ISin時雨&ザフィーラ&アルフ   作:鎌鼬

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更識簪

 

 

放課後、俺と簪は打鉄弐式の開発に一区切りを打って秋羅と孝太の訓練のために貸しきったアリーナにいた。専用機が完成していないとは言っても簪は織斑一夏に対して殺意満々、訓練機で殺ってやるという気概に満ち溢れているのだ。それなら引き込もってばかりでは意味がない、少しでも体を動かさなければ衰えることは明白である。だから二人の訓練のついでに簪の相手でもしてやろうと思っていたのだが、

 

 

「まさか凰がいるとはな」

「秋羅さんと孝太の訓練を見るために来たのだけどダメかしら?」

「いいや、今日はミカドと楯無が居ないから手伝ってくれるやつが増えるなら拒む理由にはならないよ」

 

 

まさかの凰が参加してくれた。ミカドはドイツから新しい武装が届いたとかの話し合いで今日は来れないと言っていたし、楯無は仕事をサボりすぎて虚ちゃんの怒りに触れた為に生徒会室に缶詰にされているとか…………おい、楯無。そんなんだからお前は未だに痴女扱いなんだ。

 

 

「時雨さん、その子は?」

「はじめまして、四組のクラス代表で日本の国家代表候補生の更識簪です。趣味は特撮ヒーローと姉を苛めること、尊敬する人は甘粕社長と時雨さんと虚さん、クラス対抗戦の目標は織斑一夏の抹殺です」

「よろしくお願いします!!特に目標のところ!!」

「再起不能になるくらいに殺っちゃってください!!」

「ちょっと待って、目標のところもだけどなんか聞き逃したらいけないところがあった気がするんだけど」

「クハハッ、楯無が聞いたら悲しみの涙で泣いて喜ぶぞ」

「それって普通に泣いてるだけよね!?」

 

 

出会った時には気圧されて怯えてるだけだったのになかなかに逞しくなってくれたな…………楯無もチャットで『簪ちゃんが虚ちゃんと一緒になって苛めてくるの…………コミュニケーション取れるのは嬉しいんだけだ妹に苛められる姉って…………』とか溢していたからな。

 

 

その後チャットに参加していた全員から『妹よりも優秀な姉などいないのだぁ!!』って書き込みされてたな、そしてその一分後には楯無がチャットから退室してた。

 

 

「んじゃ今日はスラスターを使った飛行の反復するぞ。一時間ほど飛んでくれ。ルートや加速減速の指示はバイザーに投影されるようにしてあるから」

「了解っす!!」

「アイサー!!」

 

 

秋羅と孝太が俺の指示に従ってスラスターを噴かして空を飛ぶ。あれから二人はPICを使った浮遊やスラスターを使った飛行も出来るようになった。まぁ出来るようになっただけでまだまだ荒いんだけどそこは何度もやることで慣れるしかない。

 

 

「凰よ、二人の飛行のルートはこれに書いてあるからルートから外れたら指摘してやってくれ」

「いいわよ…………って細かっ!?」

「そうか?」

 

 

凰に二人が飛ぶ予定のルートが書いてある紙を渡したが細かいと驚かれた。

 

 

「ルートの多さはともかくセンチ単位まで指示してあるとか代表候補生レベルよこれ」

「だけどそれは二人がギリギリ出来ないラインで調整してある。なぁに、何度も失敗して経験を積めばすぐに出来るようになるさ。甘粕工業のテストパイロットの試験だったら音速での高速移動時にミリ単位での飛行を指示されるぞ?それに比べたらぬるいぬるい」

「…………甘粕工業が変態企業とか言われているのに優秀な操縦者が多い理由が分かった気がしたわ」

「有澤と比べたらまだまだ優良企業だろうが」

「あの変態企業筆頭の有澤と比べるレベルになったらおしまいよ」

「解せぬ」

 

 

甘粕工業を辱しめられるような発言をされる物のそれは事実なので強く言い返せない。でも有澤よりかはマシだと思うんだよな~あそこの装備一回使ってみたけど威力強すぎて攻撃対象は愚か装備の使用者にもダメージが行くんだもの。例え使用者がボロボロになっても敵を倒すという鋼の意思を感じたね。

 

 

「時雨さん」

「あぁ、悪い悪い。じゃあ軽~く揉んでやるよ」

 

 

簪が訓練機である打鉄を装備して現れたので波旬を展開してフードを取る。凰はそれまでに見たことのない形状の波旬に興味津々と言った様子だった。

 

 

「それが不知火のIS?変わった形してるわね」

「俺に合わせた形にしたらこうなっただけだ。こんな成りでも従来のISよりも優れているって自信もって言えるからな…………よし、いつでも来いや」

「じゃあ早速!!」

 

 

簪の腕にガトリングが二丁現れ、銃口がこちらに向けられる。あれは甘粕工業が開発した武装の一つ『轟雷』、一撃じゃなくて手数で押すって言うコンセプトの武装だ。轟雷の銃口が向けられ、文字通りに雷鳴が轟くような音と共に分七百発発射される弾丸が放たれる。

 

 

「開幕から遠距離の制圧射撃か!!完璧織斑一夏対策だなぁおい!!」

「弱点をつくのは当たり前!!」

 

 

地面空中問わずに蹴って移動しながら轟雷の射線からにげつづける。轟雷の特徴はさっき説明した通りに手数にある。一発でもそこそこに威力がある弾丸が雨のように放たれるのは防御特化の機体であってもまともに受ければ驚異になる。聞いた話では織斑一夏の一次移行(ファーストシフト)した機体はブレードのみの装備だとか、接近戦特化の機体にこの制圧射撃は辛いものがあるだろう。

 

 

正直言ってこの程度の弾幕ならば潜り抜けて簪に一撃を入れられる。が、そんなことをしなくてもこの攻撃はそう長くは続かない。轟雷の射撃から二分、雷鳴のような音が止んだ。

 

 

これが轟雷の欠点とも言うべきか、手数は確かにあるのだが弾丸が尽きるのが早いのだ。加えて例え弾丸があったとしても二分も連射を続けていれば轟雷に熱が籠って冷却が必要になる。開発部の連中はこの欠点を直してみせるとか意気込んでいたけど…………この欠点無くなったら武装としてヤバイレベルになりそうなんだよな。

 

 

ともあれ簪からの制圧射撃は無くなった。PICで足場にしていた空中を蹴って簪に接近する。

 

 

「フッ!!」

「おっと!!」

 

 

普通ならここで使えなくなった轟雷を捨てるなり仕舞うなりするのだが…………簪はなんと弾切れになった轟雷で殴りかかってきた。ガードは出来たものの質量の差で吹き飛ばされることになる。距離を取らせることに成功した簪はここで轟雷を捨て、薙刀型のブレード『春雨』と両肩に四×四のミサイルポット『爆轟』を展開して、

 

 

「ファイア!!」

 

 

爆轟に積まれているミサイル全弾を発射してきた。四×四×二で計三十二発のミサイルが俺に迫る。避けれなくもないがこのミサイルはすべて追尾機能搭載で避けただけでは春雨を持った簪とミサイルに挟まれることになる。よってここでは迎撃。

 

 

「滅尽滅相!!」

 

 

菩薩五つからの重力波によりミサイルは地面に落ちて次々と爆発する。ミサイルの迎撃には成功したのだが爆発によって出来た砂煙によって簪を見失ってしまう。

 

 

「ーーーーーーーーーフッ!!」

 

 

背後から短い掛け声と共に春雨が振るわれる。どうやらこの一連の流れが簪にとっての計画だったらしい。確かに姿を隠した上での一撃は有効だ、織斑一夏や代表候補生レベルなら綺麗に決まっていただろう。

 

 

だけど、国家代表や俺たちのレベルにいる奴らには届かない。

 

 

背後から迫る春雨の刃を振り替えることなく親指と人差し指で挟む。止められることは想像していたらしく、すぐに簪は退こうとするが…………動かない。俺が春雨の刃を挟んでいることで動けないのだ。スラスターを噴かして逃げようとするもののそれでも動かない。

 

 

「残念、ここは武器を捨てて逃げるのが正解だーーーーーーーーー滅尽滅相!!」

 

 

裏拳の打撃に合わせて上から下に作用する重力を横殴りのように効かせてぶつける。裏拳は簪の腹部にヒットして打鉄もろとも簪はアリーナの障壁に叩き付けられた。

 

 

「まだやるか?」

「…………降参で」

 

 

そこそこに加減して殴ったから打鉄には損傷は見られずにシールドエネルギーも残っているはずだが簪は素直に降参することを選んだ。まぁ間違いじゃないわな。本番でも無いのに怪我するまでやりあう訳にはいかんし。ここは引き際を見極められた簪を誉めよう。

 

 

「打鉄はどうだ?」

「大丈夫、破損はない」

「にしても織斑一夏対策バッチリだな。あそこまでアンチ効かせてるなら大丈夫だろ」

「完封するつもりだから。あと、ありがとう。織斑一夏のことを想定して接近戦だけにしてくれて」

「どういたしまして。まぁ相手は専用機だが簪なら勝てるさ…………ってどうした凰よ、鳩が滅尽滅相されたみたいな顔して」

「時雨さん、それ鳩死んでるから」

 

 

打鉄から降りた簪に指摘されるが凰は口を開けてこっちを見ているので間抜けとしか言いようがない。

 

 

「…………不知火、あんたって強かったのね」

「何を今さら。ある程度の強さがなければ誰かに教えようだなんて考えないさ」

「嫌々!!だって代表候補生相手にノーダメージよ!!そこまで強いなんて下手したら国家代表レベルじゃないの!!」

 

 

あぁ…………そう言えば凰は代表決定戦を見てないから俺の強さを知らなかったんだな…………ってか正直言って候補生レベルなら万で徒党組んでようが完封出来る自信はあるけど。

 

 

「これ見れば時雨さんの強さが分かる」

「これは?」

「先週に行われた一組のクラス代表決定戦の試合を録画した物。織斑秋羅対錦孝太、ミカド・リッター対織斑一夏、時雨さん対イギリス代表候補生のセシリア・オルコットの順で入ってる」

 

 

そう言って簪は小型のDVDプレイヤーを凰に見せた。中身は簪の言ったように先週のクラス代表決定戦の映像で…………っておい。

 

 

「ちょいまち、俺そんなのあるだなんて知らないけど」

「結構出回ってる。バラでも売られていて一番人気は初戦の殴り合い、二戦目は玄人好みの試合で代表候補生に人気、時雨さんのは一番低いけど一年二組の生徒ならたぶん全員持ってると思う」

「アッハッハ~…………何がどうしてそうなった…………」

 

 

いやね、秋羅と孝太とミカドの試合についてなら分かるんだよ?スデゴロの殴り合いは歓声聞いただけでも凄かったし、ミカドの試合は玄人好みの技術の試合だったし…………でもなんで俺の試合まで乗せてるんだ?嫌われてるのに出してるとか嫌がらせのつもりか?あとなんで二組の皆さんは買ってるんですか?

 

 

「…………凄いわね、直接見たかったわ。あ、このDVDダビングしても良いかしら?」

「布教用があるからそれあげる」

「簪ぃ!!なんで布教用なんて持ってるのぉ!?」

「どの試合も素晴らしかったから。そう言えばお姉ちゃんはどうして来てないの?」

「シカトしおったな…………生徒会の仕事サボりすぎたって虚ちゃんがキレたから、生徒会室で缶詰にされてるぞ」

「あの駄姉は…………時雨さん、私用事が出来たから失礼するね」

「はいよ~打鉄はこっちで片付けるからそのままで良いぞ」

 

 

俺の言葉を聞いて一礼した後、簪は血の着いた背中が三角形のお馬さんを引きずりながらアリーナを後にした…………

 

 

「ねぇ…………あれって三角木馬よね?拷問器具の」

「確か通販サイトのエリザベートで買ったって言ってたな。使いやすくて気に入ってるとか」

「拷問器具を誰に使うのよ!?」

「さぁ誰でしょうね?」

 

 

この後のことは大体想像が出来るので考えないようにし、凰共に秋羅と孝太の訓練指導をすることにした。

 

 

余談ではあるが…………後日内股で歩く楯無の姿が目撃されたとかなんとか…………

 

 

 





秋羅と孝太と簪
わりとすぐに打ち解けられて仲は良い。

簪の自己紹介
おかしいところなんてないよぉ!!(白目)

妹よりも優れている姉などいないのだぁ!!
なんやかんや姉や兄よりも妹や弟の方が優秀になるケースは多い。

秋羅と孝太の訓練
現在はスラスターの操作に重点を置いている。かなり厳しめのメニューではあるがそれは現在の二人のレベルではギリギリ出来ないライン。失敗を経験させてから成功を味あわせるというちょっとしたアメとムチみたいな訓練方法。

甘粕工業のテストパイロットのレベル
妥協は許さない甘粕の性格により合格ラインは国家代表レベルにまで引き上げられている。つまり甘粕工業のテストパイロット=国家代表レベル…………頭おかしいとか言われてもしょうがない。

有澤
企業の一つ。出している武装は攻撃力の面だけではどの企業よりも頭一つ突き抜けているが使用者の安全を考えていない武装しかない。

ガトリング『轟雷』
甘粕工業製の武装。甘粕が『なぜ一撃が通らぬだけで諦める!!一撃で駄目ならば百撃!!百撃で駄目ならば千撃攻撃すれば良いではないか!!』という言葉により作られた。

ミサイルポット『爆轟』
甘粕工業製の武装。左右の肩に四×四マスのミサイルポットが付けられる形になる。全三十二発で簪がしたように全弾発射もできるし、一発ずつでも発射出来る。

薙刀型ブレード『春雨』
甘粕工業製の武装。特にこれと言った特徴は無いのだが癖が無く使いやすいとの評判。

滅尽滅相
今回は応用編。上から下に重力波を放った方がロスは少なく一番効果的。横に放った場合は地球の重力に引かれて減少する。下から上にも放てるがその場合は地球の重力に逆らうことになるので威力は激減する。

クラス代表決定戦の映像
誰かが撮影してそれをDVDに焼いて販売した。初戦の秋羅対孝太、二戦目のミカド対ワンサマ、三戦目の時雨対セシリア、全試合まとめての四種類が販売されている。なお、二組の一番人気は時雨の試合。

通販サイトエリザベート
三角木馬を始めとした様々な拷問器具が販売されているサイト。なぜ封鎖されていないのか分からない。簪は色々と周りに迷惑をかける楯無に使用するために購入している。

内股で歩く楯無
何をされたんだろうねぇ…………


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