夜中の投稿にもかかわらず、約90ものUA!
ありがとうございます。
ペースは不定期ですが、しばらく速い更新が出来そうです。
―――――………
昔、地獄の中に居た。
傷付けられなくとも痛みを感じる拷問地獄に。
その地獄から救い出してくれた人は戻ってきてくれた。
だが、その後自分を支えてくれた人は。
どうしようもなく落ちぶれていた。
―――――………
「あなたに仕事が来ています」
夏凛が黒斗へと告げて、仕事内容が書かれた紙を渡す。
「お、久しぶり
刀太たちには敬語だったにも関わらず、何故かそれよりも上の立場である夏凛にはタメ口で呼び捨て。
九郎丸の頭には疑問符が浮かぶ。
「えぇ……そうね」
一瞬悲しそうな顔をした夏凛。すぐに踵を返そうとして、
「なぁ、どんな仕事?」
刀太が割り込んできた。
「大したことの無い内容ですよ」
「それに、あなたには向いてないわ」
露骨にはぐらかされて地団太を踏む刀太。
「えぇ!教えてくれよ!!」
「それでは、行ってきます」
「……逝ってらっしゃい」
刀太を無視して仕事に向かおうとする黒斗と送り出す夏凛。
「いや、少し待て」
だが、それを遮る者がいた。
「雪姫様!」
「雪姫!」
長身で白金の長髪と碧眼を持つナイスバディの女性がそこに立っていた。
「……何の用だ?
「!?」
不機嫌そうなのを隠そうともせずに雪姫の本名を呼んだ黒斗に驚く刀太と九郎丸。
雪姫の本名を呼び、夏凛と対等のように接し、なのに自分たち新米には低頭の姿勢。
一気に黒斗という人物が分からなくなってしまった。
「まぁ、そう凄むな。なに、ちょっとした新人研修というやつだ」
少し大げさに手を広げて、雪姫は告げる。
「そこの新米二人と、佐々木三太の三人をお前の仕事に連れて行ってやってくれないか?」
「断る」
組織のトップからの指示を即答で切り捨てる。
「理由は?」
「仕事の成功率が著しく下がるからだ」
「なに、その心配には及ばん。存外、素直な奴らだよ」
正当な黒斗の言い分を、さらに即座に切り捨てる雪姫。
「お前はどう思う?夏凛」
今度は夏凛に質問する黒斗。
「まぁ、大丈夫かと」
その返答にすこし悩んでから、
「……分かった。他に興味のある奴がいたら十五分後までに連れて来てほしい」
それじゃあ、と言って船着場へと向かう。温泉宿「仙境館」は新東京の沖合いに立っているため、宿の外へは船を使う必要があるのだ。
「よっしゃ!九郎丸、三太呼んでこようぜ!」
「う、うん」
手を掴んで引っ張っていく刀太に少し顔を赤くしながら着いていく九郎丸。
「……どういうつもりですか?雪姫様」
いつもなら、そんな九郎丸の様子を見て女の子化ルートに行きやすくなったと密かに喜ぶところだが、そんなことより重要なことがある。
「
大丈夫、と言ったがそれは雪姫がゴーサインを出しているから賛同しただけであり、仕事の成功率で考えれば確かに黒斗一人に行かせたほうが断然いいに決まっている。なのにわざわざ、直情的な刀太を連れて行けと言った。理由があるのだろうが、夏凛には思い浮かばない。
「まぁ、ちょっとな」
少し言葉を濁しつつ、遠くを見つめるような目をする。
「それより、お前はついて行かないのか?」
楽しそうに言う雪姫に、雪姫一直線の夏凛には珍しく、ため息混じりに返す。
「ご冗談を、おっしゃらないでください……」
「そう、か」
それきり二人は、言葉を交わさず仕事に戻っていった。
―――十五分後。
船着場で待っていると、やってくる四人の姿があった。
刀太、九郎丸の二人の他。
フードを被った少年と、めがねを掛けた三つ編みツインテの少女だ。
少年の名前は佐々木三太。ついこの間一番新しく入った幽鬼の少年。最高の死霊術士の手で出来た力を持つ幽霊である。ちなみに幽霊だが実体はちゃんとある。
そして少女は桜雨キリヱ。UQホルダーの最大出資者でもある少女。一見か弱そうな少女だが、設定しておいたセーブポイントに死んだら生き返るという「
「お待たせ、黒斗」
「はい、それでは行きましょうか」
着いたのを確認して船へ先導する黒斗。
「ん~、なぁ黒斗。敬語やめねぇ?」
船に乗る前に若干困った顔をして刀太がお願いしてきた。
「……」
「ほら、僕達の先輩相手にはタメ口だったりすると僕らもどう接していいのか困るから」
渋っていると九郎丸が助け舟を出す。
確かにこれから仕事をするのに無駄にギクシャクしててもあまりよくないだろう。
「……わかった」
頷いた黒斗に気をよくして飛び乗る刀太。
「こら、刀太!危ないじゃない!」
少し船が揺れたので注意するキリヱ。
全く、と呟きながら他の面々と一緒に乗っていく。
(まぁ、大丈夫だと思うけど念のため)
保険としてセーブポイントを作る。
「それじゃあ、
刀太の掛け声で、仕事場へと船を動かす。
船を発進させてから十分ほどして、操縦していた黒斗に刀太たちが話しかける。
「黒斗?黒斗先輩?」
先ほどは呼び捨てだったが黒斗の立場がよく分からなくて、呼び方に迷っているらしい。
「黒斗でいい」
「んじゃ、黒斗。今日の仕事って俺たち何すりゃいいんだ?」
気さくに呼びかけたと思ったが、内容は真面目。仕事には真剣に取り組もうというやる気を感じさせた。
「いや、何もしなくていい。お前たちは自分の身が危険になった時に自分たちだけを守ればいい。決して攻勢に出るな」
だが、言われた内容は働くことを禁止するという意外すぎる内容だった。
「ちょっと!それおかしくない!?雪姫はあんたの仕事を手伝いに来させたんでしょ?ならなんで役割が手を出すな、なのよ!」
キリヱが言ったことは何も間違っていない。
新人研修とはいえ、ただ見てるだけではあまり収穫が少ない。並の連れならまだしもここにいるのは人外たちの中でも充分に実力を持った者たちなのだ。
頼りになるし、するべきだろう。
「駄目だ。むしろ実力があるからこそ、だよ」
「どういうことよ?」
純粋に疑問符が浮かぶ面々。
「着いてからのお楽しみだ」
少し、意地悪な顔で正面に視線を戻す。
「なぁ、黒斗、さん?黒斗兄ちゃん?」
今度は三太が質問する。
「好きに呼びな」
「黒斗兄ちゃん、結局何の仕事?」
言われて、言ってなかったなと思い、簡潔に答える。
「今日の、というかお……僕が基本担当してるのは『除霊』だよ」
読んでくださりありがとうございます。
え、なに?
展開遅い?
夏凛先輩はもっとポーカーフェイス?
三太が兄ちゃんって呼ぶのは刀太だけ?
やりたかったんです!
微妙な出来以外に悔いはない!!
えぇ、ありませんとも!!
……まぁ、調子に乗り過ぎない範囲にします。
おそらく次にようやくバトル回になると思われます。