「しっぐれ〜!!」
「おぉん?」
気がついたら始まっていた大食い大会に出す料理を作っていると久しぶりに聞いた声と共に後ろから誰かがぶつかってきた。
「なんだ、奏か」
「なんだじゃないぞ、久しぶりに会う妹分に向かってその態度は何事か!!」
「時雨さん、お久しぶりです」
赤髪の少女ーーー天羽奏が後ろから抱きついてきて遊ばせていたら青髪の少女ーーー風鳴翼が綺麗な礼と共に挨拶してきた。この二人は義理の姉妹……って事でいいのか?翼は弦十郎さんの姪で、奏は弦十郎さんが後見人を務めているから……幻滅に言ったら違うかもしれないが二人の関係はほとんど姉妹だからいいか。
「出たなSAKIMORI……!!」
「その呼び名は止めて下さいと言いましたよね!?」
「面白そうだから私が許した!!」
「か、奏!?」
と、俺との関係はこの会話を聞いたら大体分かるだろう。ガキの頃に弦十郎さんが連れてきた二人と出会って奏と意気投合、翼で遊んでいる感じだ。
「奏、今忙しいから少し離れてろや。これ済んだら幾らでも遊んでやるから」
「はーい」
いつまでも抱き着かれていると料理がし辛いので奏には一旦離れてもらう。そして誰かが持ってきた鉄板の上に生地を流し込んでキャベツ、天かす、豚バラなどを乗せてひっくり返してソースと青のりと鰹節をかける。
「へーい、お好み焼きだぞいっと」
「さぁ!!唐突な思いつきから始まった大食い大会!!10品目はお好み焼き!!すでに大半の選手が脱落しており残っているのはアルフさんとザフィーラさん!!そして我が社の誇る馬鹿甘粕社長!!さらに若のお友達の皇夜空さんです!!」
「やっぱり時雨の料理は美味しいねぇ」
「まだだ……!!まだ足りぬぅ……!!」
「ヌグゥ……!!俺は……信じているのだ……諦めなければ、いつかきっと夢は叶ぁう!!」
「お代わりよろしくっす〜!!」
ここまでにかなりの量を食べているだろうに甘粕は気力を振り絞って、アルフとザフィーラと皇は味わって料理を掻き込んでいる……明らかに甘粕よりも女性陣の方が余裕がありそうなんだよな……
「んじゃ、少し休ませて貰うわ」
「「「ガッテン!!」」」
奏たちの相手をするために料理が趣味だという社員たちに料理を任せる。その迷いのない掛け声は頼もしいんだが……背負っている火炎放射器は何に使うんですかねぇ……
「にしても久しぶりだな、前に会ったのは冬頃だったか?ビッキーやきねクリちゃんは元気してる?」
「響ならいつも通りに元気してるよ」
「雪音なら……」
奏がビッキーの現状を教えてくれたが翼の方はどこか歯切れが悪い。目を逸らしたのでそこを向いてみると……隠れながらこっちを伺っているきねクリちゃんの姿があった。
「……ふむ」
まぁいつもの事なので気配を消してきねクリちゃんの後ろに回り込んでハグする。
「うひゃぁ!?」
「ひっさしぶりぃきねクリちゃぁん!!元気してた!?俺は元気してたよぉ!!」
「ちょ、時雨!!いきなり抱きつくのやめろって言ってるだろうが!!」
「スキンシップ!!スキンシップだからセーフセーフ!!近頃の女って話しかけようとしただけで警察沙汰になるからストレスがマッハでヤバイんだよなぁ……」
「アップダウンが激し過ぎるだろ……って酒くさっ!!もしかして飲んでるのか!?」
「あぁん?度数40なんぞ水と変わらんよ!!」
「馬鹿か!!お前馬鹿なのか!?」
「失礼な!!馬鹿はあそこにいるぞ!!」
「むぅ!!呼ばれた気が!!」
「呼んでねぇよ!!」
叫んでいるきねクリちゃんをまぁまぁと言って落ち着かせ、まぁまぁと言って手を引き、まぁまぁと言って奏たちの所に連れて行き、まぁまぁと言ってあぐらをかいたその上に座らせる。
「……雪音、気がつけばいつもの姿勢になっているぞ」
「ーーーはっ!!」
「やっぱり時雨は雪音の扱いが上手いな。私達がやろうとしても警戒されるのがオチだもんな」
その光景を見て翼は呆れ、奏は楽しそうにケラケラ笑っている。きねクリちゃんーーー雪音クリスは恥ずかしいのか顔を隠しているが耳が赤くなっているのでバレバレである。
「いやぁ……辱めるのは楽しいなぁ!!」
「外道過ぎますよ!!」
「いい空気吸ってるよな」
「うぅ〜!!」
「……何がどうしてどうなっているのかしら、この光景は」
恥ずかしがっているクリスを愛でているとハミルトンがやって来た。手に持っているのがノンアルコールのドリンクな所を見ると宴会の席だからってハメを外しすぎることはしないらしい。
「楽しんでいるようで何より。この光景は久し振りに会う妹分とのスキンシップを楽しみながら一人の少女を辱めて愉しんでいる光景だ」
「外道ね」
「褒め言葉かな?」
「褒めてないわよ……ねぇ、時雨。私の目が間違ってなかったらそこにい?のは『Zwei wing』の二人じゃないかしら?」
「そだよ〜、『Zwei wing』の天羽奏と風鳴翼の二人だよ」
二人の正体を告げるとハミルトンはくらりと揺れ、深呼吸をして落ち着かせ、
「ーーーなんでトップアーティストの二人がここにいるの!?」
残念ながら落ち着けなかったようだな。でもハミルトンの気持ちは分からないでも無い。天羽奏と風鳴翼の二人が組んでいるユニット『Zwei wing』は日本で知らない奴がいないほどに有名なアーティストなのだ。奏からのメールではそろそろ海外進出も視野に入っているとかなんとか。
「それはアレだよ、アレがアレだからアレなんだよ」
「時雨、なんだか思い出せない奴みたいになってるぞ」
「ハミルトン、と言ったか?私たちがここにいる理由は里帰りが半分のようなものだ。私たちの保護者がここで暮らしているからな、もうここが実家と言っても過言では無い」
「はぁ、そうですか……」
「と、このSAKIMORIは申しております」
「時雨ぇ!!」
「まぁ帰って来たら時雨が帰ってるって聞いて来たんだ。小さい時からの付き合いで私からしたら兄貴みたいなもんだから」
「な、なぁ……早く下ろしてくれないか……?」
「だぁめぇ!!」
あ〜羞恥で顔を赤らめてるクリスが可愛いんじゃ〜……男性操縦者なんぞになってから周りの
「はぁ……何だか今日一日ですっごい疲れたわ……」
「色々と秘密を教えたりしたからな……」
「お代わり!!」
「次を持ってこぉい!!」
「ーーークハハッ、この俺を乗り越えるか……認めよう!!俺の負けだぁ!!」
「まだまだ行けるっすよ!!」
気まずくなって疲れた顔になっているハミルトンから目を逸らすと甘粕が万歳の姿勢を取りながら沈んでいるのが見えた……よし、忘れよう。
「時雨、明日ビッキー来るってさ。ミクにゃんも連れてくるって」
「はいよ〜……あのヘタレオトンはどうかねぇ……」
「あの人ならビッキーのお母さんに尻叩かれながら頑張ってるよ」
「まぁヘタレながらにも頑張ってる姿は好感が持てるんだけどさ……よし、今度甘粕ブートキャンプに参加させよう」
「待ってください、それは参加したら人間を卒業するという魔の企画では……」
「違うヨォ!!参加したらみんな人間賛歌を歌うバカになるんだヨォ!!まぁ生き残れたらの話だけどなぁ!!」
「なんでブートキャンプに参加するだけでデッドオアアライブになってるのよ……」
「甘粕ってばストレッチだとかいって参加者全員を紛争地帯に叩き込むからな……」
「因みにゼロさんにしばかれて渋々回収するまでがデフォな」
「い、いい加減下ろしてぇ……」
「いぃやぁだぁよぉん!!」
「あぁ……時雨の顔が生き生きしてる……」
ハミルトンが同情するような目でクリスのことを見てる。クリスは恥ずかしがっているように見えるだろ?その通りなんだよ。だけどそれは半分不正解。半分は嬉しがってるんだ。クリスどうやら俺に好意を持ってるみたいでな、アルフとザフィーラという相手がいるから諦めようとしているらしいけど奏情報ではどうも諦めきれていないらしい。そのことをアルフとザフィーラに告げたら二人ともサムズアップしながら、
『押し倒せば良いんじゃないかな!!』
『妻が増えることは良いことだな!!』
とかんなとか。その言葉を聞いた時には脳が震えたね!!だからこうしてやり過ぎてるようにしか思えないスキンシップを平気でしている。
屑?外道?褒め言葉だな!!だけど鬼畜はやめて下さい。
そんなこんなで楽しい時間は過ぎていく。そして誰もが酔い潰れたり、はしゃぎ過ぎて疲れて眠ってしまった頃に、裏の時間が始まる。
天羽奏
高校2年生。学生とアーティストの二足のわらじを履いている。時雨とは後見人である弦十郎繋がりで知り合い、本人曰くソウルフレンドなのだとか。
風鳴翼
高校2年生。学生とアーティストの二足のわらじを履いている。時雨とは奏同様に弦十郎繋がりで知り合い、意地悪な友人として見ている。悩みは時雨と奏が揃うと高確率で弄られること。
雪音クリス
高校2年生。特盛。翼と奏とは友人で、その繋がりで時雨と出会って一目惚れ。だが後にアルフとザフィーラのことを知って失恋……かと思いきやまさかの二人からのゴーサインが出されたのでこれで良いのかと悩んでいる。なお、過激なスキンシップは恥ずかしがっているが同じぐらいに嬉しがっている。
シンフォギアから三人同情です。他のキャラもジワジワと出していくつもりです。
きねクリちゃんが可愛いんじゃ〜^ ^
感想、評価をお待ちしています。