超下位存在君の無駄な努力   作:龍崎悠司

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大変長らくお待たせいたしました!

感想に勇気付けられ元気付けられ全力で更新させていただきました。
感想くださった方々、今更ながら誠にありがとうございます。


そしてそして、UA2500&お気に入り20!!

多くの読者様に感謝感激の至りであります!
これからもどうぞよろしくお願いします!!






クエスションタイム~魂のカスについて~

 

 

 

 ―――――……

 

 最初は渋々だった。

 

 それが段々と普通になって。

 

 いつの間にか、楽しくて仕方がなかった。

 

 だからもっと、と近付いて。

 

 そうして、全てを壊してしまった。

 

 ―――――……

 

 

 

 

 

 

 黒斗が京都に行ってから一週間後。

「はぁ、最早久しぶりだな」

 黒斗がアジトへ帰宅した。

「んお?」

「あっ」

「黒兄ちゃんだ!」

 帰って早々、構成員たちに囲まれてしまった。

「どうしたんだよ?今回は。仕事か?」

「消耗したんでね、休暇だよ休暇」

「黒兄ちゃん、遊んでー!」

「後でな」

「黒斗さん、雪姫様が帰ってきたら自分の部屋に来るようにと」

「分かった、すぐ行く」

 適当に流しながら返事をしていく。

 そこでふと、気になったことを聞いてみた。

「……なぁ、夏凛はどうしてる?」

「夏凛様なら今はアマノミハシラ学園都市に行ってますよ」

「んあ?……あぁ、そういやまだ調べる必要があったんだっけな」

 アマノミハシラ学園都市とは旧麻帆良学園であり、つい先日三太を幽鬼にした水無瀬小夜子が世界規模のヴァイオハザードテロを起こしたその中心地でもある。

 何でも、なかったことにしたとはいえ世界が滅ぶほどに用意周到に準備されたテロが行われたのだ。細かい経緯や、繋がってる裏側の調査が必要なのだと言う。

(ま、好都合かもな)

 そちらに掛かりきりになってくれるなら、黒斗に任された件に巻き込まずに済む。

 そう思いながら、雪姫の部屋に入った。

「おぅ、戻ったぞ」

 

 ビュオ!!

 

 入った瞬間、氷の矢が飛んできた。

「うぉおおおお!?」

 全力で横っ飛びに躱す。

「いきなり何しやがる!?」

「黙れ阿呆が。貴様が暴れたせいで処理が遅れた案件がいくつあったと思っている?」

 随分と手間だったのだろう。それが雪姫のいらいら具合から見て取れる。

「あ?てめぇが俺を挑発しなけりゃあんなことにはなんなかったっつうの」

 だが、黒斗としても心外なのである。

 普段は別に感情をあらわにしたり、激情に任せてキレて襲い掛かったりなどしないのだ。

 その琴線に触れると知って色々企んだ雪姫が悪い。

 二人とも主張は折らず、そのまま双方くだらないぶつかり合いはやめた。

 自然とそうなった二人の取り決め。両方が折れなければ、逆に両方ともが意見のぶつけ合いをやめる。そうして妥協案を探すのである。

「それで、今回はどこに行って来たんだ?」

 話を強制的に終わらせて、別の話題に。

「今回は京都、特に嵐山とか雰囲気の悪いところにって感じだな」

 当然、黒斗もその話題に乗っかる。

「ロンドンに比べりゃ、と思ってたがあそこもいいな。漂ってるだけで瘴気が充填されてるのがわかる」

「そうか」

 満足げに頷く黒斗に簡単に返す雪姫。

 近くに寄れば分かるが、黒斗から感じる瘴気は以前よりも遥かに強くなっている。とはいえ存在感などはやっぱり希薄なままなのだが。

「それで?ただ休養しに行っていたわけでもあるまい?」

 睨むように雪姫が聞く。

 黒斗はこれでも雪姫より長く生きていて、力が弱い。それ故に調査や安全策や一矢報いるといった、いわゆる転んでもただでは起きないということに関しては信頼が置ける人物でもある。

 まぁ、不死人にはそこまで必要になる安全策もないが。

 ともかくとして、この黒斗に限って言えば手ぶらで事を済ましてくるなど有り得ないと言っていい。

「いやぁ、京都見学が存外楽しくてなぁ。ほれ、お土産の生八橋」

 だが、雪姫の問いにあっけらかんと笑う。

 

 ビュオ!!

 

 その笑いにイラッとした雪姫が再び氷の矢を放つ。

 しかし生八橋を盾にされたので仕方なく当たる前に消した。

「まぁそんなにイラつくな」

「誰のせいだ!誰の!」

 まぁまぁ、と落ち着かせてから雪姫に背を向けて黒斗が告げる。

「俺に任せてくれるんだろう?」

 その言葉の真意を正しく汲み取った雪姫は。

「話せ」

 黒斗の首筋に氷で出来た刀を出現させた。

 部屋から出ようとすれば首が胴体とさよならするように。

 黒斗は確かに情報を持ち帰り、しかしその危険度が高いために何も話さなかった。

 だから、例え脅してでも聞き出す必要性を感じたのだ。

「断る」

 だが、黒斗は構わず出ようとする。

 当然、その刃は黒斗の首を通り抜け。

 しかし、頭は未だ健在のままだった。

「お優しいね。空気の中の水分を固めただけの、ただの氷とは」

 黒斗の首からは血が流れておらず、刀の通ったところが黒い靄で覆われてるだけだ。

「魔力を纏わせた武器ならともかく、ただの物理攻撃は俺には基本効かない。そんくらいてめぇだって分かってるだろ?」

 生物ではなく、本当に塵芥が集まって出来たような黒斗は身体の構造など、有って無いようなものである。

「あぁ、だがな」

 雪姫が呟くように言い。

 次の瞬間には、至近距離で黒斗に手をかざして立っていた。

「勘違いはするな」

「へぇ、力の差があるから逆らうなってか?」

 挑発気味に聞く黒斗に、首を横に振る。

「お前が、UQホルダー(私たち)に必要だから話してほしいんだ」

 辛そうなその言葉に、やれやれと言いたげに肩をすくめる。

「お前、まだ罪滅ぼしなんてくだらない感情を俺に向けてるんじゃねぇだろうな?」

「……信じてくれるとは思っていない。でも、本当なんだ」

 そうかよ、と言ってそのまま部屋を出て行く黒斗。

「黒斗!!」

 止めようとする雪姫に、一度立ち止まって。

「この前のきな臭かった依頼。あれ、やっぱり繋がってたよ」

 それだけ伝えて、去って行った。

 

 

 

 

 場所は変わって中庭。

「あぁああああああああああああああ!!!!!」

 先ほど約束した通り、子供たちを空中に浮かして遊んでいたら大きな声が響いた。

 声の主は分かっている。

「どうしたんだよ?刀太」

「どうした、じゃねぇよ!!説明しろぉ!」

「いや、だから何をだよ」

「えっと……」

「決めてないのかよ」

「う、うるせぇ!とにかく、一から十まで全部話せよ!」

 無茶苦茶な要求をする刀太にどう断って逃げきろうが考えていると。

「僕も聞かせてほしいですね、黒斗殿」

 そこに九郎丸も、いや、この前仕事について来た全員が集まっていた。

「はぁ、分かったよ。ってか、お前ら学校に行ってたんじゃないのか?夏凛はまだそっちだって聞いたけど」

「それについては雪姫殿が、そろそろ貴方が戻ってくる頃だろうから、と呼び戻してくれたのです」

 九郎丸の返答に小さく舌打ちしてから本題に入る。

「で、お前らは何が聞きたいの?」

「僕たちが聞きたいのは、いくつかある……けどまず、黒斗兄ちゃんは何者なんだ?どういうことか教えてくれよ。小夜子の下位存在ってなんなのか」

 それまで見たことがないほど真剣な表情の三太。

 水無瀬小夜子の存在が三太にとって無視出来ないほど大きいこともあり、嘘や半端な説明は許さないと言外に語る。

 黒斗は諦めて説明を始める。

「俺が瘴気で出来てるって話は?」

「聞いてます」

 黒斗の質問に肯定の答えが返ってくる。

「じゃあまず聞くが、瘴気ってのはなんだと思う?」

 その質問に、えっ、と固まりながら、キリヱが答える。

「瘴気って悪い気……じゃないの?」

「なら、気の善し悪しは?なんなら気そのものってのはなんだ?」

「よく分かんねぇけど、気ってエネルギーなんじゃねぇの?」

 首を傾げながらも今度は刀太が答える。

「じゃあ、それは『何の』エネルギーだ?」

 次の質問には、一同口を閉ざす。

 大して意識して使っていなかったのもあって、すぐに答えられなかった。

「えっと、体力とか精神力とか気合?」

 とりあえず適当に答える刀太に首を横に振って否定する。

「それも間違いではねぇよ?じゃあ、それらの力の大元は何だってことだよ」

 不正解と言われ、悩む。

「……魂、ですか?」

 全員が黙る中、自身の感覚を思い出し、予想を立てて答えたのは九郎丸だ。

「正解だ。詰まる所、瘴気ってのは魂の悪い部分や負の感情の極々小さな欠片だ」

 正解は分かったが、結局黒斗の正体の話には届いていない。

「早い話、瘴気は魂のカスだ」

 黒斗の説明は続く。

 瘴気は魂のカスであり、欠片である。

 そして、魂は外に発することが出来るのだ。

「例えば、物凄く怒ってる奴が近くにいると、直接そいつの様子を見てなくても、『あっ、こいつ怒ってるな』ってのが分かる時があるだろ?魂を外に発している状態ってのはそんな感じだ」

 そういった発せられる魂のうち、負の感情。怒りや悲しみなどがそれに当たる。

 それらは、別に普通に発せられる時には大して意味がない。

 文字通り吹けば飛ぶ、砂っぽいゴミのようなものだ。

 だが、それらが集まりやすい場所がある。

 簡単に表現すれば、汚いゴミの溜まり場が適当だろう。

 その溜まり場の様子を指して、瘴気が濃いと言うのだ。

「で、魂のカスと言えど、集まれば力だ。膨大な量と質が合わされば、ただ生前に力を持ってただけの幽霊を荒御魂に変えちまうくらいにな」

 その説明に三太が俯く。

 水無瀬小夜子は、無念のうちに殺された悲しい魂の受け皿に自らなり、その結果、世界を滅せるだけの力を手に入れたのだから。

「実際、水無瀬小夜子の例を見れば分かる。魂は集まれば他のものに影響を与えるんだ」

「ねぇ、それじゃあ鬼とかはどうなるの?別に瘴気を放ってるからっていつも怒ったりしてるわけじゃないでしよ?」

「あ~、それは属性が関わってくるんだ」

 途中のキリヱの質問にもちゃんと答える。

「炎とか氷じゃなくて、陰と陽な。鬼とかは陰の属性存在だから、瘴気をデフォルトで放ってる」

 その辺の話は今関係ないから、と置いておいて説明を再開する。

「魂が集まれば何かしらの影響が必ずある。なら、集まった魂の欠片同士で影響し合ったら?んでもって、その影響の仕方が周りの欠片をより集めるように作用したら?」

 その言葉に、頭の良い九郎丸とキリヱが理解する。

「そうやって集まった魂の欠片が、もし普通の生物と、人間と似たような量やら大きさやら質やらを手に入れたら?」

 そこまで言われて、ようやく三太が分かった。

 唯一分からない刀太が質問する。

「でもよ、魂が集まって人間のそれっぽくなったからって人間みたくなれんのか?」

「じゃあ、水無瀬小夜子はどうだった?」

 そう聞き返されて思い出す。

「水無瀬小夜子は言っちまえば、ただの怨霊だったよ。確かにな」

 けど、一言区切って告げる。

 

「神に近い存在だと思わなかったか?」

 

 その言葉にゾクリとする。

 確かに水無瀬小夜子はただの幽霊と言うには一線を画すどころか優に超える存在だった。

 言い換えるなら、力が集まればそれまでより高次元の存在になれるということ。

 魂の欠片でも、集まれば人のそれに近い存在になれるということ。

「まぁ、どうして俺がちゃんと一人の人としての意識があるのかは俺にも分からん。が、俺を構成する原理はこんなもんだよ」

 その言葉を最後に説明を終える。

 説明を飲み込むのに、少し時間を要してる面々。だが。

「よぅし、んじゃあさ黒斗。力試しに腕相撲しようぜ!」

 能天気に勝負を申し込む刀太。

「あんたねぇ、少しは悩みなさいよ!」

 叱咤するキリヱに素で疑問符を浮かべる刀太。

「なんでだよ?説明はしてもらったし、敵でもない。んでもって、こいつは俺より強い。なら一回戦ってみるのも別に悪くねぇと思うぞ」

 意外な正論に反論出来ないキリヱ。

「くはっ、面白ぇ。いいぜ、刀太。腕相撲だろ?受けてやる」

 笑いながら承諾する黒斗にやった、と喜びながらついて行く刀太。

「やっぱり、刀太くんは凄いな」

「バカだけどね」

 呟く九郎丸とため息を吐きながら呆れるキリヱ。

 けど勝負が気になるのか、先について行った三太を追って行った。




さて、いかがでしたでしょうか?

今回は説明回なので、分かりづらかったらすみません。


一応の補足をいたしますと、小夜子の構成要素に怨霊やら瘴気やらがあって神に近い存在にまでなったのに対し、黒斗は瘴気のみの構成とどれだけ集まっても人未満にしかならないということで、『超下位存在』を名乗っている、ということです。

では次回はVS刀太(腕相撲)です。お楽しみに。
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