魔法少女リリカルなのは!?「落ちこぼれの魔導師」 作:ヘルカイザー
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ではよろしくお願いします!
彼との出会いは図書館だった。私、八神はやては彼の笑顔に惹かれ、友達になりたいと思った。きっかけは単純だ。私は昔、闇の書と呼ばれていた魔道書型ロストロギア……その呪いで歩く事が出来なかった。勿論当時の私はそんな事は全く知らなかった訳なのだが、その為、どこへ行くにも車椅子だったのだ。そしていつものように図書館へ本を借りに行った時の事、私は彼に出会った。一見ぱっとしないが優しそうな男の子で私が上の本を取ろうとしていると代わりにとってくれた。そこから彼との始まり。毎日ではないがたまに彼とは会う事があった。学校に行っていない私は友達が少なく、だからか分からないが、彼と会う事で凄く嬉しかったのだ。そんな彼の名前は塗栄 瀀……私はゆ〜ちゃんと呼んでいた。
でもある日、私は闇の書事件と呼ばれる事件……その真っ只中、気がつかないうちに当事者になっていた。しかしだからと言って後悔だとも不幸だとも思っていない。この事件があったお陰で私はなのはちゃん、フェイトちゃん、そして私の新しい家族、ヴォルケンリッターのみんなと出会えた。
だが一つ後悔があるとすればゆ〜ちゃんの事だ。昔のゆ〜ちゃん、私が好きだった笑顔。それが今、失われてしまった。私は気がつかなかった。ゆ〜ちゃんの変化、彼が抱えている闇を……けど今更遅い。彼は私達の側からいなくなった。果たして私はゆ〜ちゃんに出来ることがあったのか、今だから言える事がある。予兆はあったと。
ゆ〜ちゃんが変わりだしたのはなのはちゃんが大怪我をしてから数日経った日の事。ゆ〜ちゃんは私達と過ごす時間よりも一人で過ごす時間の方が多くなった。理由は私には分からない。でも私達が誘っても断る事が多くなったのだ。勿論全くというわけじゃない。だから私はその時、気分が乗らないだけだと気にも止めていなかった。しかしそれが間違いだ。もっとゆ〜ちゃんと話すべきだった。ゆ〜ちゃんに関わっていくべきだったのだ。もし、そうしたならこれからもゆ〜ちゃんと同じ道を歩めたかもしれない。ゆ〜ちゃんが壊れなくても済んだかもしれないのだ。
ゆ〜ちゃんにとって私達の存在はどのように写っていたのだろうか……もしかしたらゆ〜ちゃんは嫌々私達といたのかもしれない。しかし私はそれを認めたくない。私達が嫌いならそれははっきりと分かるはずだ。少なくてもゆ〜ちゃんと過ごした時間、ゆ〜ちゃんに嫌われていると思った事はないのだから。でもあの時は違った……私はゆ〜ちゃんから初めて拒絶の感情を感じたのだ。それはゆ〜ちゃんが管理局をクビになる数日前の事。私はたまたま本局の中庭を通りかかり、そこでゆ〜ちゃんを見かけた。ただその時は一人じゃなかったのだ。ゆ〜ちゃんの他に3人の局員がいた。その人達はゆ〜ちゃんを囲うように何やらゆ〜ちゃんと話しているようだった。同じ部隊の人かと思った私は少し待って、ゆ〜ちゃんが1人になった所でゆ〜ちゃん声をかけた。
「ゆ〜ちゃん! どないしたん? さっきの……同じ部隊の人か? 」
「うん…………」
「あはは、何やゆ〜ちゃん? 元気ないで? そや! 私で良ければ相談に乗るよ? 何か悩みがあるんやろ? 魔法は教えても『しょうがない』から無理やけど……他の事なら「はやちゃんもなんだね……」ん? 今、何て言ったんや? ごめんな、聞こえんかった。もう一度言ってくれへん? 」
「どうしてなの? 」
「え? え〜と……」
「どうして……僕を…………」
「ゆ〜ちゃん? ゆ〜……っ!? 」
この時のゆ〜ちゃんの顔は忘れられない。誰かに対する怒りではない。自分に対しての怒りでもない。それはひたすらに悔しさが滲み出て、顔に表れていた。
ゆ〜ちゃんがこの時、何を言いかけたのか。この時の私は分からなかった。でも今の私なら分かる。分かってしまう。ゆ〜ちゃんがこの時言いかけたのは「どうして僕を見下すんだ」の筈だ。私はそんなつもりでゆ〜ちゃんに言ったわけじゃなかった。ゆ〜ちゃんが何に対して見下していると思ったのか……それはおそらく私が言った一言、「魔法は教えてもしょうがない」だろう。私はこの時、そんなつもりで言ったわけじゃない。ただ私の魔法は広域魔法や魔力を大量に消費する魔法しかない。だからゆ〜ちゃんに教えられる魔法がないが為に言っただけだったのだ。しかしゆ〜ちゃんからしてみれば私がどう思っていようとそれは関係ない。確かに『しょうがない』は見下してると捉えてもおかしくない言葉だ。でもゆ〜ちゃんがそこまでマイナスに捉えるとは思わなかった私はそれを何も考えずに言ってしまったのだ。それほどまでにゆ〜ちゃんの心はマイナス思考になってきているという事。だがゆ〜ちゃんがそんな状態にも関わらず私は気づかなかった。ゆ〜ちゃんの力になってあげる事が出来なかったのだ。そしてこの数日後にゆ〜ちゃんが管理局をクビになった。しかし私はゆ〜ちゃんがクビになった日、丁度本局に訪れていた為、その情報を逸早く知ることができた。
「ゆ〜ちゃんどこいったんや……ぁ! ゆ〜ちゃん!? 」
「ん? ああ、はやちゃんか…………」
「何やそれ、私じゃあかんの? 」
「あはは……そんな事……ないよ。……はやちゃん……もう知ってるんだよね? 」
「ゆ〜ちゃん……うん。こ、これからどないする気なんや!? 正直……ゆ〜ちゃんがいなくなるんは寂しいんよ…………」
「はは……落ちこぼれがいなくなるんだ、本当は清々してるんでしょ? 」
「え……ゆ〜ちゃん……な、何……言ってるんや? 」
ボソッとゆ〜ちゃん口からこぼれた一言は私を固まらせるのに十分な効果をもっていた。ゆ〜ちゃんは自分はまるでいらない人間のように、邪魔な存在であると思っているようだった。勿論私やみんながそんな事思っている筈はない。一体何が彼をここまで追い込んだのか……そんな事決まっている。他ならぬ私達だ。私達がゆ〜ちゃんをこんな風に変えてしまった。彼と正面から向き合わず、弱いというだけで隣に立たせる事すらさせない……私達は無意識でも彼を、ゆ〜ちゃんを見下していたのだ。一体弱い事の何がいけないのか……世の中、みんながみんな強くなれる訳じゃない。にも関わらず弱いから戦わなくていい、弱いから戦場に出てくるな、これはもう完全に差別、相手を下に見ている行為としか言えない。そんな分かりそうな事を私達はゆ〜ちゃんにし続けていたのだ。私達は愚かだ……守りたい者を守っているつもりで実は一番傷つけていたのだから。
そしてこの数年後、私はなのはちゃんとフェイトちゃんがゆ〜ちゃんに会ったと聞いた。私はなのはちゃんが出た大会には応援に行けなかった為、ゆ〜ちゃんに会っていない。しかし、話を聞く限りゆ〜ちゃんの変わりようは驚く程の物だった。正直、今でも信じる事が出来ない。戦闘に関してはゆ〜ちゃんが頑張って強くなったと思えばさして驚く事じゃないが、私が驚いたのはゆ〜ちゃんがフェイトちゃんに言った一言。『殺す』という言葉だ。ゆ〜ちゃんは優しい。それこそ私達や他人に向けて暴言を吐いたのを聞いた事がない。ましてやそれがフェイトちゃんに対して言った言葉。私は怖かった。実際にゆ〜ちゃんと会っていない分余計に……昔のゆ〜ちゃんが消えてしまったような、そんな喪失感……それを感じながら今、私は仕事終わりのベッドに横になる。
「ゆ〜ちゃん……私は……ゆ〜ちゃんに謝りたい……会いたいんよ……一体どこにおるん? 」
虚空、闇。ゆ〜ちゃんの消息は以前闇の中。探しても見つからないのだ。そんな……友達一人満足に笑顔にできない私は無力だった…………
◇◆◇◆
私の名前はリインフォースツヴァイ、はやてちゃんのユニゾンデバイスだ。私にとってはやてちゃんは主であると同時に姉のような存在だ。勿論なのはさんやフェイトさんも同じ。しかしそうなると兄のような人が欲しい所。私にとっては彼がその兄のような存在。彼の名前は塗栄 瀀さん。私はゆた兄さんと呼んでいる。ゆた兄さんはなのはさん達の幼馴染みで私が生まれた時もすぐそばに居た。だから私はゆた兄さんには本当の兄のように絶大な好意を寄せている。ゆた兄さんはいつだって私に優しくしてくれた。
「あ! ゆた兄さ〜ん、何してるですか? 」
「ぐぐ〜……しつこいハエだ!? はっ!? そこか!? 」
「へぶしっ!? 」
「あ…………ごめんリインちゃん」
「……ううぅ……む! 酷いですよ!? リインはハエじゃないです!? うっ、ううっ……リインを……リインをハエと間違えるなんて最低です!? ゆた兄さんのばかぁぁぁああああああ!? 」
それは私がゆた兄さんの家に遊びに行った時の事。私が何も考えずにハエたたきを振り回してるゆた兄さんの側に行った事でハエと間違えられて叩かれてしまったのだ。いくら私が今、全体で30㎝ぐらいしかないとはいえ、ハエと間違えるゆた兄さんに多少なりとも怒りを覚えた。そして私はゆた兄さんにハエと間違えられてしまった事でショックで泣いてしまい、しばらく不機嫌になったのである。しかしそんな時でもゆた兄さんは何度も私に謝ってくれて、お詫びに何でも奢ってあげるからと甘い物を食べさせてくれたりした。そんな過去の悪い思い出も今となってはいい思い出。今、私の大好きなゆた兄さんは私の前からいなくなってしまった。
ゆた兄さんとはまだ数年の付き合いだったが、私にとっては掛け買いのない本当の兄のような存在。替えはきかないのだ。聞けば、ゆた兄さんは管理局をクビになり、消息不明。そしてその数年後になのはさんとフェイトさんがゆた兄さんと会ったと言っていたがその変わりようにショックを受けていた。勿論話を聞いただけの私もショックを隠せない。最近まで私に笑いかけてくれたゆた兄さんがそんな悩みを抱えていたなんて私は全く気がつかなかったのである。
私はゆた兄さんに会いたかった。でも探して見つかれば苦労はない。しかしそこから更に数年後の現在、私はゆた兄さんと再会した。一番……再会したくない状況で…………
「無事任務完了! レリック確保しました! 」
それははやてちゃんが部隊長で立ち上がった新部隊、機動六課の初出動の時だ。敵の無人探索機械、ガジェットドローンによって列車が暴走してしまい、完全に制御を失った。敵の狙いはロストロギア、レリックだ。でもスターズ、ライトニング共に力を合わせてガジェットを退けそれを確保。今回はこれで終わる筈だった。しかしそこへどこから飛んで来たのか私達の前にゆた兄さんが現れた。
私は驚きと共にゆた兄さんに会えたという喜びが強くなってしまい任務中だがゆた兄さんに向かって飛びつく。
「ゆた兄さん、会いたかったですよぉ〜へぶしっ!? 」
「うるさいハエだ……おっと、リインだったか。間違えた」
「って!? 間違えるわけないです!? こんな状況で何をどうやったら間違えるんですか!? しかもどっから出したですかそのハエたたき!! 」
「リイン、お前達の持っているレリックを渡せ」
「シカトですか!? ……と言うか……今……何て言ったん……ですか? 」
「レリックを渡せと言ったんだ、リインフォースツヴァイ! 」
何故……どうしてと言う疑問が私の思考を停止させる。ゆた兄さんがレリックを渡せと言っているのだ。あのゆた兄さんが私達の邪魔をするなど考えたくなかった。私は目の前の状況が信じられず、ゆた兄さんの姿を見つめながらしばらく固まった。しかしそんな事をしている場合ではない。知り合いだろうが身内だろうが、目の前のゆた兄さんは敵なのだ。私達の敵として現れたのだ。私はどんな事があってもレリックは渡すわけにはいかない。例えゆた兄さんの頼みであっても、私は管理局員なのだから。
「それは出来ません! ゆた兄さん、どうしてレリックを狙うですか! これが何か知っているですか!? 」
「知っている、それはロストロギアだ。俺は興味はない。だが、依頼人の欲しがっている物だ。だから力尽くでも渡して貰うぞ!!! 」
「っ!? 」
その瞬間刀型のデバイスを抜くと、ゆた兄さんは私に斬りかかって来た。私は最後までゆた兄さんを信じていた。ゆた兄さんは何があっても私を傷つけたりなんてしない。いつも私に優しくしてくれるのだと……しかし現実は残酷だ。ゆた兄さんのデバイスは私のすぐ側まで迫っている。ゆた兄さんの瞳を見てもそれは本気なのだと分かった。ゆた兄さんは私を本気で斬るつもりらしい。でも私はゆた兄さんを信じていたが故に防御やシールドを張るつもりはなかった。その為今更間に合わない。私は迫る刃の中、今の状況を否定するようにゆっくりと目を閉じた…………
「ゆた兄さん……どうしてですか…………」
次回もよろしくお願いします。