会談
「ふー、暑いな~。」
幻想郷は既に夏を迎えていた。そんな中、魔理沙とパチュリーは人里を散歩していた。そして、平和になった人里を見ていた。そんな中、パチュリーが言った。
「歩くのは久しぶりね、ちょっとふらふらしてきたわ。」
「大丈夫か、パチュリー。そんなら無理しなくてもいいぜ。」
「ありがとう、でも大丈夫だから。」
そう言ってもパチュリーはもう顔色も悪く、ふらふらになっていた。だが魔理沙の前では強がりな性格を見せている。だが限界が彼女に訪れ、そのままパチュリーは倒れてしまった。
「なっ、おいパチュリー!?」
すぐさま彼女の元へ駆け寄り、魔理沙はパチュリーの額に手を置いた。
「すごい熱だな、すぐに永遠亭に行かないと!」
そう言うと彼女はパチュリーを背負おうとした。その時、後ろから馬が三頭走ってくる音が響いた。そしてパチュリーを背負おうとする魔理沙の前で止まった。
「ああ、ごめんよ!」
一瞬後ろを振り返って声をかけた魔理沙は馬に乗っている人物に気づき、再び後ろを振り返る。
「・・・私の顔に、何かついているのか?」
その人物は後ろ髪を束ねていて優々とした姿をしている長身の男だった。魔理沙はその男に覚えがあり、目を大きく見開いた。そんな彼女とは別に男は熱で魔理沙に背負われているパチュリーを見ながら言った。
「友達かね?」
魔理沙は震えながらもようやく男に言葉を発した。
「あんたは、あの時の・・・」
「あの時?私は君に覚えはない、おかしな小娘だ。」
そう言うと彼は魔理沙の横を通っていった。彼の後ろには顔を隠している男と麻里ぐらいの身長の少女が馬に乗っていた。それとは別に魔理沙は箒にまたがり、永遠亭へ向かった。
永遠亭に着くと魔理沙は永琳に事情を話し、パチュリーを治療してもらうことを求めた。彼女はすぐに引き受け、パチュリーを治療した。そして彼女はパチュリーを布団に寝かせた。魔理沙はそれを黙って見ることしか出来なかった。そんな彼女とは別に永琳は濡れた布をパチュリーの額に優しく置いた。そして魔理沙に言った。
「少し見守ってあげなさい。症状が悪くなったらすぐに私を呼んで。」
「・・・分かったぜ。」
そう言うと永琳は奥の部屋に入っていった。魔理沙は布団で寝転がるパチュリーの枕元に座り、彼女の手を優しく握りながら言った。
「ごめんな、パチュリー。私が無理に歩こうって言ったから・・・」
「う・・・ん・・・・・」
彼女の声は弱々しく、声もあまり出ていなかった。魔理沙はあの時いた男の言葉が忘れられなかった。
「友達かね?」
時は遡ること8年前、まだ魔理沙が魔法に馴れていない頃の話。当時、彼女は唯一の親友、アリスと共に毎日を過ごしていた。
そんな中、突如魔法の森が襲撃された。魔理沙はその時、アリスを探して燃え盛る火の方へと走っていた。
(どこだ、どこにいるんだぜ?アリス!)
探している内に彼女はあるものを見つけ、すぐさまそこへ向かう。そこにいたのは左手でアリスの後ろの首襟を掴んで、持ち上げている長身で前髪が一部だけ伸びていて後ろ髪が腰まで伸びていて右手には宝刀を持つ男がいた。
「ア、アリス!」
彼女は思わず声を発してしまった。それに気づいた男は魔理沙に不気味な笑みを浮かべ、そのままアリスを放した。
「アリス!」
すぐさま魔理沙はアリスの元へ駆け寄る。そして魔理沙は長身の男を睨む。そんな彼女に男は言う。
「何故怒る?戦を仕掛けてきたのは君達だ、理解し難い、全く持って理解し難い。」
「戦ってわけじゃない!私はただ、友達を助けたくて・・・」
「魔理沙・・・・・逃げ、て・・・」
魔理沙に一言呟いたアリスはそのまま意識を失ってしまった。
「アリス!?」
「戦を知らぬ子供にそれを教えるのが大人の務め。それが世の真理、戦に死は付き物だ。」
(こいつ、やばい・・・)
男の不気味な雰囲気に怯えた魔理沙の体は徐々に震え始めた。そんな彼女に男は言う。
「君達もこの戦に巻き込まれぬよう、気を付けることだ。では失礼するよ。」
そう言うと彼は馬に乗ってどこかへ行ってしまった。
魔理沙は鮮明に8年前のことは覚えていた。何故なら自分の家族が急死した日であり、あの男に会った日であるからである。そして魔理沙は寝ているパチュリーの手を握りながら男の名前を口にした。
「メルト・グランチ・エンペラー。」
八雲家ではメルト・グランチが来ていた。理由は紫が彼に用があるからである。紫の部屋ではメルト・グランチと紫が会談していて、隣の部屋では藍と橙がメルト・グランチが付き添いで連れてきた上山リナ、村山小太郎と話していた。そんな中、紫が彼に言う。
「よく来てくれたわね、帝王梟雄。ちょっとあなたに渡したい物と話したいことがあって呼んだのよ。」
「ほう、卿が私にか。珍しいという他ないな。さて、まず渡したい物とは?」
「それはこれよ。」
そう言うと彼女はスキマを展開させ、その中から高さ20cmほどの壺を取り出した。そしてそれを彼の前に置いた。そんな彼女にメルト・グランチは笑みを浮かべながら言う。
「八雲紫よ、これは?」
「蓬莱の薬よ。」
蓬莱の薬。幻想郷では中々手に入れることが出来ない品物であり、これを飲むと不老不死の体になれる薬である。これは蓬莱山輝夜、八意永琳、藤原妹紅も一度は口にしたことのあるものだった。紫の一言を聞いた彼は驚く言葉を口にした。
「いらないな。」
それを聞いた瞬間、紫は驚きを隠せなかった。なんせ、宝を欲する彼が宝というのに相応しい『蓬莱の薬』を自ら拒んだのである。そんな彼に紫は言う。
「いらない?それはどうしてかしら?」
「この世界は生者必滅だからねぇ、私にも死は必要不可欠なモノなのだよ。」
「あら、そうなの、それは残念ですわ。じゃあこちらはどうかしら?」
そう言うと彼女は再びスキマを展開させ、その中から一本の剣を取り出した。そしてそれを彼に差し出した。剣を見た彼はそれを手に取り、じっくり拝見しながら言った。
「見事な拵え、正しくこれは草薙の剣。これこそ私が欲するモノの一つだな。」
「あら、蓬莱の薬は拒んで幻想郷では簡単に手に入る草薙の剣を譲り受けるのね。まあいいけど。」
「さて、私を呼んだからには何かしてもらいたいことがあるのだろう?」
「えぇ、そうよ。流石お分かりね。」
そう言うと彼女はスキマを展開させ、その中へ入った。そしてメルト・グランチに手招きをした。彼はゆっくりと立ち上がり、スキマの中へ入っていった。
スキマの中へ入ると紫はメルト・グランチを見ながら言った。
「今回はあなたに協力してもらいたいことがあるの。」
「それは宝を欲することよりも、重要なことなのかな?」
「『幽香が了承した』って言えば、分かってもらえるかしら?」
「ほう、あの花の妖怪が認めたか・・・危殆、危殆。それで、卿は何をしたいのかね?」
「先代巫女復活計画よ。」
「ほう、彼女を蘇らせるというのかね?それは興味深い。そして、どうするつもりだ?」
「『霊夢達を鍛えること』と『堕落を打ち砕く』の二つの目的を達成させるのよ。それさえ出来ればこの作戦は成功よ。」
「彼女を蘇らせるために私の『復活』の能力が必要だと言うのかね?」
「そうよ。そして悠岐君や霊夢の力を少しいただいて先代巫女を蘇らせるという計画よ。そのためにあなたもこの計画に協力してもらいたいということ。」
「それはよい提案なのかもしれないが、卿は何もしないのかね?」
「・・・・・幽香ちゃんとグランチくんって言う、怖いお姉ちゃんとお兄さんに交渉しまちた。」
「・・・ふざけているのか?この様子じゃあ、卿の堕落も打ち砕かねばならないな。」
「余計なお世話よ。さて、もう分かったでしょう?私は藍と橙、幽香と共に行動するわ。」
「私は小太郎とリナと豊姫と共に行動すると?」
「えぇ、全く持ってその通り。さて、そうと決まれば明後日から行動するわよ!」
「明後日とは、まあ、悪くはないか・・・」
そんな彼とは別に紫はスキマを展開させた。そして自分の部屋に出た。彼女の後に続いてメルト・グランチもスキマから出る。そして紫がスキマを閉じた時だった。
「ちょっといいかね?この計画を成功させるために必要なモノがいるだろう?そう、ちょうど今、一人心当たりを思い出したよ。」
「流石ね。それで、その人材とは?」
「あぁ、その時のお楽しみだ。期待しているといい。」
「分かったわ、期待してるわね。」
そう言うと彼は八雲家から出て村山とリナを連れて馬に乗り、どこかへ行ってしまった。その様子を紫、藍、橙は黙って見ていた。
次作は忍び寄る影です。幻想郷に突如感じられるいつもとは変わった異変。果たしてその正体とは!?
次作もお楽しみに!