魔法少女リリカルなのは!?「落ちこぼれの魔導師」   作:ヘルカイザー

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ども〜

ではよろしくお願いします。


第8話《新たな依頼》

「フッ、くっ……っ!? ぐあぁぁぁあああああああああ!? 」

「ゆた様!? 」

 

「うっ……ぐっ……だ、大丈夫。さぁ〜続けてくれ花火」

 

「ゆた様……花火はいくらやっても、ゆた様の想い描く戦闘スタイルにたどり着くとは思えません。それにこんな事続けていたら……ゆた様おかしくなってしまいますよ…………」

 

「普通じゃ……ダメなんだ……激しいでもダメなんだ……僕みたいな落ちこぼれは……命をかけないと! だから花火! 」

 

「はぁ……分かりましたよ。トリック・オブ・ソード10!!! 」

 

これは毎日行っているゆた様のトレーニング。今は私の攻撃がゆた様を直撃した。それは私が魔力で生成した剣。空中で魔力を押し固め、それを相手に向けて射出する技だ。私はこれを絶えずゆた様に放ち、それをゆた様が躱す。だが弾いたり、防御したりするのではない、ひたすら躱すのだ。魔法がまともに使えないゆた様は防御魔法に頼る事ができない。かと言って、相手の攻撃を見切り躱し続ける眼力とセンスもあるわけじゃない。ではゆた様の目的は何か……それは痛覚。それを極限まで身体で慣れさせる。そうする事で相手の攻撃を致命打にならないようにいなす。勿論、それは躱してるわけじゃない。攻撃を受けた瞬間に逸らすという事。このように説明するのは簡単だが私はそんな事が可能だとは思わない。そもそも痛覚を感じた瞬間、普通の人間は動きが鈍るものだ。ゆた様とてそれは例外ではない。こんな事言いたくはないが無駄なトレーニングだ。

 

「花火もう一回だ!!! 」

 

「はぁ……トリック・オブ・ソード10!!! 」

「お兄様ぁ〜ご飯〜」

 

「あ、こらっペル!? 」

「ペル様危ない!? 」

 

私がトリック・オブ・ソード10を放った瞬間、私とゆた様の間にペル様が現れた。ペル様は私の攻撃に気づいておらず、このままでは怪我をさせてしまう。しかし私はもう攻撃を中断できないし、ゆた様も防ぐ手段がない。

 

「ペル!!! 」

 

「ゆた様!? ……え……今の…………」

 

ゆた様はペル様を掴み攻撃を自分が受ける形に身体を入れ替える。するとその時、ゆた様に当たった筈の攻撃がまるですり抜けたようにゆた様を通り過ぎる。最初は躱したのかと思ったが、そうじゃない。よく見るとゆた様に対して攻撃は当たっていたのだ。つまりは攻撃をいなしたのである。しかし今のはたまたまだ。だがもしこれを極めたとすれば、ゆた様の今後にも希望が見えるという事。

 

「お兄様? 」

「大丈夫ペル? 怪我はない? 」

 

「うん、大丈夫〜! それよりお兄様お腹すいたぁ〜! 」

 

「あはは……分かったよ。ご飯にしようか。花火! 今日はここまでだ! 飯にしよう! 」

 

「普通それで済まします? はぁ……本当にゆた様はペル様に甘いんですから…………」

 

こうしてトレーニングを終えた私達はテーブルいっぱいに並べたご飯を食べる。しかし早く食べなければペル様のブラックホールとも言うべき口に全て吸い込まれてしまう。でもこの時私は思うのだ。みんなでテーブルを囲ってご飯を食べている最中、一人ペル様の幸せそうに食べてる姿を眺めているゆた様はただのロリコンなんじゃないかと。しかしここでもまた思うのだ。それならば何故ペル様とそこまで身長も身体つきも変わらない私には構ってくれないのだろうと。私だってゆた様に可愛がって欲しいのだ。でもそんな事言えるわけがない。そんな事を言えば私がまるでゆた様に構って欲しいみたいに思われる。いや、実際構って欲しいのだが、自分から言うのはなんか違う気がする。

 

「あ! ゆた様通信ですよ? 新しい依頼人じゃないですか? 」

 

「ん? ああ、本当だ。ありがと花火! ……はい、便利屋ドロップアウトですが? 」

 

「やぁ〜この間はご苦労だったね? と言うより……店の名前変えた方が良くないかね? それだとあまりに不憫だ」

 

「あんたか……はぁ、大きなお世話だ。それで? 何の用だ? この間の依頼が失敗した事は謝った筈だが? 」

 

「それに関しては良いとこちらも言った筈だがね。お金だって返さなくてもいいと言ったのだが」

「成功していない報酬など貰えない。こちらもプロだ! で? 何の用だと聞いている」

 

通信の相手はこの間のジェイル・スカリエッティという科学者だ。ゆた様は依頼が失敗した事で貰った報酬を全て依頼人に返した。もったいないと私は思うがゆた様はこんな仕事をしているにも関わらず真面目なのだ。成功報酬しか受け取らず、失敗すれば素直に頭を下げる。まるでできるサラリーマンのようだ。

 

「フフ、私は君が欲しい! 」

 

その瞬間ゆた様は有無を言わず通信を切断した。その顔を見ると冷や汗をかいているのか、暑くもないのに変な汗をかいている。そして少し顔が青いし、動揺しているようで息も少し乱れている。でも確かに今の発言は少し気持ち悪いかもしれない。この間の発言といい、そっち気があるのでは? と疑う。少なくてもあの依頼人は危ない人間だ。するとすぐにまた通信が来た。おそらく同じところからだろう。

 

「な、何の用だ」

「酷いじゃないかね……いきなり…………」

 

「アホか!? いきなりはそっちだろ!? 突然男から君が欲しいと言われたら背筋が凍るわ!!! 」

 

「だからそう言う意味じゃない。はぁ……君は思い込みが激しい人間のようだ」

「お前は言葉を選べ!!! 」

 

「ハハッ! もういいだろ、そろそろ本題に入ろうか? デートしてく…………

 

「はぁ……はぁ……はぁ……は、花火? 」

 

「は、はい? 何でしょうかゆた様? 」

「ぼ、僕の貞操は狙われているのか? 」

 

「はい!? ちょっと落ち着いて下さいゆた様! あの依頼人が変態なだけですよ! 大丈夫です! ゆた様は私がこの身を呈して守ります! 」

 

私は右手で拳を作り自分の胸を得意げに叩く。でも今の発言はゆた様のポイントを稼ごうとかそんな邪な意味はない。そう、ゆた様の貞操が危ないのだ。だから私はゆた様を守ろうとしているだけ、決してポイントを稼いで可愛がって貰おうとなど考えていない。するとまた通信がきた。流石に今度は出るのを躊躇するゆた様。しかしいくら放置してもコールが鳴り響くので、諦めたゆた様は通信に出た。

 

「何が目的だ! 」

「だから違うと言っているだろう? 君にこの間のお金を受け取って貰いたい」

 

「それとさっきの発言とどう繋がる!? 」

「フフ、ただ受け取ってくれと言っても君は受け取らないだろう? だから同じ額で君に仕事を頼みたい。私の娘とデートしてくれ。それが仕事だ」

 

「意味が分からん。どうしてそんな事を仕事として依頼する必要がある? まさか無償で俺に金をあげたいだけじゃないだろう? そもそもそんな事をする意味もメリットもない。怪しすぎるんだが? 」

 

「ハハハ! 何、君が気に入ったからうちの娘とお見合いをして欲しいだけだよ。言っただろ? 私は君が欲しい! 息子としてね? 」

 

「……はぁ……断ってもしつこそうだよな、あんた。分かった。受けるよ……けどな? デートしたからってそこからどうなるかなんて分からないからな? そもそもデートした所で俺はお前の息子になんてならない。その子と婚約する気もない! あくまで仕事だ! そこんところ分かってるよな? 」

 

「フフ、勿論だとも! それじゃ……日時はまた連絡する。それと君とデートする私の娘の名前はチンクだ。君の出来る範囲で構わない。楽しませてやってくれ」

 

そう言い残して依頼人は通信を切った。しかし私は心中穏やかじゃない。見ず知らずの女とデートの約束をしたのだ。そもそも会ってもいない女とデートの約束をするなんてゆた様は何を考えているのか。私は残ったご飯を食べながらゆた様と顔を合わせない。そっぽを向いて機嫌が悪いアピールをする。

 

「まったく……あの依頼人と関わってからろくな事がない。なぁ? 花火? ん? 花火? 何? どうしたの? 」

 

「ツーン! ゆた様なんて知りません! 楽しみですね、デート! 」

「いや、あれは仕事だろ? 僕にその気なんてないから。と言うか何でそれで花火が怒るのさ? 」

 

「さぁ〜? 自分で考えればいいじゃないんですか? それよりお客ですよ、お客? さっさと対応してください! 」

 

「もう……何なんだ? 花火の奴……まぁいいか。……いらっしゃい! ご用件……は…………」

 

生活部屋から店へと出て行ったゆた様は言葉を詰まらせた。お客に対してこのような反応をした所を見た事がなかった私は気になってご飯を食べながらゆた様が開けたドアの隙間を見る。するとそこには金髪の黒い執務官服を着た綺麗な女性が見えた。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「やっと……見つけた」

 

「……はぁ……本当、ろくな事がない…………」

「ゆ、ゆた! 」

 

「はぁ……何? 俺を逮捕しに来たのか? と言うかよく俺の店探したな? 」

 

「う、裏ルートで調べ回ったらこの店の話題が多くて……元気そうだね? 」

 

私、フェイトは列車での一件以降、裏で有名な何でも屋を虱潰しに調査した。理由はゆたが現れた際、依頼人と言っていたと聞いたからだ。探すのは苦労すると私は最初に思った。しかしあっさりと見つかった。まさかミッドの中心に店を構えてるなんて思いもしなかったが、裏では結構有名な店だった。どうでもいい仕事から汚い仕事までなんでもこなし、そのくせ店の店主は真面目。どの筋からも信用が高い便利屋。

 

「帰ってくれ! 」

「待ってよ!? どうして私達の前からいなくなったの? みんな心配してたんだよ? 確かに……私達がゆたにしてしまった事は悪いと思ってる……でも!? ……ゆた? 」

 

「ふふ……ははは……本当に……なのはもお前も何も分かってない。大体! 必死になって俺の事を止めたお前のお腹に拳を入れた相手をよくもまぁ〜探す気になったな? 」

 

「……探すよ……だってゆたは大事な友達だから!」

 

「はぁ……もういい。で? どうしよっての? この間の一件だって公務執行妨害位にはなるだろ? まさかお友達のよしみでお咎めなしってことはないよな? 」

 

「それは…………」

 

私はなんて言っていいか分からなくなった。私はゆたを逮捕しに来たわけじゃない。話を聞きに来ただけだ。何故あんな事をしたのか。一体誰からの依頼だったのか。そして……今私達の事をどう思っているのかを…………

ゆたが管理局をクビになってからゆたは変わってしまった。言葉遣いも態度も。そして私達に対する接し方も。しかし私はどこかまだ残ってる気がした。昔のゆたが。私達を嫌う感情のその僅かな隙間から見え隠れするゆたの優しさ、それを私は感じる。あの列車での一件だってそうだ。私達が嫌いならどうしてリインを守ったのか。レリックだけを目的にしているならリインを見捨ててレリックを奪えばいい。そうすればなのはも間に合わずにゆたの目的は済んだはずだ。

 

「お兄様〜お腹いっぱいになった! ごちそうさまでした! 」

 

「ん? そっか、お粗末様。ペル? 今僕お話中だから少し花火といてくれる? 」

 

「うん! 分かった〜」

 

「ゆた……その子この間の…………」

 

あの時なのはのバインドを素手で砕いた子だ。私はその場にいなかったから知らないが、記録映像で見ている。しかしこの子がそんな事を出来るとは到底思えない。この子は一体何者なのか? そう思った私は念の為に魔力探査用のプログラムをバルディッシュを通してサーチしてみることにした。でもその時、私が何かを操作している事に気付いたゆたは突然、操作している私の手を掴み上に上げる。

 

「つっ……痛い……痛いよゆた…………」

 

「……フェイト……今何をしてた? 」

 

「な、何って……その子の魔力データを「やめろ……」ゆ、ゆた? 」

 

「やめろって言ったんだ!!! この子に対して指一本! いや、情報一つ、調べてみろ!! 公開してみろ!!! 俺はお前を許さないぞ!!! 」

 

私はゆたがこんなに怒鳴る姿を見たことがない。純粋な怒り。しかもそれが私に対して向けられている。それが何よりショックで、自分がこれ以上ゆたに嫌われたくないと思ってる為、余計に動揺した。けど今ゆたが守っている人が誰かというのは感じた。この子だ。ゆたは何よりもこの子を守りたいと思っている。でなければたかが魔力サーチぐらいでここまで怒らない筈だ。

そしてしばらくしてゆたは我に返ったのか、私の手をそっと離してくれた。でも後ろを向いてこちらを向いてくれない。どうしてこう空回りしてしまうのか。私はただ、ゆたと仲直りしたいだけなのに。どうしてもそれが上手くいかない。

 

「ゆ、ゆた……ごめんね? 私……」

「帰れ!!! 」

 

「あ……うん。また……来てもいい? 」

「…………」

 

「そうだよね……ごめんね」

「はぁ……ありがとうございました、またのお越しをお待ちしております! 」

 

「ゆた……うん! ありがとう、ゆた! 」

 

ゆたはやっぱり優しい。どこか人を突き放し続けられないそう言う人だ。私は店を出て行く前に改めてそう感じた。

 

 




次回もよろしくお願いします。
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