―――――……
奇跡が起こった。
しかも二度。
だがそれはプラスではなく。
ただ否応無く理不尽に。
地獄という言葉にしか成り得なかった。
―――――……
いきなり吹っ飛ばされた雪姫の顔には、怒りではなく笑顔が浮かんでいた。
「どうした?未練たらたらじゃないか!?」
その言葉に黒斗の顔が苦しそうに歪む。
「黙りやがれ!!」
叫びながら、その手に黒い靄を集めて作った銀に輝く剣を出現させて斬りかかる。
全力を持って振るわれたそれを、雪姫は腕の周りに氷で出来たブレードを作って振るうことで対処する。
「その剣を見るのも久しぶりだな?
「あぁ、その名前を捨てた時以来だよ」
言葉を交わしながら、二度三度と切り結んでいく。
数秒後に地面に到着。
お互いに少し距離をとる。そこへ、
「てめぇ!雪姫に何してんだよ!?」
「刀太君!?」
両腕に
超パワーを発揮する必殺にもなりうる一撃は地面を大きく砕き、
「悪いが、」
しかし、どうやったのか黒斗は刀太の頭に着地する。
「もちっとまともに現実見とけ、ガキ」
刀太がその言葉に反応し、吹き飛ばそうと動いた瞬間。
逆に先ほど自分たちがいた部屋まで飛ばされた。
「おぉおおおお!?」
「邪魔すんな。これは俺とエヴァンジェリンの問題だ」
虫けらのように、軽くあしらわれたことにショックを覚えながら、黒斗の実力に驚く刀太。
(あいつ、強ぇ!)
「刀太兄ちゃん、大丈夫!?」
三太たちが心配して駆け寄る。
「あぁ、何か手加減されたっぽいし。ほとんど怪我もねぇ」
悔しそうにする刀太は睨むように戦況を見守る。
ガキィン!!
再びぶつかり合う剣。
「ふっ、優しいな」
せめぎ合いの最中に雪姫が笑う。
「あぁん?」
その笑顔にとてつもなくイラッとして、剣を叩きつける。
「刀太にその剣、振るわなくてよかったのか?」
「言ってんだろ、てめぇは三回殺すってなぁ!!」
つまり、狙いは雪姫のみ。
何度もぶつけ合いながら、雪姫は決して警戒を解かない。
黒斗の
その特性は、不死者であっても有効なもの。
発動条件は斬撃一つで事足りる。
有効と言えど倒されるわけではないので、受けてもいいか悪いかで言えば受けても問題はない。しかし、何としても受けたくない。
それくらい、悍ましい能力なのだ。
「ふんっ!」
故に、剣撃に合わせて魔法攻撃も織り交ぜる。
幾つもの氷の矢は黒斗を討ち取ろうと四方八方から襲いかかる。
それを、さらに踏み込むことで躱す。
そこに後ろからさらに氷の矢が飛んでくる。
今度はタイミングを合わせてターン。躱しながら裏拳の要領で横薙ぎに一閃。
雪姫はしゃがんでこれを躱す。
「そこだ!」
黒斗が蹴りを放つ。
しかも脚を剣のように変化させて。
それを大きく跳んでまた躱す。
当然、跳躍しながら氷の矢を撃つことも忘れない。
「逃がさねぇよ『黒針・
黒斗はこれに、昨日とは比較にならないサイズの針を形成して放つ。
お互いがお互いの攻撃を撃ち落とす中、跳躍した雪姫が地面に降りる。
「捕まえた!『
だがその瞬間、黒色の荊が雪姫を捕まえる。
「くっ!」
そこから逃れようと、雪姫は荊を凍らせて砕く。
その隙を、逃さない。
「死ね」
雪姫に剣が振るわれようとして、
「止まりなさい!」
夏凛が割り込んだ。
雪姫を斬ろうと踏み込んだのが仇となり、その首に夏凛の刀が添えられる。
「夏凛、止せ!」
雪姫が叫ぶが、夏凛は刀を引かない。
「これ以上雪姫様に剣を向けるなら……」
言って、少し間が空く。
そして意を決したように睨んで告げる。
「あなたを、
それを聞いた黒斗がつまらなさそうに剣を引く。
「ならせめて、祓魔刀状態で斬りかかるこった」
そのまま、自室に戻っていく。
「エヴァンジェリン、てめぇを殺すのは夏凛が俺に武器を向けたことに免じて止めてやる」
「言ってろ」
自分の方が上というような黒斗の言い分を鼻で笑って返す。
「で、受けてくれるのか?」
雪姫の質問に舌打ちする。
「わぁったよ。ただ、危険度が過ぎれば俺はこいつら連れて行かねぇぞ」
「お前に任せる」
それは、その辺の判断も含めて黒斗に一任するということ。
面倒くさそうにため息を吐きながら、黒斗は自室に帰っていった。
あれ?こいつ、強いぞ?
おかしい、吹けば飛ぶくらいの弱さを想定して作ったのに……
とりあえず、次回はおそらく日常編かと思われます。
その後色々本格化、かな。
ともかく、これからもよろしくお願いします。