魔法少女リリカルなのは!?「落ちこぼれの魔導師」 作:ヘルカイザー
ではよろしくお願いします。
「花火? 留守番頼んだ。ペルの事お願い。店は閉めちゃっていいから」
「ふん……いいですね、楽しそうで? ああ〜さぞかし楽しみなんでしょうね? デート! 」
「なぁ〜花火? これは仕事だって言っただろ? 別にデートがしたいわけじゃない」
「お兄様どこ行くの? 」
「 ちょっとお出かけしてくるんだ。悪いけど花火とお留守番しててくれるかな? ちゃんとお土産買ってきてあげるからね? 」
「ペル様にはお土産の約束をして花火には何もないんですね? あ〜あ、花火はどうせゆた様のデバイスですよ、道具ですよ。物ですよ。使えないガラクタですよ」
「誰もそんな事言ってないだろ花火? 勿論花火にもお土産買ってくるって。と言うか本当にどうしたんだよこの間から」
僕は今日、先日依頼されたデートに行く。勿論武装など持たない。何故ならこれはただのデートだ。武器などいらない。だから花火を連れていけないのだ。しかし花火はこの間からどうも機嫌が悪い。理由を聞いても教えてくれないのだ。ただの仕事はしてくれるので僕もどうすればいいのか分からずズルズルと今日まで来てしまった。
「それじゃ行って来るから、ペルの事頼んだよ花火? 」
「はい、ペル様の事は任せてください。ゆた様は思う存分、『デート』を楽しんでくださいね? さぁ〜ペル様? 『デートとなんか』しに行くゆた様なんかほっといて花火と遊びましょう? きっと『デートなんか』より楽しいですよ? あれ? どうしたんですかゆた様? 早く『デートなんか』に行けばいいじゃないですか? 楽しみなんですよね? 『デート』? どうぞ行ってらっしゃいませ『デート』」
「花火……行きズラいよ…………」
「お兄様行ってらっしゃい! 」
「う、うん……行ってきます…………」
こうして何とも言えない気分で家を出る事になってしまった僕は待ち合わせ場所であるミッドのとある公園へと赴いた。しかしこれからデートする相手の情報はチンクと言う名前しか分からない。だから相手を見つけられないのだ。連絡しようにも連絡先が分からない。本当にあの変態は何を考えているのか。するとその時だった。銀髪の背の低い、見た目11歳くらいの子がこちらへと走ってきた。よく見ると右眼には眼帯をしている。まさかこの子ではないだろうと僕は思った。しかし次の瞬間、僕は否が応でもこの子があの変態の娘であると思い知らされる。一体何を考えてか、その子は普通の走りから全速力になり僕の後ろが噴水なのにも関わらず僕へと突っ込んできた。そして二人して噴水の中に倒れ、水に出しになった。早く水から出たい僕だが銀髪のこの子が僕を押し倒す形でいる為動くことができない。
「え、え〜と……君がチンクさん? 」
「はい、私がそのチンクですよ? 貴方が瀀さんですね?お会い出来て嬉しいです。それで……どうですか? 」
「ど、どうって何が? 」
「ググッと来ません? 私を好きになりませんか? 」
「い、いや……好きと言う以前に突然押し倒された上、全身びしょびしょにされたんだけど……これでどう好感を持てと? 」
「うむ……おかしいな? こうやって押し倒して可愛子振ればOKだとドクターが言っていたのだが……どうやら間違っていたようだ」
「あの変態の入れ知恵か!? それ絶対間違ってるから!? と言うか猫被りすぎだろ!? バラすの早すぎ!? もう少し頑張ろうよ!? 」
ここまでいきなりの展開だとこの先が不安なのだが、取り合いず僕は様子を見ることにした。だが服がびしょびしょのままだとどこへも行けない。だから僕達は服を買って着替える事にした。しかし僕らが入った服屋でこの子はまたおかしな事を言ってきたのだ。
「瀀、お会計は任せろ! ドクターからカードを貰っている」
「カード? クレジットか何かか? 変態のくせに娘には良いもの渡すんだな? 」
「いや、ハッキングカードだ。これを使えば……お、おい? どうしたん……だ? 」
「すいません会計は一緒でお願いします」
「かしこまりました! 」
僕はこの子の代わりに会計を済ませた。しかしそれは当たり前だ。ハッキングカードなどと言うふざけた代物を娘に持たせて一体何を考えているのやら。普通に犯罪だ。でもあの変態なら犯罪など何とも思わない事も納得だが、娘を巻き込むのはどうかと思う。見た所、常識を知らないだけか、それ以外の選択肢が分からないのか僕がした行為を不思議そうにしていた。そしてお金は後で払うと言ってくれる辺り、とても悪い子には見えない。
「それじゃ……映画でも行く? 」
「映画? 映画とは何だ? 」
映画を知らない……あの変態は娘には普段どんな生活をさせているのだろうか。でもそれ以前に何故デートの事を何も知らないこの子を送り込んだのか。もしや本当にお見合いさせたいだけなのかと僕は考える。しかしだったら普通の常識やお金の払い方ぐらい教えるべきだ。それでもしそれで捕まったらデートどころじゃない。僕は余計あの変態の考えが読めない、そう思った。そして映画だが取り合いずどんな物か知りたいと目を輝かせて詰め寄って来るので行く事にした。だが行ったら行ったでそれは大変だった。映画では色々な映画がやっている。僕はどれでもいいのだがこの子がどれか迷ってしまっていた。それぞれのポスターを行ったり来たりしていつまで経っても決まらない。普通は自分の趣味で行くものだからそこまで迷わない筈だが、この子は全て新鮮なのだろう。
「うっ……ぐすっ、どれにすればいい…………」
「はぁ。じゃ、じゃ……全部見る? 」
「え……い、いいのか? 」
「ま、まぁ〜僕は構わないよ? ただ……それだけで今日1日終わるけどね」
結局の所、そこでやっていた映画を全て網羅した。流石の僕も見たい映画じゃない物まで見ては疲れてしまう。しかしせっかくのデートだ。この子には楽しんでもらおうと疲れている素振りはせずに隠した。僕は疲れていてもこの子はまだ元気が有り余っているようだ。その証拠に残された時間いっぱいまでいく先々の店に連行された。けどそれはそれで楽しかったのは事実。女の子と買い物なんて、なのちゃんの時以来の事だ。
「もう終わりか……楽しい時間はあっと言う間だな? 瀀? 私が瀀を名前で呼んでいるのだ、瀀も名前で呼んでくれ。お前との時間は有意義であった。こんな楽しい時間は生まれて初めてだ。だから……な? 」
「……まぁ〜いっか。分かったよチンク」
「ああ」
「それじゃそろそろ、っ!? え、な、何!? ちょっ、どわっ!? 」
そろそろお別れしようとした時、チンクはまた僕を押し倒した。朝と同じように。そしてその顔は恥ずかしがっているのか真っ赤になっている。僕は何事かと思ったが慣れない動きと仕草で何をしようとしているのか分かった。僕にキスをする気なのだ。だから僕は思った。絶対に変態の入れ知恵だと。
「ストップ! 」
「な、何故だ……わ、私とは嫌なのか? 」
「嫌、嫌じゃない以前におかしい。あの変態に言われたの? 」
「ド、ドクターが……帰る前に押し倒してキスすれば簡単に堕ちると……もしかしてち、違ったのか!? 私は恥ずかしいのを我慢してたんだぞ!? 」
「はぁ……やっぱりね。あの変態は僕をどうしたいんだ全く。あのさ。こういう事は本当に好きになった人としないとダメだよ? チンクと僕は今日知り合ったばかりだ。それなのにいきなりそんな関係にはならないよ。チンクだって僕の事好きじゃないでしょ? だからさ、大事にしないと。チンクの初めては、ね? 」
「……う、うん…………」
僕がそう言うとチンクは俯いて頷いた。その顔はさっきより赤い気がするがよっぽど恥ずかしかったのだろう。しかしこれで僕とそんな関係になるなんて考えは起きない筈だ。何故なら全ての元凶はあの変態、この子の意志はない。
「な、なぁ……瀀? 」
「ん? 何? チンク? 」
「そ、その……また……デートしてくれないか? 」
「え? ……ま、まぁ……僕でいいなら別に構わないけど……どうして? 」
「た、楽しかった! 今はそれ以外の理由が分からない!? 」
「う、うん……そんなに興奮しなくても大丈夫だよ……分かったから」
何故か成り行きで次もデートする事になってしまった。けど今日できなかった事をその時にしてあげればいいと思った。それはただ純粋にチンクに楽しい事をもっと知って欲しいかったのだ。
そしてその後、チンクと別れた僕は自分の家へと帰ったが、誰も出迎えてくれない。もう遅いので寝たのかと思えば寝室に誰もいないのだ。僕は首をかしげ、生活空間や店を歩き回る。すると花火の部屋に明かりがついていた。だから僕はそっと部屋の中を覗く。しかしそこで見たのはペルにしゃぶられてる花火の姿だった。
「何……してるの? 」
「ゆた様!? ちょ、丁度良いところに!? た、助けて下さい!? 」
「お腹すいた〜、お腹すいたの〜! お腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたぁ〜!!! 」
「はぁ〜……ペルにご飯食べさせてなかったの? 」
「食べさせましたよ!? 食べさせたに決まってるじゃないですか!? でも私のご飯じゃペル様満足してくれないんですよ!? あ、ちょっ!? 嫌!? ゆた様ぁ……た、助けてぇ……ひゃんっ!? いやぁ……もう半分入ってますよぁ…………」
ペルの口には花火の身体が半分、丁度下半身がズッポリ入ってしまう位呑み込まれている。何度見ても不思議な光景だ。ペルの口は大きな物を食べられるように広がる。しかしそれが普通の許容量を超えて開く為、花火の身体など丸呑みに出来るのだ。当然食べようと思えば僕も例外ではない。しかし最近は僕の事を食べると言わなくなった気がする。多分忘れているのだろう。ペルは美味しいものを食べるだけで幸せそうだ。だから僕よりも美味しいものがいいのだろう。
「ペル? 僕も少しお腹が空いたから何か作るよ。だから花火の事は吐き出そうね? 」
「ふぁい……おにひひゃま。ぺ! 」
「きゃっ!? うう〜……痛いです。もう、ペル様ったら……花火は美味しくも何ともありませんよ? 」
「え? 花火お姉様は美味しいよ? 私花火お姉様大好きだもん。だから一回食べたい」
「むぅ〜、一回食べられたら終わりですよ…………」
本当に仲がいい二人だと僕は思う。見ているだけで本当の姉妹のようだ。本当はこんな時間がいつまでも続けばいい、そう思いながらペルを見る。でもいつまでもこのままではいられない。必ずどこかで終わりが来る。ペルは……母親の所に帰らなければいけないのだから。
「お兄様美味しい! やっぱりお兄様のご飯が一番好き! 」
「そう? ありがとうペル。僕なんかのご飯で良ければいくらでも食べさせてあげるから」
「うん! でも……早くお兄様も食べたいな? 」
久々に聞いたその言葉、無邪気な瞳の奥に光る僕を食べたいと言う欲求。今となっては恐怖を僕は感じない。ペルが僕を食べたくて我慢できなくなった時、僕はいつでも自分を食べさせてあげるつもりだ。生になど未練はない。僕はもう……十分に幸せな時間をこの子から貰った。数年……しかしそれで僕の心は十分に溶かされている。
丁度数年前、なのちゃんやフェイちゃんに八つ当たりの如く手を出したあの大会。最初は会った事すら予想外、でも僕は試したくなってしまったのだ。僕の描いた戦い方がどこまでなのちゃん達に通用するのかを。けど……実際やってみて分かった。僕の戦い方など所詮は騙し討ちの延長線上にあるようなもの。自分への攻撃をわざと受け、相手に直撃の手応えを与えたその一瞬の隙を突く。今の僕が勝つ為にはそれしかない。
あの列車でもそうだ。僕にバインドを避けられる身体能力も動体視力もありはしない。かと言ってバインドを砕く力もない。だから僕はあの時、なのちゃんの攻撃瞬間を待った。攻撃がヒットした瞬間その攻撃でバインドが消滅するのを。だけどなのちゃんがあれ以上攻撃なんてする筈がない、それを僕は分かっていた筈なのに。そうなのだ。僕は所詮、なのちゃん達の事を敵としか判断していない。なのちゃん達はこんなにも僕を心配してくれていると言うのにだ。
でもだとしたら、僕はなのちゃん達から距離を置いて正解だったのかもしれない。こんなにも身勝手で、友達だったみんなを平気で傷つけ、その才能に嫉妬すらし始める。一体どうしてなのだろうか……僕は最初、才能なんて人それぞれだと思っていた。にも関わらず、今の僕は相手との力の差を比べられ、見下される事へ異常なまでの嫌悪感を抱くようになった。見下す奴らをこの手で倒す。そんな馬鹿な事をペルとあって数年前までは思っていたしやっていた。だけどもう……そんな事を進んでやる気はない。確かに見下されるのは今でも嫌だ。怖い。まるでみんなから迫害を受けているようなそんな感覚を覚える。でもそれ以上に今の僕を駆り立てるのはペルを……花火を守りたい。そんな感情だ。この二人の今のこの家族を守りたい……だからその為にも、僕は強くなる。なりたいではダメだ、なるんだ。僕はもう自分の劣等感は否定しない。全て認める。それが誰に対しての物であったとしてもだ。もしそれで僕を嫌うならなら嫌えばいい。けど……この二人だけは……守ってみせる。それは譲らないし、その為になら……誰かを傷つけても構わない。それが例えなのちゃん達でもだ。僕は弱い……誰かを傷つけなければ何も守れない。
「お兄様? 今日は一緒に寝てもいい? 」
「あはは、勿論いいよ? じゃ〜今日は一緒に寝ようか? 」
「本当? わぁ〜い!」
「む〜………」
「うっ……な、なんだよ花火……そんなにむくれて…………」
「べ、別に……何でもないですよ〜だ。まったく、ゆた様は……ペル様ばっかり…………」
「……はぁ……なんだ……そういう事か。分かったよ花火? ごめんね、気がつかなかったよ」
「え? ゆた様? も、もしかして……「はい! 」はい……これは……なんですか? 」
「何って……花火もペルの食べたご飯食べたかったんでしょう? ん? 花……火? 」
「ゆ、ゆ……ゆた様の馬鹿! もう知りません!! 」
僕の身勝手でなのちゃん達と関係が悪くなっている今でもこれだけは思うのだ。もし……なのちゃん達と一緒に仲良くいられた世界があったなら……それはどんなに楽しい世界なのだろうかと…………
次回もよろしくお願いします。