これからも、好き勝手よろしくやっていきます。
―――――……
生まれた時には自分が分からなかった。
他のものとなんら遜色のない存在だと思っていた。
だから自分の正体を知った時に頼んだのだ。
自分を、殺すではなく消してくれと。
―――――……
怨霊を倒し、軽くなる教会の雰囲気。
「はぁ、やっと終わったのね」
時間にしてアジトから数時間も掛かっていないが、長く感じられた。
「早く帰りましょ」
「おい、仕事はこれからだぞ?」
「「え?」」
黒斗の言葉に固まる四人。
いや、だって、どう見てもこれで終わりって感じだったじゃん、と言いたげな顔に黒斗はため息で返す。
「言っただろ?おれ……僕の仕事は除霊だって」
「先の自縛霊のことじゃないのかい?」
「そんじゃあ、こいつらどうするつもりだよ?」
言われて見た先には、先ほどの怨霊に力を搾取され続けた霊魂がいた。
「でも、こいつら……」
幽鬼である三太は即座に理解したのだろう。
元々があまり力を持っていない浮遊霊。それが力を奪われ続けたのだ。
彼らはもう、消えてしまう。
「だけどよ。それじゃぁこいつら、報われないだろ?」
悲しそうに、どこか羨ましそうに彼らを見やる黒斗。
『もうよいのです……』
すると、老人の幽霊が代表して語りかけてきた。
『あなた様は私どもを真剣に助けてくださった。それだけで、もう充分です』
心からの感謝の念がはっきり伝わる。
全ては本音なのだろう。
「駄目だ。あんたたちを助けたところで救えなければ意味がない」
だが、その心遣いを断固拒否する。
「でも、どうすんだよ?黒斗。時間ないんだろ?」
刀太の質問に、笑顔で返す。
「確かに出来ることは限られてる。だから―――」
ニッ、と付き添いの四人に言う。
「こいつらの話を聞く。お前たちにも手伝ってもらうからな」
こうして、幽霊たちの最期の言葉を聞いていくという大相談会が始まった。
『本当に、ありがとうございました』
「いや、そんなに何度も言わなくてもちゃんと伝わってるから……」
『何をおっしゃますか!言葉を尽くしても伝わりきらぬこの感謝、まだまだ味わってもらいますぞ』
「あぁもう!最初の諦めムードどこいったんだよ!?」
『兄ちゃん、遊んで~!』
「よっしゃ、じゃあ鬼ごっこでもするか?」
『やったー!』
「そら、俺が鬼だぞ。逃げろよー」
『『わーい!』』
『私も生前の若い頃はあなたみたいに綺麗でね。モテたものよ~』
「あの、僕はその……男なんですけど」
『あらま!こりゃまたべっぴんさんだこと。生きてたらうちの息子の女房にしたかったなぁ』
「いえ、ですから僕は……」
「で、今のゲームはこうなっててな。ほら、これがぼくの動画」
『すっげぇ!かっけぇ!』
「そ、そうか?へへっ」
『ゲヘへ、お嬢ちゃん可愛いね』
『グヘヘ、いいね、いいよ』
『デュフ、萌えるでござる』
「なんであたしのところだけ変態しか来ないのよー!刀太、ちょっと助けなさいよ!」
そんなこんなでお祭り騒ぎのように時間は過ぎていった。
『そろそろ、時間のようですな……』
そう言って、白い光の玉を黒斗に差し出す。
『これは我々の残った力です。せめて、あなた様の糧に』
おそらく、相談中にこつこつ集めていたのだろう。微々たる物でしかないが、そこには確かに想いがある。
その想いを受け取った。
「ありがとな。こいつは俺の力を増やして、そんでもって」
色んな感情の詰まった複雑そうな顔をして、告げる。
「あんたたちの綺麗な魂はきっと、俺を少しだけ祓ってくれるだろう」
その言葉を最期に、霊魂たちは全て消え去った。
いや、きっと成仏したのだろう。
「……さ、仕事は終わりだ。帰るぞ」
振り返って教会を出る。
外に出ると、もうすっかり暗くなっていた。
「あぁ~、腹減った」
「そうだね、僕もだ」
「あたしは疲れたから早く寝たいわ」
その様子を見て、黒斗は提案する。
「んじゃ、飯でも行くか?奢るぞ」
「え?マジで?」
「あぁ、高級店じゃないが味は天下一品だ」
「でもいいんですか?」
「仕事の手伝い、あれ結構助かったからな。そのお礼だ。給料もそこそこ出してもらえるようにしとく」
「マジか!?サンキュー、黒斗!」
「アホらし、あたしは帰って寝たいんだけど?」
「いいのか?そこにはアジトにも負けないくらい美味いデザートもあるぜ?」
「しょ、しょうがないわね。大人しく奢られてあげるわ」
「なぁ、黒斗兄ちゃんあとどれくらいで着く?」
「もう目の前だ」
そこは、新東京の一角とは思えないズタボロさだった。
店の前の通りや隣は綺麗なのに、何故かそこだけ貧困街かのようなボロさだ。
いや、まさか、と思ったまま黒斗を見やると、迷い無くボロ店に入っていった。
「よぉっす、強面親父。適当に美味い飯とデザート五人分、よろしく」
「ああ?誰が強面だ?てめぇ以外の四人には飯出してやるよ、さっさと座れ」
中に入ると、アジトにいる強面の構成員が可愛く見えるほど厳つい顔をしたおっさんが鍋を振るっていた。
「あ、こら父ちゃん。またそうやって黒斗さんに意地悪するんだから。ちゃんと作ってやんなよ」
すると店の奥から娘らしき人が来て注意する。
チッ、と舌打ちしてから料理作りに集中し始めた。
「まっ、態度は悪いが味は問題ねぇから心配すんな」
そう言ってテーブル席に皆を座らせる。
「黒斗殿、いつもこんなやり取りを?」
「あぁ、一応常連なんでな」
「いや、常連客だからってあんな態度の必要はないかと思うんだけど」
「っていうか、そんなに何度も来てるの?」
「大体仕事で近くに来た時はいっつも来てくださいますよ」
適当に話していたら店主の娘が話しに混ざってきた。
「へぇ、でもわざわざここへ?」
「見つけたのはたまたまだが、入ってみたら当たりだったからな。そういうお気に入りって使い続けたくならないか?」
「あぁ、わかる気がする」
「そういや、刀太が静かだけどどうした?」
多少の盛り上がりを見せる中で、珍しく一言も話さない刀太に目を向けると、そこにいなかった。
「おぉ!おっちゃんすげぇな!」
「ガキは引っ込んでろ」
「ガキじゃねぇよ!でもそっか、そうすりゃいいのか……」
「なんでぇ、分かるのか?」
「友達ほどじゃねぇけど俺も料理できるからな」
「そうかよ」
「なぁ、おっちゃん!俺に料理教えてくれよ」
「…………今度時間があったらやってやる」
「サンキュー!」
気が付いたら店長と仲良くなっていた。
「いつも思うけど、刀太君のあれはすごいね」
「あたしもあれは真似できないわ」
関心したり、また別の話題で盛り上がって十数分後。
「そらよ。大サービスでてめぇにも作ってやったぞ、クソ常連。泣いて感謝しろ」
そんな悪態と共に、料理が出てくる。
刀太と三太は中華、九郎丸と黒斗は和食、キリヱには洋食のそれぞれ定食が振る舞われた。
「!!めっちゃうめぇ!何これ!?」
「本当ね。美味しい」
「味は一流だね」
皆口々に料理を褒める。
凄い勢いで箸は進み、三十分と経たずデザートを食べ終えた。
今は、食後のお茶を飲んでまったりの最中である。
「はぁ〜、美味しかったわね」
「来て良かっただろ?」
黒斗の言葉に頷くキリヱ。他の面々も満足のようだ。
「そういや、あんたは何者なの?」
唐突にキリヱが質問する。
「何者って言われてもな……」
いきなりの質問に戸惑う黒斗。
「だって、あの黒い靄とか何なのよ?」
「確かに僕もそれは気になったかな」
九郎丸も加わり、困った顔をする。
「ん〜、そうだな……」
何て言おうかと悩む黒斗。
あんまり気にしてない刀太は助け船を出そうかと思ったが、その前に黒斗が口を開く。
「強いて言うなら俺は、夏凛の天敵で、三太の……いや、どっちかって言うと水無瀬小夜子の、かな」
水無瀬小夜子の名前にピクリと反応する三太。
それも当然だろう。
なんせ彼女は三太を生み出した最高位のネクロマンサーなのだ。そして、刀太に三太を託した人物でもある。三太は彼女の友達だったのだ。
そんな三太の様子には気にかけず、納得するように頷く。
「うん。俺は彼女の、超下位存在ってところだな」
意味の分からない皆に対して、満足そうな顔で立ち上がる黒斗。
「解答は終わりだ。帰るぞ」
そう言って、お金を店の娘に渡して出て行った。
さぁて、黒斗の正体はなんでしょう?
それは(おそらく)次回で明かされます。
しかし、コメディよりシリアスの方が執筆が進む不思議…