超下位存在君の無駄な努力   作:龍崎悠司

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お待たせしました!

ようやく更新できました。

亀更新で本当に申し訳ないです。


しかし、ラブコメよりシリアス、バトルの方が執筆が進む。不思議。



何はともあれデート回です。

どうぞ。


デートの甘さに苦味のアクセントって至上

 

 

 

 

 ―――――……

 

 どんな愛がこの世にはあるのだろうか。

 

 仲間意識は、分かる。

 

 大切も、分かる。

 

 師弟愛も、理解している。

 

 恋愛も……不本意ながら。

 

 家族愛は…………

 

 まだ、もう少し。

 

 ―――――……

 

 

 

 

 お祭りを盛り上げたコンビを競うというイベントに、刀太と共に参加した雪姫。

「あ、おい雪姫!あっちにたこ焼き売ってるぜ!」

「分かった分かった。今行くから」

 はしゃぎ回る刀太にやれやれ、といった様子で追いかける雪姫。

 その様子はどう見てもカップルよりも親子のそれだったが、それでも二人は楽しそうに見えた。

 その二人の腕には腕章が着いている。

 コンビ大会参加の証だ。

 今のこの様子もお祭りの参加者に微笑ましい視線でもって見られている。

(あいつ、一応警戒しとけって言われたの忘れてるんじゃないだろうな?)

 表向き楽しそうに――いや、実際楽しんでいるのだが――その裏で静かにため息を吐く。

 こうしている間も、敵が潜んでいる可能性は十二分にあるのだから。

 

 

 

 ~一時間と少し前~

 

「とりあえず、俺のイベント参加が決まった以上は行動の指示を出させてもらうぞ」

 苛ついた様子の黒斗が全員に警戒するように伝える。

「あれ?でも相手は今、行動を起こさないって言ってなかった?」

 特に何もしなくてもいいと言われていたのに、とキリヱが疑問を口にする。

「本来ならな」

 青筋が立っているのを見ると、これから出す指示を黒斗一人でひっそりと行う予定だったらしい。

 その黒斗に、射的を当ててしまった三太と完全お祭り気分の刀太は少し反省した。

 しかし、夏凛はそっぽを向いて反省した様子はない。

「おい、お前は特に反省しろ。浮つきやがって……」

「……別にいいじゃない。これくらい」

 小さな呟きは全員の耳に届かなかったが、それでも不服なニュアンスは伝わってきた。

 そんな夏凛に新鮮さすら感じているメンバーとさらに青筋が増える黒斗。

「このっ……!ごほん。とにかく、このイベントに参加しない四人には例の美術館を張ってもらうからな」

 しかし、ここで言い争いをしても何も始まらないので気を取り直してやることを説明する。

「一空、超小型カメラはあるか?出来れば目線で録画出来るものがいい」

「ちょっと待ってね……え~っと、ほらこれ」

 そう言って右腕の中が開いて出てきたのは耳に掛けるタイプの、どう見ても盗さt……立派な隠しカメラが出てきた。

「よし、そいつを使って一日一人ずつ交代で観察してくれ」

「え?でもちゃんと見張るなら全員で見たほうがいいんじゃねぇの?」

「刀太君、それだと敵に対して『僕たちは全力で警戒していますよ』って教えているようなものだよ」

 九郎丸の答えに頷きながら詳しい指示を話していく。

「あそこは広いからな。全体をそうだな……二回か三回、んでもってそのカメラに客の大半が映るように軽く見渡すようにしてくれ」

「あれ?よく見ないと……あ、そっか。さっき九郎丸の兄ちゃんが言ってたのと同じか」

 小さい声で三太が質問しようとするが、同じ事の繰り返しだと理解する。

 実はデータの通りならば、敵は閉館して警備の者しかいないタイミングで行動するのでこの見張りは意味がない。

 なにせ警戒するべき時に警戒すればいいだけなのだから。

 けれど、ダメで元々。収拾出来る情報が欠片でもあればそれで良し、という訳である。

「それに、もし上手くいけば……俺の方に何か釣れるかもしれないしな」

 さらには今回のイベントで黒斗が注目されれば、黒斗狙いの敵が接触か何かしてくる可能性もある。

 通信魔法越しであれだけのプレッシャーを放つ相手では危険度が高く、リスクリターンは良くないと思う。

 それでも今は少しでも情報が欲しい。

 もしもそれが知っている相手なら対策も立てられる。

「あれ、でも黒兄」

 と、そこで何かに気付いた一空が質問する。

「そういうことなら、このイベントに参加出来たのってプラスじゃないの?」

 少し意地の悪い笑顔で聞く一空だが、それが地雷だったようで再び青筋が浮かび上がる。

「『本来なら』、俺が一人でこの街全体を安全に観察する予定だったのを、誰かさんが乗り気なせいで『リスクの高い』囮作戦なんてものを実行するハメになったんだからな?」

「えと、その……ごめんなさい」

 しゅん、とする一空だが下手に突付いたのが悪いので誰からもフォローは入らない。

「まぁ、当面は余程熱心に展示物を見てるわけでもないのに同じ奴が何日も長時間居るようなら、顔を覚えておいてくれって程度の話だからあんま気負わなくていい」

 一応、警備開始前に確認するけど、と言って立ち上がる。

 作戦会議はこれにて終了らしい。

「んじゃ、俺たちも行こうぜ。雪姫」

 

 

 

 

 

 ――という経緯があったのだが、刀太の様子を見ていると何処まで理解しているのか不安になる。

 ふと、祭りの賑やかな光景を見やってまた遠い目をする。

(本当に、煩いな……)

 言葉にすると悪意満点だが、懐かしむ表情で笑っている雪姫。

 その目に映っているのはいつの頃の話なのか。

「おいどうしたんだよ?雪姫」

 いつの間に戻ってきたのか刀太が目の前に来ていた。

 しかもその手にはたこ焼きが乗っかっている。

「ほら、美味そうだろ?」

 そう笑いながら楊枝で刺して口元に持っていく。

 いわゆる、あ~んというやつだ。

「あむ……むぐむぐ、んぐ。ほぅ、確かに美味いな」

 今更照れるわけでもなし、素直に口を開いて食べる。

「だろ!?」

 やっぱこれだよなー!と言いながら、自分で食べたり雪姫に食べさせたりしてあっという間に完食。

「ん~、美味かった!」

 ゴミを捨てると、次の屋台を探してキョロキョロし始める刀太。

 また何処かに行ってしまいそうだったので、雪姫は苦笑しながら刀太の傍へ。

「馬鹿者、女連れの男が勝手にほっつき歩くな。ちゃんとエスコートしろ」

 そう笑いながら刀太の手を取る。

「お、おう。そうだな」

 少し戸惑い気味で顔を赤くする刀太。

「ん?どうした刀太。恥ずかしいのか?」

 その隙を逃さずからかう雪姫。

「んなわけあるか!」

 まだ顔は赤いが、それでも手を強く握り返して引っ張って行く。

「……ふふ」

 その様子がなんとも微笑ましくて、小さく笑いながら付いて行く。

 そんな二人はやはり親子にしか見えないが、それでも楽しそうだった。

 

 

 

 一方でよろしくないのが黒斗・夏凛ペアだ。

 手を繋ごうとしたり、腕を組もうとしたり、お店に並ぼうとしたりするのたが、その全てをむすっとした様子で躱し続ける黒斗。

「いい加減に観念しなさい」

「断る」

 それを幾度か繰り返した後に言葉でもアタックして、これも躱される。取り付く島もない。

「……イギリス紳士のくせに」

 なので、攻め方を変えた。

「なんだと?」

 そして予想通りに黒斗が反応を示す。

 生き残るためならプライドなんて欠片も役に立たないと思っている黒斗だが、イギリスで長年活動し、民間人に紛れ込んで過ごすこともあって、紳士としての振る舞いは決してそこらのカッコ付けの見栄っ張りには負けない自信がある。

「こういう場で紳士として対応出来ないのに、よくもまぁ胸を張って言えたものね」

「~~~~~!!!」

 だから、結構簡単に揺さぶれる。

 黒斗のことを知っているのはなにも雪姫だけではない。

 長いこと一緒に住んでいた夏凛だ。このくらいは朝飯前である。

 夏凛に対する苛立ちと紳士のプライドの葛藤の末。

「……………………………………………………ほらよ」

 プライド大勝利。

 差し出された手を握り、掴んだ戦果に微笑む夏凛。

 そのまま二人は連れ立って歩いていく。

 先ほどよりゆっくりとした、夏凛がいつも歩いている速度で。

 

 

 

 

「なんか、久しぶりだな」

 ゆっくり手を繋ぎながら歩いていると、突然刀太が呟いた。

「何がだ?」

「いや、雪姫と二人で……こう、ゆっくり過ごすのがさ」

「たかだか数か月前の話だろ?私にとっては一瞬だ」

 暗にそのうち刀太もそうなると語っていた。

 不死者にとって、よりよく生きるためにとか、生き抜くためにといった普通の人間が持つ感覚は持つこと自体意味がない。

 なぜなら死なないから。

 生きることを強制されるから。

 だからこそ、どう生きたいかが重要になる。どんな存在になりたいか、それを追い求めることこそ不死者にとって意味が生まれる。そこで何を為すか、それがなければそれは不死者ですらなくただの浮浪者、漂流者でしかないのだ。

 UQホルダーを作った雪姫はそう思う。この組織で過ごす者たちにとって生きることに意味を見出せるような居場所になるように。

「まぁ、そうかもしれないけどよ、最近は色々あったからな」

 とは言ったところで、刀太は不死者になって日が浅いどころか生きている年数そのものがまだまだ短い。

 死生観は置いておいても、まだまだ普通の人としての感覚は残っているのだろう。

「退屈などではなかったのだろう?」

 その言葉にもちろん、と頷いて、

「でもやっぱこんな時間もたまにはいいかなって」

 そう言って無邪気に笑うその顔が、意外にもいつぞやの誰かと重なり格好良く思えて。

「なんだ?私とデートしたければ暇があればやってやるぞ?」

 ついからかってしまう。

「そっ、そんなんじゃねぇ!!」

 顔を真っ赤にして叫ぶ刀太に笑いが止まらない雪姫だった。

 

 

 

 

「そら、お待たせ」

「あ、ありがとう」

 ぎこちない仕草で黒斗が買ってきてくれた飲み物を受け取る。

 ちょうど喉が渇いていたところだ。

 中身もちゃんと冷えたお茶を用意してくれている。

 好みもタイミングも完璧に合わせてお店に並ばせず、座って休憩する場所も確保。

 非の打ち所のない紳士たる振る舞い。

 その辺りは流石としか言いようがない。

 とはいえ、ここまでピッタリ合わせられるとちょっと引く。

 でも嬉しく思う。

「…………なんで」

 黒斗が自分の好みなど細かいところを覚えていてくれたことも、自分を気遣ってくれることも、今自分のことを見てくれていることも素直に嬉しい。

 そう、嬉しいのだ。

 しかし、だからこそ。

 だからこそ言葉が口を突いて出てくる。

「なんで、今まで……」

 黒斗は、何も言わない。応えない。

 どんな顔をしているのかは俯いている夏凛には分からない。

 辛そうな顔をしてくれれば、少しは救いだ。

 けど、そんなことはないのだろう。

「今まで、ただの一度も」

 そう思うと、言わないと決めた言葉が。

「会うことも、声を掛けてくれることも」

 これまで三百年もの間我慢してきた文句が。

「なんで一度だってしてくれなかったのよ!?」

 溢れて止まらない。

「答えがいるのか?」

「分かってる……分かってるわよ!!」

 予想していた通りの返答に、涙が浮かんでくる。

 けれど夏凛は、いや夏凛以上に理解している者などいない。

 だが、しかし。

「けど……けど!!」

 それでも。

 例えどうだったとしても追い求めたくなる。

『あの頃』の、穏やかで優しい日々を。

「俺に、希望を持てとでも言う気か?」

 その願いをばっさり切り捨てられた。

 予想できていたこととはいえやはり言われるとキツい。

 だが、黒斗に希望を持てと言うことは同時に絶望しろと言っていることと同義だ。

 それくらい黒斗の希望は、光は最悪の形で黒斗を絶望と闇の底へ叩き落してきた。

 確かにそんな黒斗には酷かもしれない。

 それでも。

「私と居てよ。ここに、居てよぉっ……!」

 求めずにはいられない。

 黒斗と共に希望を持っていたい。

 その願いをどうしても黒斗と見たいのだ。

「俺は……」

 何かを言いそうになって。

「……………………」

 口を噤んでしまう。

「何?」

 言葉の続きを求めて聞くが、黒斗は口を閉ざしたままだ。

 夏凛はこの沈黙を、言いたい希望があるが言うべきではないと判断してのものだというポジティブな捉え方をしていた。

 しかし、黒斗の頭にはそれとは違うことが思い浮かんでいた。

 

 ――あなたを真に愛せるのも、あなたがまともに愛せるのも、私だけなんだからね

 

 それは少し前に言われた言葉。

 人ですらない自分を愛せるという少女(らしき人物)。

 思い当たる人物はいなかった、と思う。

 よくよく記憶を思い返してもあれだけ自分に心酔したような者も、自分の正体を知っていても愛せると宣言する者も誰一人引っ掛からない。

(けど、俺をそこまで知る奴が敵なんだ。気を引き締めないと最悪……)

 そこで、涙目の夏凛と目が合う。

 拳を強く握る。

『あの頃』からこれ(・・)は決めていたことだ。

 これからも変わらない。

 でも、今この瞬間くらいはいいだろう。

「とにかく今はお祭りを楽しまねぇともったいねぇ」

 もう一度手を差し出す。

「幻想の中くらい、夢を見ようぜ」

 その言葉に涙がこぼれそうになるが、寸でのところで留まる。

「……そうね」

 無理矢理にでも笑って着いてこうとしたところで。

「おう、兄ちゃん。可愛い娘連れてるじゃねぇか?」

 チンピラ三人が絡んできた。

「いいところで……」

 もはや殺意すら漏れるほどの恨みを込めて呟く。

 チンピラの方は何も気付いてないのか夏凛の肩に手を回そうとする。

 それを力尽くで振り払う前に。

 ポイッ。

 そんな音が似合いすぎるほど見事にチンピラの一人が宙に舞った。

「げはっ!」

 重力のまま地面に叩きつけられて気絶する。

 綺麗すぎて一瞬何が起こったのか誰も理解していなかった。

 が、それも数秒。

「このやろっ!!」

 怒ったチンピラ二人が飛び掛る。

 とはいえ所詮は素人。

 ヒョイっと簡単に躱すとチンピラ二人の流れを攻撃しながら操作する。

 と、一人の重心がずれて体勢を崩したので仕掛けた。

 胸元を掴んで横に引っ張り、もう一人をキック。

 するとキレイに二人の顔が近付いて……

 ぶっちゅううう!!!

 図体のややでかい野郎二人の熱烈キッス。

 吐きそうになってorz状態になっている二人の顔の間に踵を本気で落とす。

 バキィイ!!

 地面のコンクリートにヒビが入った。

「まだやるか?」

 優しく語り掛けるように聞くと、顔を青くして気絶したチンピラを連れて全力疾走で去っていった。

「まったく……ああいう手合いはいつどこでもいるのな」

 呆れていると、周りから拍手が上がった。

「あ、注目されてるんだっけ」

 完全に今の今まで忘れていた。

 しかしまぁ、結果オーライだろう。

「その、ありがとう」

 注目されて恥ずかしいのか顔を赤くして傍によって来る夏凛。

「まっ。何もなくて良かったよ」

 紳士としての対応でそそくさとその場から歩いていく。

 その気遣いをまた嬉しく思って着いていく。

 もちろん、手は握られたまま。





はい、一応以前言った記念回です。
いったいどんだけ掛かってんだよって話ですよ、ええ。
UA5000どころか9000ですよ。
お気に入りだってその頃から増えてるし。


もう、本当にこんな失踪しかかった小説を読んでくださって、気に入ってくださってありがとうございます!!

更新速度は残念ながらそこまで戻りませんが、亀ながら更新は完結までちゃんと続けていきますので、どうかよろしくお願い致します。

感想・要望・文字や設定の訂正あればよろしくお願いします。
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