超下位存在君の無駄な努力   作:龍崎悠司

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ゴツいおっさんのストーカーとかないわぁ

 

 

 

 ―――――……

 

 ねぇ、見ている?

 

 私のこと、考えてくれてる?

 

 想ってくれてる?

 

 ようやくあなたに会える。

 

 あなたを迎えてあげられる。

 

 このお話は、全部あなたのため。

 

 あなたと私の喜劇のお・は・な・し♡

 

 ―――――……

 

 

 

 

「サディストではない。ただの恋慕である」

 声がした瞬間には、黒斗は全力で前へ。

 刀太はいつの間に取り出したのか、剣を構えて防御の体制に。

 ガキィン!!

「うおっ!?」

 武器がぶつかり合う金属音が響いて刀太が少し飛ばされ。

 黒斗が躱しきれずに、身体を一部持っていかれた。

「がっ!……くそっ!!」

 そこから血は流れず、靄が漏れる。

 即座にコントロールして姿を保つ。

「うむ」

 声の主は上出来だと言わんばかりに大きく頷く。

 睨みながら振り返ると、そこに居たのは二メートルに届こうという長身で、力士並みの体格を持った大男だった。

 男は、その身の丈にあった大型の戦斧(いくさおの)を肩に担いで告げた。

「黒い靄で出来た男……貴様がバーナビー・ブラックだな」

「!!!!」

 躱しきれなかった事実より、真昼間から襲ってきた事実より。

 何より、その名前を知っていたことに衝撃を覚えた。

「……俺は、そんな名前じゃあねぇよ」

 一応否定するが、この人通りが少なく瘴気の濃い寂れた廃公園で襲われたことを考えると無駄な抵抗でしかないと分かってはいる。

「そうか、そういえば確か……靄傘(もやかさ)黒斗(くろと)、と現代日本の名前を使っているのだったな。加えて日本では、黒傘(くろかさ)霧男(きりおとこ)として、貴様の怪談話があったはず」

 否定されたことに素直に納得し、情報をつらつらと挙げていく。

「あんた、相当な俺マニアだな?ストーカーとか見た目考えろ。気持ち悪いぞ」

 皮肉を織り交ぜて伝えると、不機嫌そうに鼻を鳴らす男。

「ふん。我は貴様のことなど知らん。だが、執拗に言われれば嫌でも覚えてしまうものだ」

「なるほどねぇ」

 会話をしながら、相手の言葉から情報を掴んでいく。

(直接俺を知って襲ってきたわけじゃない?……ならこいつはただの使い走りってとこか?それにしても、こいつの後ろにいる奴の素性が知れないな)

 しかもバックにいる相手はイギリス時代の黒斗の名前も、室町や江戸の日本で活動していたことも知っている。

 ならば正体はおそらく不死者かそれに連なる超長寿命の人外だろう。

(後は、こいつに出した指令とその意図が問題か……)

 はっきり言って、イギリスを中心に活動していた不死者で黒斗のことを欠片も知らないものなど皆無だ。

 だからこそ、どういう因果かは分からないが目を付けられることも不本意だがあっても不思議はないと思ってる。

「我が主から、貴様を滅せよと指令を承ったので馳せ参じた。私情で悪いが、断たせてもらう!」

「ちっ、やっぱりそういう系かよ!」

 振り下ろされた巨大な戦斧を全力で後ろに飛んで何とか躱す。

 地面が大きく砕かれるが、そんなに重量級の武器を思いっきり振れば当然隙になる。

「黒斗はやらせねぇぞ!!」

 その隙を逃さず、刀太が斬り込む。

 脇腹に一閃。

 ガキィ!

 しかし、戦斧の柄に遮られて強襲失敗。

 だがそれだけで諦めるわけもない。

 瞬動術で高速移動をしながら攻撃を絶え間なく続ける。

 重たい武器相手なら必勝の手だ。

 そのはずである。

 なのに。

(嘘だろ!?こんだけ重い武器使って攻撃に追い付いてる!?)

 男は、高速で動く刀太相手に攻撃に転じることこそ出来てないが、確かに防ぎ続けていた。

 細かく動かし、柄も使っているがそれでも追い付いている。

 魔法を使っている様子もない。

 驚きと、尊敬の念を刀太は抱いた。

 と、大きく弾かれて刀太が後ろへ大きく下がる。

「くっそ~。世界は広いなぁ」

「関心してる場合じゃねぇっつの!」

 言って、今度は黒斗と二人で仕掛ける。

「む!」

 先ほどの刀太の戦闘に黒斗が加わるだけで、流れが大きく変わる。

 男の攻撃は数度だけいなされて、出だしをコンマ数秒遅らされ、自由な動きがほんの少しとはいえ制限される。

 それしか妨害出来ないことは、当然男の実力が高い次元にあるからであり、普通なら歯牙にも掛ける必要はない。

 だが、今展開しているのは高速戦闘。

 少しのズレが、大きな結果を生む。

「当たりぃいいい!!!」

 その攻防の結果、足下に潜り込んだ刀太が男の右太ももを思いっきり斬りつける。

「ぐっ!?」

 堪らず男は膝をつき、全力で斧を大振りして二人を後ろに下がらせた。

「ちっ、畳み掛けたかったんだがな」

「けど、足にダメージは与えたからな。さっきよりは状況は良くなってると思うぞ」

 悔しむ黒斗と、やる気をどこまでも燃やす刀太が男に回復させまいと再び仕掛ける。

 だが。

 

 ビュオ!!!

 

 つい一瞬前とは違う武器の速度に、一度止まらざるを得なくなる。

「やっこさん、ようやく本気ですってか?」

「マジかよ」

 言葉とは裏腹に、不敵に笑う二人。

 しかし、立ち上がった男を見て驚愕に歪む。

「てめぇ、そりゃあ……」

「どうなって……?」

 男の太ももからは血が流れておらず、パックリ割れてはいるのだがそこにあるべき肉が、骨が、一切見えなかった。

「ぐぬ……この剛僧(ごうそう)、一生の不覚」

 悔しそうに立ち上がる男――剛僧には、明らかにダメージが入っている。

 しかし、本来あるはずの肉体が無い。

「まさか、黒斗と同じ?」

 自分で発した言葉が信じられないが、事実目の前の相手の特徴は刀太から見た黒斗と合致する。

「んなはずはねぇ。そんなのがほいほい自然発生なんざする訳、あり得ねぇ」

 目の前の事実に、それでも否と首を横に振る黒斗。

「でも、こいつは――っ!!」

 意見を交わす暇もなく、剛僧が攻撃してくる。

 先ほどよりも鋭く速い速度で振るう戦斧。

 さらに増した攻撃力には、そう簡単に力のベクトルに干渉させてもらえない。

「っそ、なら……『黒針』!」

 黒針を精製し、雨のように降らせる。

 その弾幕を、一度の攻撃で全て弾いてしまう。

 その重たい攻撃は、余波ですら威力がある。

 だが、そこで終わる黒斗ではない。

「『黒荊』展開!」

「む!?」

 弾かれて、剛僧の周囲に散らばっている黒針が落ちる前にそれらを一度粒子状の瘴気に戻す。

 すぐさま繋げて何本もの黒色の荊を形成。

 それら全てを剛僧に絡ませて地面に縫い付ける。

「ぐ、この――」

「無駄だ。そこまで(やわ)に作ってねぇよ」

 何とか抜け出そうとする剛僧の腹に飛び乗って構える。

「見極めさせてもらうぞ。お前の正体を」

 言って右の拳を天高く突き上げる黒斗。

 ベクトルを見切る修行をしていた刀太には分かった。

 今、黒斗の右手に気力が限界を超えて集まってる。

 剛僧にもそれが分かったのか、さっきよりも必死に抵抗するが間に合わない。

 溜めに溜めた気を、瞬動術の勢いを上乗せして。

 重力に従って、真下に。

 

 

 放つ。

 

 

 

 ドッッッ!!ゴガッ!!!!!!

 

 

 

 放たれた強大な気は、剛僧に破壊の一撃をお見舞し、それだけに留まらず地面を大きく穿ち、クレーターを作るに至った。

「がっ!!!」

 剛僧は堪らず悶絶し、ダメージに動けずそのまま気絶した。

 しかし、死んではいない。

「こんだけやって死なない、か……」

「いやいやいや!何で大真面目に殺そうとしてるんだよ!?」

 さすがに殺しは看過出来ないので、大慌てで止める刀太。

「?殺そうとした相手を殺さないとか、自分が危険になるだけじゃねぇか」

 止めた刀太に本気で首を傾げる黒斗。

「いやいや、だからって殺しはだなぁ……」

「あのよぉ」

 それでも殺しを否定する刀太にため息を吐く黒斗。

 あれ?俺そんな変なこと言ってないよな?と逆に首を傾げる刀太。

「俺は、お前と違って死ぬんだからな?普通の命とは違うから長年生き続けられるだけで、不死性そのものは俺は誰より、むしろ生き物よりも弱いんだぞ?俺は」

 その言葉に、少しだけ重みを感じる。

 そうやって命が失われる危険性と四六時中隣り合わせで生きてきたからこそ培われてしまった価値観。

 黒斗の言い分は、極論だが間違ってはいない。

 しかし、それを許容するかは別の話。

「でも、今回は俺もいるし、撃退で済むならそうしようぜ?」

 刀太の提案は、黒斗のそれと比べれば甘ちゃんの考えでしかなかった。

 けれど、受けないつもりは無い。

「それで済めば、俺は何でも構わねぇよ」

 黒斗だって、何も好きで殺しをやっていたわけではない。

 自分の命が危険に晒されて、相手の命を奪わなければ生き残れない選択の時のみ迷い無く選んだに過ぎないのだ。

 これでも、あの意外とお人好しの雪姫と息が合っている黒斗である。

 そんな黒斗もまた、周りに比べればドライな方だがあのUQホルダー(お人好し集団)の一員なのである。

 刀太の提案に頷いたところで、意識を剛僧の方に戻す。

「にしても、こいつは本当に黒斗の同類なのか?」

「誰もんなこと言ってねぇよ……」

 刀太の解釈にため息で返す。

 黒斗はこう見えて正真正銘天然の特別製だ。本当に、神の気まぐれとしか言えないような偶然と奇跡が重なって出来た存在なのである。

 だからこそ、存在感は生物に比べて薄いし、迫力や貫禄なんかも普段は全く感じない。

 それに比べたら、この剛僧という男は威圧感のようなものを受けるし、存在感もはっきりしている。

 ではなんなのか?

「刀太、こいつを見て何か感じないか?」

 黒斗から質問され、よぉく目を凝らす。

 じっと見ても全く分からない。

 けれども、ふと目に入った戦斧を見て違和感を感じた。

(あれ?何か、これ……)

「斧の方が、存在感が強い?」

 見て思ったことが口から出てきた。

「そうだ」

 正解の答えに頷いて、断言する。

「こいつの本体は、この戦斧だ」




さぁ、まだ終わらない調査回という名のほとんどバトル回。
次回はきっと、一度刀太との調査回は終了すると思われます。


けど、その後どうするか……実は全く決まってないという(汗)



少しだけ間が空くかもしれないですが、ご容赦くださいませ~。
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