やはりこの部活は間違っていない。   作:コリキの森

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やはり俺が彼を雑に扱うことは間違っていない。

 ビラ配りを中断して、俺たちは奉仕部へと向けて歩いている。先頭にいるのは比企谷君だ。どうやら彼が何か思いついたようで今からそれを奉仕部で話すとのこと。

 

「ヒッキー、別に奉仕部で話さなくてもよくない?ビラ配りしながらだって話すこともできるよ」

「いや、これから話す内容は俺たちだけではどうなるかわからんからな。どうせなら全員揃ったとこで話した方が手間も省ける」

「その口ぶりからしてもう誰かを呼んでいるのかしら?」

「ああ、もう連絡はついてある」

 

 話しているうちに奉仕部が見えてきた。だが奉仕部の前で見覚えのない人が仁王立ちしている。なんか暑そうなコートを着ており、見てるだけでこっちが暑くなりそうだ。

 そのコートを着た人はこっちに気付くと怒るように話しかけてきた。

 

「八幡っ!!待ちわびたぞ!奉仕部に来たはいいが扉が開いておらぬではないかっ!

 人を呼んでおいてこの仕打ち。さすがの海より広い我の心も、ここらが我慢の限界だぞ!」

「思ったより早く来たな。今からあけるから待ってろ」

 

 比企谷君は慣れているようで、彼を軽くいなしている。

 そして雪ノ下さんが扉を開け全員が入ったところでコートをきた彼が話し始める。

 

「人を呼んでおいてこの仕打ち。さすがの海より広い我の心も、ここらが我慢の限界だぞ!」

「二回も言わなくていいだろ。呼んでおいて開けて無かったのは悪かったよ」

「やはり、あなたが呼んだのね。では悪いけど、私たちは今から話すことがあるので帰してちょうだい」

「おい、お前わかって言ってるだろ。こいつはこれからの話に必要なやつだ」

「えー、中二に何話すの?話しても意味あるの?」

「お前らほんとこいつに容赦ないのな」

 

 このコートの彼は奉仕部ではだいぶぞんざいな扱いを受けているようだ。女子たちからあれこれいわれ見る見るうちに萎んでいった。というか彼は誰なんだ。

 

「あの、その人は誰?もしかして比企谷君の友達?それとも奉仕部の部員?」

「いえ、違うわ」「いや、違うし」「いや、違うな」

「八幡!!我とお主には時空を超えた絆で結ばれた、YU-JYOがあるはずだろ!!」

「いや、ねぇよそんなもの」

「そんなことでは満足できないぞ!ガッチャ!」

「あーもういいや。こいつは材木座だ。俺の知り合いで文芸部に入ってもらおうと思っている」

 

 ここで比企谷君がさらっと、とんでもないことを言ってきた。彼を文芸部に?

 

「えっ?そうなの?我、そんなこと聞いてないんだけど」

「急に素に戻るなよ。お前なら条件を満たしていると思ってな」

「確かに彼は本を読んでいるみたいだし、一応、執筆活動らしきものもしているわね。人格は置いておくとして向いているとも言えるのかしら」

 

 そうなのか。まあ入ってくれるならありがたいし、さすがに性格までにいちゃもん付けていたら集まるものも集まらないしな。

 納得しかけていると由比ヶ浜さんが待ったをかけた。

 

「ちょっと待ってよ!あたしが誘った時中二に断われたんだけど!」

「え?そうなの?お前一回断ってたのか」

「そうだよ!昨日、昼休みに勧誘したときに会ったんだけどなんかブツブツ言って行っちゃったし」

「我は女子供と戯れるような軟派ことはしない高貴な存在なのだ!そっ、それに女子がいる部活とか恥ずかしいし耐えられないし我そんなんのやだし…」

 

 理由がけっこう残念だった。後者の方が本音だろうな。

 

「それなら大丈夫だ材木座。お前は勘違いしているようだが、由比ヶ浜は文芸部部員じゃない。文芸部は今そこにいる岡本だけだ」

「それは真か?ふむぅ~、それなら入ってやらんでもないが、我も忙しいしな~それに知らない人がいる 部活に入るとか気まずさマックスハートでプリティでキュアキュアだしな~入りたくないな~」

 

 どうやら材木座君はあまり入る気なさそうだ。てか女子いなくても入りたくないならもうどうしようもないんじゃないのかな。廃部阻止に一歩前進したと思ったらあまり進まずどうしようか困っていると比企谷君がメリットがあると言った。

 

「確かに、お前の言いたいこともわかるが文芸部に入ることでお前が得することがいくつかあるぞ」

「得することとな。ふんっ、面白い。我を満足させるなら入ることを考えてやらんでもない」

 

急に話聞く態勢になった。まあいきなり部活に入れと言われてもそれなりに旨みがないと入る気も起きないだろう。しかしなんか得することとかあるかな?あるとしても部費を使って好きな本が買えるということぐらいかな。その部費も少ないものだけど。

 すると比企谷君はメリットの内容を説明し始めた。

 

「お前、まだラノベ書いているんだろう。たまにメールで設定なんか送ってくるぐらいだしな」

「左様。我は我の存在を世界に知らしめるため日夜研鑽をつんでいる所存だ。そのためにも八幡、我のストーリーがより輝くようにお主の意見を求めておる。ていうか前に送ったメールの返事まだ返ってきてないんだけど…シカトしてるわけではないよねっ!ちゃんと読んでじっくり考えてるだけだよねっ!?」

 

 メールを無視されて不安になった恋人みたいなこと言い始めた。しかしこの人はなんか情緒不安定だね。なんか見ていてこっちまで悲しい気分になってくる。

 

「ああ、しっかり考えているがどうにもお前を傷つけずに済む上手い言い方が思いつかなくてな。そのまま放置してある。だが安心しろ。もし文芸部に入ればお前の書いたものを読んでくれるやつが増えるぞ。そこにいる岡本がそうだ」

「え?俺!?……まあ、文芸部は書いた作品を読んでそれに対して意見や感想を言い合うということもあるけど…」

 

 比企谷君が目で訴えてくる。材木座君を部員に入れるためにどうやら必要な事みたいだ。読んだものに感想言うくらいだったら十分できるし、何よりこっちがお願いする側だ。これくらいは喜んでしなくちゃいけないだろう。

 

「うん。もし材木座君が入ってくれるなら俺はそれを読むよ。どんなものなのか気になるしね!」

 

 少し声を強めにして材木座君に訴えかけてみる。すると心が傾きかけているようでどっちにしようか考えているようだった。

 

「う~ん、それは喜ばしいことだがな~~我を動かすにはそれだけではまだ足りぬというか~~もうちょっと何か我の魂を揺さぶる何かが欲しいな~無いのかな~」

 

 チラッチラッとこっちを物欲しそうな目で見てくる。ふぅ、少しイラッっときたが我慢してさらに何かないか考えてみる。

 

「あと部員になると部費を使って好きな本とか買えるよ。そんなに多く使えないけど、一ヶ月に買える本が増えるとか得だと思うよ?」

 

 まだ言っていなかったメリットをとりあえず提示してみる。というかこれ以外思いつかなかった。

 

「ふんっ!金で我を買おうなどと薄汚い奴め。恥を知れ!しかし貰えるものは貰っておこう。金に貴賤はないからな!」

 

 なんか俺がすごい悪いやつみたいになった。金で解決するやつは許せないが金を貰うということは別に抵抗はないみたいだ。言ってることの一つ一つは理解できるが、それが繋がると腑に落ちない………うん、もう材木座君は無理なんじゃないかな。なんかそんな気がしてきた。俺が諦めかけたその時、比企谷君が真剣な声で材木座君に話しかける。

 

「材木座、まだ最後のメリットがあるぞ。それはお前が部員になれば、部室を自由に使うことができるということだ」

 

 それメリットに入れていいのかな?確かに部室使うことには何の問題もないけどそんなに嬉しいのだろうか。しかし材木座君は何かに気付いたようで目を見開いていた。

 

「そ、それはいつでも使えるのか?」

「授業中はさすがに駄目だけど、休み時間や放課後ならいいはずだよ。今、俺は放課後しか使ってないけど」

「材木座ならこれがどれだけありがたいかわかるよな。俺たちボッチという人間なら特にな」

「ぬふ、ふ、ふ、ふぅーーふぁーーーふぁっふぁああ!!よかろう!我は決めたぞ!

 貴様の軍門に力を貸してやろう。光栄に思うがよいっっ!!」

「えっ?何で?部室使えるのがそんなによかったの!?」

「説明するとだな、昼休み飯食う所が欲しかったんだよ。あと部室にいれば一人でいることも目立たないしな」

 

 教室で食えばいいじゃんと言おうと思ったが、どうやらこれで入ってくれるらしいからそれに水を差すことは言わないでおこう。さっきボッチて言ってたしそのことも関わっているんだろう。ナイーブな話題には触れないでおく。

 しかし比企谷君は俺たちと言った。比企谷君てぼっちなの?そのわりには奉仕部に入っているし、そんな感じに見えなかったんだけど。

 そして話にケリがついたところで雪ノ下さんが話しかけてくる。

 

「話は終わったかしら」

「ああ、これで一人確保だ。てかなんでお前本読んでんの?途中で飽きて暇つぶしてんじゃねぇよ」

「彼を勧誘しようと考えたのはあなたのはずよ。それならあなたが責任を持って説得するべきだわ。それに私たちでは彼とは話にならないもの」

「いや、間違ってないけど、興味無くされるのもなんか釈然としねえな……」

「まーまー、いいじゃん。まるく収まったんだし。それにあたしたちが会話に入ったら余計ややこしくなってたんじゃない?」

「由比ヶ浜に正論言われるとなんか腑に落ちないな。てかお前も携帯いじってんじゃねぇよ」

「だって暇だし。それと中二の話聞いてるとなんかイラッとくる。あとキモい」

 

 雪ノ下さんと由比ヶ浜は話の途中から椅子に座ってそれぞれ暇を潰していた。とりあえず立ちっぱだった俺たちも椅子に座る。俺の位置するところは雪ノ下さんから一番遠い、比企谷君の隣だ。

 

「それで、我一体どうすればいいのだ?今にでも我は契約を済ませ、文芸部の一員となりたいのだがな」

「あー、材木座一応確認しときたいが、お前文芸部に入るつもりだよな?」

「愚問!」

 

 すると比企谷君はバツが悪そうな顔しながら言った。

 

「もし、さっき言ったメリットの部室が使えないとなればどうする?」

「愚問!」

「いや、どっちだよ。まあ入らないこととして進めるが、そうなるかもしれない」

「何だお前は!言うことをコロコロ変えおってそれでも男か!」

「お前にだけはいわれたくねぇよ…。部室が使えなかった場合があるから少し補足のメリットを言っておこうと思ってな」

「まだ、我が得することがあるのか?早くっ!早くっ!」

 

 もうメリットなんか無いと思っていたので吃驚している。よくもまあこんなに思いつくものだ。

 それにしても部室が使えなくなるの?気になることが出てきたな、後で聞いてみるか。

 話が材木座君中心に変わると女子はまた携帯やら本やらを触り始めた。なんか徹底してるな。

 俺がある意味感心していると比企谷君が話し始めた。

 

「メリットというかまだ確定していない先の話だが、今は一人しかいない文芸部だがこれから人が増えるかもしれない。まあ後輩とかな。そうするとお前の作品を読む人が増える」

「それは最初に言った事と変わらぬではないのか?」

「本当にそう思うか?前に奉仕部に持ってきた時を思い出してみろ。散々な評価だったろ。だが後輩ならそんなことは強く言えないだろう。きっとお前をボロクソに言うまではしないと思うぜ」

「あの時、我、ほんと、つらかった…」

 

 材木座君が昔を思い出し、俯きながら震えだした。どんだけ酷評したの!?喋り方カタコトになってるし!奉仕部は材木座君に恨みでもあるの!?

 そして比企谷君は笑顔で続ける。しかし、なんか悪い笑顔だな。

 

「そんなこと文芸部に入れば起きないだろうな。雪ノ下の他に人を傷つけることに関して能力の高い人間はそうそういないだろう。こいつ以上の人間が入ってくることは無いと保証してやる」

「なんだか酷い言われようね。それにあれは思ったことを言ったまでだけなのだけれど」

「それなんの弁明にもなって無いことに気付いてるのか?

 まあだから大丈夫だというわけだ。それに後から入ってきた人間に対して

 お前は先輩という形になるからな。人より優位に立てるぞ」

 

 そういってまだ続ける比企谷君。話しているときに気が付いたんだけど、なんか後輩が入ること前提だな。可能性は低いが、三年生や二年生がこれから入ることもありえるんだけど…。だがそれをうまく誘導してしていると思う。材木座君は信じきっているみたいだし。なんか騙しているような形になってきているな。さすがに止めた方がいいかな。もし材木座君が入って問題が起きたら何言われるかわからないし。

 俺が比企谷君の考えに修正をかけようと思った時

 

「それに新しく入った人が気に入らなかったら辞めてしまえばいい」

「それありなの?」

「ああ、人数的には変わりはないだろ。誰か新しく入ってきて材木座が抜けたとしてもプラマイ0だ」

「それなら止めても特に問題はないし、文句もないけど…」

 

 それでいいのか?う~ん、さすがにそれを短期間で何度も繰り返すと何か言われるだろうが2~3回なら許されるかもしれない。一応、先生の言った人数は保たれる。

 

「これまでのことをまとめて考えると材木座、お前にとっても悪いことではないと思うが、どうだ?」

「ぬむぅ~、確かに聞けば聞くほどいい条件のように思える。止めてもいいというのは魅力的だな。特に我は何か責任を感じる必要も無い。実に気楽で自由だ。そのような場所なら我も輝ける」

 

 そこに魅力をかんじるのか…もう入ってくれるなら何でもいいや。実際、材木座君にとやかく言うつもりは無いしね。

 よし、話はまとまったみたいだし今のうちに聞いておこう。

 

「あのさ、さっき言ってた部室が使えないかもてどういうこと?」

「ああ、それだがな―」

 

 話しかけているときに扉が勢いよく開けられた。誰かと思いそちらを向くと平塚先生だった。

 

「先生ノックを―」

「すまんすまん、忘れてたな」

 

 先生は悪びれた様子もなく雪ノ下さんに返事をし、比企谷君の方を向いた。

 

「それで比企谷。話というのはなんだ?」

「文芸部のことについてです。確認したいことがいくつかあります。

 岡本さっきの質問だがこれからの話次第だ。あと材木座どさくさに紛れて帰ろうとすんな。お前もこの話に関わってくんだぞ」

「聞いておらんぞ!!それになんか話が長くなりそうだし我いる意味なくなーい」

「いいから座って聞いとけなるべく手短に済ませる」

 

 俺はさっきの答えをいったん保留にする。どっちかわからないと言っていたのでおそらく平塚先生の回答で変わってくるのだろう。

 あと材木座君はちょっと自由すぎない?文芸部に入ることになったら苦労する気しか感じないんだけど。なんか雑に扱われるのも仕方ない気がしてきた。

 

「それで、聞きたいこととは一体なんだ?」

 

 平塚先生が比企谷君に問う。俺はこれまで何も出来ていないが、すこしでもフォローできる部分があればしようと思い、姿勢を正して話に集中した。周りを見ればみんな話を聞く体制に入っている。いや材木座君はそうでもないみたいだ。なんか顔にはやく終わってほしいな~と書かれていてもおかしくないくらいつまらなそうな顔をしている。

 それを見なかったことにして、これから始まる話がいい形でまとまるように願いながら比企谷君を見る。彼は一呼吸おいて口を開いた。さてどうなることやら。

 

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