ってきて・・・」
「お嬢様と妹様の居ない紅魔館なんて嫌で仕方がなかったんですよ・・・」
「もし二度と戻って来なかったらって思うと・・・ううっ・・・」
「本当に良かったですぅ~二人共ぉ~。」
「フフフ、ごめんねみんな。これからは私が紅魔館をしっかり引っ張っていくわ。」
六人が抱き合っている中、一人の少女が駆けてきた。その方向をみるとそこには笑顔を見せながら鈴仙が走ってきたのだ。それを見てミクは思わず涙を流す。そして彼女に飛び付いた。その後に永琳と輝夜も彼女に飛び付いた。
「ちょっとみなさん、痛いですよ~。」
「良かった、鈴仙が生き返って、本当に・・良かったわ・・・」
「あなたが無事でいるなら私達はそれで幸せよ、鈴仙・・・」
「ううっ・・・、お師匠様ぁ!」
鈴仙も泣き、三人に飛び付く。その時だった。突然悠岐が肩に違和感を感じ、自分の右肩を見た。そこには彼の肩を笑みを浮かべながら噛みつくルーミアがいた。彼女の姿はもう小さな子供に戻っていた。
「ル・・・ルーミア!!」
「ぐほっ!?」
霊夢は悠岐にアッパーを食らわした後にルーミアを抱き上げた。彼は顎をおさえながら彼女を見る。霊夢の顔には笑顔と涙があった。そしてルーミアには慢心の笑みが浮かんでいた。悠岐は顎をアッパーされたことを忘れて、言った。
「良かったな、みんな。」
「ああ、そうだな。」
近くにいた啓介が答えた。そして啓介はポケットからタバコ一本を取りだし、そのまま一服吸った。そんな彼とは別に霊夢がルーミアを抱き上げたまま倒れているメルト・グランチの近くに歩み寄った。メルト・グランチは彼女の存在に気がつくと彼女を見る。と、霊夢が口を開いた。
「あんた、結局目的はなんだったの?」
「・・・・私の目的は幻想郷の支配と宝の強奪・・・ただそれだけだ。」
「あんた、みんなの宝はどうしたの?」
「私がいただいた宝は既に剛岐に奪われ、持ち主の元へ行ったよ。」
「・・・・・」
「私は・・・・間違った選択をしたのだな。私は卿の母親から使命を預かっていたのだが・・・私は使命を果たすことが出来なかった。むしろ卿を殺そうとしていたよ。私は彼女を裏切ってしまったのだな・・・」
「・・・・・」
「私を許せとは言わないよ。これは私が犯してしまったことなのだから。」
「・・・・いや、あんたはちゃんと使命を果たしたんじゃないのかしら。」
「ほう、それはどうして?」
「だって、あんたは私を生かしてくれたのよ。恐らくだけどあんたが私のお母さんから預かった使命って私を生かすことなんでしょ?」
「・・・・・」
「私を支えたのはあんただったのよね。ありがとう帝王。私を支えてくれて。」
「・・・何故礼を言うのかね?主に卿を支えたのはスキマ妖怪なのだよ。」
「でもあんたは私を裏で支えたじゃない!私知ってるわよ。あんたが私に気づかれないように私を見ていたことを。」
「!!・・・・気づいていたのか・・・これは存外だ。まだ幼少だった卿は気づかないと思っていたのだがね・・・。」
「あんたが支えたのは分かっていたわ。でもまさかあんたがこんなことをするなんて・・・」
「私は私の赴通り動いただけだ・・・。」
「私は今回あんたのしたことは絶対に許さない。けど、あんたが昔したことは感謝するわ。」
「ありがとう、と卿には言う言葉はないよ。博・・・いや霊夢よ。」
「・・・・」
彼女の体は震え、目からは涙が零れていた。悠岐と啓介はそれを黙って見ていた。
「私はあんたに本当に感謝してるわ。」
「そうか・・・それは何よりだ。」
そう言うと霊夢は悠岐と啓介の方へ歩っていった。と、その時だった。突然草影から一人の少女が現れた。一同は彼女を見て目を大きく見開いた。それを見たメルト・グランチは溜め息を吐いた。そして言った。
「どうして来たのかね・・・・。」
一同はここへやって来た彼女の名前を同時に言った。
「芳香。」
宮古芳香。どういうわけかゆっくりと傷だらけのメルト・グランチに近づく。
「よせ芳香!そいつは危険だ。」
隼人が芳香に必死に呼び掛けるが彼女はまるで彼の言葉を聞いていないようにメルト・グランチの近くへ歩み寄る。そして芳香は彼の側で座り、言った。
「何を言ってるの?みんな。グランチは悪い人じゃないよ。」
「何を言ってるのよあんた。そいつは危険よ。」
「そうか・・・卿らには言っていなかったな。折角だ。私が話してあげよう。」
そう言うと彼は芳香の頭に手を置くとあることを話した。
「私は剛岐によって満身創痍となった後、私は命蓮寺の裏へ行き、傷を癒そうとした。そこへ芳香が来て私の傷を癒してくれたのだよ。それから私は少しの間芳香と言葉を交わしていた。それが楽しくなり、思わず無縁塚へ行くことを忘れかけていた。そして彼女にすぐに戻ると伝えたのだが今に至る。芳香よ、何故来たのかね?」
「だって・・・・だって私グランチが帰ってこないから心配になって来たんだよ?それなのに・・・グランチはこんなに傷だらけ。私辛いよ・・・・」
「・・・・すまないな、芳香。私は君をまきぞいにしたくなかったのだよ。君には幸せに過ごしてもらいたかった。こんなことを隠した私を許してくれたまえ。」
「うん、許すよグランチ。」
メルト・グランチは左手で芳香の頬を撫でた。そして霊夢達に言った。
「卿らは二度あることは三度あるという言葉を知っているかね?幻想郷では二つの戦が起こっている。博霧合戦、私とセコンドとの戦。いずれは誰かが合戦を起こすだろう。十分に警戒したまえ。」
「お前はこれからどうするんだ?」
「私かね?私はだな、私らしい最後を迎えることにするよ。」
「まさかお前!!」
「それ以外考えられることはあるかね?」
「駄目グランチ!死なないで。」
「芳香、行きなさい。君が行くべき場はここではないよ。」
「嫌だ!私はグランチといたいの!」
「黒き刀よ、卿に頼みがある。恐らくは最初で最後のねだりだ。芳香を連れていってくれないか?私は芳香をまきぞいにしたくないのでね。」
「・・・・分かった。」
そう言うと悠岐は芳香を抱え、そのまま霊夢達のところへ行った。
「ちょっと悠岐、放してよ!まだ、まだグランチが!」
メルト・グランチは芳香に手を振った。そして彼は立ち上がり、ヨロヨロになりながら左手を上げて言った。
「別れだ。またどこかで会えることを楽しみにしてるよ。咲夜、このまま主を守護することに専念しなさい。」
「分かったわ。お嬢様を守れるように頑張るわね。」
「霊夢は彼女のように幻想郷を守れるようにしなさい。」
「・・・・・・」
「影舷隊も、五大王も、邁進し続けたまえ。そして芳香。君は私を忘れないこと。いいかね?」
「グランチ!行かないでよ!」
「また会おう。次会う場は・・・・どこかな?」
彼がそう言った瞬間、パチンと指を鳴らした。その瞬間、彼の周りが一気に爆発した。
「グランチー!」
芳香は泣きながら叫んだ。しかしメルト・グランチが言葉を返す筈がなかった。彼女はそのまま地面に膝まずき、大量の涙を流した。と、彼女の元へある人物達が来た。その人物達は白蓮、星、ナズーリン、一輪、神子、布都、青蛾が来た。そして芳香の元へ来ると青蛾は彼女の肩を軽く叩き、言った。
「誰にでも辛い別れはあるものよ。あなたはそれを経験出来たの。あの人のことをちゃんと思ってあげなさい。」
青蛾が言った瞬間、芳香は涙を拭いながらも深く頷いた。その光景を見て悠岐が唐突に口を開いた。
「炎を使う者は己の屍を残さない。だから自分が死にそうになった時は自爆するんだ。」
「じゃあ、悠岐も死にそうになった時は自爆するの?」
「ああ、する。」
それ以降無縁塚にいる人達は言葉を発さなかった。そして無縁塚には月が青い光を照らしていた。
メルト・グランチとセコンドとの戦いから一月が経った。この幻想郷は平和になっている。そんな中、無縁塚にある人物がいた。マーグルである。彼は無縁塚の入り口にある石碑に蓮の花を置いた。そして軽く合掌した。
「あら、先に冥福を祈る人がいたのね。」
背後から声がしたため彼は振り返る。そこには日傘をさしている女性、八雲紫がいた。
「ああ、お前さんか。」
「やはり敵だった彼もあなたにとっては盟友なのね。」
「何言ってんだい、あいつはいつでも盟友さ。敵だなんて思ったことは一度もない。」
「そうなのね。」
「さて、冥福は祈った。俺は帰るとするよ。」
「地王は行かなくていいのかしら?」
「セコンドならモルトが行ったよ。俺が行く必要はないよ。」
「そう、そういえばあなたは帝王が言ってたことは信じるかしら?」
「信じるよ、あいつは決して嘘をつかないからな。」
「そうなのね。」
そう言うと紫はスキマの中へと入っていった。
その頃、玄武の沢では。モルトが石碑に蓮の花を置いていた。そして軽く合掌した。そして彼はそのまま帰って行った。
一方博麗神社では。メルト・グランチとセコンドを倒した祝いの宴会が行われていた。今回は影舷隊も五大王もいるため、霊夢は多くの物を用意するのに一苦労だった。五大王と五大老は酒をどんどん飲んでいった。そのまま暴れたりはしゃいだりして宴会は幕を閉じた。
ある一つの異形なる影の存在にも気づかずに・・・・。
これで東方王戦録第2章は終了となります。次作からは第3章に入ります。幻想郷に現れた異形なる影。果たしてその正体とは!?次作もお楽しみに!