宴会で酔いつぶれた者が増える中、一人だけ考え事をしていた少女がいた。青蛾である。彼女は珍しく酒を一口も口にしていない。あの日のことが忘れられないのである。
あの日とは魔王軍によって自分が殺されかけた時であった。雨の日、突然現れて助けてくれた。その男は傘をさしていて刀を腰にかけていて身長は2m近くあった。その男は傷だらけの青蛾に語りかける。
「私はこの世界には、二種類の女性がいると思う。雨の似合う人とそうでない人。君は正しく前者だね。今の君を見たら、誰だってそう思うだろう。」
「それは、何かの皮肉ですか?」
「心外だな、単なるジョークのつもりだよ。」
「あなたは誰ですか?」
青蛾の問いに答えるかのように男は傘を上げて顔を見せた。そして言った。
「知り合いだよ、君の奴隷の知り合いのね。君を助けに来た。・・・と言いたいところだけど、実はそうでもない。」
そう言うと男は傘を閉じ、ゆっくりと青蛾に近寄りながら言った。
「座視しても良かったし、手を貸しても良かった。いづれにせよ、結果は変わらなかったのかもしれないね。」
「腹が立つような話し方ですね、はっきり物事を言えないのですか?」
「はっきり物事を言い過ぎるのはどうかと思うよ。けど、それが君の魅力なんだろうね。」
すると、男は腕についている紋章を彼女に見せた。その瞬間、彼女はあることを思い出した。そして言った。
「その紋章・・・まさかあなたは!」
「気がついたかい?」
「あなたは地王セコンド!」
あり得なかった。死んだ筈の男が蘇っていたからである。疑問に思った青蛾は彼に問い詰める。
「悠岐さんから聞いた話では、あなたはメルト・グランチさんによって命を落とした筈じゃ・・・」
「フフッ、グランチが私を裏切るとでも?私はあの時、『地烈』、幻想郷で言えば『大地を操る程度の能力』だね。彼が爆発を起こした瞬間、私は地面に逃げた。そして八雲紫が西田君達を連れて逃げた後、私は地面から出てきて彼に自得を貸した。そして私は帝王軍の爆破装置設置隊の一人に変装して君達に気づかれないようにしていたんだよ。」
「で、でもメルト・グランチさんに腹を貫かれたとも聞いているのですが・・・」
「あれは本当のこと。私はその後グランチの『復活』で自得を使えるようにし、私は傷を癒した。そして彼に力を貸した。」
「じ、じゃあ用済みと言ったのは・・・」
「ただの捏造だよ。」
「そんな・・・」
「でももしあの時グランチが私を裏切る演技を見せなかったら完全に幻想郷は支配出来たんだけどね。」
「では、何故?」
「さあね、私にも分からないよ。けど、言えることは一つある。私もあのまま行動していたら五大王である剛岐、マーグル、モルトは完全に敗れていた。」
「・・・・・」
「その時の八雲紫の計画も、剛岐の計画も察していた。八雲紫なら幻想郷最強の存在を復活させる。剛岐だったら全てを生み出したと言われる神と呼ばれし魔獣ガイルゴールを呼び寄せるだろうね。」
「幻想郷最強の存在?」
「ん?君は幻想郷最強の存在を知らないと言うのか?驚いたな、幻想郷の者達なら知っていると思っていたのだけどね。まあ、言っておくよ。先代巫女だ。」
「なっ、先代巫女!?」
「思い出したかい?博麗霊夢の母親である先代巫女は幻想郷最強の力を持っていた。それは『常識を破壊する程度の能力』。彼女を復活させれば、私もグランチも苦しむだろうね。」
「魔獣ガイルゴールとは一体・・・」
「ガイルゴールは全てを生み出したと言われる神だよ。故に我々五大王に力を与えた者だよ。」
「あなた方に!?」
「だから五大王はガイルゴールに逆らえない。戦ったとしても敗北は確定。」
そう言うと彼は先程青蛾を押さえつけていた男の近くまで寄った。そして目を覚ました男の首を掴み、持ち上げた。そしてもがく男に言った。
「君の主君は愚かだね。まさか私でも敵わなかった相手に挑むなんてね。」
「や、やめろ!放せ!」
「生きたいか?残念ながら私は五大王。君には死んでもらうよ。」
そう言うと彼は男の首を放した。そして咳き込む男の首を蹴った。その瞬間、ゴキッという鈍い音が響き、そのまま男は動かなくなった。そして彼はその様子を呆然と見る青蛾に言った。
「私にとって黒田輝宗は面倒な存在だ。何故なら私の座を奪おうとしていたからね。」
「えっ、あなたの座?」
「さて、そろそろこの服も口調も疲れてきたな。やはりありのままの姿のほうがいいな。」
そう言うと彼は刀をしまった。その瞬間、彼の回りに砂が渦巻いた。思わず青蛾は目を瞑ってしまう。そして目を開いた。そして彼女は目を大きく見開いた。何故ならそこには勇ましい姿で後ろ髪を縛っていて笏を持っているセコンドがいた。先程の彼とは別人だった。そして彼は笏を回しながら言った。
「余は帝なるセコンドぞ!友よ、また会おう!」
そう言うと彼は霧のように消えていった。青蛾はそれをただ黙って見ることしか出来なかった。
青蛾はセコンドが生きていることはまだ誰にも話していない。話したとしても信じてくれる人がいないと思ったからだ。そして彼女は寝ている芳香の元まで来るとそのまま芳香の隣に寝た。
(ここはどこだ?俺は一体何をしていたんだ?そうか、俺は剛岐に逆らったから死んだのか。今俺は冥界にいるんだな。)
悠岐はそう思っていた。そしてゆっくりと目を覚ます。そこは冥界ではなく、誰かの家の中だった。自分は生きているのかどうかを確認すべく彼は体のあちこちを見る。体の傷はほとんど癒えていた。だが悪魔の目になることが出来る左目には眼帯がつけられていた。そして彼はベットから起き上がり、部屋を見渡す。そこは現実世界でもあるような家の構造だった。
「俺は・・・生きているのか?」
そんなことを思いながら彼はベットから降りる。そして部屋から出ようとした時だった。
「ブッ!?」
突然部屋の扉が開いて彼は鼻を扉にぶつけた。そして彼は鼻を押さえながら扉の方を見る。そこには驚いた顔をする妹紅がいた。
「妹紅?」
彼は彼女の名前を呼ぶが妹紅は驚いた顔をするだけだった。そして再び悠岐が口を開いた。
「妹紅、どうしたんだ?」
「うっ、グスッ・・・悠岐!!」
そう言うと彼女は泣きながら悠岐に飛び付いた。突然飛び付かれたため、彼は目を大きく見開いた。そして泣く彼女に言った。
「お、おい妹紅!急に飛び付かれたら痛いだろ?」
「良かった・・・・悠岐が生きてて本当に、良かった。」
「・・・・・そっか。ありがとう、妹紅。」
そう言うと彼は彼女を優しく抱きしめた。そして悠岐は妹紅から放れて、言った。
「ちょっと話をしないか?気になることがあるんだ。」
「ああ、いいよ。」
そう言うと二人は家から出ると暗い夜道を肩を並べて竹林へ行った。そして月の光が照らされる場所で腰を下ろした。そして悠岐が言う。
「なあ、妹紅。俺は剛岐にやられた後、どうなってた?」
「私と慧音が玄武の沢で悠岐を見つけた後に慧音の寺子屋で出来る限りの治療を行った。生憎、左目だけは時間が掛かりそうだ。」
「そっか。まあ、左目は治せないのも分かる。」
「そして他の人達には気づかれないように悠岐を私の家で寝かせた。あんたは半日も寝てたんだから、心配したんだよ。」
「は、半日!?そんなに俺はぐっすり寝てたのか?」
「勿論、もう起きないかと思ったよ。」
「そんな怖いこと言うなよ。そう言えば大魔王はどうなったんだ?」
「私達は魔王軍に苦しんだけど、早苗がガイルゴールを呼んだお陰で魔王軍を全滅させた。そして霊夢、妖夢、衣玖が倒したよ。」
「そっか、じゃあもう敵はいないということだな?」
「そう言うことだね。」
「やっと、終わったんだな。」
「ああ、終わったよ。」
「ところで妹紅、みんなはどこに?」
「小宝城だよ、今は宴会をやってるんだ。」
「俺も宴会に行ったほうがいいかな?」
「それはマズイと思うわ。何故なら死んだ筈のあんたが来たらみんなびっくりしちゃうだろ?」
「た、確かにそうだな。」
「だから私と慧音がみんなにあんたが生きてることを言ってからね。」
「分かったよ。それでお前は宴会に行かないのか?」
「あんたの世話をするから行かないよ。」
「そっか。そう言えば早苗がガイルゴールを呼んだって言ったよな。」
「ん?ああ、言ったけど?」
「凄いな、あいつは。現実世界の人達でもガイルゴールを呼ぶことは出来ないと言うのに。」
「五大王でも出来ないのか?」
「それは分からない。剛岐なら呼べるかもしれないけれどあいつはガイルゴールにようやくなんてないようだしな。」
そして彼は妹紅の方を見る。彼女は手をもじもじさせながら顔を赤面していた。彼はそんな彼女に言った。
「お前、なんか隠してるだろ?」
「なっ、なな何にも隠してないっ!」
「じゃあ顔が赤くなってるのはどうしてだい?」
「そ、それは・・・」
彼女が言おうとした瞬間、悠岐は妹紅の手を優しく握った。妹紅はそれに驚きを隠せなかった。そんな彼女に悠岐が言う。
「正直に話せよ、別に笑いやしないからさ。」
「じ、実は・・・私は不老不死の体なんだ。」
「うん、分かってるよそれは。言いたいのはそれじゃないだろ、妹紅?」
「実は・・・私は、悠岐と同じ存在なんだ。」
「!」
「私は蓬莱の薬を口にしてしまい、死ぬことが出来なくなった。そして炎を使えるようになったんだ・・・」
「俺は普通に死んじゃうよ?蓬莱の薬なんて俺飲んでないよ?」
「と、とにかく!私とあんたは同じ存在なんだ。」
「『家族を失い、力を手にした人間』と言いたいのか?」
「まあ、そうだな。」
「俺は、全てを助けるために戦う。勿論、妹紅のためにも戦う。」
「悠岐・・・」
「後に敵が出てくるかもしれないからな。十分に警戒しないとな。」
「そうだな・・・」
「そう言えば、俺の漆黒の刃は?」
「ああ、それなら慧音の寺子屋にあるよ。へし折られた状態だけどね。」
「それでも別に構わない。麻里が『復元』で直してくれる筈だからな。」
「・・・・」
「さて、妹紅。座るのも飽きたからどこか歩こうぜ?」
そう言うと彼は立ち上がり、妹紅に手を差し出した。妹紅は少し慌てたが、言った。
「あ、ああ!」
そう言うと彼女は彼の手を握った。そして立ち上がり、二人はどこかへ歩いて行った。
小宝城では妖夢が慌てて剛岐の元へ来ていた。そして彼に言った。
「剛岐様、大変です。帝王が生きてました!」
「!?」
その言葉を聞いた瞬間、回りで起きていた人が目を大きく見開いた。そして言った。
「帝王が生きていたの?フフフ、また戦えるなんて、いい機会ね。」
「幽香はもう戦う気満々だな。剛岐、俺らは出陣するべきか?」
「・・・・その必要はない。」
啓介の問いをすぐに返した剛岐を見て一同は唖然となる。そしてレミリアが剛岐に言う。
「王様、それはどういうことかしら?」
「聞こえなかったのか?またあいつと戦う必要はないと言ったんだ。」
「また奴は支配を企んでるかもしれないと言うのにですか!?」
「まあ、落ち着け咲夜。何故戦わなくていいのかと言うと奴はもう飽きたからだ。」
「飽きた?」
「奴もこの幻想郷が好きだ、もう支配はしないだろう。そして、宝も収集はしないだろう。」
「そうなのね。」
「さて、もう少ししたら帰ってもらうからな。いつまでもこの小宝城にいさせる訳にはいかない。」
「理由は?」
「汚くしたくないから!」
「何と言う我が儘な王なんだ・・・」
「何か言ったか?モルト。」
「いや、なんでもない。」
そして全員が帰っていった後、王の部屋で独り言のように剛岐が一言呟いた。
「・・・生きていたか。メルト・グランチ、セコンド、そして悠岐。」
次作は再会と共同です。幻想郷と現実世界の人達が小宝剛岐の企画に唖然となる。果たして、その企画とは!?
じゃあもお楽しみに!