東方王戦録   作:ヤマタケる

34 / 50
大騒ぎになった宴会。だがはしゃぎすぎたのか、もう誰も盛り上がりそうになかった。


黒幕再び

多くの人が寝ている中、妖夢だけは起きていて寝ている人達を見ながら歩いていた。そして何より、悠岐のことが心配で、不安だった。そして彼女は幽々子の元へ寄った。

 

「おい妖夢、ちょっといいか?」

 

「あっ、はい。」

 

突然呼ばれたので彼女は声の主の元へ行く。彼女を呼んだのは剛岐だった。さっきまで酒を豪快に飲んでいたというのに彼の表情を見ると、もう酔いは覚めたようだ。そして自分の前に来た妖夢に言った。

 

「ちょっとお前に頼みたいことがあるんだが、いいか?」

 

「はい、何でしょう。」

 

「お前には魔王城へ行ってもらいたいんだ。」

 

「なっ、魔王城って!剛岐様、それは一体どこに・・・」

 

「無縁塚に入ってすぐのところにある。そこに行ってある物を持ってきてもらいたいんだ。」

 

「ある物、ですか。」

 

「それは水晶玉なんだけどな。それを持ってきてもらいたいんだよ。」

 

「で、ですが剛岐様。まさかあそこにお化けは・・・」

 

「お化け?いるとすれば妖怪とかだろ。まあ、そんなビビりなお前の為に付き添いを用意しておいたからな。」

 

「本当ですか?ありがとうございます!」

 

「だがもう先に行っちゃってね、恐らくは、もう魔王城にいるだろう。」

 

「そ、それを早く言って下さいよぉ!」

 

そう言うと彼女は二本の刀を手にし、そのまま小宝城を飛び出して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒い息づかいをしながらも妖夢は無縁塚に到着した。そして無縁塚の中へ入っていった。

 

「・・・あれだ。」

 

入ってすぐに妖夢は魔王城を見つけ、そこに躊躇うことなく入った。中は酷く荒れており、所々に大きな穴が空いている。そこに注意しながら彼女は震えながらも奥へと進んでいく。と、その時だった。

 

「うぅ・・・・うぅっ!」

 

「ひいぃっ!」

 

突然の泣き声に妖夢は思わず悲鳴を上げてしまった。この城には間違いなく何かがいる。そう察しながら彼女は上へと上がっていく。上に行く内に声がどんどん近くなっていった。そして彼女は震えながらも一番上の階へ足を踏み入れた。そこも荒れていたが、大きな椅子があることに気づき、この部屋が大魔王の部屋だと理解した。そして奥へと進もうとした時だった。突然男の笑い声が聞こえたかと思うと影が姿を現した。妖夢は一瞬怯んだが、それでも刀を構える。そして影が口を開いた。

 

「誰かと思えば、君かね。また会えて光栄の至りだ。」

 

その姿を見て妖夢は驚きを隠せなかった。何故ならその影は長身で後ろ髪を束ねていて両腕を背に回していて優々とした姿をしていたからだ。そして彼女は影に言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは・・・メルト・グランチ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信じられなかった。何故生きているのか全く分からなかった。妖夢は彼を死者か生者かを確かめた。確かめてみたが、彼は存在感がちゃんとあったので、生きていると理解した。そして彼女は言った。

 

「ど、どうしてここに!?」

 

慌てる彼女とは別にメルト・グランチは冷静に彼女に語りかける。

 

「君にも聞こえたかね?この痛々しい涕泣が。」

 

そう言うと彼はある方向を見た。それにつられて彼女もその方向を見る。そこには座りながら声を上げて泣いている少女がいた。妖夢は彼女に見覚えがあり、彼女の名前を言った。

 

「上山、リナ?」

 

それに答えるかのようにメルト・グランチが言った。

 

「大魔王、黒田輝宗の最も信ずる臣下、上山リナ。今や異界と現との狭間の存在となり、生ける者としてそこにあるのか否か、判ずることは不可能。」

 

「・・・・」

 

「これがかつて幻想郷を手中にせんとした、黒田最後の生き残り、その成れの果てだ。」

 

「では、あなたも?」

 

「フフッ、そのように見えるかな?」

 

「帝王メルト・グランチ、あなたは確かに、この無縁塚の地で!」

 

記憶が正しければメルト・グランチは間違いなくこの無縁塚の地で自らの命を絶っていった筈だった。そして彼は再び口を開いた。

 

「切り札は最後まで取っておくものだ。あの時、私が隠し通路の一つも用意せずに君達を出迎えたとでと思っていたのかね?」

 

そう言うと彼は右へ5歩進み、月の光が照らされるような場所で止まって言った。

 

「地の底より響く数珠の如き魔王の異後の声を恐れ、ここへは誰も近づこうとしなかった。お陰でゆっくりと見聞出来ていたのだが・・・」

 

その瞬間、月の光が辺りに照らされた。そして妖夢は彼が持っている物に気づき、思わず聞いた。

 

「そ、その手にある物は何ですか?」

 

それを聞かれた彼は右手に持っていた物を前に出した。彼の右手にあったのは水晶玉だった。そしてメルト・グランチは言う。

 

「黒田輝宗は幻想郷の状況を認識すべく、この水晶玉を用いていた。だが魔王が滅び、完全に機能を失ったこれを持っていても何の無意味。そうとは思わないかね?だが私にとっては必要不可欠な物。これを王政に差し出すことにより私の権力を上げ、いずれは小宝剛岐を越える権力を持つことになろう。」

 

「人のすることじゃ、ないですよ。」

 

「?」

 

「大魔王といっても、宝を大切にしてきたお方。それが黄泉の住人となった今、その棺にも等しい城をあさり、ましては遺骸を持ち去るなんて死者を愚弄することに他なりません!」

 

「?確か、魔王をこの地に葬ったのは他ならぬ君と博麗の巫女、そして名もなきモノではなかったかね?」

 

「!!」

 

「自ら殺めたものに対しては、主の愛着が湧くものなのかな?それとも、己が人殺しであることを都合よく忘れ、今やモノでしかないこれを持ち去る私をこそ悪と断ずるのかね?いやはや、実に興味深い論理だ。」

 

「うぅ・・・・。」

 

彼が話している所々にリナの泣き声が響く。だがそれを気にせずに彼は話を続ける。

 

「一興を喫するが、君の論理、嫌いではないよ。」

 

そう言うと彼は右手を背に回していて、再び口を開いた。

 

「ところで、君達を先導し、幻想郷に平和を導いた影舷隊団長黒き刀西田悠岐。使いの者に聞いたのだが、彼は小宝剛岐の前に敢え無く散ったそうだね。」

 

「なっ、悠岐さんが!?いや、でも剛岐様はそのようなことをするお方ではありません!」

 

「君は知らないだけだ、剛岐の本能を。彼は剛岐の命令を拒み、ましては彼の怒りをかってしまったらしい。まるであのセコンドのようにね。」

 

「・・・・」

 

「フッ、因果応報とは良く言ったものだ。満身創痍となったところへ、自ら出向いた小宝剛岐の持つ唯一無二と呼ばれし宝、緑光の剣で止めをさされたと聞いている。」

 

それを聞いた瞬間、妖夢は目を大きく見開いたが何も言葉を発さなかった。そんな彼女とは別にメルト・グランチが話を進める。

 

「残念だ、漆黒の刃を奪えず終いとはね。恐らくはへし折られ、玄武の沢の地で墓標の如く血粉に吹かれているのだろう。」

 

その瞬間、彼は玄武の沢がある場所に目を向けながら言った。

 

「玄武の沢は向こうだ。せめて彼の冥福を祈ってやるといい。そして、白玉楼勢も以後のことには十分気をつけることだ、では失礼するよ。」

 

そう言うと彼は外へ歩き始めた。妖夢はそんな彼を止めようとしたがその瞬間、メルト・グランチ自ら足を止めた。そして妖夢の方を見て言った。

 

「と、言いたいところだが。君には言うべきことがあったな。いや、一つ目は君達と言ったほうがいいのかな?いや君達は素晴らしいことをしたのだな。褒めてあげなければな。」

 

「私達は悪を撃破するという真理に従っただけです。何も褒めることでは・・・」

 

「いや、私は君達が魔王を死に追いやったことを褒めているのではないよ。私は神と呼ばれし魔獣、ガイルゴールを呼び寄せたことに褒めているのだよ。」

 

「なっ!?」

 

「神を呼び寄せることは現実世界の者でも為し遂げられなかったのだが、幻想郷はそれを為し遂げた。神を呼び寄せたのは守谷の巫女、東風谷早苗だったかな?」

 

「さ、早苗さんが・・・」

 

「私も正直驚いたよ。まさか彼女が神に選ばれし者だとはね。まぁおそらく彼女は八坂加奈子等の神の力を借りて呼び寄せたのだろう。それともう一つ、君に言わなければならないことなのだが、君の祖父であり師でもある男、魂魄妖忌。これも使いの者に聞いたのだが・・・」

 

「お、お師匠様が生きていると言うのですか!?」

 

「彼は黒き刀の手によって命を落としたようだね。」

 

「えっ・・・そんな・・・」

 

どうも信じられなかった。折角また会えると思っていたのに。既に死んでいた。そんな彼女にメルト・グランチは言う。

 

「捏造だと思うかね?だが事実だよ。何故なら彼は現実世界にしか存在しないと言われる妖怪、牛鬼に体を憑依されてどうしようもないと察した黒き刀の手によって倒されたらしいね。」

 

「そんな・・・お師匠様・・・」

 

「残念だったな、彼の冥福も祈ってやるといい。」

 

そう言うと彼は再び歩き始めた。そんな彼を妖夢は後ろから斬りつけようとした。その瞬間、突然大鎌が現れ、彼女の攻撃を防いだ。彼女はその大鎌を持つ者に目を向ける。そこには病で死んだ筈の村山小太郎がいた。だが妖夢はメルト・グランチの復活だと感じ、驚きはしなかった。そしてメルト・グランチに妖夢は言った。

 

「大魔王を倒した者として、それを持っていかせる訳には行きません!」

 

「魔王の宝を置いていく?生憎だが、それは無理だな。それはさておき、魔王の遺骸を置いていけということは君は無慈悲と呼ばれた黒田輝宗を世の真理と言うのに相応しいと言うのかね?」

 

「なっ、別にそんな訳では・・・」

 

「乱世、幻想郷、上洛。君もまたそれらを免罪符とする『庭師』という名の殺戮遂行者の一員に過ぎない。」

 

「何ですって!」

 

「勘違いしないでくれたまえ。私は今更その是非を問おている訳ではない。君のような魔王を越える何かを秘めている者には扱いが異なってしまったね。」

 

そう言った瞬間、彼は左手を村山に上げた。そして村山は奥で泣いているリナを担ぎ始めた。そしてメルト・グランチの方へ歩く。そさてメルト・グランチが口を開いた。

 

「所詮人とはモノ思い、モノをあてにする、ただのモノだ。勿論、君も私もただのモノと言うことだ。人とは変わることが出来ない生物の一つ。」

 

そう言うと彼は村山と共に歩き始めた。それを阻止するかのように妖夢が言った。

 

「待って下さい!リナさんをどうするつもりですか?」

 

「彼女なら我々帝王軍が預かるよ。」

 

「それと、あなたはこれからどうするつもりですか?」

 

「どうするつもり?そうだな、まずは芳香の元へ行き、後に折れた漆黒の刃を見に行くとしようか。」

 

「捏造に過ぎませんね。あなたをここで逃す訳には行きません!」

 

「今は君の相手をしている暇はないのだよ。私は今追われの身となっているのだよ。」

 

「追われの身?あなたを追いかける人なんて、思い当たらないですが?」

 

「四季映姫・ヤマザナドゥ。この名に覚えは?」

 

「四季さんが?それはどうして?」

 

「私はかつて幻想郷を荒らし、更には無理矢理冥界から死者を蘇らさせたからね。彼女が私を追うのは分かるだろう?」

 

「・・・・」

 

「恐らくは今頃彼女の部下である死神、小野塚小町が私を探しているのだろう。まぁ、彼女の性格からすれば私を捕まえることは先の話だろうね。では失礼するよ。」

 

そう言うとメルト・グランチと村山は城から飛び降りた。その瞬間、巨大なドラゴンが現れた。二人はそのドラゴンの背中に乗っていた。そしてメルト・グランチは妖夢に笑みを見せるとそのままドラゴンと共にどこかへ飛んでいった。そして妖夢は急いで小宝城へ走って行った。




次作は蘇る記憶です。青蛾の心の中に蘇る記憶。それは一体何なのか!?
次作もお楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。