しばらく話し合った結果、何もわからないということが分かった。
呼び出された時間も場所もバラバラだし、みんな心当たりなどない。つまりはアトランダムでヒトランダムということ。ココロコネクトおもしろいです。
あ、でも気になったのが如月さんで、どうやら他三人の200年くらい未来に住んでたらしい。
「ドラえもんいる?」
「いないです」
「バカな」
夢も希望もないね。
「私の時代でもこんなこと出来そうな技術は有りませんでしたし、もうSFやオカルト系ってことでいいんじゃないですか?」
「……そうね、これ以上考えても出ないと思う」
「でも状況は大分飲み込めました!」
三人とも先程より目に力がある気がする。とても頼りになりそうだ。これは何もしなくとも、三人の後ろをちょこちょこついていけばなんとかなるかも。他力本願がモットーです。
「じゃーとりあえず目標は脱出という事で探索しますか」
おー、と声がそろった。
暗い廊下をとことこ歩く。保健室からは左右に廊下が伸びていたので右へ進んでいるところである。だがしかし。
「なぜ俺が先頭なんでしょうかねぇ……」
「肉壁ですっ!」
胸を張って言うことじゃないと思うんだ。
「いろはちゃん、流石に失礼だよ。もうちょっとオブラートに包まなきゃ」
「桃、フォローになってないよ」
「えっ、あ。……ち、違うんです、今のは言葉の綾っていうか」
「大丈夫だよ。私もそう思ってるから」
「どこら辺が大丈夫なのだろうか」
フルボッコである。女子達の中で俺の評価は一体どうなってるんだ。
若干恐怖を覚えつつ辺りを探索する。流石夜の学校というべきか、部屋の扉はしまっててまともに調べられない。
廊下はまるで出来たばかりのようにツルピカで、裸足じゃなかったら滑って転ぶかもしれない。というか埃さえないってどういうことですかね。人が登校してるように思えない。
深まる謎に頭をひねったが、昇降口が見えたので一旦置いておくことにした。
「さて、ここから出れたりはしない……よね」
入口の扉にはきっちり鍵がしてありました。お約束ですね。
「本格的に閉じ込められてますね」
そう呟く如月さんは言葉の深刻さと反対に元気である。オラワクワクすっぞ、みたいな。そこまで図太くはないが、渋谷さんと一色さんも表情は悲観的ではない。タフだなぁ。
もう少し昇降口を詳しく調べたかったが地味に広いので、俺と渋谷さんが入り口から下駄箱までを、如月さんと一色さんが広間から近くの階段までを調べることになった。
掃除みたいに隅々まで見ようとするが、暗くて見えん。というか怖い。電灯があんまり仕事してない。学校って法律とかで明るさ決まってなかったっけ? 教室だけだっけか。でももう少し頑張って欲しかった。
「ねぇ」
「ひゃい!?」
「……大丈夫?」
「べべっつにぃー? 全然ビビってないし。全然ビビってないし?」
「足が震えてるよ」
「そんなバカな」
「嘘」
「…………」
渋谷さん、意外といい性格してるよね。
「工藤君ってホラー苦手?」
「余裕ですぅー、ちょっと夜にトイレ行けなくなるくらいにしか怖くないですぅー」
「それを苦手というんだよ」
あくまでも認めない俺を優しい目で諭してくる渋谷さん。もうほっといてくれよ。強がってもいいじゃない、人間だもの。
これ以上この話題は良くない。華麗に話をそらそう。
「で、どうして呼んだの? 何か用があったりした?」
「そうだった。これ、職員室の鍵じゃない?」
渋谷さんが手を開くとそこにはタグ付きの鍵があった。
「おお、ナイス。ちなみにそれは何処にあったの?」
「鉢植えの下。定番だね」
「自宅の鍵のような扱いですな」
少しザルすぎやしないか。助かるけども。
「次は職員室を目指すかね」
「そうしましょ――」
「――イヤァァアァァアァァァァァァ!!」
尋常じゃない悲鳴と共に、一色さんと如月さんが走ってきた。
「どうしたの!?」
「目、目が、今、いやぁ!!」
「センパイ早く逃げましょヤバイです追ってきますっ!」
「落ち着きたまえ。どうどう」
パニックになっている後輩たちを宥めつつ、視線を逃げてきた方へと向ける。
そこには先程まで居なかった人影があった。
階段の近くの渡り廊下から広間へ、即ち此方へとゆっくり向かってくる。俯いているので顔は分からないが、来ている服は学生服だろう、スカートなので女だろうか。暗い校舎の中で白い肌が薄気味悪く光って見えた。
周りを見れば女子三人が顔を真っ青にしながらも彼女から目をそらせずにいる。まるで金縛りにあったかのようだった。
やがて広間の中央に着くと立ち止まった。そして、顔を上げる。
彼女の姿がはっきり見えたとき、理解した。理解してしまった。あるはずの、ものがない。
体が動かない。時が止まったかのように凍りついている。
理解したくなかったが、彼女は。彼女には―――
「―――胸が無い、だと…………?」
「目が無いんですよぉぉぉおぉぉお!!」
如月さんが悲鳴と共にツッコんだ。そう、彼女は、目が無いど貧乳少女だったのだ。
「どうして先輩はこの場面でボケるんですか!? バカなんですよねこのバカ!!」
「いや、男なら女を見るときはまず胸から見るやん?」
「うわぁ……(ドン引き)」
「待って渋谷さん普通に引かないで。しょうがないのです、目が勝手に吸い寄せられるのです」
吸引力の変わらないただ一つの存在、それはおっぱいである(至言)
「そもそも女子の顔とか直視出来ないし、ちょっと下の方見たら自然とそうなっちゃうよね」
「なに純情アピールしてるんですか、もう遅いですからね現在進行形で汚れきってますから!」
「えっ……?」
「嘘だろ、みたいな目で見ないでください! 私もいろはちゃんと同意見です! ていうか早く逃げましょうよ、なんかまずい雰囲気ですよ!」
如月さんに促されてもう一度広間を見ると、まな板系少女がまた俯いて肩を震わせていた。あれこれもしかして怒ってる?
そのまま彼女はクラウチングスタートの体制をとり、さながら陸上選手の如く全力疾走で此方へ向かってきた。グダグダ言い合っていた俺は咄嗟に行動出来ず、追い付いてきた彼女のなすがままに腕と襟を掴まれ、大外刈りを決められ、マウントを取られた。
「いやちょっ待っへぶぅ! ごめんなさい俺が悪ぅう! 無言で殴らないでぇえうぶ」
まっすぐに顔を俺に向けながらグーで殴ってくる。死んじゃう、これ物理的に死んじゃう!
「まっくのうち、まっくのうち」
「渋谷ァ! ぅばぁあデンプシーロールやらないでいいから、ごふっ、ごめんなさい口答えしてすいません!」
「先輩、ザマァ無いですね」
「ね、ねぇ二人とも、少しくらい心配してあげてもいいんじゃ無いかな?」
「あ、如月さんのパンツ見えぐぅう」
「ごめんね、私が間違ってた。もっとやっちゃってください!」
唯一の味方もいなくなった。世知辛い世の中だな。
ようやくマウントから解放されました。
「お騒がせしました」
「ホントですよ……」
なぜか如月さんがグッタリしていた。叫び疲れたのかな。
さっきまで荒ぶっていた少女も肩で息をしている。そんなになるまで殴らなくてもいいじゃない。
「結局この子はなんなの?」
「スタンドみたいにオラオラしてたし、幽霊でいいんじゃね」
「何ですかその理論」
一部の隙もない完璧なロジックだな。
「さっきはごめんね。俺は工藤です、よろしく幽霊さん」
そう言って右手を差し出すと幽霊さんは頷いて握手してくれた。どうやらいい人みたいです。
他の三人も自己紹介をした後、この後のことを話し合った。
俺らの探索の成果は職員室の鍵、そして一色さん達の成果は窓に挟まっていたという音楽室の発表会のチケットだ。
「夜の校舎で音楽室……」
「嫌な予感しかしませんね」
一色さんと如月さんが嫌そうな顔をしている。気持ちはよく分かる。先にトイレを済ませておかないと大変なことになるだろう。ズボンが。
「とりあえず音楽室は職員室に行ってからにしよっか」
異議なし、と頷く四人。さて、行く前に一つ疑問が。
「幽霊さん、ついてくるの?」
グッジョブと手を突き出す幽霊さん。やる気は十分ですね。
こうして新たな仲間とともに、職員室を目指す一行でした。