魔法少女リリカルなのは!?「落ちこぼれの魔導師」 作:ヘルカイザー
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私はフェイト・T・ハラオウン。今は管理局で執務官などをしている。でも昔は、なのは達と出会う前は母さんの為とはいえ、犯罪者だった。目的の為に他者を傷つけ、なのはを……彼を傷つけた。
彼……とはなのはの幼馴染みで今では私の友達の男の子。名前は塗栄 瀀。私はなのはのゆた君に合わせて、ゆた……と呼んでいる。彼は優しくて、私がどんな存在だろうと彼は否定しないで私に笑いかけてくれた。けど今、彼のその笑顔は消えてしまった。なのはは自分の所為だと言っているが、私はそうは考えていない。なのはに非があるとすれば私にも非がある。何故なら、ゆたを苦しめるきっかけを与えたのは私かもしれないからだ。
あれはなのはと初めて戦った時の事だ。私はなのはを倒した後、倒れたなのはの側に駆け寄ったゆたが突然私の方へと近づき、私を恐れる事なく、何故こんな事をしたのかと理由を聞いてきた事があった。最初、私は彼も魔導師なのかと思い少し脅してから魔法で吹っ飛ばした。しかし彼はシールドどころか防御魔法の類を一切発動させる事なくそれをまともに受けたのだ。
額からは血が滴り、彼が戦えない事は明白だった。でも彼はそんな状態で起き上がるとゆっくりと私の側へ歩いて来るのだ。私はその時、多少なりとも恐怖を感じていた。魔法も使えない人間がそれをまともに受けて臆する事なくそれに向かっていけるものだろうかと……ましてや彼はまだ子供だ。怖くない筈がない。しかし彼は私の目の前まで来るとその瞬間意識を失い、その場に倒れた。私はそんな彼に少し驚き固まっていたが、すぐ我にかえると彼の傷を魔法で治した。気まぐれといえばいいのだろうか。彼に対してゆたに対して罪悪感を覚えたからかもしれない。私は魔法も使えない人間に魔法を放ったのだから。
そしてその後も彼は私の前に何度も現れた。でもそこからはなのはとの戦闘がほとんどでゆたとは関わりがなかったが、私が関わったこの事件、その最終局面。母さんに拒絶された私は自分が分からなくなりショックで倒れた。その時だ、ゆたと話す機会があったのは。倒れた私の横で私を元気付けるように、私に語りかけてくれた彼の優しい声、私は今でも覚えている。
「僕が何を言っても、それは他人の言葉になる。だけど僕はこう思うよ? 君は君だ。君が何であれ、一人の意思を持った人間なんだ。人形や誰かの代わりじゃない。僕にとってはただの女の子だよ? 」
「た……だの……女の子? 私は……わた……し? 」
何故かその言葉は私の中で暖かく溶け込むように伝わってきた。私の心を癒し、私が彼の方へ顔を向ければ彼はまるで太陽のような笑顔を私に向けてくれたのだ。ただ、それだけ。ただそれだけの事で私は少なからず救われた。だからその後になのはの応援に行けたし母さんとも話をする事が出来たのだ。でも私がなのはの応援に行く直前ふと彼の顔を見た。彼は私が見ているのには気づいていない。その顔は恐怖でも、不安でもなかった。私には悔しさを何かに対して許せないような……そんな顔に見えた。勿論、その時の私はそれを理解する事は出来なかった。だが、今なら分かる。彼は許せなかったんだ。守らているだけの自分が。自分の大切な者をその手で守れない自分が。でなければ、彼は今も私達と共にいる筈なのだ。
そしてなのはじゃないが、私も彼に酷い事を言った事が何度かある。あの時もそうだった。それは私がなのはと友達になってから起きた最初の事件、闇の書事件の時だ。なのはが倒され、私もまるで歯が立たなかった。それでもなのはが無理をしてくれて、結界を壊す事に成功。敵は逃げ出した。しかしその場に駆けつけたゆたを守ろうと必死になっていたなのはは自分の身体を考えず無理をした結果、意識を失い軽くでも怪我をしてしまったのだ。
私は許せなかった。なのはを守りきれなかった自分に、そして……何も出来ないのに戦場に出てきたゆたを。でも本当は分かっていた。ゆたは悪くない。心配でいても立ってもいられなかっただけだと本当は分かっていた。だが私は、冷静さを……なのはの倒れた姿を見て、ゆたに対する怒りが抑えきれなかった。私はゆたに八つ当たりをしてしまったのだ。
「どうして……どうして来たの? 」
「え……その……なのちゃんの姿をたまたま見かけてそれで……け、結界も発動してたし「だから何だ!!! 」……フェイ……ちゃん」
「なのははゆたがいたから必要以上に無茶したんだ!! 自分で自分も守れない人間が、戦場になんか出てくるな!!! はぁ……はぁ……ゆた、この際だから言わせて? 正直、『力のない人間と一緒になんて戦えない、迷惑だ』」
「っ!? 」
本当に酷い事を言っていると自分でも思っている。だから後日、私はゆたに謝った。何より、私が冷静じゃなかったからだ。あんな事言う必要もないし、言ってはいけない事。でもそんな私をゆたは笑顔で許してくれた。しかしその瞬間、ゆたの笑顔が曇った気がした。私の知っている、私に笑いかけてくれた笑顔が一瞬だけ曇った気がしたのだ。絶対に気の所為ではないと思っている私だが、何度見直してもゆたはいつも通りの笑顔だった。だから私はその時気の所為だと思ってしまったのだ。
本来……と言っても自分で言っておいておこがましいとは思うのだが、本来、私が謝ってゆたに対する誤解は解けたものだと私は思っていた。しかしそれは大きな間違いだったのだ。何故ならゆたの中で、私のこの一言は完全に刻まれてしまったのだから。
そしてここから数年後、なのはが大怪我をしてしまった時の事、ゆたにハッキリとした変化が起きた。私は見てしまったのだ。
「あれ? ゆた? なのはのお見舞い? ……ゆた? どうし……っ!? 」
なのはのお見舞いに向かう途中、帰ろうとしているゆたの姿を見かけ、私達はすれ違った。しかし私が声をかけてもゆたは何も答えずに私を通り過ぎて歩いていく。そして私は見た。笑顔の消えたゆたの顔を。それだけではない。今のゆたの顔は……昔一度だけ見た事のある顔だった。あの何かを憎むような、許せないような顔。
私はこの時薄々、ゆたの中で何かが壊れかけているのだと感じ始めていた。けどゆたは普段自分の事は全然表に出さない。全て一人で抱えて、解決しようとする。これがゆたを壊した一番の要因だろうと私は思うのだ。
「ゆた? 久しぶりだね、最近忙しくて会えなかったけど……どうしたの? こんな所で? 」
「別に……ちょっと休憩してただけだよ。フェイちゃんは? 任務の帰り? 」
「うん! ゆた……最近どうなの? 部隊に馴染んだ? ん? ゆた? 」
「はは……なんでもないよ。僕は大丈夫さ。部隊にも……なれてきたしね」
中学を卒業し、私達が管理局で働き始めた頃……私は忙しくてゆたに会わなくなった時期があった。そしてたまたま任務の帰りに本局でゆたにあったのだ。でもゆたの様子が少しおかしかった。何もないように見せているが、それはもう隠しきれず、漏れ出していた。部隊で何かあったのかと考えたがゆたが大丈夫と言うので特には気に留めなかった。しかしこの時、もう少しゆたに対して気を配っていれば、もしかしたらゆたはまだ壊れずに済んだかもしれない。
私がそう思うのも、ゆたと会ったこの日から数年後の事だ。ゆたが管理局をクビになった。私はその事実が信じられず、必死になって原因を追求した。だが帰ってきたのはゆたが無能だという言葉だけだったのだ。
私は心底怒りを覚えた。使えない、無能。……そんな言葉で私の友達を否定し追い出したのかと。でもそう考えた時、私は昔自分がゆたに言った言葉を思い出したのだ。結局の所、私はゆたを追い出した人間と何も変わらない。都合のいい時だけ友達ヅラをして、都合が悪くなるとゆたを責める。私はこの時初めて自分が言った言葉の重みに気がついた。『使えない』、『弱い』、『無能』、『力がない』、『一緒に戦うのは迷惑』……こんな残酷でジワジワと心を壊すような言葉を私達はゆたに向けて、平気な顔をして何度も言っていたのだ。
そして私がそれに気づいた頃にはゆたは私達の前から姿を消した後だった。なのはには私が気づいた事は言っていない。きっとなのはが聞けば傷つくと思ったからだ。しかしゆたが姿を消して数年が経ったある日、なのはが出場していた魔導師の大会での事。その会場、決勝の部隊にゆたは姿を現した。私は驚き、つい観客席で立ち上がる。でも私が本当に驚いたのはその後だった。ゆたがなのはと互角かそれ以上の実力で戦っていたからだ。
そして決着がついた。私は唖然とその結果を見ている。なのはが負けたのだ。私は走った。会場から出て行くゆたを追いかけ、ゆたと話をする為に。
「ゆた!? ゆた待って!? お願い!? ゆたぁぁぁぁあああああああ!!! 」
必死に叫びながら通路を走る私の声が届いたのか、ゆたは止まってくれた。でもわたしの方へ顔を向けたゆたは笑ってくれない。ただ無言で無表情。そして冷めた目を私に向けている。声をかけたのは私だ、だがそんなゆたを目の当たりにしてしまい、なんて言っていいか分からなくなってしまったのだ。
「用がないなら行かせて貰う」
「あ、待って!? お願い……お願いだから、話をさせて? 」
「分かった」
「ありがとう、ゆた。今までどこにいたの? 」
「答える必要はない」
「心配してたんだよ? 」
「余計なお世話だ」
ゆたの言葉は冷たい。昔とは比べ物にならない程冷え切っていた。思った通り、ゆたは変わってしまったのだ。もしかしたら、私達の事を嫌いになったのかもしれないと私は怖くなった。でも今までゆたと向き合わなかった分、ここで逃げるわけにはいかなかった。だから私はゆたと話を続ける。
「ゆた? その……私達……今までゆたに酷い事言ってたんだよね? ゆたの気持ちも考えないで……だからずっと謝りたかったの! 今更遅いかもしれない、でも……ゆたとこんな冷え切った関係、嫌だから…………だから! ……っ!? ゆ……た? 」
「……今更何の冗談だ……調子に乗るなよ『フェイト』。お前達が『俺』に何を言ってきたか……本当に理解しているのか? いや、それは別に我慢できた。別に……別に我慢、出来たんだ!!! ははっ、だがそんな昔の事はもうどうでもいいんだよ。俺は自分が許せなかった。こんな落ちこぼれで、自分で自分の命すら守れないこのクソッタレな自分がな!! でももっと許せないのは……お前達のように気づきもしないで平気で落ちこぼれを見下すような連中だ!!! 気がつかなければ何を言っても許されるのか? 謝れば全て許されるのか? 言ったことをなかった事に出来るのか? 俺はそんなに……『迷惑な存在だった』のか? 」
「ち……違う……わ、私達は……そんな事……思って……ない」
ゆたは私に抜いた刀を向け、まるで今まで溜め込んでいた不満を爆発させるように言葉をマシンガンのように吐き出してゆく。正直、私はゆたの中にある不満や悩みがここまで酷いものだとは思っていなかった。私達はゆたの気持ちを何も分かっていなかったのだ。だから目の前のゆたは壊れた。彼の一番の魅力的な笑顔を……私達は壊してしまったのだ。
「フェイト……もう俺に関わるな」
「っ!? ……ダメ!? 待ってよゆた!? ……つっ!? あ、ああ……ゆた……何……を…………」
「目障りだ、これ以上粘るなら……殺すぞ」
「くっ……ゆぅぅぅぅたぁぁぁぁあああああああ!!! うわぁぁぁぁああああああああああああ!!! 」
《セットアップ!》
またどこかへ行こうとしたゆたを私は止めようとした。ここでゆたを行かせたらもう元に戻らない気がしたからだ。しかしそんな私にゆたは刀を振り下ろした。刀は当たっていない、いや、わざと外したのだ。これは忠告だ。そしてゆたは私にハッキリと『殺す』と言った。私はそれが何よりショックで。そう言われた瞬間バリアジャケットを展開しゆたに襲いかかる。認めたくなかった。ゆたに嫌われるなんて認めたくなかったのだ。
ゆたのデバイスと私のデバイスがぶつかり、紙一重の攻防が繰り広げられる。私も結構強くなったつもりだった。しかし目の前のゆたは底が見えない。強いのかも弱いのかも分からなかった。私の攻撃を掠ってもおかしくないタイミングでかわし、私の攻撃を凌いでいく。ゆたの戦い方は訳が分からなかった。確かに防御魔法を使えないゆたが攻撃を凌ぐ為にはかわすか刀で防ぐしかない。でも攻撃を一度たりともしてこないのは明らかにおかしい。そして私がバルディッシュをザンバーフォームへと変え、ゆたに向けて横から振り抜いた時だった。一瞬の出来事の筈なのに何故かスローモーションのように感じた。さらにここで違和感が私に芽生えた。ゆたが私の攻撃をさけようとも、防ごうともしないのである。ゆっくりとザンバーはゆたに向かっていく。だがもう私は攻撃を止められるタイミングではない。
「うぐっ!? 」
「っ!? ゆた!? がっ!? ……ゆ……た…………」
「自惚れるなフェイト。防御が出来ないから戦えない? 攻撃を避けなければ戦えない? そもそもそれが見下してると言っているんだ。落ちこぼれは確かに弱いさ。だけどな? 弱いからこそ、お前達のような才能持つ者には分からない戦い方がある。それを覚えておけ」
「ま、まっ……て……ゆ……た…………おね……がい…………」
私が放ったザンバーをゆたは避けることなく真っ向から受けた。ザンバーの当たった脇腹からは血が噴き出し、その瞬間ゆたは私のお腹に拳を叩き込んだ。私はその場に倒れ、ゆたの攻撃で息がまともに出来ない。そしてその隙にゆたは去っていく。もう私には追いかける事が出来なかった。
「うっ……ひぐっ……うっ、うっ……ゆた……ゆた……ゆたぁぁぁあああああああぁぁぁぁ、ぅわぁぁぁぁぁぁぁ…………」
結局私は彼を止める事は出来なかった…………
次回もよろしくお願いします!