東方王戦録   作:ヤマタケる

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地王、帝王を倒し、平和が訪れた筈の幻想郷へ新たなる敵、大魔王が姿を現した。そして悠岐達があることを語る。


回顧

しんと静まりかえった永遠亭で悠岐がゆっくりと口を開いた。

 

「奴の名前は大魔王。本名があるのかもしれないが俺達は知らない。奴とは古くからの因縁の相手で俺達とは多く戦を交えている。奴は全ての世界を支配することが目的だ。だがそんな中、魔王軍にある異変が起こったんだ。」

 

「異変?」

 

魔理沙が首を傾げながら言う。彼の続きをミクが話し始めた。

 

「現実世界ではよくあることよ。謀反が起こったの。魔王軍の中の一人が大魔王に反逆を起こし、そのまま謀反は成功し、大魔王は討ち取られた筈だったの。それがどういうわけか、生きているのよ。謀反は成功し、魔王軍は完全に壊滅した筈なのに・・・」

 

「そうだったんだ。で、その魔王さんを討ち取った人ってどういう人なんだい?」

 

「いい質問だな、霖之助。当時俺達に報告された謀反を起こした人物は・・・」

 

この瞬間、霊夢は帝王異変の際にメルト・グランチが言っていた、ある一人の人物の名が頭に浮かんでいた。そして啓介が言う前にその人物の名を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「沢山薫?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然言われたため、影舷隊は目を大きく見開いたまま霊夢を見つめる。そしてウロボロスが言った。

 

「お前、どうして知ってるんだ!」

 

「私が帝王と戦ってた時に帝王が口にした名前よ。確かその人の正体は衣玖だったわね。」

 

「なっ、衣玖が魔王軍の反逆者!?」

 

「無理もない。あの性格を考えれば衣玖がやったなんて誰も思わないからな。」

 

慧音がそう言った時だった。突如何かを思い出したかのように隼人が部屋を出てしまった。だが一分も経たない内に彼はある紙を持ってきた。そして一同の前で広げた。その絵には何かの絵が描かれていた。そんな彼に妹紅が尋ねた。

 

「隼人、これは何だ?」

 

「これか?これはモルトさんから言われてた物だ。こいつを霊夢達に見せろって言われてたのうっかり忘れてたよ。」

 

一同はその絵をじっくり眺める。紙には見たことがない文字が書かれていたり、一番上には獣の胴体に龍の胴体、魔神のような腕と翼、そして頭に角が生えている生物が描かれていた。その絵を見て鈴仙が言った。

 

「それ、ガイルゴールじゃないですか?」

 

「ガイルゴール?」

 

頭を傾げる霊夢達とは別に隼人が指差しながら話し始めた。

 

「よく知ってるな、鈴仙。そう、こいつはガイルゴール。全てを作り出したとされる神だ。」

 

「神様?神様なら加奈子と諏訪子がいるんじゃないのか?」

 

「いや、妹紅。その二人よりも遥かに上の神だ。こいつは幻想郷、現実世界、そして宇宙を支えると言われている神だ。なんせこいつは五大王に力を与えた奴だからな!」

 

「なっ、五大王に力を与えた!?」

 

「成程、つまりあの五人よりも遥かに力を越えているというわけだね?」

 

「その通り。もしガイルゴールが何かしらの影響を受けて地球に降りたらそれはとんだ出来事になるわ。」

 

「会ってみたいな、この神様に。」

 

「ガイルゴールは実在する。こいつは普段は最果ての星に住んでるから普段は会えないね。」

 

「ちぇっ。」

 

思わず舌を鳴らす魔理沙。そして麻里が文字を指差しながら言う。

 

「この文字、何て書いてあるか分かる?」

 

霊夢達は声を合わせて言った。

 

「分からない!」

 

「無理もないわね。これは現代の文字なのか古代の文字なのか分からないからね。」

 

「私が読んであげるわ。」

 

そう言って麻里の背後からやって来たのは永淋だった。そして彼女は文字を指差しながら言う。

 

「『神を呼び寄せし者は全てを司る者となる。神の怒りをかう者は怒りの裁きを受けるべし。』と書かれているわ。」

 

「八意さん、これは何文字なのですか?」

 

「これは宇宙文字。月の都にいたときに見たことがあるの。これは私や姫様、そして今月にいるあの二人しか読むことが出来ない文字。」

 

「すごいわね、あんた。」

 

「これくらいは当然よ。」

 

「さて、もう今夜は遅い。寝て体を休めるとしようか。」

 

ウロボロスの言葉に賛成した一同はそのまま布団に潜り込み、すぐに眠りについてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、大魔王率いる魔王軍は・・・。明日の戦のために備えていた。大きな玉座に座る大魔王の前には二人の幹部がいた。一人は男で一人は女である。そして彼に言う。

 

「大魔王様、出陣の準備は整いました。後は明朝まで待機するだけです。」

 

「今のところ相手側に動きは見当たりません。全て順調でございます。」

 

「明日になればこの世界は我が魔王軍の物となる。お前達には期待している。」

 

「勿体ないお言葉・・・」

 

「はっ、あなた様の期待通りにしてみせます!」

 

と、幹部の男が大魔王に言った。

 

「そう言えば大魔王様、あの方はまだ戻って来られないのですか?あの方が戻って来れば間違いなく幻想郷はあなた様の手の中。それなのにあの方は一体何処へ・・・」

 

「惚け、奴のことは忘れろ。今は幻想郷を支配することだけを考えよ。」

 

「は、はっ。申し訳ございません、お詫び申し上げます。」

 

「次は容赦せぬ、身を引き締めろ。」

 

「はっ!」

 

と、続いて幹部の女が大魔王に言った。

 

「大魔王様、あの女を連れ戻す任務を私に!」

 

「よかろう、期待している。」

 

「ありがとうございます。必ず果たしてみせます。」

 

そう言うと二人は彼に深く頭を下げ、自分のところへ行った。一人になった大魔王は近くにあった水晶玉を見て独り言のように言った。

 

「貴様らは我によって朽ち果てる。覚悟するがいい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、永遠亭では・・・。何かの気配を感じた悠岐がその正体を探していた。と、彼の視界に一人腰を下ろす人物が目に入った。その人物が敵ではないことを確信した彼は人物の元へ近寄る。腰を下ろしていたのはスキマ妖怪である八雲紫だった。彼女は悠岐の存在に気がつくと優しい笑みを見せながら手招きをした。そして彼は紫の隣に腰を下ろした。そして彼女は悠岐に言った。

 

「よく感じとれたわね、悠岐君。流石団長と呼ぶべきかしら?」

 

「あ、ありがとうございます。ところで八雲さんはここで何をなさっていたのですか?」

 

「私?私はね、夜景を見ていたのよ。」

 

そう言うと彼女はスキマを展開し、その中からお茶を取りだし、悠岐に渡した。そして一口飲むと夜空に浮かぶ満月を指差しながら再び口を開いた。

 

「綺麗な満月でしょ?私は一度あそこに行ったことがあるの。」

 

「へぇ、月へ。それは凄いじゃないですか。そこでいい思い出も出来たんですよね?」

 

「ううん、残念だけど、悪い思い出しか出来なかったわ。なんせ、月面戦争を起こしちゃったのだから。」

 

「月面戦争?ということは月に誰か住んでいるってことですか?」

 

「ええ、そうなの。月人の力は強大で私でも歯が立たなかった程の強さなのよ。」

 

「月人か・・・。一度戦ってみたいですね、その方々と。」

 

「月人は強いわ、特に綿月依姫はね。あなたが戦ったら瞬殺される可能性があるわ。」

 

「マジっすか、それはヤバいですね。」

 

「でしょう?だから挑んではいけないのよ。」

 

「話変わるんですけど、八雲さんは霊夢をどう思ってるんですか?」

 

「霊夢ねぇ。あの人と比べればかなり堕落しているし、妖怪退治もろくにしない、わがままな子よ。」

 

「あの方というのは、霊夢のお母さんですか?」

 

「ええ、そうよ。あの人は霊夢と比べればかなり強かったのよ。けど・・・」

 

「すみません、何か悪いこと思い出させたみたいで・・・」

 

「いいのよ、誰にだって過去を思い出す時だってあるの。どうしても忘れられないこともね。」

 

「・・・つまり、回顧ですか。」

 

「簡単に言えばそういうことね。悠岐君も過去を思い出すこともあるでしょう?」

 

「時々あります。」

 

「それと同じことよ。」

 

紫が茶をスキマの中へ入れた時だった。突如何かの気配を感じた悠岐は屋根の上に上り、辺りを見回した。彼と同じく紫も屋根の上に上る。と、彼はある方向を見る。そこには一人の謎の影がいた。怪しいと感じた悠岐はすぐさま影に向かって龍の波動を放った。彼の攻撃は影に命中し、そのまま影はその場に倒れた。紫はスキマを用いて悠岐を連れて影が倒れた場所へ向かった。そこには龍の波動によって息絶えた見覚えの全くない男がいた。悠岐は男の身体中

を調べた。そしてそれをただ呆然と見る紫に言った。

 

「八雲さん、こいつは魔王軍の者です。俺達の状況を確認するために大魔王に命じられて来たのでしょう。」

 

「面倒ね。地王と帝王も厄介だったけれど、今回の敵はそれよりも相当厄介ね。」

 

「とりあえず死体は見えない場所に置いて、俺達はみんなに知らせに行きましょう。」

 

「ええ、そうね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永遠亭では龍の波動の衝撃で一同が目を覚ましていた。永遠亭の中へ入った悠岐と紫に永淋が言った。

 

「どうしてあなたがいるのかは問わないけれど悠岐君、一体何があったの?」

 

「魔王軍です。魔王軍の一人が状況の偵察のためにこの近くをうろついてたので俺が排除しておきました。ですが、いつ魔王軍がここを、いや、幻想郷を襲ってくるのか分かりません。そのためにも俺達は常に魔王軍との戦闘態勢に入るべきだと思います。」

 

「成程、さっき僕も気配を感じて起きたんだけど、悠岐君が倒したのか。僕の推理だけど、恐らく明日には襲撃してくるだろう。」

 

「なっ、明日!?」

 

「直ちに幻想郷全ての者に伝えないといけないようね。」

 

そう言うと一同は幻想郷の全ての人達にこのことを報告しに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠岐はまず、紅魔館に行くことにした。しばらくして門の前に来るとそこには布団を敷いて寝ている美鈴がいた。悠岐は溜め息をはくと寝ている美鈴の頭を叩いた。その衝撃で彼女はすぐに目を覚ました。彼を見て美鈴は慌てながら言った。

 

「ゆ、悠岐さんじゃないですか!一体ここへ何の用ですか?」

 

「紅魔館にいる人全員起こしてくれ。これはお前らにも、俺達にも関わる重要な知らせなんだ。」

 

「わ、分かりました。ちょっと待ってて下さい。」

 

そう言うと彼女は紅魔館の中へ入っていった。しばらくすると美鈴が彼を手招きしながら言った。

 

「入ってきて下さい。」

 

そのまま悠岐は紅魔館の中へ入った。中に入るとレミリア率いる紅魔館勢が待っていた。先に悠岐が口を開いた。

 

「久しぶりだな、レミィ。」

 

「ええ、随分と。」

 

「今日は大切なことを話しに来た。」

 

「悠岐、それはお嬢様にも関わることなの?」

 

レミリアが言う前に彼女の背後にいた咲夜が彼に尋ねた。それに彼はすぐに答えた。

 

「幻想郷全てに関わることだ。いいか、よく聞け。」

 

レミリア、フラン、パチュリー、咲夜、美鈴、小悪魔は彼の言葉を一言足りとも逃さずに聞く態勢に入った。そして悠岐は口を開いた。

 

「明日、大魔王軍がこの幻想郷を襲ってくる。」

 

彼の言葉に一同は目を見開く。そしてパチュリーが彼に尋ねた。

 

「悠岐、それはまさか・・・」

 

「ああ、奴を止めなければこの幻想郷は奴の思うがままの世界と化する。」

 

「そんなことはさせない!魔理沙ともっと遊びたい!」

 

「だからお前らも戦う態勢に入っておくんだ。」

 

そう言うと彼は紅魔館を出ようとしたが、突然レミリアが背後から彼に抱きついた。そして言った。

 

「・・・死んじゃ駄目よ。生きて紅魔館に戻ってきてね。そして物語り合いましょう。」

 

「・・・約束する。」

 

そしてレミリアは彼を放した。そのまま悠岐は別の場所へ向かった。その様子を紅魔館勢は黙って見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白玉楼ではミクと魔理沙がこのことを知らせに来ていた。その知らせを聞いた幽々子は言った。

 

「ここを襲ってくる可能性があるというわけね。分かったわ。」

 

「幽々子様、私はここに残って幽々子様をお守りします。」

 

「それが妖夢らしいぜ。」

 

「西行寺様、私達は魔王軍の襲撃を受け止めます。生きて帰れるか心配ですが・・・」

 

「生きるのよ。そうしなければ意味がないでしょ?」

 

 

「はい。」

 

「よしミク!アリスにも言って明日に備えようぜ。」

 

「ええ、そうね!」

 

そのまま二人は地上へ戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地霊殿ではウロボロスが知らせに来ていた。その話をさとり達はしっかり聞いていた。さとりの第三の目とこいしの左目は完全に元に戻っていた。そしてウロボロスが言った。

 

「ここを襲わないかもしれないが、地上が器機に迫ってたら来てくれ。」

 

「分かりました。あなたも死なないように気を付けて下さいね?」

 

「当たり前だ。もうあの時のように死にはしない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢と紫は文に頼んで妖怪の森の人全員に知らさせた。その後、二人は命蓮寺に言って白蓮達にもこのことを話した。その時には神子達も来て、話を聞いていた。そして白蓮が言った。

 

「分かりました。至急手当てをする看護隊も用意しておきますね。」

 

「ありがとう、死んじゃ駄目よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

守谷神社では麻里と勇儀が知らせに来ていた。そして加奈子が言った。

 

「大魔王さんねぇ。どれ程強いのか知らないけれど、十分警戒しないといけないようだね。」

 

「加奈子様、諏訪子様、私も出来ることは全て尽くします!」

 

「死なないようにね。早苗が死んだら私達これからどうすればいいのか分からないからね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、魔王軍との戦闘に備えた幻想郷の全ての人が魔王軍の登場を待っていた。そして魔王軍が見えた瞬間、一斉に魔王軍に向かっていった。時刻はまだ5時だった。

 




次作は誘拐です。また始まってしまった戦い。霊夢達は生き延びることが出来るのか!?
次作もお楽しみに!
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