モニターに映るのは白式に乗る織斑一夏を特殊武装らしきもので押している凰の姿。つまらないと言ってしまえばそれまでなのだろうがやはり近接特化の相手には遠距離でボコした方が確実なのだ。
「ねぇねぇお兄さん、鈴ちゃんは何をやってるんすか?織斑が何もしてないのに突然のけ反ってるようにしか見えないっすけど」
「簡単に言えば銃身の無い空気砲だな」
「あぁ、中国の武装ね…………確か龍砲、だったかしら?」
「空間に圧力かけてそれを発射してるんだな。弾が空気だから不可視な上に弾切れも起こさない、その上銃身が無いから全方位に撃ち出すことが出来る。まぁ十分な威力を出すためには溜めが必要だけど足止めだかなら少しで良い。で、足止めをしている間に大きいのをドカンと、ボクシングのジャブとストレートみたいな物だな」
流石に国家代表クラスになるとそれを掻い潜りながら近づいてくるだろうが織斑一夏にはそれまでの技術は無い。そしてその展開がしばらく続いた後で織斑一夏はアリーナの端まで逃げて凰から距離を取った。
「お、勝負に出るみたいだな」
「
「ここで?焦ってるのかしら?」
「俺だったら開始と同時に使って斬るけどな。織斑一夏は普通のブーストしかしてないって…………自分のISのことを理解してるのかしらねぇ?」
白式の特徴を考えるなら超短期決戦による決着の方が良いことは明らかだ。つまり開始同時に
凰も織斑一夏のしようとしていることに気づいたのか龍砲をチャージ、そして二振りの青竜刀を構える。
そして両者が動くと思ったその瞬間ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー俺は皇とハミルトンをベットから突き落とした。
「わっぷ!?」
「ちょ、ちょっと!?」
二人が何か言おうとしているがそれに答える時間は無い。
二人をベットから突き落としたと同時に部屋の壁が外側から爆ぜたからだ。壁の破片が飛んでくるが皇とハミルトンはベットの陰にいるお陰で無事、俺は当たりそうな物だけを選んで受け流しているので無傷。
そして崩れた壁の外には4mを越える全身装甲のISがいた。両手が巨大なブレードと一体化していて、無機質な赤い光が目のように俺のことを捉えている。
『データ検索…………不知火時雨ト判断、イレギュラーノ排除ヲ開始シマス』
無機質なマシーンボイスと共に全身装甲のISはブレードで俺に向かって斬りかかってくる。そしてその巨体が部屋に入ろうとしたときーーーーーーーーーーやって来た銀と橙に蹴り飛ばされて部屋から追い出された。
「まぁ…………良く来たなと誉めるのと同時に一つ聞きたい、その格好はなんだよ、ザフィーラ、アルフ?」
やって来て全身装甲のISを蹴り飛ばしたのはザフィーラとアルフだったがその格好が問題だった。二人の格好は上にワイシャツを羽織っただけのもの。下には何も履いておらず、引き締まった健康的な白い脚がさらけ出されている。そして動くと機能性を重視したと思われる白い下着がチラチラと見えてしまっている…………えぇ、ご想像の通りに裸ワイシャツに近い格好ですね。
「すまん、起きたのは先程でとりあえずでこれを着ていたのだ」
「で、さっきの音聞いて慌てて出てきたから着替えてる暇がなくてね」
「あ~あ分かったよ。じゃ、俺が相手してくるから皇とハミルトンの護衛頼んだぞ」
「任されました」
「怪我しないでね」
「クハッ、誰に向かって物言ってるんだよ…………あんなのだったら百集まっても掠り傷一つ負う気がしないね」
全身装甲のISによって出来た穴から外に飛び出す。相手の狙いはやはりと言うきべきか俺だったらしく、ザフィーラとアルフに蹴られて出来た胸と腹のへこみを見せながら俺のことを追ってくる。
それにしても『イレギュラー』を『排除』する、ねぇ…………
「クハッ、ヒントが多すぎて合ってるかどうか逆に不安になってくるぜ…………狙ってたのか突発的なのかは知らないがアピールし過ぎだ、糞兎」
全身装甲のISを連れて嬉しくない追いかけっこをしていると中庭に着いた。そしてそこにはーーーーーーーーーー三十を越える全身装甲のISがいた。サイズは2m程か、両手がブレードの物があれば銃器になっている物もある。
「犯人特定楽だなぁおい」
自分を囲う全身装甲のISを前にして俺は怯まない。いつも通りに人を馬鹿にした笑みを浮かべながら佇むだけだ。ISが武器を構えるのと同時に『第六天波旬』の仮面を被る。
「だが、そこまで遊んでほしいのならやってやろう、精々俺を楽しませろーーーーーーーーーー『
波旬の仮面に書かれていた『天狗道』が消え、代わりに『無間』の文字が浮かび上がった。
時雨が全身装甲のISに襲われているのとほぼ同時、先程まで鈴音と織斑一夏の試合が行われていたはずのアリーナは混乱に包まれていた。それはそうだろう、突然の乱入に観客に被害が出ないように張られていた障壁を一撃で破るほどの威力のビーム兵器。ISを『スポーツ』としてしか見ていなかった生徒たちにとっては自分を殺しうる存在が現れたのだから。
我先にとアリーナの出口に向かう生徒たちだが、自動で開閉されるはずの扉はロックがされていて開く気配が見られない。突然逃げ場の無い死地に突き落とされたと理解してしまい、パニックを起こす者までいた。
「逃げるぞ」
「そうですね」
そんな中で、秋羅と孝太は非常に冷静だった。悲痛な声が耳に届いているものの、慌ててはいけないと沸き上がりそうになる恐怖心を抑え込んで行動する。
「俺が先頭で、孝太は本音のこと頼むぞ。玉あるなら確り女守ってやれよ」
「こんなときでも下ネタですか、正直引きますよ」
「馬ぁ鹿、こんな時だからこそだろうが。ふざけてないと脚が震えるんだよ」
「奇遇ですね、僕もですよ」
ふざけたような態度をとっているのは自分たちの心を守るためだった。表面的には冷静に見えるかもしれないが内心もそうだとは限らない。一秒後に死んでもおかしくない状況から逃げ延びるために場違いなことを口にして紛らわしていたのだ。
「って、ミカドとヴィータは?」
「ニッシー!!アッキー!!あそこあそこ!!」
「って!!寝てる!?」
姿の見えないミカドとヴィータを心配した秋羅と孝太だったが本音の指摘によって二人を見つけるもののその姿に驚いた。試合の開始前から寝ていた二人だったが…………未だに寝ていたのだ。あれだけの騒ぎが起こったというのにまだ寝ていられるとは豪胆というべきか、愚鈍というべきか。一つ分かっているのは二人がこの状況の中で動いていないということだった。
「ッチ!!起こしてくるから二人は先に」
「危ない!!」
二人を起こしに行こうとした秋羅だったが孝太からの叫びで咄嗟にその場から飛び退く。上空から何かが落ちてきて観客席を踏み砕いた。
現れたのは全身装甲のIS全長は大体4m程、両手があるはずの場所には指は無く、代わりに完全に同化している二振りのブレードがあった。
「二機目かよ…………!!」
アリーナに乱入した物とは別のISの登場、秋羅は目を離さずにその場から少しずつであるが後退する。孝太も本音を庇いながら秋羅と同じように後退していた。専用機の与えられていない二人ではISを相手にすることなど出来ない。出来る手段は逃げることだけだが…………逃げ場が無かった。アリーナ唯一の出入り口である扉には生徒たちが我先にと群がっていて行くことが出来ない。
『データ検索…………織斑秋羅、錦孝太ト判断、イレギュラーノ排除ヲ開始シマス』
無機質な赤い光が秋羅と孝太を捉える。秋羅は無駄だと知りながらも手を固く握り締め、孝太はせめて本音だけでも逃がそうと思考を巡らせる。
そして全身装甲のISが一歩、また一歩と二人に近づきーーーーーーーーーー
「うっせぇよ鉄屑」
両手脚を切り落とされた。やったのは全身装甲のISの後ろに立っていたミカド、手には装飾の一切無い武骨な鎌が握られている。恐らくそれで一瞬の内に全身装甲のISの手足を切り落としたのだろう。
「ヴィータ」
ミカドがヴィータの名前を呼び全身装甲のISを蹴り飛ばす。達磨状態になっているISは踏ん張ることは出来ずに離れた場所で朱色のISを展開していたヴィータの元に向かっていく。
「はい、よ!!」
ヴィータの手にはハンマーが握られていて、それを力任せに振り達磨状態になっているISを叩いた。ぐしゃりと嫌な音が響き、全身装甲のISはハンマーと地面に挟まれて押し潰される。ヴィータがハンマーを退けるとそこにはスクラップになったISの残骸があった。
「大丈夫か?」
「あ、あぁ…………なんとか」
「ありがとうございます、助かりました」
「現状はどうなってる?」
「アリーナの扉がロックされてるみたいで誰も出られないの~多分教員たちも動けないと思うよ~?」
秋羅たちから現状を聞いたミカドは少し考える素振りを見せたが突然空を見上げた。
「まだいるな」
「まだいるんですか!?」
「偵察なのか突撃なのか分からないけど上にいる。ヴィータ」
「分かってるよ、ここは任せて行ってこい」
ミカドの言いたいことが理解できたのかヴィータはミカドが言い切る前に承諾し、ミカドもそれに満足げに頷いてスラスターを噴かせて上空に向かった。
そして上空100mのところに、アリーナを見下ろすようにいた10の全身装甲のISを見つける。
『データ検索…………ミカド・リッタート判断、イレギュラーノ排除ヲ開始シマス』
「さっきのは無人機だった…………ってことはこれらも、まったくあの滓兎め、好き勝手してくれる」
ミカドの思ったのは嫌悪、その嫌悪を隠すこと無く顔に出し、マスケット銃を展開した。
「我が名は魔弾、魔弾の射手。有象無象の区別無く、我が弾頭は許しを認めず」
マスケット銃の銃口から弾丸が放たれた。その弾丸は真っ直ぐに全身装甲のISの内の一機の胸部を貫く。普通の弾丸ならばそこで終わるだろうがこの弾丸はそれでは終わらない。胸部を貫いた弾丸はあり得ない軌道を描きながらそのISの腕を、脚を、頭を貫いていく。
ドイツの軍が開発しミカドに渡した武装『リップバーン』、マスケット銃という骨董品とも言える外装をしたこの銃は破壊されるか運動能力が尽きぬ限り止まらずに、ミカドが認識している敵を必要に追い続ける。
歌劇にある『魔弾の射手』を思わせる能力を持つマスケット銃、それがリップバーン。
「
Mein Sohn, nur Mut!
Wer Gott vertraut, baut gut!
」
魔弾から逃れられずに抵抗虚しく落ちていく無人機たちを見下しながら
「
Jetzt auf!
In Bergen und Klüften Tobt morgen der freudige Krieg!
」
ここは我の狩り場なるぞ、
汝らの狩り場ではない、
汝らぞ我に狩られる獲物であると。
「
Das Wild in Fluren und Triften,
Der Aar in Wolken und Lüften Ist unser,
und unser der Sieg!
」
マスケット銃を掲げ、歌を切り上げる。それと同時に最後まで残っていた無人機は爆散し、鉄屑となって墜ちていった。
無人機来襲
原作通りにワンサマ&鈴音には一機、ミカドと秋羅と孝太には一機と十機、時雨には三十機。時雨一人だけ難易度が高いはずなのにそうは見えない不思議。
ザフィーラとアルフ
書いていて気がついた…………私は裸ワイシャツが好きなんだなって。
時よ止まれ、君は美しい
ファウストが悪魔と契約したときに言ったとされる言葉。時雨の使った能力が誰なのか分かるかな?(白目)
アリーナパニック
普通にこれくらいはなると思われる。
不機嫌なミカド
安眠妨害されて不機嫌なミカド。無人機だと分かっていたが有人だったとしてもためらい無く達磨にするくらいにキレていた。
ヴィータのIS
ドイツ軍から支給されている専用機。武装はハンマーで色は朱色ということだけ公開、詳しい紹介はまたの機会に。
マスケット銃『リップバーン』
ドイツ軍が開発した武装、別名魔弾の射手。ヘルシングの中で最もエロいんじゃないかと作者は思っている。リップバーンの弾丸は壊されず、運動能力が尽きぬ限り止まらないでミカドが敵と認識した相手を追いかけ続ける。止めるには弾丸を壊すか停止させるしかない。
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