リンモモイロハ   作:モンです

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その1

 意識が浮上する。自然と目蓋が開き、電灯の白い光を映す。

 シュルシュルと鳴るシーツの肌触りに違和感を覚えるが無視をして、完全に覚醒するまでゴロゴロとベットの上で悶える。

 

 ようやく目が覚めた。上半身を起こして背伸びをする。肩甲骨から泡がはじけたような音が鳴り、気持ちよく朝を迎えられたと満足した。

 俺の寝ていたベットの周りはカーテンに囲まれており、スンと鼻をすすると消毒液のにおいを感じる。

 

 カーテンを開けるとそこは広い保健室だ。正面には職員室にあるような机と椅子が四つグループを作るように並べられ、奥には戸棚に薬品の容器みたいなのがしまわれている。左奥には引き戸があり、右側は窓から真っ暗な外が覗いていた。

 

 保健室? しかも夜ってどういう事だろう。俺は昨夜確かに自分の部屋で寝たはずだ。何で学校に居るのか。というか俺が通っている学校の保健室はこんなに広くない。だから他校の学校に寝ている間に連れてこられたってことになる。

 

 ……「知らない天井だ」って言える絶好のチャンスだったじゃないか! 馬鹿か俺は。何で気づかなかった。なんか負けた気分だ、くそう。元ネタ分かんないんだけど。

 

 とりあえずここがどこなのか知りたい。もう少し詳しく調べようとベットから降りる。そのままベットから離れてようやく気付いたのだがどうやらベットは四つあったらしく、残る三つはカーテンが閉じられていた。

 

 これは開けるしかないでしょう。誰かいるかなーとカーテンを全部開く。

 

 そこには高校生くらいの女の子たちが眠っていた。

 

 長い黒髪を持ち制服を羽織っている子、なぜか目が惹きつけられる煌びやかな子、如何にも今時の女子高生って感じのゆるふわな子。

 こんな美少女達の寝顔見れるとか俺って今幸せの絶頂に居るのだろうか。あっダメだ、それだとこれから転がり落ちていくだけだわ。

 

 さて、名残惜しいけども起こしますかね。

 

「おはようございまーす! 朝だよっ、たぶんきっと! 起きてくださ」

「うっさい」

「ごめんなさい」

 

 ゆるふわさんから低い声で威圧された。全然ふんわりしてない。あれか、この子も最近よく聞く見た目がヒツジで中身がティラノサウルス系女子か。主に俺の通う学校に多く生息している。外見に惑わされて告白した男は蹂躙される、それがその学校の摂理だった。

 

 内心で小動物の如く怯えていると三人は目を覚ましたようで、ぼんやり周りを見渡している。なにが起こっているのか分からないのだろう、困惑と焦燥を浮かべる。

 やがて長い黒髪の女の子は此方をきっと睨みつけ鋭い声で言った。

 

「あんたは誰。ここは何処なの?」

「俺は工藤雅之。ここが何処かは分かんないです。俺も気づいたらここに居ました。保健室っぽいから学校かもしんないけど……見たことない場所ってのは確かです。誰かここを知ってる人います?」

 

 他の二人に聞いてみるがやっぱり知らないようで首を横に振っている。

まあそうですよね、知ってた。

 

「とりあえず起きて。自己紹介しましょう」

 

 

 

 

 

「改めまして、工藤咲人です。高校三年です。自分の部屋で寝て起きたらここに居ました」

「私は渋谷凛、高一。工藤君と同じで、自宅で寝たらここに居たんだ」

「如月桃です。高校一年生です。私もお二人と同じで……特に心当たりはありません」

「一色いろは、中三で、以下同文ですっ」

 

 クールな渋谷さんに目立つ如月さん、ティラノサウルスな一色さんか。よし覚えた。

 男は俺だけか、マジか。冷静になったらヤバい。美少女ばっかじゃん、意識しすぎてこっから先の会話が何も思いつかん。そもそも女の子と話したことがあんまりないよ。

 

 沈黙が場を支配する。リア充っぽい3人でも流石にこの状況で気軽に話せる訳ではないらしい。つーか俺が最初に仕切ったんだから早く次のことを話せよってムードになっとる。

  ……ああもう分かったからチラチラ見るなよ。

 

「えっと、じゃあみなじゃ、みなさんは別に此処に拉致られるような覚えはないと。なら……とりあえず、疑問な事とかこれからどうするのとかをはなぢぇあいまじょうかヴンッ、話し合いましょうか?」

 

 やっべえすげぇ噛んだ。

 

「……ッフ、ンフフケホッ、そ、そーですね、それでいィヒんじゃないですか」

「私も賛成です……ンフッ、ヤバい止まんなアハハハハハハハッ!」

「っダメだよ一色さん、そんな笑っちゃ。工藤くっ、フフんは真剣に言ってるんだよ」

「だって! すっごく真面目な顔で「はなぢぇあいまじょうか」って! 何ですかそれ何語ですかアハハハハハハハハハ!」

 

 やがて一色さんに続き如月さんと渋谷さんも堪えきれず爆笑した。

 

 なんていうか、死にたい。貝になりたい。殻に閉じこもりたい。あれだ、授業中先生に質問しようとして「お母さん!」って大声で呼んだときぐらいの破壊力だ。帰っていい?

 

 恥ずかしさのあまり俯き顔を手で隠す。顔がめっちゃ熱い。

 盛大な自爆を耐え凌ぐことしばし、ようやく皆落ち着いてきた。もうそろそろ顔だしていいですかね。気分はかくれんぼです。

 

 良さげなので全然恥ずかしく思ってないような真剣な表情を作り顔を上げる。その顔を見た一色さんが再び吹き出した。お腹を押さえてヒーヒー言ってる。いい加減にしないと俺死んじまうよ。

 

「そろそろ話を進めたいんですけど、構わないですかね一色さん」

「ハーッ、ハーッ、はい、ごめんなさい、大丈夫です。あと、敬語じゃなくて良いですよ。先輩なんですから」

「え、いいんですか?」

 

 他の二人に聞くとうんと頷く。

 

「サンキューいろはす」

「なんで天然水!?」

 

 一色さんの抗議はスルーします。

 それはともかく、一気に三人も友達ができた気分です。余は満足じゃ。

 

「話を戻して、まずは気になったことを出していこっか」

「言い出しっぺの法則ということで、最初は工藤さんからお願いします!」

「マジか」

 

 如月さんからキラーパスが来た。ちょっと待ってまだ考えてないっす。というか疑問点があり過ぎて困る。

 こういう時は基本に立ち返って考えるべし。……となると、

 

「俺は5W1Hが知りたいかな」

「ゴダブリューイチエイチですか? なんか呪文みたいですね!」

「……いつ・どこで・だれが・何を・なぜ・どうやってしたのか、って意味だよ。……でも、これってもう全部じゃない?」

「確かに。うわぁ、もう言うことないじゃないですかー。工藤先輩空気読めてなーい」

「一色さん、俺ら初対面だよね? なしてそんなに辛辣なの?」

「さっきの仕返しです!」

 

 実に楽しそうに俺を詰る一色さん。実に生き生きしています。これ味を占めたりしないよな?

 

「他に疑問はない? ……なら、一つずつ話し合おっか」

 

 

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