麗夜の表情を見たメルト・グランチも笑みを浮かべながら言う。
「戻ったか、麗夜。」
その彼の口調はいつもとは異なっていた。それに気にせず麗夜は笑みを浮かべながら黙って彼を見る。そんな彼にメルト・グランチが再び口を開いた。
「彼女は、東風谷早苗は?」
「『・・・・殺しました。』」
彼の言葉を聞いた瞬間、レミリア達は目を大きく見開いた。そして隼人が言った。
「そんな、早苗が・・・・嘘だろ!?」
そんな彼とは別にメルト・グランチは守谷神社の方へ目を傾けながら麗夜に言った。
「確かに、正気は消えている。」
そう言うと彼は体を麗夜の方向に向けて言った。
「驚いたな、まさか卿がこれほどまでに様々な私の命令を成し遂げていくとはね。」
「『これほどまで、ですか。まぁ、当たり前のことじゃないですか。僕なんですから。』」
そう言うと彼はメルト・グランチの前まで歩き、レミリア達を見ながら足を止めた。そして言う。
「『これからどうなさるおつもりなんです?』」
「レミリア・スカーレット達を動けなくなるまで痛め付けてから、宝の収集に、取りかかる。」
そう言うと彼は宝刀を前に向けた。それを聞いたレミリア達は動こうとしたが、先程のダメージが大きいせいか、中々動けなかった。と、麗夜がメルト・グランチの宝刀に触れ、口を開いた。
「『いいじゃないですか。それだったら、レミリア達痛め付けるのは、僕がやりますよ。』」
「・・・・・麗夜。」
彼がそう言った瞬間だった。
麗夜の服の袖から突如刀が延び、そのまま刀はメルト・グランチの胸を貫いた。
「カ、カハッ、あ・・・」
今や痛みよりも驚きで一杯なメルト・グランチに麗夜が言った。
「『地獄火炎の能力から逃れられる唯一の方法は、『紅蓮』発動前から、刀に触れておくこと。その一言を聞き出すのに、何時間しか掛からなかったことやら。』」
「くっ・・・」
「『幻想郷のみんなも、影舷隊のみんなも、それを知る人は誰もいないのに、みんなメルト・グランチ様を殺せるとか思ってて、見ていてハラハラしました。』」
そう言うと彼は刀をメルト・グランチから無理矢理抜いた。そんな彼に麗夜は言う。
「『メルト・グランチ様を殺せるのは、僕だけだよ。』」
胸を押さえながらもメルト・グランチは笑みを浮かべながら言った。
「知っていたとも、卿のことなど。卿の狙いを分かりきった上で私は卿を連れていた。卿が私の命をどう狙うのかに興味があったからだ。だが残念だ、麗夜。この程度の攻撃で私を倒せると・・・」
「『思ってません。』」
即答だった。即答されたメルト・グランチの顔には悔やみの表情が浮かんだ。そんな彼とは別に麗夜が口を開いた。
「『影舷隊団長の西田悠岐君の能力、あなたなら知ってますよね?どうやらあれ、嘘みたいですね。』」
「何っ!?」
「『あれは波動の技の威力を強めるものではありません。その代わりと言うべきなのか、彼の持つ『漆黒の刃』にはある成分を含んだ猛毒が仕込まれています。』」
それを聞いた瞬間、隼人は首を傾げた。そんな彼にレミリアが言う。
「悠岐の刀にあんな効果があったの?」
「いや、悠岐はそんなことは話してなかったな。」
話す二人とは別にメルト・グランチは舌打ちをした。それに気づいた麗夜はニタニタしながら言った。
「『分かったみたいですね。今胸を貫いた瞬間、メルト・グランチ様の体内に猛毒を仕込んだんです。』」
「麗夜ァ!」
「『喋るんだったら、早くしたほうがいいですよ。まぁ、早くしても、死ぬものは死ぬんだけどね。』」
そう言うと彼はメルト・グランチの前まで歩み寄ると左手で先程貫いた傷口の前まで寄せた。そして技の名前を言った。
「『砕け、
「麗夜、貴様っ!」
彼がそう言った瞬間、彼の胸が徐々に開いていった。そんな彼に麗夜が言う。
「『胸に穴が空いて死んでいく・・・これこそ帝王梟雄に相応しい死に方ではないんでしょうか?』」
彼がそう言った瞬間、メルト・グランチの胸に大きな穴が空いた。そして穴からだらだらと血が垂れる。
「なん・・・だと・・・」
この光景を見ながら麗夜は思わず過去を振り返ってしまった。
時は遡ること9年前、まだ幼かった麗夜は夜中、ある気配を感じ、そこを覗く。そしてその光景を見て目を大きく見開いた。
「『!?』」
そこには三人の男が長身の男の前に膝をついて座っていた。そしてその内の一人が赤い光を長身の男に差し出した。長身の男はそれを受け取るとそれを直径2cmほどの宝玉の中に入れた。
そしてその何かの恨みを果たせた麗夜は黙って倒れていくメルト・グランチを見つめる。そして彼の胸元にあった宝玉に手を伸ばす。その瞬間、メルト・グランチが宝刀を彼に降り下ろした。危機一髪でそれをかわした麗夜の右手には宝玉が握られていた。そのまま彼はどこかへ移動した。宝玉を奪えなかったメルト・グランチはそのまま地面に倒れた。彼は目を大きく見開いたまま言う。
「麗夜・・・」
その瞬間、麗夜に対する憎悪、憤怒がメルト・グランチの体の中で生まれた。そしてまた彼の名前を言った。
「麗夜ァ!」
「『ハァ、ハァ。』」
何とかメルト・グランチから宝玉を奪い取った麗夜の右腕は少し彼の攻撃が当たったのか、えぐれていた。その痛みを気にせず麗夜は宝玉を握り、言った。
「『終わりだ。これで、終わり・・・」
彼が続きを言おうとした瞬間、突如巨大な圧力が辺りに響いた。そしてあの男の怒声が辺りに響いた。
「レェェェェェェイィィィィィィィヤァァァァァァ!!」
叫んだのは先程胸に穴を空けられたメルト・グランチだった。そして彼が叫んだ瞬間、彼の胸のまわりが突如紫に光だした。そしてその光は幻想郷の空に飛んでいった。
その光は無縁塚からでも見えた。光だした瞬間、霊夢、魔理沙、先代巫女は紫の光に目を向ける。それを見た霊夢が口を開いた。
「何なのよあれは。世界の終わり?」
「霊夢!魔理沙!」
驚く彼女らの元へやって来たのは慧音だった。彼女は魔理沙に近づき、あることをした。そんな彼女に魔理沙が言う。
「お、おい慧音。これはなんのつもりだ?」
「お前の歴史を喰ってやったんだよ。能力が消えた歴史をな。」
「本当か?ありがとう!」
「それよりも慧音。あの光は何なの?」
「分からない。けど、何かマズイ雰囲気は出ているな。」
戸惑う霊夢達に先代巫女が口を開いた。
「あぁ、グランチがキレたか。珍しいことだ。」
「なっ!?お母さん、それはどういうこと?」
「グランチが怒るようなことを誰かがやったらしいな。」
ちょうどその頃、竹林から出た悠岐と鈴仙もその光を見ていた。そんな悠岐に鈴仙が言う。
「悠岐さん、あの光は・・・」
「おそらくメルト・グランチだな。レミィ達が危ない。急ごう!」
「はい!」
そう言うと二人は先程よりも速いスピードで紅魔館へ向かった。
麗夜も紅魔館の裏から顔を覗かせて光を見る。そして上空では光が消え、中から前髪の一分が前に垂れていて後ろ髪が腰あたりまで伸びていて金色で持ち手と刀の付け根には龍の顔がついている宝刀を持つメルト・グランチが現れた。そんな彼の瞳は紫に変化していた。そして麗夜に言った。
「私の勝ちだ、麗夜。卿の持つ宝玉が、既に私の中に無くとも、私のモノだ。」
そう言った瞬間、彼の目が一瞬だけ光った。その瞬間、麗夜が持つ宝玉が光だした。
「『な、何だ、これは!?』」
驚く麗夜とは別にメルト・グランチは既に彼の背後に移動していた。そして彼は躊躇うことなく麗夜を斬りつけた。そのまま斬りつけられた場所からは鮮血が飛び散る。急所に当たったのか、彼はそのまま倒れていった。その際に彼は『大嘘憑き』を使おうとしたが、能力が封印されているため、発動出来なかった。それでも彼はメルト・グランチの持つ宝玉を奪おうと右手を伸ばす。それを見たメルト・グランチは麗夜の右手首を掴むと、そのまま彼の右腕を引きちぎった。
「『なっ!?』」
「クックククククク。」
そしてメルト・グランチは強化した宝刀を麗夜の腹部に刺した。その瞬間、麗夜の体がだらんとなり、彼は少しずつ吐血した。そんな彼にメルト・グランチが言う。
「所詮人とは裏切りを繰り返し、自らのエゴイズムを欲するモノ。無論、それは私も卿も変わりはしないこと。ありがとう、麗夜。卿のお陰で私はまた彼女と会うことが出来た。」
紅魔館の表では何が起こったのか、理解出来ていないレミリア達がいた。そしてフランが口を開いた。
「ねぇ、お姉様。今どうなってるの?」
「分からないわよ。けど、何かが起こったのは確かね。」
彼女がそう言った瞬間、あの巨大な威圧がレミリア達を襲った。そして紅魔館の裏からは麗夜を担ぐメルト・グランチが現れた。そして彼は麗夜をレミリア達のところへ投げ捨てた。
「え?私に話がある?それって何?」
「『うん。僕、倒して見せる。』」
「えっ?」
「『ユウナに奪われた力を絶対に取り返してみせる。そして、君と共に生きていきたいんだ。』」
「本当に?ありがとう、麗夜。その言葉、期待してるわね。」
「『どうして死んでしまったんだ、まだ僕は奴を倒してないのにっ!うわぁぁぁぁ!・・・・許さない。絶対にあの男を許しはしない!ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーー帝王梟雄、メルト・グランチ・エンペラー!』」
麗夜は心の中で反省していた。
(『駄目だった。結局、ユウナから取り返すべき力、取り返せなかったし、ユウナの仇も取れなかった。僕って人はやっぱり、無駄だったんだな。』)
そのまま彼の意識は遠くなっていった。それを見たレミリア達は驚きを隠せなかった。そんな彼女らとは別にメルト・グランチが宝刀をレミリアに向けながら言った。
「彼は所詮エゴイズムを欲求する塊でしかなかった。さて、レミリア・スカーレットよ。終わりにしよう。」
そう言うと彼は宝刀を降り下ろした。隼人や咲夜が止めようとしたが間に合う距離ではなかった。
突然レミリア達の前に現れた長身で勇敢な姿をしていて笏を持っている男が彼の攻撃を左手で受け止めていた。それを見た一同は目を大きく見開いた。そんなメルト・グランチに長身の男が言う。
「グランチよ、其の方の相手は余が務めよう。」
メルト・グランチは男から距離を取り、男に言った。
「邪魔だ、卿に用などない。」
そう言うと彼は左手を上げて指を鳴らした。その瞬間、男の体に火がついた。だが男は笑いながら彼に言った。
「ハハハ、グランチよ。その程度、余に通じると思ったか!」
そう言うと彼は笏を回し始めた。その瞬間、彼についていた火が一瞬にして消えた。
「ハッ。」
それを見たメルト・グランチは鼻で笑い、そのまま男に宝刀を降り下ろした。レミリア達は呆然と二人の攻撃を見ていた。そんな中、レミリアが言った。
「誰?あの男の人。メルト・グランチと互角に競り合えるって・・・」
そんな彼女の質問に答えるかのように隼人が口を開いた。
「現実世界の最高権力者であり、五大王と呼ばれている、真の現実世界最強の男ーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー帝たる創世地王セコンド!」
「何ですって!?」
パチュリーがそう言った瞬間、長身で勇敢な姿をしている男、セコンドは笏でメルト・グランチを殴り飛ばしていた。その姿に一同は呆然とするしかなかった。
「レミィ!隼人!」
突然聞こえた少年の声にレミリア達ははっと我に返る。そこには悠岐と鈴仙がいた。と、悠岐がメルト・グランチと戦っているセコンドを見ながら言った。
「セコンド?」
「わ、分かるの?悠岐にも。」
「あぁ、分かるさ。けど、奴があの姿なのは珍しいな。」
そんな彼らとは別にセコンドはどんどんメルト・グランチを攻める。と、メルト・グランチが目の前で指を鳴らした。その瞬間、地面から炎岩が突き出てきたが、セコンドはそれを読んで素早い動きで回避した。その速さは並の者ではなかった。そして彼は再び笏でメルト・グランチを殴り飛ばしていた。そして彼は笏を背中にしまうと両手を上げてゆっくりとメルト・グランチに歩み寄りながら言った。
「示せ、定めの旋盤よ。」
「な、何をしているの?セコンドは。」
フランは思わず悠岐に尋ねる。そんな彼女に悠岐は『見てれば分かる』という無言のメッセージを送った。そしてメルト・グランチが起き上がった時だった。突如セコンドの姿が消えた。
「なっ、消え・・・」
メルト・グランチが驚いた時だった。突如背後にセコンドが現れ、そのまま笏の先から出ている刀の刃の部分で彼の背中を斬りつけた。そのまま彼は地面に倒れた。
「これも定めだ。」
そう言うと彼は刃を笏の中にしまった。彼の技を見た悠岐達は驚きを隠せなかった。無理もない、何故ならセコンドが消えた瞬間、メルト・グランチの背後にセコンドがいてそのまま彼の背中を斬りつけていたからである。
「い、今のは・・・」
「無間の扉。」
そう言ったのは悠岐だった。そして彼は話を続ける。
「自分の前に空間を出現させ、そして一定の範囲内に相手が入った瞬間、相手の背後に空間を作り、そこへ移動して相手を攻撃する技だ。あれはセコンドしか使えない技。簡単に言えば八雲さんの能力と咲夜の能力を合わせた感じだな。」
「紫と咲夜の能力が合わさった技!?」
「それは強いわけですね。」
セコンドは倒れるメルト・グランチに笏を構えながら言った。
「まだ余には届かぬな、グランチ。其の方の熱、余にはまだ足りぬ。それよりもグランチ、其の方はもう終わりぞ。もう其の方に切り札などない。」
「・・・・ハハハ、終わりだと?笑わせてくれるね。まだ私には切り札はあるとも。勿論、私が敗れることは定められたこと。そんなこともあろうかと八雲紫には内密であるモノを蘇らせるのだよ。」
そう言うと彼は指を鳴らした。その瞬間、何処からか爆発音が響いた。それを聞いたセコンドはある方向を見ながらレミリア達に言った。
「しまった。友よ、玄武の沢だ!」
「玄武の沢?そこで何が起こったんだ?」
「魔王が復活を果たしたぞ。」
「何ですって!?」
「マズイな。魔王が蘇っちゃ、面倒だ。早くなんとかしないと・・・・」
「俺がやる。」
そう言ったのは悠岐だった。そんな彼に隼人が言う。
「お前、正気か!?あんな野郎を一人で倒すというのか!?」
「当たり前だ。奴との決着をつけるためだ。」
「黒き友よ、其の方にやりたいことがある。」
セコンドに呼ばれたため、悠岐は彼の元へ近寄る。と、セコンドが彼の肩に手を置いた。その瞬間、麗夜との戦いによって傷ついた悠岐の体が完全に癒えたのである。それをみた悠岐は一言発した。
「自得か。ありがとな、セコンド。」
「それで魔王を打ち倒すがよい。余は其の方のことを信じているぞ。」
「待って下さい、悠岐さん。私も行きます!」
そう言ったのは鈴仙だった。そんな彼女に笑顔を見せた悠岐が彼女に言った。
「よし、ついてこい!お前は俺の看護を任せるぞ!」
「勿論ですとも!」
そう言うと二人は玄武の沢へ走っていった。セコンドは倒れるメルト・グランチに言った。
「グランチよ、余らに力を貸してくれ。其の方の力が無ければ果たせぬことがある。」
「成程、卿の表情を見る限り、本気のようだな。いいとも。」
そう言うと彼は起き上がった。そして玄武の沢と無縁塚を見つめた。
次作は魔王と先代です。メルト・グランチによって蘇る大魔王!そして霊夢達の前に立ちはだかる先代巫女!突如レミリア達の前に現れた帝セコンド!強者が集まる中、激しくなる激戦!果たして霊夢達は幻想郷を守ることが出来るのか!る
次作もお楽しみに!