首を切られたレミリアはそのまま地面に崩れ落ちた。メルト・グランチはレミリアの死骸に近づくとレミリアの喉に左手を当て、そのまま紫の光の玉を取り出した。それがレミリアの魂だとパチュリーは理解した。そしてメルト・グランチは身動きが取れないパチュリーを見て笑みを浮かべながらこう言った。
「卿の友達は私が預かっておくとするよ。それで構わないだろう?その屍は燃やさないでおくとするよ。亡き卿の友達をじっくり眺めるのも悪くはないからね。」
「あなたは自分がしたことがどのくらい重い罪なのか分かっているの?あなたはいずれ霊夢によって退治されるわ。そういう運命なのよあなたは。」
「卿は何故そんなことを想定することが出来るのかね?まあ幻想郷に滞在していた者だから分かるものか。」
「あなたは朽ちるわ。哀れな姿になってね。」
「さて、余興が過ぎたようだな。作業に取り掛からなければ。」
そう言うとメルト・グランチは気絶している咲夜の元へ歩み寄った。そして咲夜の喉に左手を置いた。そこへ、パチュリーが止めようとする。
「待って!あなたは咲夜に何するつもり?」
「何をするかと?返還だよ。私が持っていた力を返してもらうだけだよ。」
「そんなことはさせないわ!」
「動けぬ卿に何が出来るというのかね?卿のスペルカードというモノを使っても私には通用しないよ。何故なら私は卿の攻撃を全て見切ったからね。」
「!?」
「何をそんなに驚いているのかね?私だと考えれば驚くことはないだろう?」
「私はあなたに会った覚えはないわ。」
「おや、また余興が過ぎたしまったな。この私が同じ過ちを繰り返してしまうとはね。さて、作業に取り掛かるとしよう。」
メルト・グランチは咲夜の喉から白い光の玉を取り出し、それをパチュリーに見せた。そしてこう言った。
「これが私が咲夜に与えた力、『時間を操る程度の能力』なのだよ。」
「帝王梟雄!あなたはもう死ぬしかない存在ね!」
「卿を操るのも悪くはなさそうだな。」
そう言うとメルト・グランチはパチュリーに向かって隼人と同じ、黒い塊を投げつけた。そして笑みを浮かべながらこう言った。
「今日から卿の主はこの私だよ。理解したかね?パチュリー・ノーレッジよ。」
「・・・・はい、メルト・グランチ様。」
「それでよい。さて、次の場へ行くとしようか。」
そう言うとメルト・グランチは隼人とパチュリーを連れて霧のように消えていった。
レミリアとフランが死んだことをまだ知らない悠岐と霊夢が人里を見回っていた。しかし特になにも異常はなく、二人はそのまま別の場所に移動することにした。
「どういうことだ?なんでメルト・グランチとセコンドがいないんだよ!」
「おそらく別の場所にいるみたいね。できるだけ早く見つけましょう。」
「ああ、そうだな。」
その頃、マーグルは・・・。まだ小屋に閉じ籠って客が来るのを待っていた。そこへ、一人の男がやって来た。その男はマーグルの部下であった。かなり慌てているせいか、息づかいが荒かった。
「どうした?一体何があったんだ?」
「マーグル様、先程レミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットがメルト・グランチによって命を落としました。」
「・・・そうか、分かった。引き続き情報の提供を進めてくれ。」
「はっ!」
そう言うとマーグルの部下である男は走っていった。男が行った後、マーグルは独り言のように呟いた。
「どうして俺の警告を無視したんだ、レミリア・スカーレット。あれほど外出は控えろと言ったのに・・・」
マーグルは鉛筆を握りつぶし、机を殴りつけた。そんな彼の目は怒りに満ちていた。
「メルト・グランチ、お前はやりすぎだ。これ以上お前の好きにはさせない!」
そう言うとマーグルは小屋を出て走っていった。
その頃、竹林では麻里がメルト・グランチ、セコンドとの戦いのために輝夜、鈴仙、妖夢とともに見回っていた。しばらく見回っていると長身の男、セコンドがいた。セコンドは四人を見て笑った。そしてこう言った。
「これはこれは、木下麻里に蓬莱山輝夜、鈴仙優曇華院イナバに魂魄妖夢じゃないか。まさかここで君達に出会えるとは。これも何かの運命なのかな?」
「地王セコンド!幻想郷は絶対に渡さないわ!」
「いい面持ちだな、蓬莱山輝夜。少し君の力に期待するとするよ。」
そう言うと四人は一斉に散らばり、それぞれ弾幕を放った。だがセコンドはそれをかわすと見えない速さで輝夜の目の前にくると輝夜の腹部を蹴り飛ばした。
「ぐはっ!」
輝夜はその勢いで竹をなぎ倒しながら一軒の小屋の壁に衝突し、吐血した。鈴仙が輝夜の元へ駆け寄ろうとするがセコンドはそれを許すはずがなく、セコンドは鈴仙の左腕を掴み、麻里に向かって投げ飛ばした。
「う、うわぁぁぁ!」
麻里は受け止められず鈴仙とともに吹き飛んだ。続いて妖夢が桜観剣を用いてセコンドに斬りかかるがセコンドは妖夢の攻撃を素手で受け止めた。そのままセコンドは妖夢を蹴り飛ばした。
「かはっ・・・」
妖夢は竹にぶつかり、勢いが止まった瞬間に吐血した。四人はセコンドに全くダメージを与えることが出来ずに傷だらけになった。セコンドは残念そうな顔をして四人を見た。と突然、男がセコンドの元へ走ってきた。おそらくセコンドの部下だと四人は確信した。
「どうしたんだい?何か嬉しいことがあったのかい?」
「はい、先程メルト・グランチ様がレミリア・スカーレットとその妹を撃ち取ったようです。」
その言葉に四人は驚きを隠せなかった。無理もないで何故ならレミリアとフランが死んだからだ。
「レミリアとフランが死んだ?嘘でしょ?」
「ハハハハハ!流石グランチだ。まさかもう三人の命を奪うとは大したものだ!」
「セコンド、お前!」
「事実だろう?事実を言って何が悪い?」
「どうしてそんなに馬鹿にできるの?あなたはレミリア達が死んだことに何も罪悪感がでてこないの?」
「来るはずないじゃないか。私は現実世界から来た者。幻想郷の者のことなんかどうとも思わないよ。」
「なんて最悪な存在なんでしょう。あなたは吸血鬼、それも今まで生きてきた中でも一番最悪な吸血鬼よ。」
「ん?勘違いしないでくれないか?私はただの人間だよ。いつ私が吸血鬼と誤解したんだい?」
「魔理沙から聞いたわ。あなたは己の剣に付着した魔理沙の血を舐めたんでしょ?」
「確かに私は彼女の血を頂いた。だがそんな程度のことで私を吸血鬼誤解しないでくれ。私は他人の血を頂くことが好きなんでね。」
「とっとと死んでくれない?あなたの話を聞くと耳が腐りそうで仕方ないわ。」
「『死ね』と言っているのかい?ならその言葉、そのまま返そう。」
「臨むところです!」
そう言うと四人は再びセコンドに向かっていった。輝夜、鈴仙が弾幕を放つがセコンドはそれを簡単にかわした。そして輝夜と鈴仙の目の前にくると二人の頭を掴み、地面に叩きつけた。麻里と妖夢はその隙にセコンドを斬りかかった。その瞬間、セコンドは輝夜と鈴仙を前に出した。妖夢と麻里は反応できるはずもなく輝夜と鈴仙を斬りつけてしまった。
「ぐあっ!」
「ぐはっ!」
「!!」
「どうしてそんな顔するんだい?怪我させたのは君達なんだよ。」
そう言うとセコンドは輝夜と鈴仙を麻里と妖夢に向かって投げ飛ばした。四人はそのまま吹き飛んだ。セコンドは飽きた顔をして刀をしまった。そして歩き始めた。
「待って・・・あなたは、どこへ行くつもり?」
「そうだな・・・・・・守谷神社に行くとしようか!幻想郷の強者、八坂加奈子を倒すとしよう。そうすれば私は神を倒した英雄として皆から尊敬される。」
「させないわ・・・そんなこと絶対にさせない!」
「じゃあね、暇だったらまた相手してあげるよ。」
麻里はフラフラになりながらセコンドを追いかけようとした。だがセコンドは霧のように一瞬で消えた。四人は急いで守谷神社に向かおうとしたがセコンドとの戦いにより、大怪我を覆ってしまったため、どうしようもなかった。そんな四人の元に一人の男が現れた。その男はメルト・グランチでもセコンドでもなかった。その男は金の服を着ていて虹色のオーラを発している刀を持っていた。妖夢と麻里はその男に見覚えがあった。その男は現実世界最強と呼ばれた男、小宝剛岐だった。傷ついた四人を黙って見つめていた。そして彼の口から言葉が出てきた。
「お前ら四人だけであいつに挑んだのか。」
「はい、そうです。ですが私達の力ではどうしようも出来ませんでした。」
「当たり前だ。あいつは俺と同じ五大王、お前らの力では手も足もでないよ。」
「奴はこれから守谷神社に向かうようです。剛岐様、私達はこれから守谷神社に向かいま、うっ!?」
妖夢は突然吐き気に襲われ、その場で吐血してしまった。
剛岐はそんな妖夢の背中を優しくさすった。
「お前らは少し休め。守谷神社ならもうあいつらに向かわせたよ。」
「それは誰のことかしら?」
「紫と幽々子に向かわせておいた。幻想郷の五大老の三人がいると流石のセコンドも逃げることだろう。」
一方、悠岐と霊夢は紅魔館に向かっていた。レミリア達の安否を確かめるためである。二人が湖をこえて門の前に行くとそこには首を切られたレミリア、喉に穴が開いているフラン、そして地面に倒れているミクと美鈴、小悪魔がいた。二人はすぐさま五人の元へ駆け寄った。そして声をかけた。
「おいミク、しっかりしろ!」
「美鈴、ちょっと起きなさいよっ!」
二人の声が聞こえたのか、ミクと美鈴はゆっくりと目を覚ました。ミクは二人を見ると笑顔を浮かべた。
「悠岐、無事だったのね。良かった・・・」
「霊夢さん、いつの間にいたんですか?」
「さっき来たばっかりよ。ところであんた一体何が起こったのよ。」
「あ、そうだ!メルト・グランチ!あれ、奴がいない?」
「ミク、隼人とパチュリー、咲夜はどうした?」
「分からないわ。私が気絶している間に三人共捕まったのかもしれない。」
「とにかく、今はメルト・グランチかセコンドを探そう。おい小悪魔、美鈴。レミィとフランの遺体を運ぶのを手伝ってくれ。」
「あ、はい。でもどうして?」
「当たり前だろ?お前ら自分の主を燃やすというのか?冗談じゃない。とりあえず、永遠亭まで行こう。」
「ええ、そうしましょう。」
そう言うと五人はレミリアとフランの遺体を永遠亭まで運んでいった。
その頃、永遠亭では傷を癒すために 麻里、妖夢、輝夜、鈴仙が訪れていた。傷だらけの四人を見て永琳は溜め息をつき、こう言った。
「あなた達少し休憩という言葉を覚えたほうがいいんじゃないかしら?そんなに傷だらけになって帰って来て。」
「そ、そうですね師匠。」
と、突然誰かが走ってくる音が聞こえた。麻里が様子を見に行くとそこにはレミリアを抱える悠岐にフランを抱える美鈴、そしてミク、小悪魔がいた。麻里は心配そうに悠岐達の方へ近寄った。
「悠岐大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。それよりも、また犠牲者が出ちまったよ。」
「レミリアとフランが死んだのね。」
「えっ!?」
「驚くのも無理もないわね。その二人を連れてきたということは保存しておくのがあなたからの願いね。」
「そうです、永琳さん。よろしくお願いします。」
「なんだか、あなたの感情が壊れかけているわね。大丈夫?」
「感情が壊れかけているというのは師匠、どういうことですか?」
「悠岐君の感情の器、つまり心が崩れかけているのよ。心が壊れてしまうと彼は自分を制御することが出来なくなってしまうのよ。」
「そんなこと・・・あるはずないですよね?」
「残念ながら小宝さんによるとあるらしいわ。悠岐君、少し休んでいったら?」
「そうですね・・・・少し休むことにします。おそらくセコンドやメルト・グランチは啓介か剛岐あたりが食い止めてくれることですから。」
「素直ね。さて、部屋に入りなさい。」
そう言うと九人は部屋の奥に入っていった。
ということで感情の器は終わりです。
さて、次作は過去と今です。竹林に現れたメルト・グランチを倒そうと霊夢達が立ち向かうがメルト・グランチが突然、幻想郷で起きた過去の出来事について話し始める。
次作もお楽しみにしててください!