調査回は刀太たちと一緒に、ということにしますので調査回が見たかった読者の皆様もご安心ください。
一部、一空についての設定認識ミスがあったので修正しました。
―――――……
何も、全てが絶望に包まれていたわけではない。
希望を抱いた時もあった。
夢を目指した時もあった。
現実に打ち勝てるよう努力したことも、あった。
けれど結局。
その希望が続くことなど、夢が叶うことなど、努力が実を結ぶことなど。
ただの一度もなかった。
ただ、それだけ。
―――――……
一応の調査を終えた黒斗は、アマノミハシラ学園にいた。
キチンと制服を着て。
「……なんで、こうなったんだろうなぁ」
「愚痴ってないで、早く今後のことを話しなさい」
そして、夏凛と二人きりでテーブルに座り、そのテーブルには紅茶とデザート付き。
デート以外の言葉が見当たらないシチュエーションの只中に。
こうなったのには話はほんの数十分前に遡る必要がある。
~数十分前~
刀太たち一行(一空や夏凛を含めた六人)がお茶をしながらバイオハザードテロについての確認をしていたところに黒斗がやってきたのだ。
「やっほ。皆さんお揃いで」
「黒斗?」
なんでここに?という顔の刀太に、
「お前らがここにいるっつうからわざわざ来てやったんだろうが」
少し苛立ちながら伝える。
その様子からこの学園にはあまり来たくなかったのがありありと伝わる。
「やっほー、久しぶりだね。
「そうだな、一空。調子はどうだ?」
「元気だよ」
軽い挨拶を交わす二人。
「なんだ?二人は仲いいのかよ?」
「まぁね」
「子供にそんなキツイ態度取れねぇだろ」
疲れたように言う黒斗に頬を膨らます。
「ひどいなぁ、黒兄は」
「精神年齢はどんな見た目でも誤魔化せねぇだろうが」
そうかな?と首を傾げる面々。
確かに一空の精神年齢は十三歳だが、これでも七十二年は病院のベッドの上とはいえ生きているし、子供とは思えないほど能力も高いし、考えもしっかりしていると思うのだが。
しかし、黒斗的には一空は子供らしい。
「……それで、何故ここに?」
それまで驚愕で固まっていた夏凛が硬直から脱して本題に入る。
夏凛にとって、黒斗の方から話しかけてきてくれるということ。
それは彼女の中で有り得ないこととして確立してしまっていた。
三百年もの間、それを望まなかった日は無いというのに。
だが、今はその話は置いておく。
黒斗が用事ということは雪姫に依頼された調査に進展があったということのはずだから。
「決まってんだろ。例の件だよ……けど」
報告の前にチラと一空を見やる。
「ん?僕なら問題ないよ、ちゃんと雪姫様から許可出てるしね」
返答に舌打ちで返す。
その返しに、酷くない!?と涙目になる一空だが気にしない。
「つっても、大したことは分かってねぇんだけどな。今回分かったのはそこそこでかい組織がバックにいるかもしれないってことだ」
「組織?この前の除霊の件はやはり実験だったということですか?」
九郎丸の問いに頷いて続ける。
「あぁ、しかも実験の規模が予想より大きい。下手すりゃ日本全国で実験が行われてる」
その内容に全員が驚く。まさかそこまでとは誰も思わなかったからだ。
「あと、最近物品の盗みも多発してる」
「盗み?」
一空の確認にあぁ、と返す。
「別にたかが大金程度とかお店の万引きなら気にも留めないんだけどな」
「一体何が盗まれたのよ?」
「いわく付きの物ばっかりだ。しかも、一件や二件じゃねぇ」
キリヱの質問の答えは空気を少し重くした。
「具体的には?」
夏凛の質問に、チラとそちらを見て答える。
「一番多いのは呪いが掛かった武器だ。他にもそういった伝承が付いたヤバイもんを中心に盗まれてる」
「それは……」
確かに良くない事態である、と夏凛は警戒心を強くする。
黒斗は基本的に報告を最小限にする傾向がある。
それは仲間を不用意に危険に巻き込まないためであり、大体は舌先三寸で煙に巻くことで関わらせないようにするためだ。
その黒斗が素直にマズイ状態だと告げる。
よっぽど危険なのかもしれない。
少なくとも、ここにいる自分たちに素直に危険を伝えるくらいには。
自分たちよりよっぽど危険な立ち位置にいるくせに。
(それでも、やはり貴方は一人で背負ってしまうのでしょう?)
寂しげに、黒斗を見やる。
黒斗は今、刀太たちに協力を仰ぐか真剣に悩んでいる。
その視線に黒斗は気付かなかった。
黒斗は。
黒斗と夏凛を除いた五人がアイコンタクト。
一秒すら掛からない完璧な連携で、作戦を実行に移す。
「さぁって、報告も聞いたし俺は修行に行こっかな」
「なら、僕も付き合うよ。刀太君」
「僕も行くよ、刀太兄ちゃん」
「あ、そうだ。さっき季節限定のオススメスイーツの告知がしてあったんだ」
「え、本当?一空。じゃあ私たちも食べにいきましょ。あ、夏凛と黒斗の分も頼んどいてあげるわね」
一斉に立ち上がり、そそくさと退散。
言ったとおりにケーキセットを注文するのも忘れない。
ポカン、とする二人を置き去りに、ミッションコンプリート。
達成時間は十秒。評価はSだ。コングラッチュレーション!
そして、数分後。
ケーキセットが運ばれて、今に至る。
「今後ってもなぁ~」
「貴方が決めかねているということは、相当に危険な案件なのでしょう?素直に私たちに頼ったらどう?」
その言葉に顔をしかめる黒斗。
やはり巻き込みたくない、という思いがあるのだろう。
そのためか、答えようとしない。
「どの道、貴方が抱えられる以上の事態に陥ったら私たちが必要になるのよ?それなら、今のうちから頼っておきなさい」
久しぶりにまともに話せた上に、黒斗が弱みを見せているという絶好の状態。
そのせいか、普段の彼女よりかなりグイグイ食い気味に頼るよう迫っている。
「………………」
「頼りなさい。……頼ってよ。ねぇ、黒斗」
唇をキュッと結び、縋るように言う。
「~~~~~わぁったよ!必要だと思ったら絶対頼るよ」
目を潤ませて、上目遣い。その上そんな悲しそうな顔までされたら、逆らえない。
三百年間まともな接触をしてこなかった黒斗だが、別に夏凛が嫌いになったわけでもない。
夏凛に冷たくは出来ても、夏凛のお願いに聞く耳持たないなど有り得ないのだ。
自分のお願いを聞き入れてくれたことに嬉しく思って笑っていると、視線を感じた。
急いでそちらを確認すると、見覚えのある影が五つ。
(もう!あんたたちが変に遠回りするから肝心な部分が見れなかったじゃない!)
(仕方ないだろ!行った道が悪くて、ショートカットしたら絶対にバレるルートしかなかったんだから!)
(それよりも、これは覗きじゃないのかな?)
(でも、九郎丸君も気になったから参加してるんだろう?)
(そ、それは皆が賛同していたからであって……!)
(こ、これが恋愛って奴か……)
(変な関心してるんじゃないわよ、三太!)
(ってか、あんまり騒いでたら見つかるぞ!?)
小さく喧嘩しながら二人の様子を窺う五人。
皆を静めるために、全員が二人から目を離した瞬間。
「貴方たち、何をしてるの?」
「覗きたぁ、随分と高尚な趣味してるなぁ?」
青筋を立てた
「いや、あの……これは」
「言い訳は無用よ」
そう言って刀を抜こうとする夏凛を必死で止める。
「てめぇら仲良くお仕置きだこら」
しかし黒斗が指を鳴らして黒針を五人に刺す。
それ自体は特に痛みも無い。
だから四人は疑問符を浮かべていた。
一空以外。
「ごめん!黒兄ぃ!!だから、だからどうかそれだけは!!!」
必死に懇願して謝る一空にギョッとする。
そこまでヤバイのかこの針は。
全員急いで抜こうとするが。
「ダメだ」
パチンッ!
無慈悲に鳴らされる指。
その瞬間、身体中が熱湯で煮込まれてるかのような激痛が全身を包む。
「「がぁああああああああああああ!!!!!!!」」
あまりの激痛に全員が叫ぶ。
空気という空気を全て吐き出した頃。
もう一度指を鳴らして、お仕置きを終了する。
「「はぁっ、はぁっ」」
失った空気が愛しいと言いたげに全力で呼吸する五人。
「な、なんなのよ?今の」
「あれが俺の魔法の一つ『黒針 煮式』だ」
「酷いよ、黒兄ぃ」
ぶぅぶぅ文句を言う一空を見もせずに切り捨てる。
「うっせ。それにほんの数秒だぞ?全開でやったけど」
「全開じゃん!キツかったよ!」
「幻術でぎゃあぎゃあ喚くな」
黒斗の言葉に驚きながら反応する九郎丸。
「あれが、幻?」
「おぅ。一応教えとくと、黒針は幻術の発動キーみたいなもんでな。術式に合わせた幻術を打ち込むようになってんだよ」
言われた一空を覗く四人は今でも信じられない。
あの感覚は本物としか思えなかった。それくらいの痛みだったのだ。
「でも黒斗、全開は少しやり過ぎよ?あれ、
夏凛の言葉にえ?と冷や汗が流れる。
「まぁ不死人だし」
あんまりな扱いにさしものメンバーがブチ切れる。
「「黒斗ぉおおおおおおおおおお!!!!!」」
その後、少し激しい喧嘩になったのは言うまでもない。
さぁさ!珍しく正統なラブコメ回!
シリアスばっかり筆が進む中、ようやく書けました!
次回は……まぁ、はっきりは言えませんが、あんまりすぐにシリアスに再突入させても息が詰まる方もいるかもなので、日常回。出来ればリクエストのあったオマケ回を持って来ようかと思います。
あ、ちなみにオマケ回のカップリングやらシチュエーションのリクエストはいつでもお待ちしていますので、お気軽に感想欄でも活動報告欄でもメッセージでも思い付いたらお送りください。