ISin時雨&ザフィーラ&アルフ   作:鎌鼬

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ミカド・リッターVS織斑一夏、不知火時雨VSセシリア・オルコット

 

 

「(あ~…………もうダメ、指一本も動かない)」

 

 

殴り合いを終えて力尽き、救護班によってビットに帰ってきた秋羅はすぐにベンチに倒れた。持てる力を出しきり、残りカスまでも絞り出してその結果は引き分け。だが秋羅の中にあるのは出し切ったという充実感だけだった。

 

 

「織斑兄」

 

 

寝ている秋羅の側に織斑千冬が近づいてきた。体を起こせるだけの体力も喋るだけの気力も残っていない秋羅は寝たままで口を動かすことも出来ない。その態度が気に入らなかったのか、千冬はどこからか取り出した出席簿を振り上げーーーーーーーーーー

 

 

「何やろうとしているのさ」

 

 

後ろから現れた時雨に出席簿を取り上げられた。

 

 

「何を?見てわからんのか?無様な試合をしていた馬鹿者に罰を与えようとしただけだ」

「馬鹿者はお前だよ。あれのどこか無様な試合だ?観客は沸き立ち、本人たちはすべてを出し切った良い試合だったじゃないか。お前がくれてやるのは罰じゃなくて賛辞だよ」

「あんなものISを使っていなくとも出来る」

「一週間前までまともにISを使ってなかった奴に何を求めてるんだか」

「私の弟なら出来るはずだ」

「…………そういうこと」

 

 

千冬の返事を聞いて何かを分かったのか時雨は取り上げた出席簿を投げた。

 

 

「さて…………織斑の弟の方、次はお前の試合だぞ?ミカドは用意できているそうだ。精々無様な試合をしてくれるなよ?」

「織斑君!!織斑君!!やっと到着しました!!」

 

 

時雨が見下した眼で織斑一夏に発破をかけると同時に山田先生が駆け込んでくる。どうやらここで一夏の専用機が届いたようだ。専用機には訓練機とは違い、使用者専用の物となるので細々とした作業が最短でも三十分ほど必要になる。その事を分かっていた時雨はミカドに通信でこの事を伝えようとしたがーーーーーーーーーー

 

 

「アリーナの使用できる時間は限られている。慣らし運転させておきたいところだがぶっつけ本番でものにしろ」

「この程度の障害、男子たる者軽く乗り越えて見せろ。一夏」

「…………は?」

 

 

千冬とその場にいた篠ノ之箒の発言を聞き、思わず持っていた携帯電話を落としそうになる。出来上がったばかりの専用機は初期設定(フォーマット)のままで、本当の意味で専用機とは言えない。一次移行(ファーストシフト)をして初めて専用機と呼べる機体になるのだ。だというのにアリーナの使用時間が限られているからという理由で初期設定(ファーストシフト)のままで行かせるという発言が信じられなかったのだ。

 

 

「(舐めすぎだろ…………それと御愁傷様)」

 

 

時雨は呆れながらも内心で一夏に合掌をする。ミカドのことを知らない者たちからすればIS初心者同士の対決に見えるだろうがミカドは軍属で、甘粕工業にてIS のことを学んでいる。単純な実力なら…………国家代表に届くほどだ。

 

 

結果の分かりきった試合を映しているモニターを、時雨は秋羅が倒れているベンチの隣に立って眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、出てきたな…………じゃ、行ってくる」

「おう!!頑張ってこい!!」

 

 

時雨がいるビットとは反対のビットで、ミカドはヴィータからの激励を受けて首にかけていた待機状態のISを出した。

 

 

「…………行くぞ、『HELLSING 』(ヘルシング)

 

 

呟きと共に、ミカドのISが展開される。色は黒に近い血を思わせるような紅。極力無駄を削ぎ落としたように思える細身の機体は通常のISよりも一回り小さかった。

 

 

ヘルシングを起動させたミカドはカタパルトの上に乗り、アリーナにへと飛び出す。すると中には白いISを纏ってスラスターで飛行している織斑一夏の姿があった。

 

 

「(聞いた話じゃまともにISを動かしたのは二度目のはずなのによく動かせる)」

 

 

一夏は入学前に試験として試験官との模擬戦をしたことがあるという情報はミカドも耳にしていた。秋羅や孝太、時雨とミカドは発見された時期が遅かったからという理由で模擬戦は免除されていたが。

 

 

「ミカド…………この試合で俺が勝ったら箒に謝ってもらうぞ」

「なら俺が勝ったら二度と俺に絡んでくるなよ」

 

 

視界の端に試合の開始を報せる10カウントのカウントダウンが始まる。一夏はブレードを展開、対するミカドはだらりと無手を下げての自然体。そしてカウントが0になりーーーーーーーーーー

 

 

「グワッ!?」

 

 

試合開始のブザーと共に一夏は強い衝撃を受けて仰け反った。ミカドを見れば無手だったはずの手には白い銃『カスール』が握られていて銃口を一夏に向けている。ミカドのしたことは単純だ、試合開始と同時に銃を展開し一夏を撃った。言葉にすればそれだけだが、見るものが見れば彼がしたことがどれ程のことか理解できるだろう。

 

 

ミカドを見てやっと撃たれたことに気づいた一夏は堪らないといった様子で滅茶苦茶に移動して銃から逃げようとする。しかしそれは意味を成さない。不規則に移動する一夏に狙いを定めたミカドが引き金を引く度に放たれる弾丸はすべて一夏に命中する。

 

 

「っ!!」

 

 

このままではらちが開かないと考えた一夏はスラスターによる加速を行い、真っ正面からミカドに突っ込んでいった。一夏に用意された武器は今あるブレード一本のみ、離れたとしても意味はなくダメージを与えるためにはこの銃弾を掻い潜って近づかなければならない。多少の被弾には目をつむる覚悟で突貫した一夏の見たものはーーーーーーーーーーカスールではなく、ロケット兵器『パンツァーファウスト』を構えたミカドの姿。

 

 

「Feuern 」

 

 

ミカドの呟きと共に放たれたロケットは馬鹿正直に近づいてくる一夏に正面からぶつかり爆発した。誰もが普通ならここで終わると考えるだろうーーーーーーーーーーしかしミカドはカスールではなく黒い銃『ジャッカル』を握って爆煙に接近した。

 

 

「うぉぉぉぁぉぉぉ!!!!!」

 

 

そして一夏が爆煙の中から飛び出してきた。ISを動かすためのエネルギーは絶対防御によって減らされていて限界に近い。だが誰もが終わったという状況なら油断しているはずだと確信しての突貫。

 

 

それは、爆煙の前でジャッカルを構えていたミカドによって打ち砕かれることになる。

 

 

「さぁ、豚のような悲鳴あげろ」

 

 

予期せぬ光景を目の前に一夏の思考は停止する。その隙を逃すはずもなく、ミカドは超至近距離からジャッカルの引き金を引いた。

 

 

放たれた弾丸は一夏の胸に命中、まるで高速で突っ込んできたトラックに跳ねられるかのように吹き飛び、アリーナの障壁に叩き付けられて停止した。

 

 

そして試合終了を告げるブザーが鳴り響いた。

 

 

 

『試合時間1分7秒…………勝者ミカド・リッター』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「救護班!!急げ!!」

「いやぁ素晴らしい。ビューティフォ…………とでも言いたくなるな」

 

 

織斑一夏が倒されたことで慌てる織斑千冬を前にして俺は素直にミカドを讃える。相手の誘導は完璧、パンツァーファウストを撃った後でも油断せずにジャッカルを構えて確実に仕留めた、その上無駄弾の消費もない。格下相手の試合としては十分な戦果だな。

 

 

「連れてきたわよ…………絶対防御に守られていたから怪我は無し、最後の一撃の衝撃が大きすぎて気絶しているだけね。しばらくすれば目は覚めるわ」

「本当だろうな…………」

「はぁ…………確かに私は貴女のことは嫌いよ?でもだからといって患者の診断には嘘はつかないわ」

 

 

ISから引っ張り出された織斑一夏は前にあった保険医の診察を受けて、担架で保健室に運ばれていった。篠ノ之箒と織斑千冬もそれについていく。

 

 

「気絶しただけであの反応、身内の前に職員としてどうなのよ?」

「はぁ…………決定戦は私が引き継ぎます」

「山田さん御疲れ。サッカリンいる?」

「なんで持ってるんですか…………」

 

 

なんか知らんけどポケットの中に入ってた。サッカリンを未だに倒れている秋羅の横に置いてカタパルトに向かう。

 

 

「御疲れ気味の山田さんの為にも早く終わらせるか」

「って不知火君!!ISの展開を!!」

「あぁ、俺のISは従来のとは違うからアリーナ入ってから展開する」

 

 

ISをアリーナ内に打ち出す為のカタパルトからアリーナ内に入り、飛び降りる。そこそこの高さは合ったが問題なく着地する。

 

 

「ーーーーーーーーーー来ましたわね、尻尾を巻いて逃げたのだと思いましたわ」

 

 

向かいのビットから蒼いIS『ブルーティアーズ』を展開したセシリア・オルコットが飛び出した。それにしても開口一番のセリフがなんとも噛ませ臭い。どうせならもっと有意義な会話をしたいものだ。どうでも良いがセシリア・オルコットは飛んでいて俺は地面にいるので見上げる形になって首が辛い。

 

 

「それにしてもISを展開していないとは…………勝てないと分かって謝罪に来たのですか?」

「IS?あぁISね、もう展開してるよ」

 

 

フードを外す。本当ならそこにあるのは火傷で半分覆われた顔なのだが口元だけが露出している『天狗道』と書かれた仮面のお陰で俺の顔は隠れている。

 

 

「これが俺のIS『第六天波旬』だ」

「それが…………IS?」

「心配しなくても従来のISの機能はキチンと揃えさせてもらっている」

 

 

視界の端に10カウントのカウントダウンが始まる、

 

 

「さて、初戦では素人でも熱くなれるような試合を、次戦では玄人が沸き立つような試合を見せてくれた…………なら、俺は圧倒的な試合を見せてやろう」

 

 

そしてカウントダウンが0になりーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「滅尽滅相」

 

 

セシリア・オルコットが、地面に堕ちた。

 

 

「ガグッ!?…………体が…………重い…………!?」

「誰を見下してやがる、頭が高ぇぞ、平伏せ」

 

 

セシリア・オルコットは地面に五体倒置で伏せているのでどうしてこうなったのか理解できないだろう、正体は上にある五つの飛行物体にある。

 

 

そこにあるのは五つの菩薩。そこから放たれる重力にセシリア・オルコットは捕まっている訳だ。にしても高々二十倍なのにもう動けないのか?ミカドなら五十倍でも変わらない動きをしてくれて、甘粕なら百倍でも『良いぞ時雨!!この困難を乗り越えたときこそ、俺は更なる高みへ登ることが出来る!!!』とか言って普段よりも速く動くというのに…………

 

 

「まぁいい、終わらせるーーーーーーーーーーアクセス、我がシン」

 

 

俺から離れていた菩薩の内の一つが俺に近づく。そして仮面に書かれていた『天狗道』の文字が『天道悲想天』に変わる。

 

 

 

まず感じたのは『悲嘆』

求めしものは救済

 

なぜ奪い、なぜ殺し、なぜ憎む人の子よ

ああなぜ私はこんなに罪深い

ならば清めん

原罪浄化せよーーーーー悲想天

 

ケララー

ケマドー

ヴァタヴォー

ハマイム

ベキルボー

ヴェハシェメン

ベアツモタヴ

 

されば六足六節六羽の眷属

海の砂より多く天の星すら暴食する悪なる虫共

汝が王たる我が呼びかけに応じ此処に集え

 

そして全ての血と虐の許に

神の名までも我が思いのままとならん

喰らい、貪り、埋め尽くせ

来たれゴグマゴォォォォォォォォグッ!!!!!

 

 

現れるのは10㎝ほどの大きさのイナゴ、それも大量の群れをなしてアリーナを飛び交う。あちらこちらから悲鳴が聞こえるのは虫嫌いだからだろう。そんなことはどうでも良いが。

 

 

間を開けて飛び交ったイナゴたちは未だに地面に伏せているセシリア・オルコット目掛けて迫る。大量のイナゴの群れを前にして動くことができないセシリア・オルコットは悲鳴をあげただけで抵抗することなくイナゴたちに飲まれていった。

 

 

そして聞こえるのは堅い物を砕いているような咀嚼音。このイナゴは無機物を喰らい、それを動力として動いている。食うのは無機物だけで有機物を食うことはない。例え絶対防御があろうがイナゴに群がられ、ISを食われるというのは恐怖心を煽るだろう。

 

 

だが、それだけでは止めない。俺の気が収まらない。

 

 

彼女たちを犬と蔑んだ罪人に無慈悲な裁きを与える。

 

 

アルファ

オメガ

エロイ

エロエ

エロイム

ザバホット

エリオン

サディ……

 

汝が御名によって

我は稲妻となり

天から墜落するサタンを見る

 

汝こそが我らにそして汝の足元

ありとあらゆる敵を叩き潰す力を与え給えらんかし

いかなるものも 我を傷つけること能わず

 

おおグロオリア

永遠の門を開けよ

 

永遠の王とは誰か

全能の神

神は栄光の王である

ネツィヴ・メラー

 

 

菩薩から放たれる閃光がイナゴごとセシリア・オルコットを焼き払う。元よりこのイナゴたちは足止めのための物、この断罪の光を当てるために守りを砕き、心を凍らせ、体を固める前座に過ぎない。

 

 

放たれた断罪の閃光は五、イナゴごと動かない動くことのできないセシリア・オルコット焼き払い、その場残っているのは絶対防御に守られ傷一つなく気絶しているセシリア・オルコットだけだった。

 

 

そしてここで試合終了を告げるブザーが鳴り響いた。

 

 

『試合時間1分49秒…………勝者不知火時雨』

 

 

会場を包み込むのは静寂、物音一つ聞こえない。強さを表す地位でもある代表候補生が抵抗も出来ずにやられればこうもなるか。

 

 

気絶しているセシリア・オルコットに背を向けて、俺は静寂に包まれたアリーナを後にした。

 

 

 





HELLSING(ヘルシング)
ミカドの専用機。サイズは今のISよりも一回り小さい、大体2mほど。余分な物を削ぎ落としたフォルムなので実際のサイズよりも小さく見える。

カスール
ミカドの使う白い銃の名称。連射性に優れている。

パンツァーファウスト
ミカドの使うロケット兵器の名称。一発限りの使いきり、再利用には弾頭の装填が必要になる。

ジャッカル
ミカドの使う黒い銃の名称。カスールよりも連射性に劣るが威力は優れている。

第六天波旬
時雨の専用機。展開しても仮面になるだけであり、ISとは思えないISである。仮面には『天狗道』と書かれていて、条件によって書かれた文字が変わる。

滅尽滅相
重力操作。相手を拘束することが出来れば押し潰すことも出来る。理論上の最大出力だとブラックホールが発生するとか。なお甘粕は百倍の重力でも普段以上の速度で動けるらしい。

天道悲想天
五つの菩薩の内の一つが時雨に近づくことで変更できる、使用時は仮面の文字が『天道悲想天』に変わる。

ゴグマゴグ
イナゴの群れを展開して相手を拘束する。イナゴの動力は無機物、なので拘束の際にISの装甲をガリガリと食べてる。共食いや時雨を襲ったりはしない。

ネツィヴ・メラー
レーザー兵器。実は相手を追尾することが可能だがそうするとどうしても威力が減少する。なのでイナゴの拘束から最大威力のままに相手を焼き払う。


ミカドはともかく時雨の専用機がヤヴァイですね…………考えていましたけど実際に書いてみるとこれじゃない感がスゴくなります。

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