超下位存在君の無駄な努力   作:龍崎悠司

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さぁ、今回は刀太×九郎丸のデート&残り面子による尾行というリクエスト回です。

それでは皆さん、準備はいいですか?
なんのって?


そりゃあ砂糖を吐く準備に決まってるじゃないですか~、愚腐腐腐腐。


それではどうぞ。


デートにデバガメは付き物だよね!

 

 

 

 ―――――…

 

 自分の存在は灰色だ。

 

 黒か白か、決まっていない。

 

 決めたい色はある。

 

 けれど今は、そんなことは関係なく。

 

 この時を楽しく過ごしたいと思う。

 

 本当に、心から。

 

 ―――――……

 

 

 

 

 刀太たちが黒斗に調査を手伝うか聞いたところ。

「いや、事態は進んでるが、今から急に動いても大して状況は変わらん。だからしばらくは休暇だ。好きに過ごせ」

 そう言ったので、休養を取ることにした。

「特訓もいいけど、適度に遊んでガス抜きはしとけよ」

 その言葉に修行三昧に浸ろうと思っていた刀太は、まず遊ぶことにした。

 ちなみに、黒斗は休めと言ったのにまた調査に出ようとしたので夏凛に捕まって説教されることになった。

 そんな訳で刀太の選択肢は、誰と遊ぶかに絞られたのだが。

 キリヱはやることがあると言って何処かへ行ってしまい、黒斗と夏凛は付かず離れずの距離で連れ立って行ってしまった。

 また付いて行こうとしたが、黒針で牽制されたので諦めることに。あの幻術には、正直二度と掛かりたくない。

 三太と一空は、ゲーマーVSロボットのゲーム対決のためにゲームセンターへ。

 結局、選択肢は一つしか残っていなかった。

 とはいえ、嫌ということは決してない。むしろ喜ばしいとさえ思う。

「九郎丸、遊びに行こうぜ!」

「ぼ、僕でいいの?」

「ばっか、おめぇ。俺はお前がいいんだよ」

 満面の笑みを浮かべる刀太に少し顔を赤くして、九郎丸は手を引かれながら付いて行く。

 

 

 

 ―――そして。

(なぁ、夏凛よぉ。いくらやられたからって俺にデバガメさせるのはだなぁ……)

(うるさい。何より重要なのは、九郎丸が女の子になるかどうか。それ以外は全部枝葉よ)

(もう、だからって何であたしたちまで巻き込むのよ?)

(キリヱもノリノリで参加してたような……)

(黙りなさい、三太!)

(それにしても、みんな好きだね~)

 適当な木陰の中で、黒斗以外の四人が集まってヒソヒソ話していた。

 ここにいない黒斗は通信魔法で連絡を取っている。

 その黒斗は身体が靄で出来てる特性をフルに生かし、影に潜んで靄状の身体に変化させて二人の様子を観察していた。

 実際にその姿を見てみると、テニスボールくらいの大きさの玉型の靄に目が付いてるという、ホラー映画で大活躍な見た目をしている。

 ちなみに、四人の手には黒針が刺さっており、そこから幻術をコントロールして黒斗が見た景色を四人に見せるという、意外と器用なことをしていた。

(ていうか、黒斗の幻術って便利ねぇ)

(うん、僕もこういう使い方は初めて知ったよ)

(アホかお前ら、昔からの治療法として催眠術を使った精神治療ってのは行われてたんだよ。幻術だって、平和的に使えばセラピーの分野として活躍するんだからな)

 黒斗のプチ講座に関心しながら二人の様子を盗み見――もとい観察する。

 

 

 

 一方、そんな仕返しが実行されてるとは微塵も考えていない二人は。

「ほら、やってみろよ。九郎丸」

「で、でも僕に出来るかな?」

 UFOキャッチャーの景品を取ろうと頑張っていた。

 中くらいの猫のぬいぐるみが数種類並べられていて、細い板に乗った景品を落としてゲットするタイプだ。

 刀太に背中を押されて、とりあえず一回チャレンジする九郎丸。

 灰ブチの猫を狙ってやってみる。

 見事に当たって少し動くが、それだけでは落ちない。

「あっ……」

「大丈夫だって。一回でダメならもう一回、それでダメだったとしても何度でもやりゃあいいんだよ」

「う、うん!」

 刀太に勇気付けられて、嬉しそうに再度挑戦する。

 また当たって動くが、まだ落ちない。

 三度、四度……と挑戦していき、そろそろ落ちそう、というところまで動かした。

「もうすぐだぞ、丁寧にな?」

「うん……」

 刀太が固唾を飲んで見守る中。

 ほんの一瞬だけ、長くボタンを押してしまった。

「あっ!」

 九郎丸は失敗に気付いたが、無慈悲にもアームは降りていく。

「うぅ~、でももう一回だ!」

 意気込む九郎丸がお金を投入しようとするのを手で制する刀太。

「いや、ちょっと待て」

 降りていったアームの先端が灰ブチ猫のチェーンを引っ掛け。

 すぐ隣まで移動していた黒猫に勢いよく当たって。

 二つの猫のぬいぐるみが落っこちた。

 まさかのダブルゲットである。

「おぉおおおおお!!すげぇぞ、九郎丸!二つもゲットした!!」

「やった?……えへへ、やった!」

 跳んで喜びながら、片方の黒い猫を刀太に差し出す。

「はい、二つ取れたから一つ刀太君にあげるよ」

「いいのかよ?」

「うん、刀太君が励ましてくれたおかげで取れたようなもんだし、部屋に置いておいてくれればいいからさ」

「サンキューな、九郎丸!」

「えへへ、どういたしまして」

 そのまま連れ立ってクレーンゲームコーナーから離れていく。

 

 

 

 

 

 そんな二人を見たデバガメ組みの面々。

(……黒斗、あの猫を取って来なさい。出来れば白猫を)

 特に夏凛がとんでもなく不機嫌オーラ全開になっていた。

(馬鹿言うな、夏凛。見つかるに決まってんだろ)

(いいから!)

(待った待った!よくないわよ!尾行はどうなるのよ!?)

 慌てて止めるキリヱたち。とりあえず黒斗は尾行を続ける。

(ほら、二人を見て羨ましくなったのはわかるからさ。後で黒兄に取ってもらうといいよ、うん。あ、黒兄、僕にも取ってね?)

(………………羨ましくなんて、ないです)

(間がありすぎだっつの)

(あ、それより二人ともプリクラコーナーに入ってくぞ)

(それよりとは何?今一番重要なことは黒斗があの白猫を取ることであり、それを私に渡すことよ。それ以上の価値など、微塵の可能性すらありえないわ)

(夏凛、睨みが強烈過ぎて三太が脅えてるから!)

 キリヱが夏凛を抑えていると、中々プリクラコーナーの入り口から動かない刀太たちを見て、そうだ、と一空が提案する。

(あ、黒兄!プリクラがよく分かってなさそうな二人に教えてあげに行きなよ)

(はぁ!?本気で言ってんのか!?)

(うん、黒兄なら容姿を変えるなんて手足を動かすより簡単なことでしょ?)

(そりゃ、そうだけどな……)

 実際、言われたとおりにやるのは簡単だ。

 そもそも、手足を使うための身体を作らなければ動かすも何も無いので、それ以前の基本技能とも言える。

 けど、だからって変装してまでやる必要性を感じるかと思えばいや、さすがに……と遠慮したくなってしまう。

(ねぇ、頼むよ黒兄ぃ)

 出来るだけ子供っぽい振る舞いでお願いする一空。

 黒斗の弱点は実は結構色々あるが、これで元々イギリス紳士だった黒斗の一番の弱点は子供だと一空は思っている。

 だからこうして『子供』を強調してお願いすれば……

(ったく、わぁったよ。後で覚えておきやがれ)

(ありがと、黒兄)

 舌打ちしながらも聞き入れてくれた黒斗に一空が満面の笑みになる。

 

 

 

 

 ――さらに場面は二人の方に戻り。

「お客様、何かお困りでございますか?」

 いつもより大分身長を高めに設定。

 金髪オールバックで糸目の若干色黒の青年とくれば、もはや誰かも分からないが、その正体は言わずもがな黒斗である。

「あぁ、このプリクラで撮りたいんだけど、よくわからなくてな」

「すみませんが教えてください」

「かしこまりました。それではカップル様一組ご案内です」

「カ、カップル!!!???」

 最後に添えられた言葉にとんでもなく動揺する九郎丸。

「えぇ、最近のプリクラはちゃんと対策がとられるようになったとはいえ、やはり女性客が多く監視カメラの死角になる場所が多いです。なので男性のみのお客様にはご遠慮願っているのですが……お客様は男性でございますか?」

 捲くし立てる店員の言葉に少し混乱しながらも、男だと言おうとした九郎丸の口を刀太が抑える。

「そ、そうっす!俺らカップルなんすよ!」

「はい、それではご案内します」

 そう言って適当な台へ案内し、簡単に説明してその場を去る。

(ったく、これでいいのかよ?)

(大成功だよ!ありがとね、黒兄ぃ!)

 舌打ちしながら周りの死角へ行き、ホラーな容姿に戻る。

 あとで絶対にあいつら折檻してやろうと思いながら、二人がいるのとは別の場所に移動する。

(あれ?ちょっと黒斗?どこに行くのよ?)

(デバガメは終わりだ。この後続けるならお前らで勝手にやれ)

 用事が出来た、と黒針を消して完全に尾行は終了。

 容姿も元の姿に戻し、自分のやることに取り掛かる。

「さぁって。時間とお金、いくら掛かるかねぇ?」

 

 

 

 ――場面は取り残された四人組みへ。

「どうするんだ?皆は」

 僕は一抜けた、と言って三太はどこかへ行ってしまった。

「もうちょっと見るのも面白そうだったんだけどなぁ」

 そう言いながらも興味を失くしたように一空も去っていった。

「……どうする?」

「まぁ、ある意味もう充分なものを見た気もします」

 そういって、色々やる気をなくして、先の二人のようにその場から離れたのだった。

 

 

 そして、刀太と九郎丸に再び戻る。

「刀太君!どうしてか、か……カップルだなんて言ったのさ!?」

 プリクラの筐体の中で猛烈に抗議する九郎丸。

「気にしてること言ったのは悪かったよ。けど、俺も九郎丸とプリクラ撮りたかったからさ。本当にごめんな?」

 必死に頭を下げる刀太の様子に、善意でやったことを理解して笑う。

「もうこれっきりにしてね?」

「あぁ!もちろんだぜ!」

 笑顔でグッ!とサムズアップして答える。

「それじゃ、やろうぜ!」

「うん!」

 意気揚々とお金を入れて、プリクラを撮り始める。

 途中、『抱き合って』とか『キスして』などと言った指示に、苦笑する刀太と真っ赤になる九郎丸がいて、キチンとその様子はプリクラに写っていた。

 

 

 

 

 プリクラではしゃぐ二人とは対照的に、意気消沈する人影があった。

 夏凛である。

「はぁ、全く私は何をしているのでしょうね」

 自嘲気味に呟くが、その言葉が思ったよりもダメージになった。

「あの馬鹿も、もう少しくらい……こちらを気に掛けてもいいじゃない」

 辛そうに響く言葉は風にさらわれていく。

「せっかく……せっかく三百年ぶりに、まともに話せたというのに」

 一際強く風が吹いて、捲れないようにスカートを抑える。

 そこに、新たな人影がいた。

「なぁに、しょぼくれた顔してんだよ?」

 黒斗が笑顔でそこにいた。

 そのことは嬉しいと言えば嬉しいのだが、この顔を作っている原因でもあるので素直に喜べない。

「……誰のせいだと思ってるの」

 かなり大きなため息と共に文句を言う。

 怒鳴り散らす元気もない。

「そう俯いてんなよ」

 だから誰のせいだと!とせめて睨んでやろうと顔を上げて。

 何かが投げ込まれた。

 タイミングよく顔を上げたためにジャストミート。

「わっぷ!」

「それ、やるよ」

 それが何かを確認する前に、黒斗は背を向けて文字通り風に乗って足早に去ってしまった。

 全く、何を……と投げつけられた物を確認する。

 白い猫のぬいぐるみだった。

 しかも、ちゃんと自分が欲しがってた色の物だった。

「これ……」

 確か、黒斗はこういった細かい作業は苦手だったはずだ。

 一体、いくら使ってこれをゲットしたのだろうか。

 それに、あんなぶっきらぼうに投げ渡さなくてもよいではないか。

 イギリス紳士だったくせに、ムード作りも出来ないのか。

「ふふ……ばぁか」

 それでも夏凛の足取りは、スキップしそうなくらい軽いものだった。




あっれぇ?ラブコメ回を書くごとに、どんどん夏凛先輩がクール()になっていってる気が……

えぇい、知るか!
恋する乙女に冷徹は似合わない!
クール()にだってなるさ!……なるよね?


ともあれ、次回はいよいよ本編へ。
主要メンバーと絡ませた調査回になるかと思われます(確定はしていない)。

それでは感想・評価その他リクエスト、待ってま~す。
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