ISin時雨&ザフィーラ&アルフ   作:鎌鼬

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秋羅・夜空・ティナ

 

 

「(…………面倒だ)」

 

 

保健室から戻って来た山田先生が教壇に立ち、教科書の内容を分かりやすく説明しながら授業が行われている中で、織斑秋羅はそう思った。

 

 

教科書を開き、山田先生が話していることを一言一句残さずにノートに書き込んでいる辺りは優等生に見えなくも無いが、織斑秋羅は本来とても怠惰な人間だった。

 

 

勉強なんてしたくない、動きたくも無い、働きたくない、許されることなら一日中ベットの上でごろごろしていたい。

 

 

しかしそれは織斑秋羅の姉と弟のせいで叶わなかった。

 

 

たまの休みに寝ていれば織斑一夏に家事を手伝えと叩き起こされて、その上フラグ建築士の後始末をさせられる。夕刻にのんびりポテチをかじりながらテレビを見ていればほとんど家にいない織斑千冬がダラダラするなとテレビの前から退去させられ、ビールと一言言って自分がテレビを陣取る。

 

 

秋羅の友人である五反田弾(ごたんだだん)や彼の妹の五反田蘭(ごたんだらん)、中国に帰った後輩という愚痴を言い合える者や癒し担当が居なければ秋羅はどんな面倒だろうとも離縁手続きをしてやろうと考えていた。

 

 

それも秋羅が藍越学園という学校に進学するにあたって一人暮らしをしたいと申し出て、生活費家賃はバイトで払うと弾と蘭の祖父の五反田玄(ごたんだげん)に取り持ってもらったことで解放されたはずだった…………秋羅が二年への進級を控え、春休みにバイトを増やそうと考えているところで一夏がISを動かさなければ。

 

 

その後の適性検査で適性があることが判明されて藍越学園を強制退学、住んでいた月三万円の安アパートは強制退去、保護のためだと高級ホテルに監禁される。唯一の救いは護衛の男性が気さくな人で、秋羅の愚痴を聞いてくれた事だろうか。彼のお陰で少しストレスが緩和されたことは事実だ。

 

 

そういうわけで秋羅は姉と弟のことは嫌っている。姉の評価は『気に入らないことがあれば直ぐに暴力を振るう人間の屑』、弟の評価は『人の気持ちを理解することができない人間の底辺』。実の姉と弟にするような評価ではないが秋羅からすれば二人は血の繋がっただけの他人だった。

 

 

「えっと、ここまでで分からないことはありませんか?」

 

 

教科書の内容が一段落着いたのか、山田先生が教室を見渡して尋ねてきた。そして挙動不審だった織斑一夏に向けられる。

 

 

「えっと織斑君、ここまでで分からないことはあるかな?」

「ーーーーーーーーーーすいません、ほとんど分からないです」

「………………………………え?」

 

 

山田先生が唖然とした表情になる。それはそうだろう、自分がさっきまで授業していたのにまったく理解されていないと言われれば。

 

 

「えっと…………他のみんなは大丈夫ですね!?」

 

 

山田先生が慌てたように教室を見渡す。少なくとも織斑一夏を除いて分からないという生徒は誰もいなかった。秋羅も山田先生の言っていたことは理解できている。監禁されている間に気さくな護衛と事前に渡された辞書のような分厚さの参考書についてあーだこーだと話し合っていたからだ。

 

 

「マジか…………秋兄とミカドは!?分からなかったら後悔するぞ!!」

「…………学習済みだ」

「許してないのに名前呼び…………教科書全部暗記したから問題なし」

 

 

二人から返ってきた返事に信じられないという顔になる。織斑秋羅は面倒臭がりではあるが、だからといって勉強ができない訳ではない。成績が優秀なら文句を言われることは少なくなるからという不純な理由であるが。簡単に言ってしまえば『楽する為なら努力を惜しまない男』だ。

 

 

「織斑弟、事前に渡された参考書はどうした?」

「あの分厚い本ですか?」

「そうだ、必読と書いてあったはずだ」

「…………電話帳と間違えて捨てました」

 

 

スパーン!!!

 

 

織斑一夏の頭に織斑千冬が出席簿を振るう。これはしょうがないと思われる。あの本はここで勉強するにあたって必要な物だ。それを捨てるなんて狂ってるしか思えない。

 

 

「ーーーーーーーーーー貴様は自分で望んでここにいるわけではないと思っているのか?」

 

 

織斑千冬が何かを言っている。少なくとも秋羅は望んでこの場にいたいと思っていないことは確かだ。

 

 

「望む望まざるにかかわらず、人は集団の中で生きている。それを放棄したいならまず人間であることをやめるべきだと思うがな」

 

 

暴論だ。確かに人が生きるためには他の人と関わらなければならない、しかしその集団が自分に合っているとは限らない。狼の群れの中に羊を入れてここで暮らせと言われても結末は血と骨になった羊だった物だけだ。

 

 

「…………はぁ、無茶苦茶言うね、あれ」

 

 

そんな呟きが男の声で聞こえてきた。織斑一夏の声ではない、そうなるとミカド・リッターのものだろう。あの織斑千冬を前にしてそんなことを言っているミカドに興味を持った秋羅は次の休み時間にミカド・リッターに話をしてみることを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~…………リッター?少し良いか?」

「織斑秋羅…………だな、何か?」

「ここじゃ話にくいから外で」

「ヴィータも連れて良いなら」

「…………大丈夫か?あぁ、良いぞ」

 

 

早速休み時間になった瞬間に秋羅はミカドに話しかけた。そしてヴィータも連れて教室から出て、人気の無いところに移動する。

 

 

「自販機か…………なんか飲むか?」

「珈琲で」

「コーラ」

「躊躇い無しかよ…………ほい」

 

 

自販機で秋羅は珈琲とコーラと、自分用にお茶を購入して二人に渡し、壁に寄りかかる。

 

 

「さっきの授業の話だけど、リッターあの織斑千冬が言ったことに反応してたよな?」

「あの人は集団で云々のやつ?」

「そうそう、どうしてあんなこと言ったんだ?」

「確かにあれの言ったことは間違って無い、でも正しくない。人は集団で生きてるけどその集団と合わなかったら排除されるのが普通さ。善人99人集めたところに悪人一人入れてごらんよ、どうなると思う?」

「…………排除されるな。俺の場合は狼の群れに羊を突っ込む感じで想像してた」

「うっわ、分かりやすい…………なんであんなのが教師やってるの?軍人タイプの人間じゃん」

「知らねぇよ、どこで働いてるかも不明でここに来てようやくバラされたからな」

「…………ホントに姉弟なの?」

「少なくとも俺は血の繋がっただけの他人だと思ってる。悪かったな、愚痴に付き合わせて」

「いやいや、奢ってもらった分だと思えば安いよ。それと、俺のことはミカドで良いから」

「そうか?なら俺も秋羅で良い。織斑だと分かりにくい上にあれらと比較されてる感じが嫌だから」

「あ、私のこともヴィータでいいぞ」

「分かった、じゃあミカド、ヴィータ、戻るか」

「「あーい」」

「仲良いな、お前ら」

「いやね、一応ヴィータとは義兄妹で婚約してるし」

「ファッ!?」

 

 

そんな感じで、秋羅はミカドとヴィータと仲良くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ昼~おっ昼~♪」

「こら夜空、走ったら転ぶわよ」

「何言ってるんすかティナ!!今はお昼休み!!すなわち食事の時間!!私はこの時の為に生きていると言っても過言では無いっす!!」

「安い生ね…………」

 

 

手提げを片手に廊下を移動しているのは一年二組の皇夜空(すめらぎよぞら)とティナ・ハミルトン。夜空が先導しながらティナは中庭に向かって歩いていた。

 

 

「本当に良いところがあったの?」

「朝にランニングしてたら見つけたっす。今日は晴れてるから良い感じだと思うっすよ~」

 

 

ティナは夜空が良い場所を見つけたと言っていたからそこに向かっていた。夜空のことを疑っている訳じゃないが外でと言うのにティナは抵抗を感じていた。

 

 

「こっちっすよ~…………ん?」

「どうしたの?」

「音が…………打撃音?誰か戦ってる?」

 

 

ティナは聞こえなかったが、夜空は何か聞こえたようだった。突然警戒を始めた夜空に釣られるようにしてティナも警戒する。そして身を低くしながら、その音が聞こえる場所に進んでいく。

 

 

すると、その現場に立ち会うことができた。

 

 

「…………」

「…………凄い」

 

 

中庭の一角で、銀髪の女性と橙色の髪の女性が一人の青年と戦っていた。銀髪の女性は左から、橙色の髪の女性は右から同時に青年を攻めているがすべて青年に弾かれている。ティナはその光景に唖然とし、夜空は女性たちと青年の動きを見逃さないようにと目を見張った。

 

 

そして状況が動く。銀髪の女性と橙色の髪の女性が左右から鏡合わせのように同時のタイミングで青年の頭目掛けて蹴りを放つ。それを青年は両腕を盾のように使うことで防いだ。

 

 

「「フッ!!」」

「お?」

 

 

しかしそれは二人からしたら想定内だったらしい。二人はそのガードに使った腕を取り、青年を投げた。両腕を取られているため青年は受け身を取ることも許されず、このままだと地面に叩き付けられるだろう。

 

 

だが、青年は無事だった。投げられた青年は足から着地、そして合気道のように腕を回すことで女性二人を逆に投げ返した。地面に倒された女性の首に手刀を突きつける。

 

 

「…………降参です」

「…………参った」

「うっし、俺の勝ち」

 

 

どうやら今の一連の行動は模擬戦だったようだ。呆れたような顔で敗けを認めた二人に青年が手を伸ばす。

 

 

「男ってことは男性操縦者かしら…………って夜空!?」

 

 

青年の正体を考えていたティナだが、夜空が青年の方に飛び出して行ったことで中断させられる。

 

 

「凄かったっす!!」

「…………誰?ってヤバッ」

 

 

夜空の出現に少し混乱していた青年だが、人がいることに気付いて慌てて制服に付けられているフードを被った。が、もう遅い。夜空もティナも青年の顔をしっかりと捉えてしまっている。

 

 

「どうして顔を隠すんすか?」

「いや…………だってねぇ…………不愉快だろ、こんな顔見せられると」

「そんなこと無いっすよ!!ゲームの敵キャラみたいでカッコいいっす!!」

「…………本当か?気持ち悪くないのか?」

「全然っす!!ティナもそう思うっすよね!!」

「もう夜空ったら…………確かに、ダウンタウンにいた頃に見た比喩じゃなくてリアルに顔半分無い奴に比べればましね。ゲームの敵キャラみたいで」

「なんでみんなゲームの敵キャラみたいって言うんだろ…………まぁ敵キャラ好きな奴多いから良いけど」

 

 

そう言って青年はフードを外して火傷の痕が残っている顔をさらけ出した。そして二人の顔色を伺うがティナは嫌悪している様子はなく、夜空は何故かキラキラした表情である。

 

 

「じゃあ自己紹介しとこうか。俺は不知火時雨、『甘粕工業』のテストパイロットだ。呼び方は好きに呼んでくれ」

「私もだな。私はザフィーラ・ヴァイス、『甘粕工業』のテストパイロット兼時雨の護衛だ。ザフィーラと呼んでくれ」

「あたしはアルフ・ヴァイス。『甘粕工業』のテストパイロット兼時雨の護衛。アルフで良いよ」

「私は皇夜空っす!!よろしくっす!!」

「ティナ・ハミルトンよ。よろしくね」

 

 

そうして、夜空とティナは五人しかいない男性操縦者の内の一人と知り合った。

 

 

国からの命令や陰謀などは欠片もない、自然な出会いで。

 

 

 

 






オリキャラ登場回でした。

織斑秋羅は転生者じゃないオリキャラ、姉と弟を嫌っています。今回ではミカドと仲良くなりました。

皇夜空は元気っ娘キャラ。格闘技を嗜んでいる設定で時雨たちの組手を見て経験者として凄いと思って見てました…………元気っ娘ってこんな感じで良いですかね?

ティナ・ハミルトンは原作キャラですね。よく他の二次創作だとアメリカのスパイとかいうことになってますがこの小説ではアメリカから来た一般生徒でどこかの組織に所属しているとか無いです。原作持ってないからどっちが正しいのか分からないんですけどね…………


次辺りでチョロインで貴族(笑)で御嬢様(爆)が出せると思います。

感想、評価をお待ちしています。

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