霊夢と麻里を取り戻された大魔王は魔理沙と霊夢に攻撃する兵士に手をだし、攻撃をやめさせた。そして言った。
「そう慌てることはないぞ?そうしなくともこの幻想郷は我が物となるのだからな。」
彼の顔には慢心の笑みが浮かんでいた。と、一人の兵士が思わず彼に口を開いた。
「大魔王様、一体何を考えておられるのですか?」
「見れば分かる。」
永遠亭では啓介と椛が傷だらけの文、鈴仙、妖夢を永琳と共に看護していた。鈴仙と妖夢の傷はすぐに治すことが出来たが、文の傷は二人よりも深く、簡単に治りそうにはなかった。そんな彼女を見つめながら椛が啓介に言った。
「文さんは助かりますかね・・・私不安です。」
「心配すんなって、椛。文はそんなことで死ぬような奴じゃねぇよ。」
「ですが、腹部を貫かれた傷があったじゃないですか。もしそれで急所に当たってたら文さんは・・・」
「死んでただろうな、まだ息をしているから安心するんだな。」
「・・・・」
「?俺の言ったことが何か気に食わなかったか?」
「いえ、そういう訳では・・・」
「いい加減にしなさい、啓介。」
そう言って部屋に入ってきたのは文の治療を終えた永琳だった。そして啓介に言った。
「啓介、あなたは少し口が軽いんじゃない?あなたは男なんだからそういう所はしっかり改善しないと。」
「す、すいません。」
「それと椛、文のことなんだけど、彼女の傷は完全に回復したわ。でも眠ってるから起きるにはまだ時間がかかりそうだけどね。」
「そうですか、ありがとうございます。」
椛がそう言った瞬間、ドタドタと誰かが走ってきた。走ってきたのは先程傷が癒えた鈴仙と妖夢だった。そして啓介達の部屋の扉を勢いおく開けると啓介を説教している永琳に言った。
「師匠、大変です!魔王軍がこちらに迫って来ています!」
それを聞いた瞬間、永琳、椛、啓介は目を大きく見開いた。そして椛が言った。
「魔王軍が?急いで阻止しないと。」
「おい、そうしたら誰が文を守るんだ?」
「私が守るわ。」
そう言って部屋に入ってきたのは輝夜だった。彼女の目はいつもの怠けているのとは全く違った。そして言った。
「啓介は守谷神社に行ったほうがいいわ。なんせ、あそこだけ無防備なんだから。」
「・・・分かった、ただちに行くよ。」
そう言うと彼は刀を手にし、永遠亭を出ていった。それを見ていた永琳が言った。
「さて、退治するわよ。」
「はい!」
と、魔王軍に立ち向かおうとした鈴仙の腕を妖夢が掴んだ。首を傾げた鈴仙が彼女に言った。
「どうしたの、妖夢?」
「死なないで下さいね。私は霊夢さん達のところへ行きます。」
「そう、私も生きるから妖夢も死んじゃ駄目よ。」
「はい、絶対に生きて帰って来てみせます!」
そう言うと彼女は霊夢達のところへ走って行った。
(お嬢様、お嬢様!)
(レミリア、おいレミリア!)
レミリアの耳にはどこからか聞いたことのある声がした。彼女はその声に呼ばれるかのようにゆっくりと瞼を開いた。そこには彼女を心配そうにみている咲夜と隼人がいた。彼女が目を覚ますと咲夜は安心した表情を浮かべ、涙を流しながら彼女に飛びついた。急に飛びつかれたためレミリアは対応することが出来ず、そのまま倒された。
「ち、ちょっと咲夜?」
「よかった・・・お嬢様がご無事で本当によかった・・・。」
「隼人、私どうしてたの?」
「覚えてないのか?お前は倒れてたんだよ。」
「気を失ってたの?私。あ、そういえば悠岐は?」
「悠岐?悠岐は来ていませんが・・・」
「おかしいわね、私の記憶が正しければ悠岐は紅魔館に来た筈よ。」
「気のせいじゃないのか?それよりレミリア、幻想郷がヤバイことになってるんだ、急ごう。」
「幻想郷が?そういえばフランは?パチェは?みんなはどこに行ったの?」
「妹様達は先に妖怪の森へ向かいました。パチュリー様にお嬢様が起きたらそこに呼んでと言われていましたので。」
「そう、なら話が早いわ。急いで妖怪の森に行くわよ。」
「はい!」
「そうこなくっちゃよ!」
そう言うと三人は急いで妖怪の森へと飛んで行った。
守谷神社では神奈子、諏訪子、早苗が魔王軍との戦闘に入っていた。
「グレイソーマタージ!」
スペルカードを用いながら魔王軍を次々と倒していく早苗。他にも大量の柱で相手を殴りつける神奈子や白蛇を呼び寄せて相手を締め殺す諏訪子。だが、圧倒的に魔王軍の数が多かった。倒しても倒しても次々と後からやって来る。
「神奈子、きりがないわよ!」
「もう少し耐えるんだ。」
「はい、神奈子様!」
と、その時だった。突然現れた影が魔王軍を大量に倒したのである。影の攻撃によって守谷神社にいた魔王軍が全員倒された。
「大丈夫か?早苗。」
「け、啓介さん!」
三人の元へやって来たのは啓介だった。そんな彼に向かって諏訪子が口を開いた。
「ちょっと啓介、肝心の悠岐はどうしたのよ?」
「悠岐?すまねぇ、何も知らされてないんだ。」
「悠岐も何かしらあるのだな。」
と、神奈子がある方向を見て目を大きく見開いた。不思議に思った早苗と諏訪子、啓介は彼女が見つめる方向を見る。
「そ、そんな・・・」
「げ、幻想郷が・・・」
「冗談だろ?」
三人はその光景を見てただ呆然とするしかなかった。何故なら魔王軍が完全に幻想郷を覆っている光景だった。
上空ではその様子を霊夢と魔理沙が見ていた。
「霊夢、魔理沙!」
突然上から二人の元へ降りてきたのは天人である比那名居天子と永江衣玖だった。二人も相当慌てていた。と、霊夢が口を開いた。
「どうするのよ、完全にやられてるじゃない・・・」
「もうどうしようもないようですね、私達は負けてしまったようです。」
「・・・・」
「そんな・・・いやだぜ、こんな暗い幻想郷は、絶対に嫌だぁ!」
魔理沙は頭を押さえながら叫んだが何か起こることはなかった。この光景を見てしまった人達は完全に諦めていた。
そんな中、神奈子は心の中であることを考えていた。
(もし『アレ』を呼び寄せられたらもしかしたら幻想郷は救われるかもしれない。だが早苗は・・・。いや、やるしかない。)
覚悟を決めた神奈子は早苗の肩を掴み、言った。
「いいか早苗、これからお前にあることを任せたい。引き受けてくれるか?」
「加奈子様のためならやりますが、一体私は何をすればよいのでしょうか?」
「神を呼んでほしいんだ。」
「神?神なら神奈子様と諏訪子様がいらっしゃるのではないでしょうか?」
「違う、私の言っている神は私と諏訪子を有に越えている神だ。私はそれを呼んでほしいと言ったんだ。」
「神奈子、まさかあれを!?」
「幻想郷を助けるためにはこれしか方法はない。啓介は私達を襲ってくる魔王軍の雑魚を倒していってくれないか?」
「・・・幻想郷の平和のためならやってやりますよ。」
「神奈子が言うなら仕方がないわね。どうする?早苗。これを決めるのはあんた次第よ。」
「やります!絶対に成し遂げてみせます!」
「よく言った、そうと決まれば早速始める。覚悟はいいな?」
「勿論よ。」
「準備万端ですよ。」
「よし、やりましょう!」
そう言うと早苗は全身に力を込めた。彼女に力を込めるべく、神奈子と諏訪子も手伝う。そして次々とやって来る魔王軍を啓介は一人も通さずに倒していく。
「早苗、頑張りなさいよ。あんたに全てがかかってるのよ!」
「はい!」
啓介が魔王軍の雑魚を倒している様子を気にせずに力を込める。だが中々言葉は聞こえなかった。流石の神奈子と諏訪子にも疲れの表情が見え始めた。そして早苗がよろよろになりかけた時だった。
「・・・ぞ。」
「え?」
突如彼女の頭の中に誰かが話しかけてきたのである。その声を聞き取るべく、早苗はさらに力を込める。突然力が上がったことに驚いた神奈子と諏訪子はさらに力を彼女に蓄える。そして早苗はその声を聞き取った。
「余を呼ぶのは何処の誰ぞ?」
「げ、幻想郷の守谷神社の巫女、東風谷早苗です!」
慌てながらも彼女は頭の中にいる者に話す。すると、まるで早苗のすぐ側で話を聞いていたかのように声が帰って来た。
「東風谷早苗、何故余を呼んだか?」
「あなた様に頼みたいことがあって呼びました。」
「ほう、人間風情が神である余に指図するか。」
「指図のつもりではありません!ただ、幻想郷を平和にしたいという私の思いがあってあなた様を呼んだのです。」
「幻想郷の平和か。そのためならお前は余に何か褒美をくれるのだな?」
「え、褒美?」
「人間よ、まさか用意しておらぬとは申さぬよな?」
「も、申し訳ありません!あの、褒美は用意していません。」
「それでは願いは聞き入れぬ。」
「そんな・・・」
その言葉が発された瞬間、早苗の頭の中が空っぽになった。折角神奈子と諏訪子が自分に力を貸してくれたというのに自分は神を呼ぶことが出来なかった。
彼女が肩を落とし、力を抜こうとした時だった。再び彼女の頭の中に声が聞こえてきたのである。彼女は再び力を込め、先程の声を聞き取った。
「だがお前は幻想郷の者でも現実世界の者でも成し遂げたことのないことを果たした。気に入ったぞ、東風谷早苗。お前の願いを聞き入れた。何、褒美は免除で構わぬ。」
その瞬間、声は聞こえなくなった。そして、力を使い尽くした早苗はそのまま地面に倒れてしまった。すぐさま神奈子と諏訪子が彼女の元へ駆け寄る。
「早苗、しっかりしなさいよ。早苗!」
諏訪子がいくら揺さりながら早苗を起こそうとしても彼女は起きそうになかった。神を呼ぶ時の力が彼女の全身に負担がかかったのだろう。そして諏訪子が神奈子に言った。
「神奈子、まさか早苗は失敗したの?」
「いいや、おでましだ。」
早苗を抱え、空を見ながら神奈子が言った。
雲一つもなかった空に突如黒雲が渦巻き、雷鳴が響いた。そして渦の中心から巨大な青い雷が落ちた。その衝撃は尋常ではなく、幻想郷にいる人達全員がそれを体感した。雷の影響によって生じた煙の中から黄色い胴体に四足で胴体の先には赤い龍の胴体があり、頭には大きな角が生えていて長く青い腕と翼があり、目は紫で大きさは100mを越える巨大な魔獣が現れた。それを見て真っ先に口を開いたのは大魔王だった。
「な、なんだあれは!!」
彼が兵士達に言っても誰も答える者はいなかった。その大きさ、姿に目を大きく見開いたままだった。
無縁塚から少し離れた場所から見ていた霊夢、魔理沙、天子、衣玖は魔獣の姿を見て呆然としていた。と、魔理沙が霊夢に言った。
「な、なぁ霊夢。あれはまさか・・・」
「信じがたいけれど、どうやら実在していたようね。」
「どうして来たのかしら?」
「分かりません、普段は降りてくる筈無いのに・・・」
途中で天子と衣玖も話に入る。そして魔獣を見つめながら四人は同時に魔獣の名前を言った。
「ガイルゴール。」
人里ではその姿をミク、ウロボロス、紫はしっかりと見ていた。そして、あることに気がついたミクが紫に言った。
「紫様、急いで人里の人達を非難させましょう!ガイルゴールが来たからにはなにかしら起こる筈です。」
「そうね、ミクの言う通りなのかもしれないわね。さ、行くわよ。」
そう言うと二人は人里の端に集まる人達のところへ行った。そこでは既にウロボロスが人里の人達を非難させていた。
「早くしろ!急がないと死んじまうぞ。」
その言葉に怯んだ人達は急いでウロボロスの指示された場所へ向かう。紫とミクも彼と同じく人達を非難させる。人里の人達のなかには『怖い』、『死にたくない』などの嘆きを言う者が後を絶えなかった。そして全員を非難させた紫はスキマを展開させ、ミクとウロボロスに言った。
「あなた達も来なさい、全員に伝えるわよ。」
「はい!」
そう言うと二人はスキマの中へ入っていった。
妖怪の森では妹紅、慧音、幽々子、藍、橙、さとり、燐、空が魔王軍と戦っていた。そんな中、スキマが突如として現れ、中から八雲紫が姿を現した。そして戦っている全員に言った。
「急いで逃げるのよ。神ガイルゴールが来たわ。」
それを聞いた瞬間、戦っていた八人は目を大きく見開いた。そしてさとりが言った。
「ガイルゴールが来たということは相当マズイじゃないですか。」
「そうよ、だから私達は非難するのよ。」
そう言うと紫は戦っていた八人をスキマの中へ入れた。
レミリア達は先にこのことに気づいており、すぐにみんなが非難しているところへ向かった。場所は博麗神社である。博麗神社では多くの人がパニックに陥っていた。そして巨大な魔獣ガイルゴールを見つめる。
「ガイルゴール?何故ここにやって来た!」
大魔王は疑心暗鬼となっていた。だがすぐに兵士達に指示を出した。
「殺れ、神であろうと関係ない!」
兵士達は怯みながらもガイルゴールに弓矢や拳銃の攻撃をした。だが全てガイルゴールの見えない守りで弾かれてしまった。それを見たガイルゴールは笑みを浮かべながら言った。
「余への対抗か、面白い。見せてみるがいい、魔王よ。」
そう言うとガイルゴールはゆっくりと歩き始めた。歩く度に地響きが激しく起こった。魔王軍は攻撃を続けるが、ガイルゴールには何も効かなかった。と、ガイルゴールが歩くのを止めた。そして口に紫の光を溜め始めた。それを見た紫は博麗神社に集まる人全員に言った。
「全員伏せて!」
彼女の合図で全員がその場に伏せた。そしてガイルゴールは口から巨大なエネルギーを持った紫の光線を魔王軍全体に放った。その瞬間、光線が当たった場所がとてつもなく激しい大爆発を起こした。その強さは幻想郷を越えて現実世界まで響いた。博麗神社に集まる人達はその威力を知った。そして爆風が修まり、全員が顔を上げる。そこには本来、存在している筈の無縁塚、玄武の沢、妖怪の森などが先程の光線により、消えていた。
「すごいな、あれは。」
そう言ってやって来たのは剛岐、マーグル、モルトだった。そして言った。
「まさかガイルゴールのガイルバーストを見ることが出来るなんてな。」
「やはり神の威力は伊達じゃないな。」
「それよりも、早く大魔王の撃破に向かった方がいいんじゃないのか?いくらガイルゴールといえど、大将は俺達に倒させるつもりだからな。」
「ええ、そうね。じゃあ行くとしようかしら。」
そう言うと紫はスキマを展開し、一部の人を入れた。そして残っている五大王に言った。
「あなた達には人里の人達を預けてもいいかしら?」
「ああ、構わないよ。」
紫が行った後、剛岐が人里の人達に言った。
「みんな、落ち着いて聞いてくれ。今博麗の巫女らが敵を倒しに行っている。そして神はお前達を殺したりはしない。破損した物らは直る筈だからみんな安心しろ。」
「クソッ、何故だ・・・」
奇跡的にガイルゴールの攻撃から免れた大魔王は辺りを見回す。もうそこには自分の部下は一人もいなかった。いるのは霊夢率いる幻想郷の人達と、悠岐を除く影舷隊だった。その中から衣玖が現れ、大魔王に言った。
「公、お久し振りです。ですが、あなたと話す暇はありません。ここで再び永遠に覚めることのない眠りについてもらいます。」
「薫・・・・貴様ァ!我が軍を裏切った貴様を断じて許しはしない!そして、貴様ら全員、地獄に落としてやる、覚悟しろ!」
次作は決着です。ガイルゴールによって滅ぼされた魔王軍。そして霊夢達は大魔王と決着をつける。果たして勝つことが出来るのか!?
次作もお楽しみに!